リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第十八鬼~赤鬼と応援要請~

side~宏壱~

 

 エルピオン現地調査から三日後今俺が何をしているかというと……。

 

 

「ほらほら! もっと早く動かないと当たっちゃうよ!」

 

「おわっ!? あぶっ! ちょっ! まっ!」

 

「は~い、捕獲ぅ~」

 

「いいっ!? バインド!? いつの間に!?」

 

「集中砲火だー!!」

 

「のわー!!」

 

ドォォーーン!

 

 50からなる魔力弾の集中砲火に晒されていた。

 

 

 

 

 時は数時間前に遡る。

 

 

「私はギル・グレアムそしてこっちの二人が」

 

「お父様の使い魔リーゼ・アリア、よろしくね」

 

「リーゼ・ロッテ、あたしもお父様の使い魔だから、よろしく」

 

 

 目の前の白髪の男とリーゼ姉妹が自己紹介する。ギル・グレアム提督、リーゼの主で管理局屈指の実力者。佇まいから歴戦の魔導士の風格、威厳を漂わせている。ここのクルー、特に武装隊の連中は気圧されてるみたいだ。

 

 

「ではリンディ提督、二人をよろしく頼むよ」

 

 

 グレアム提督がそう締め括る。

 

 

 

 

 補給物資受け渡しのための輸送艦が本局から来た。そこに乗っていたのはなんとギル・グレアム提督とその使い魔リーゼである。どうやらリンディさんがリーゼに応援を頼んだらしく、二人とも快く引き受けたんだそうだ。

 

 

「私は他の艦にも物資を持っていかなければならないからね。二人とも、リンディ君の言うことをよく聞くんだよ」

 

「もう、お父様。私もロッテも子供じゃないんだから」

 

「ははは、そうだったな」

 

 

 そう言って笑い合うグレアム一行。それを横目に俺を含めた数人の男性局員で物資をアースラ艦内へ運び込む。

 

 

「アリア、彼が君たちの言っていた少年か?」

 

「はい、お父様。宏壱、ちょっと」

 

 

 俺が30kg程の米袋を肩に担いでいるとアリアに呼び止められ、手招きされる。

 

 

「どうした? 今忙しいんだけど」

 

「ごめんね、一応お父様を紹介しようと思って」

 

「宏壱、それ一度下ろしたら?」

 

「わかったよ、ロッテ。紹介といってもさっきのリーゼの紹介の時に一緒に聞いたけど?」

 

「そうだけど、もっとっちゃんと紹介しておきたいってことだよ。つべこべ言わず言うことを聞け!」

 

「横暴か!」

 

「はぁー、ロッテやめなさい。宏壱も」

 

 

 俺とロッテの間にアリアが入り仲裁?する。

 

 

「まぁ、いいや」

 

 

 今まで担いでいた米袋を下ろしグレアム提督に向かい敬礼。

 

 

「地上本部首都防衛隊一番隊所属・山口宏壱二等陸尉であります!」

 

「うむ、さっきも言ったがギル・グレアムだ。それと敬語は必要ない」

 

「いえ! そんなわけには」

 

「君はあまりそう言うことが得意じゃないと聞いている。楽にしてくれて構わないよ」

 

 

 ひどく紳士的な男だな。リーゼの話によれば俺と同じ地球の出身でイギリスが故郷だそうだ。所謂、英国紳士ってやつか?

 

 

「了解、ギルさん」

 

「ギ、ギルさん?」

 

 

 俺が相好を崩しそう呼ぶとグレアム提督、ギルさんは目を点にする。

 

 

「ちょっ、宏壱! 幾らなんでもそれは」

 

「そ、そうよ! いきなりそんな呼び方」

 

「いや、構わない。山口二等陸尉、いや私も宏壱君と呼ばせてもらおう」

 

 

 そう言ってギルさんはフランクに笑いかけてくる。が、直ぐに真剣な表情を作り言葉を続ける。

 

 

「それと君の今後の活躍に期待している。ウェイン・ボルク元提督の管理局転覆計画を防いでくれて感謝する。僭越ながら私が管理局代表としてこうして礼を言わせてもらうことになった。ありがとう」

 

「いや、こんなガキの言う言葉を信じてくれたリンディさんにこそ感謝するべきだ」

 

 

 三日前、部屋に戻り休んでいた俺の部屋に突然ウェイン・ボルクが強襲をかけ襲い掛ってきた。当然ウェイン・ボルクが接近するのを気配で気付き、直ぐに対応できるように構えていた俺が後れを取るはずもなく、即鎮圧。

 その物音を聞いた通りかかった局員が駆け付け、顔面をボコボコに張らしてバインドで縛られたウェイン・ボルクとその胸ぐらを掴み拳を振り上げる俺を見て状況判断に困りリンディさんに応援を要請、リンディさんが数人の武装隊を引き連れ登場し喚きたてるウェイン・ボルクを無視して俺に状況説明を求めた。

 俺やリンディさんが連れてきた武装隊の面々もそれなりに驚いたが、最も驚いたのはウェイン・ボルクだろう。これまではある程度の言葉は聞き入れられていたんだ。調査班を編成するときも、聞き入れられ、人数を少なくされた。が、今回はウェイン・ボルクの言葉は無視され、殺人未遂で独房へ連行されていった。その際に「誤解だ。嵌められたんだ」と喚き散らすも完全に無視された。

 

 リンディさん自身が俺から話を聞いた後、思い返すと不審な点がいくつもあったらしい。それで本局に問い合わせた結果、急遽ウェイン・ボルクの自宅に家宅捜査が実行された。

 すると出るわ出るわ。横領の書類、女性局員への脅迫行為、ロストロギアの横流し、質量兵器の密売、複数の犯罪組織との関与、非人道的な違法研究への援助、数え上げれば切りがない。それに関わったであろう複数の佐官、将官の名簿も発見された。それら全ての人物が本局の人間だった。というか、そんな重要なもんを文字に起こして保存しとくって間抜けすぎんだろ。保存しとくにしても自宅じゃなくてどっかの貸しロッカーの中とか考えられなかったのかよ。

 ま、それはいいとして。揉み消されそうになったらしいけど、俺が関わっていることで情報はレジアスのおっさんにも行き、首都防衛隊が動き高飛びされる前に捕縛に成功、御用となったらしい。幸い世間に知られることなく、裁判すらもないまま無人世界にある拘置所に移送された。それら全てがこの三日間で起きた出来事だ。行動が早すぎるよな、多分このシナリオは最初っから描かれていたものなんだろう。気に食わねぇ、犠牲も已む無し……ってか?それとも……。

 

 

「どうかしたのかね?」

 

 

 今日までの三日間を振り返っているとギルさんから声がかかり、意識を今へと戻される。

 

 

「あ……いや、何でもない、ちょっと考え事を。っと、もう物資搬入に戻るよ」

 

「もう少し話をしていってもいいんじゃない?」

 

「ロッテ、宏壱も忙しいんだから」

 

「ロッテは随分と宏壱君に懐いているようだな」

 

「なぁあっ!? と、ととと父様! 何を言って!?」

 

 

 急激に顔を赤くさせるロッテを、ニヤニヤしながら見るギルさんとアリア。仲良いな、この主従。

 

 

「俺は行くぞ~」

 

 

 米袋を再び担ぎ歩き出す。後ろから「この状況を何とかしてから行けー!」なんて聞こえたが無視だ無視。………まさか、これから数時間後にあんなこと(魔力弾の集中砲火)になるとは思いもよらない俺であった。

 

 

 

 

 

side~ギル~

 

 コツコツ靴を鳴らし、アースラ艦内でも一際人気が少なく空気の思い場所、独房に数人の武装隊員を連れて歩く。

 

 

「ここがウェイン・ボルクの収容されている部屋です」

 

 

 前を歩いていた案内役の青年が立ち止まり、私たちに向けそう告げる。

 

 

「ありがとう」

 

 

 青年にそう言い独房へと体を向ける。犯罪者にも当然階級は存在するもので、罪が重くなればこちらの対応もそれに応じて変わる。殺人とは最も重い罪として扱われる。それがたとえ未遂であろうとも変わらない。ウェイン・ボルク提督……今は元提督だったな。彼はその重い罪を犯そうとした。同情の余地はないが………「憐れだな」思わず声が出る。

 

 

「ギ、ギル・グレアム提督! なんとか言ってください! こ、ここの者たちが! 私を嵌めようと!」

 

 

 この男とは幾度か顔を会わせたことがあるが、今の男とは似ても似つかない。ストレスからか髪は抜け落ちて目の下には隈ができ、頬は痩せこけている。この三日でかなりの心労が溜まったらしい。

 喚めきたてる男を無視して懐から小型端末を取り出しモニターを開く。

 

 

「ウェイン・ボルク元提督、君には反管理局関与の容疑が掛けられている」

 

「………は?」

 

「君が報告したエルピオンの調査資料を見せてもらった。山口二等陸尉が調査したものとは違う結果だったようだな」

 

「な、なにを言ってるんです? そんなはずは」

 

「ふむ……では、照らし合わせてみよう」

 

 

 そう言って私はウェイン・ボルク元提督にも開いていたモニターとは別のモニターを彼の前に展開する。

 

 

「そこに君の報告書と山口二等陸尉が調査後、この三日の間で書き上げた報告書がある。違いを読み上げていこうか」

 

 

 モニターを見た男の表情が青ざめていくが気にせず続ける。

 

 

「山口二等陸尉の調査によれば現地での被害状況に違和感を覚えたそうだ。その違和感の正体は、魔法の有無だよ」

 

 

 一旦言葉を切り、男に向けていた視線をモニターに移し浅く深呼吸し言葉を続ける。

 

 

「銃痕はあり魔法の使用跡もあった。君の報告道理だ」

 

「な、なら! 合っているではありませんか!」

 

「だが、山口二等陸尉が覚えた違和感は辺りに漂う残留魔力だ」

 

「っ!? ざ、残留魔力? ば、バカな! 事件が発覚したのは一月前のはず! 残っているわけがない!」

 

 

 残留魔力とは魔導士が魔法を行使した際に残る魔力カス、謂わば我々生物が酸素を吸い吐き出される二酸化炭素のようなもの。二酸化炭素は調べたところで誰が吐いたものかなど分かりはしないが、残留魔力は違う。魔力にはそれぞれ波長があり魔導士一人ひとり違うものを持っている。リンディ君、宏壱君、アリア、ロッテ、クロノ、私、アースラに搭乗している武装隊の面々、そして目の前の男。全員が全員違う波長を持ち照合したとしても一致することはない。それは双子であるアリアとロッテもそうで彼女達の主である私とも似た部分はあれど完全に一致することはない。もっと言えば残留魔力が一月その場に残り続けるということはない。たとえあったとしても微々たるもので、人が感知することはほぼ不可能と言っていい。が、彼はそれを感じとり自らのデバイスに照合させた。これだけでもあり得ない話だが。

 

 

「彼のデバイスは優秀だ。通常、魔力照合を行うにはそれなりの設備が必要で、その時その場で照合出来はしないし時間もかかる。しかし、彼のデバイスそれをやってみせた。凄まじい演算能力に処理能力、思考領域と言える」

 

 

 アリア、ロッテ、リンディ君、彼女らは口を揃えてこう言う『主が主ならデバイスもデバイスだ』と。アリア曰く魔力の循環効率が異常、ロッテ曰く身体能力があり得ない、リンディ君曰く頭の回転の早さがバグ、三人が口を揃えて言うのは達観しすぎ。ロッテはハッキリものを言う性格だ、聞いたことがあるらしい「なぜ其処までの力を手に入れたのか?」と、「色々あったんだ」宏壱君の解答はこんなもので詳しい説明もなかったそうだが、「戦場を駆け抜けた老人のようだった」とはそれを聞いたアリアの談だ。君はたった七年で何を経験してきたんだ……。

 

 

「そ、それが何だと言うんですか? たとえそれが」

 

 

 意識を遠いどこかへ飛ばしていると、目の前の男から声がかかる。その声は若干震えていた。もう私が何を言いたいのか見当が付いているんだろう。

 

 

「よく資料を見たまえ、その残留魔力は全て同じ波長を示している。しかも驚くことに管理局に同一の波長を持った魔導士が存在したんだ」

 

 

 端から見ても分かるほどに、青かった顔色が白と言っても過言ではないほどに血の気が引いていく。

 

 

「そう、君だよ。ウェイン・ボルク元提督」

 

「わ、私が管理局を裏切るわけがないでしょう! 調べていただければ分かります! 私がどれだけ、どれだけ管理局に尽くしてきたか!」

 

「ああ、調べたとも」

 

「な、なら!」

 

「犯罪者をでっち上げ無実の罪で捕らえられた者たちがいる」

 

 

 この男は自らが上に昇るために無実の者を、限り無く黒に近いものよく調べれば白に変わるような者たちを捕らえてきた。犯人が見つからず事件が難航したとき、無関係な人間をつれてきてあたかも犯人であるかのように書類をでっち上げ、拒否しようとすれば家族を引き合いにだし黙らせ認めさせる。今まで発覚しなかったのはこの男を庇護していた数人の将官たちによる働きだ。賄賂をこの男から送られ、引き受けた。それをデータ、紙にすることで証拠を残し脅して二度三度と繰り返させる。一度受けてしまえばやめることはできない。面倒なことは上に任せ自分は犯人をでっち上げる………卑劣な手段をとる男だ。今回はそれが仇になったわけだが。

 

 

「そ、そうだ! あのガキが、あのガキが私を嵌めたんだ!」

 

「それは、山口二等陸尉のことを言っているのかね?」

 

 

 山口宏壱二等陸尉一年前に行われた飛び級試験の合格者、リーゼの弟子でもある。リーゼから話は聞いていた。特にロッテが彼に懐いているようで、よく話を聞かされる。少し話しただけだが彼には妙なカリスマがある。人を引き付ける力、上に立つ者の絶対的な力を。そんな彼がこんな小物を蹴落とすために態々時間を割くか? 否だ。あり得ない、歯牙にかけてすらいない。

 

 

「もう御託はいい。ウェイン・ボルクを連行する。連れてきてくれ」

 

「「「「はっ!」」」」

 

 

 バインドをかけられ独房から出されたウェイン・ボルクは喚き無駄な抵抗をするが関係ないとばかりに引きずられていく。その後を追いながら彼の持っていたデータを開く。これは現地で発見された紙を彼がデバイスに記録したものだ。

 

 

「日時、時間、事件発覚の二日前、読み取れたのは差出人と最初の数行だけ……か」

 

 

 その紙に書かれた名前はウェイン・ボルク。数時間後に到着する者達を匿ってやってほしいとの旨が書かれている。そして事件は起こった。ならば誰が彼らを殺したのか? 何故ウェイン・ボルクは魔法を行使しあたかも激戦が行われたかのように偽装したのか? そうする必要があったからだ。彼らは殆ど抵抗できずに殺された。どれだけの規模を抱え込んだのかは分からないが、十人は下らないはずだ。それにエルピオン、特に彼らの一族は非常に管理局に友好的で『管理局』と相手が名乗り尚且つそれを証明できてしまったのなら、彼らは快く受け入れるだろう。強力な魔導士を輩出する彼らは、五十人弱の一族で形成されていた。入り込んだ二十人ほどの者たちが、寝静まった隙を狙えば油断し、信用しきった彼らを殺すことは容易いだろう。これら全ては宏壱君がリンディ君に語った推理だ。あくまで憶測だと彼は言ったらしいがあながち外れでもないと私もリンディ君もそう思っている。

 

 リンディ君に再度リーゼ達、二人をよろしく言った後私は輸送艦へ戻り次物資搬入地点に向かうため、アースラを離れていくのだった。

 

side out




ウェイン・ボルク退場のお知らせ……。

彼はなかなかにゲスだったようですね。彼の使った催眠が何故こんなに簡単に解けたのかは次回説明することになると思います。

このエルピオン大量虐殺編も大詰めかな?そんなに長くやってもって感じですよね。知ってました?まだ原作のげの字も始まってないんですぜ?まだやりたいことも幾つかあるし、原作開始はもう少し………結構………かなり先になると思います。気ままに読んでいただければ幸いです。

ではでは、また次回にて。
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