リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第十五鬼~赤鬼と蠢く闇~

side~宏壱~

 

「そうか、目を覚ましたのか」

 

[はい。今では家族仲良く喫茶店をしているようです]

 

「そりゃなにより、だな」

 

[そちらは?]

 

「ああ、こっちは進展なしだ。情報通りに現地に行ってももぬけの殻だよ」

 

 

 アースラに来て一週間ほど経つが、尻尾を掴むことも出来ていない。

 

 

「そろそろハラオウン艦長に働き掛けてみますかね」

 

[では私は、地上本部の方を手伝いに行きますね]

 

「ああ、そうしてやってくれ。大分良くなったと言ってもまだまだ忙しいしやることも一杯あるんだ」

 

[はい、ではこれで]

 

「おう」

 

 

 その言葉を最後に通信を切る。通信相手は紫苑だ。『蜀伝の書』の彼女らにはなのはの父親の容態の確認をしてもらっていた。

 余談だが『蜀伝の書』も力が強くなり、俺が召喚せずとも桃香たちの意思で印をしたところなら顕現できるようになった。魔力は持っていかれるけど、『蜀伝の書』内部から刃にメールが届くことが分かり、事前連絡が来てそこで刃が返信し、俺の魔力を使って顕現するってことになってる。

 

 

「はぁ~、艦長のところに行くかね」

 

 

 そう呟き俺は自分に宛がわれた部屋を出て艦長室へと向かう。

 

 

「リンディさんいるか?」

 

 

 艦長室のドアの前で声をかける。

 

 

「宏壱君? ええ、いるわよ」

 

 

 リンディさんが居ることを確認して艦長室へ入る。

 

 

「それで何か用かしら?」

 

 

 リンディさんは空中モニターを見ながら聞いてくる。

 

 

「次の方針は決まってるのか?」

 

「そう、ね。………情報待ち、という事になるわね」

 

「つまり、何も決まってないってことでいいのか?」

 

「相変わらずはっきりいうのね」

 

 

 俺が簡単にそう言うと苦笑して、空中モニターに向けていた視線を俺に向ける。

 

 

「歯に衣を着せても意味ねぇだろ」

 

「歯に、なに?」

 

 

 言葉の意味が分からなかったんだろう、首を傾げるリンディさん。本当に子持ちかよ? やけに可愛いな、おい。

 

 

「物事を包み隠さずストレートに言うって意味だ。俺の故郷、日本の諺だ」

 

「へぇ~、そうなのね」

 

「っと、別に諺談義しに来た訳じゃねぇんだ」

 

 

 俺は逸れ始めた会話の軌道を修正する。

 

 

「ええ、そうだったわね。それで、用事って?」

 

「ちょっと提案があるんだけどな」

 

「提案?」

 

「ああ、第27管理世界・エルピオンに向かってくれないか?」

 

 

 俺の提案を聞いて目を見開くリンディさん。

 

 

「どうして?」

 

「現地調査」

 

「それは既に行われたわ」

 

「それってあれだろ? ボルク一等空佐の部隊……だろ?」

 

 

 ボルク一等空佐、ウェイン・ボルク一等空佐。初日で俺に絡んできた男だ。非常にプライドが高く頭がキレる。何処で情報を得てきたのかは分からないが、これ迄の調査で敵地を調べ上げたのはボルクだった。

 

 

「ええ、ウェイン一佐が調査を行ったのよ? 漏れがあるとは考えられないわ」

 

 

 リンディさんはボルクにどことなく男を見ている気がする。言動、視線、どれも他の局員に向けるものとはどこか違うものを感じる。が、はたして目の前にいるのはそんな女だろうか? 一週間、出会って一週間。これは俺がなのはと出会って同じ期間だ。なのはの明るいところ、独りで何でも抱え込むところ、優しいところ、ちょっとばかし頑固なところ、一週間あれば結構その人物の人となりが見えてくる。全部分かる…とは言えないが、これでも100年以上人生を歩んできた。それなりに人との交流もあった。見る目はあるつもりだ。

 

 

「宏壱君?」

 

 

 少し考えに耽っていると疑問に思ったのか、リンディさんが声をかけてくる。

 

 

「あー、いや、ボルク一等空佐はどんな人物なんだろうと思ってな。ほら俺は初日に会って以来顔を会わせてないからさ」

 

「そう?優秀な魔導士よ。宏壱君ほど戦闘に特化しているわけではないけれど。幻術なら管理局でも屈指の実力者ね」

 

「ふぅ~ん」

 

「それに、ああ見えて優しいところもあるのよ? 部隊での人望も厚いし、面倒見もいいの。私には一人息子がいるのだけど、父親のいないあの子をよく見ていてくれるの」

 

「息子がいんのか?」

 

「ええ、宏壱君より3つ上だけど」

 

「へぇ~」

 

 

 やはりどこか違和感が残る。一週間前はこんなんじゃなかった。検査の時は普通だったと思う。だが三日目に入って急にボルクの話をしだした。誰も疑問に思っていない、気味が悪いな。

 

 

「まぁ、検討しといてくれ」

 

「ええ、そうね。彼に相談してから決めるわ」

 

 

 その言葉を聞いて艦長室を後にする。

 

 

「おや? 君は………山口二等陸尉だったかな」

 

「………ボルク一等空佐」

 

「リンディ君に何か用だったのかね?」

 

 

 艦長室から出てすぐの曲がり角でボルクと鉢合わせする。

 

 

「ええ、ちょっとした相談がありまして」

 

「あまり彼女に負担を掛けないでくれたまえ。ましてや陸から来た君のような子供がうろちょろしているだけで迷惑なのだ」

 

 

 イラついたが抑える。初日のような問題を起こせばレジアスのおっさんにもゼストさんにもリンディさんにも迷惑になる。もっと言えば俺を推薦してくれたリーゼの顔に泥を塗ることにもなる。

 

 

「ふふふ、では、私はこれで失礼させてもらうよ。リンディ君と食事の約束があるのだ」

 

 

 そう言って去っていくボルク。前はあんな自信家だったか?

 

 

「気にしても仕方ない、か」

 

 

 あのリンディさんが私情を挟んで、なんて事はないと思うが……もう一計手を打つか。

 

 

「刃、アースラ経由で本局のデータバンクに侵入ボルクの調査資料の改竄を頼む」

 

〈はっ! それでなんと?〉

 

「不審な点があるが現在の人員では調査しきれず再調査の必要あり、だ。後を残すなよ」

 

〈御意〉

 

 

 バレたら不味いよな~、これ。今までそれなりに真面目にやって来たんだけどな。しゃあない、か。事が終わったらレジアスのおっさんに話して、その後に本局にも話さないとな。軍法会議にかけられるだろうが……已む無し、だな。それにしても、リンディさんの急な態度の変化、何を隠している? ウェイン・ボルク。

 

 それから一時間後、第27管理世界・エルピオンへの再調査の任を本局から受けたと、リンディさんが皆の前で説明した。その時のボルクの表情は悔しさと不服、疑念で一杯だった。

 

 

 

 

 

 side~???~

 

[と言うことです]

 

「再調査だぁ? テメェ嘗めてんのかぁ、あ゛あ゛?」

 

[ひいぃっ!!]

 

 

 そこは暗く光を通すことのない空間だった。その空間には浮かび上がる空中モニター。映るのはグレーの背景でno dataの文字、どうやら音声だけが繋がれているようだ。それに向かい合うのは全身を黒いローブで覆った男だった。

 

 

「くそボケが。まぁいいリンディの方はどうだぁ?」

 

[は、はい。刷り込みは完了しました]

 

「エイミィは?」

 

[その………エ、エイミィという局員は存在しません]

 

「はぁ? んな訳ねぇだろぉが!! もっとよく調べたのか! テメェ!!」

 

[ひいぃぃ!! も、申し訳ありません!]

 

 

 怒鳴り散らす男に通信相手で空中モニターの向こう側にいる者はひどく怯えているようだ。これだけで両者の関係が分かるだろう。

 

 

「んとに役に立たねぇなテメェは!」

 

[も、申し訳ありません! で、ですが士官学校にエ、エイミィ・リミエッタという訓練生がいるようです]

 

「あ? 士官学校?」

 

[は、はい]

 

「あー(原作で何時アースラメンバーになったとか言ってなかったな。この時期はまだ訓練生だったのか)」

 

[あ、あの?]

 

 

 男の声が聞こえなくなったことを疑問に思ったのか、モニターの先にいる者が弱々しく声を出す。

 

 

「あ? いや、何でもねぇ気にすんな」

 

[はぁ]

 

「んなことより、テメェは言われた通りにすりゃあいいんだよ」

 

[は、はい。そ、それで約束の方は……]

 

「あ゛?ああ、俺がたっぷり味わったら後はテメェにやるよ」

 

 [あ、ありがとうございます!]

 

(くっくっくっ、だぁれがテメェなんかにやるかよ。リンディも俺様のもんだぜ)

 

[あ、あの]

 

「あ?何だ。まだなんかあんのかぁ?」

 

[は、はい。消してほしい子供がいまして]

 

「ガキだぁ? んなもんテメェでやれよ! 何で俺がんなこと!」

 

[リンディ君と仲が良いみたいです]

 

「あ゛あ゛?」

 

[それに地上本部のクイント・ナカジマ、メガーヌ・アルピーノとも良好みたいです]

 

 

 先程までオドオドしていたモニターの向こうの者の口調は非常に滑らかになっていた。

 

 

「俺様のリンディたちに手を出すガキがいるだとぉ? ザケやがってぇぇっ! ぶっ殺してやらぁぁあ!!!」

 

[その子供さえいなくなれば]

 

「なのはたちはリンディたちは俺のもんって訳だ。くっくっくっ、いいだろう。そっちに一人派遣してやる。かなり精神がいかれたやつだからな。酷ったらしく殺してくれるだろうぜ」

 

 

 男はローブで見えない顔を醜く歪め忍び笑いを漏らす。それから二、三言葉を交わしモニターの先にいる者と男は通信を切る。

 

 

「くっくっくっく、管理局を潰しリンディ、レティ、エイミィ、クイント、メガーヌ、リーゼ姉妹、それにティアナにキャロ、ギンガ、スバル、ナンバーズ、地球にはなのはたちだっている! ヒッヒッヒッひゃははははは! 全員! この世界の女どもは全員俺様のもんだぁぁぁあああ!!! クククククケケケケケケケヒャハハハハハハハハ!!!」

 

 

 男は狂ったように笑い続け、その声はどこが果てかも分からない暗闇に響き、光も届かぬ闇で狂気が蠢く。

 

side out




ローブの男、いったい何者なんだ!?←素っ惚け

はい、すみません。テンプレですね。おそらく皆さんのお察しの通りだと思います。

敵の指導者的な人物をどうしようか?と悩みましてこうなりました。

ぶっちゃけ、このエルピオン大量虐殺から始まった事件、当初全く考えていませんでした。取り合えずなのはと距離を置く理由付けがほしかったんです。そうしたらこんなことに…… 。

プロット殆ど立ててないんで、どんな決着の付け方をするのか自分でもわかりません。もういっそのこと話に身を任せようと思っています。こんな作品ですがどうか飽きずに読んでやってください。

ではではまた次回で。
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