リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第ー鬼~赤鬼、再開~

 side宏壱

 

 いつもの慣れ親しんだ意識が覚醒する感覚。

 

 

「ん……ここは?」

 

 

 覚醒と同時に辺りを見回す。俺は今どこか地下に有るような、都会の裏通りを歩けば見付けられるよなBARの扉の前に立っていた。

 

 

(ここか……懐かしいな。前にここに来たのは80年ほど前か)

 

 

 BARの扉を開けると、カランカランとドアベルが鳴り来客を知らせる。店の中に入るとオレンジの蛍光灯が店内を照らし、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 幾つかの丸テーブルありその奥にカウンターがある。カウンター内にタキシードを来た50代ほどの初老の男がグラスを磨いている。初老の男(以前来た際にこの店のマスターだと紹介された)が一度グラスを置いて軽い会釈をしてきた。

 

 

「おう」

 

 

 とだけ返して軽く右手肩辺りまで挙げるに止めておく。以前来たときにその程度の感覚でいいのだとか、何でも客に硬くなられるのが苦手らしい。

 

 

「貂蝉久しぶりだな」

 

「そうねん、もう80年だもの」

 

 

 カウンター席の一つ(と言っても三人分ほど占領しているが)に座るスーツを着た服の上からでも判るほどの筋骨隆々の大男に、声を掛けながら近づいて横の空いている席に座る。

 

 

「長かったよ本当に」

 

「そうねぇ、け・れ・ど、長いようで一瞬だわぁん」

 

「ああ、それはそうかもな。必死で駆け抜けてきたからな」

 

 

 ホントに濃厚な人生だった。始まりはこの自称漢女(おとめ)とはこの場で出会った「その話はまたいつかにしましょうよん」………科を作るなキモい。

 

 

「と、わりぃトイレだ」

 

 

 少しの間貂蝉と世間話をしていると、急に尿意がこみ上げてきた。

 

 

「そう、まだ時間もあるしゆっくりねん♡」

 

ヂュゥゥッパッ!

 

 「ヒィッ!? 投げキスとかやめろっ!! 穢れるわボケェェッ!!」

 

 

その言葉を貂蝉に投げつけ、逃げるようにトイレに続く扉を開け中に入り乱暴に閉める。

 

 

「はぁ、あれがなきゃ良い奴なんだけどなホント」

 

 

 そうボヤきながらベルトを外しファスナーをあけ

 ――――――しばらくお待ちください――――――

 

 「ふぅ、スッキリだぜ♪ 似合わねぇな。自分で鳥肌立ったわ、今」

 

 用を足した後、手を洗い蛇口をしめる。ふと顔を正面に向けると、洗面台いっぱいの三面並びの鏡があった。そこには当然ながら自分の姿が映っているわけなんだが。

 

 

(若いな、25、6歳ってとこか?)

 

 

 前のときもそうだったが、この世界に来ると20代そこそこの年齢になるらしい。

 

 

「このスーツもなかなかだな。これを選んだ奴はセンスがいい」

 

 

 俺が今身に纏っているのは黒地に薄いグレーのストライプが入ったスーツだ。おそらく貂蝉が「そう言っていただけると我らも選んだ甲斐がありますな」っ!?

俺の真後ろにあるトイレの出入り口から聞こえた声、それに反応して体ごとそちらに向けるとそこには。

 

 

「……せ、い?」

 

「おや、いかがなされた?そんなに驚いた顔をして」

 

 

 ニヤリと口の形を不適な笑みに変えて壁に背をあずけて腕を胸の下で組んだ白を基調とした着物を着た青い髪の女がいた。

 姓は趙、名は雲、字は子龍、真名は星。真名とは彼女達の住まう地域独特の風習で、真なる名と書いて真名(まな)と呼ぶ。これは彼女達そのものを表すと言ってもいいもので、許可なく呼んだものは首を刎ねられても文句は言えないという初見殺しの恐ろしい風習だ。

 彼女、星を最後に見たのは、もう10年も前だった。顔に弛みや皺は其れほど無かったが、痩せ細り乳もたれ――ギロリ――………痩せ細りベッドに寝たきりで逝くときに俺を残して逝くのが悔しいと涙を流す姿だった。(べ、別に寒気がしたとか、マジで怖かったとかじゃないからな!! ホントだぞ!!ホントだよ?)

 

 

「クスクス、どうなされた? 少し顔が青いようですが?」

 

「い、いや、何でもない!! 何でも!」

 

「そうですか?」

 

 

 そう言って星は口元に手をやりクスクスと楽しそうに笑う。その仕草で冗談だとわかる。

 

 

「はぁ、勘弁してくれ」

 

「そうですな。これ以上して兄者に嫌われたくはありませんからな」

 

 

 ったく、ホント人をからかうのが好きなのは変わらねぇな。って。

 

 

「あり得ねぇな」

 

「ん? 何がですかな?」

 

「俺がこんなことでお前を嫌うかよって言ってんだよ」

 

「っ!?な、何を――ガリッ!?――ひゅうに!!?」

 

 

 顔を赤くした星が焦って舌を噛んだようだ。

 

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ら、らいひょふでふ! は、はきにいひまふひょ!!」

 

 

 そう言って慌てて、出て行こうと俺に背を向け駆け足で。

 

 

「星!? ちょっとま――ガツン!!――て、て遅かったか」

 

「~~っ!? ひ、ひつれいひまふ!」

 

 

 そう言って額を押さえながら、目尻に涙を浮かべて出ていった。

 

 

「大丈夫か? ホントに」

 

 

 まぁともあれ、うん、ちょっと慌てる姿にキュンときたのはここだけの秘密だ。

 

 

「せ、星? どうしたのだ? すごい音が聞こえたが」

 

「なんれもなひ……んっんんっ……何でもないぞ?」

 

「でも星ちゃんオデコ赤いよ?」

 

「そんなことはありません!」

 

「にゃはは、ちょっと涙目になってるのだ」

 

「涙目になどなっていない!」

 

「どうせ兄貴からかって仕返しされたんだろ」

 

「あはは、お兄様ならありえそうだね」

 

「なっ!? 星ズルいぞ! お前だけ! お仕置きされたなんて、ならワタシもお師匠様に――ゴツッ!!――~~っ!? 何をするんですか桔梗さまぁ~」

 

「再会のときくらい落ち着かんか!! このバカ弟子が!!」

 

 

 俺が扉をあけて外に出ると。

 

 

「あらあら、こんなときだからこそ焔耶ちゃんもはしゃいでるのよ。それは桔梗も同じでしょ?」

 

「はぁ、ワシとこやつのを一緒にしてくれるな紫苑」

 

「それはヒドイですよぉ桔梗さまぁ」

 

「焔耶お姉ちゃんいたいのいたいの飛んでけぇ!」

 

「ううぅ、璃々ありがとう」

 

 

 ガヤガヤ、ガヤガヤと騒ぐ者。

 

 

「「「「~~~♪~~~」」」」

 

「流石ですね。四人とも完璧な音調です」

 

「だな。これなら向こうでも通じそうだ」

 

「そうですねぇ、お嬢様もリラックスしてますし」

 

 ~~♪~~♪~~

 

 静に歌を聞く者。

 

 

「雛里ちゃんやっぱり時空管理局っていうところが重要だと思うよ」

 

「うん、そうだね朱里ちゃん。この組織に入ればかなり動きやすくなるよ」

 

「そうね、向こうの世界に行ったら宏壱さんに相談してみましょう」

 

「「うん」」

 

 

 そう言って今後のことを相談する者。

 

 

「あー、盛り上がってるところ悪いが、かまわねぇか?」

 

『っ!?』

 

 

 俺がそう声を掛けると皆がこちらに顔をむける。

 

 

「あらぁん山ちゃん、遅かったのねぇん」

 

「まぁ、皆が落ち着くのを待っていたんだが」

 

 

 そう貂蝉の問に答えていると、床を揺らすほどの勢いでこちらに駆けてくるみんな……と言うか跳んだな。

 

 

「って、どわぁっ!!」

 

 

 みんながのし掛かってきて。さすがにこの人数は重い…重いがとりあえず。

 

 

「みんな久しぶり」

 

 

 と声をかけた。

 

 再会してまた俺と共に歩んでくれる愛する女達に。

 

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