リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第二十一鬼~猫娘とリザードマン~

side~ロッテ~

 

 トカゲのような顔、筋肉で盛り上がった肩と腕、それを覆う硬質そうな鱗、三本の指に長く伸びた爪は鋭い。身長は2m程でお尻からは尻尾が見えている。その上半身を支える足は丸太のように太い、なんて言葉がしっくり来るほどのもの。そんな生き物が生体ポットの中に入れられていた。

 

 

「素晴らしいだろう? とある世界では、ドラゴンが力と恐怖の象徴であるとされている世界があるらしい」

 

 

 ドラゴンを人型にしたような生物、確か『リザードマン』……そんな名前だったはず。父様や宏壱の出身世界、地球の空想上の生物で物語によく登場する魔物。ポーク・サーロンは嬉しそうに、我が子を自慢するようにそう語る。

 

 

「ドラゴンのような力、ドラゴンのような生命力、ドラゴンのような鋼の剣を跳ね返すほどの固い鱗、そして肉眼では捉えきれないほどの速度を出す足。何れをとっても諸君では敵うまい!」

 

 

 ポーク・サーロンは大きく腕を開き叫ぶ。それに反応したのか、リザードマンは閉じていた瞼を開けポーク・サーロンを見る。

 

 

「……さて、諸君には彼の相手をしてもらおうか。まだ、試作段階だが、諸君を相手にすることなど造作もないだろう」

 

 

 そうポーク・サーロンが言うと、リザードマンが内側から生体ポットのガラス面に手を触れて押す――カシャァァァン!!――ガラス片が飛び散りポットの中に入っていた緑色の液体が辺りを濡らす。

 

 

「っ!? この!」

 

 

 我に返り魔力弾を放つ!

 

 真っ直ぐ飛んでいく魔力弾は狙い違わずリザードマンの顔面へ吸い込まれ……。

 

 

〔グラアアアアア!!〕

 

 

 リザードマンの咆哮で逸れて後ろの地面に着弾した。

 

 

「っ!? 逸れた!? 何で!?」

 

「くっくっくっく、無駄だ。知っているだろう? 我々の駒に魔法ダメージが通らないということを。試作とはいえ、私の持てる技術の随意を注ぎ込んだのだ。魔法を逸らすことなど容易い」

 

 

 ポーク・サーロンが言ったようにここに来るまでにあたしたちも幾度か戦闘をしたけど、幸いあたしはクロスレンジを得意にしているし、他の武装隊の面々のサポートもあってなんとか負傷者を出さずにここまで来れた。

 

 

「さてお喋りはもういいだろう?……L-001管理局の犬共を殺せっ!」

 

 

 L-001……おそらくあのリザードマンの識別ナンバーだろう。リザードマンはポーク・サーロンの命令を聞かずその場を動く気配がない。

 

 

「……何故動かん。私の声が聞こえていないのか?……L-001もう一度言う、管理局の犬共を殺せ」

 

 

 ポーク・サーロンの再度の命令にもリザードマンは反応を見せることはない。

 

 

「何故だ!? 何故私の命令を聞かん!? L-001!今すぐに管理局の犬共を――ガブシュッ!!――ひぎぃぃぃっ!? 腕!? わ、私の腕があああああ!!!?」

 

「なっ!?」

 

〔――ムシャムシャ、バリバリ――〕

 

 

 あたし達は言葉を失った。……リザードマンがポーク・サーロンの二の腕に噛みつき、そのまま噛みちぎり食べ始めたのだ。

 

 

「ひぎぃぃぃっ!!? ひぃぃっ!! い、いだいぃぃ!!」

 

 

 ポーク・サーロンは失った腕を抱え込みその場で踞る。あたし達は突然の出来事で動けずにいた。

 

 

[――プツッ――あー、あー、テス、テス、マイクテストー]

 

 

 この空間内にマイクのスイッチが入ったような音が響き、何処からか聞き覚えのない男の声が聞こえ出す。

 

 

「っ!? 何処から聞こえてるの……?」

 

「わ、分かりません!」

 

「ご、ごの゛ごえ゛ば」

 

 

 響く声にポーク・サーロンが反応を見せた。

 

 

[ぎはははは! 何て様だよポーク!]

 

「び、緋川(びがば)(ひかわ)、じょ、(じょう゛)(しょう)!! ご、ごれ゛ばどう゛い゛う゛ごどだ」

 

 

 びがば?この声の主かな?なんとなく名前の響きが宏壱と似てるから地球の日本出身だと思うけど……。

 

 

[どんな気分だよ? テメェで作った駒に腕喰い千切られるってのはよぉ、ええ?]

 

「な゛に゛ぼ、な゛に゛ぼじだぁ゛ぁ゛!!」

 

 

 何処からともなく聞こえる声の主がポーク・サーロンを嘲笑いながら聞けば、ポーク・サーロンは目を血走らせながら激昂したように声を発する。

 

 

[ちょっとばかし、ソイツに細工させてもらったのさ。俺の命令だけを聞くようにってな! ひゃはははは!!]

 

「ぞん゛な゛ごどがっ!!?」

 

[テメェには色々世話んなったぜ? モブ共を改造して魔力ダメージ通り難くしたり、痛覚遮断したりよぉ。そこには感謝してんだよ、いやマジで。でもよ、ソイツら使って俺様を殺そうとしたよなぁ? 甘ぇぜ、俺様が見破れないとでも思ったのかよ、間抜けぇっ! つーわけで、テメェは死んどきな!L-001、その雑種を殺せっ!!]

 

「よぜっ! L-001! ばだじのめいれいがっ!!」

 

〔グルルルルル――ガブシュッ!!ゴリュゴリュ!メキメキ!――〕

 

 

 ……リザードマンはポーク・サーロンの頭に噛り付きそのまま噛み砕き……咀嚼した。

 

 

「おえっ! おええぇぇぇ!!」

 

「む、酷いっ!」

 

「ひぃっ!」

 

 

 その光景を見たあたし達は吐く者、余りにもな事に目を背ける者、その二つの反応に分かれた。

 

 

[L-001、新しい命令だ! 男は殺せ!! 女は……俺様の性欲処理係だっ!! ひゃははははははは!!!!――プツッ――]

 

 

 通信の切れる音がした後、男の声は聞こえなくなった。

 

 

〔グルルルルル〕

 

「ロ、ロッテさん。ど、どうするんですか?」

 

「皆っ! 全速力で逃げて!! ここはあたしが時間を稼ぐからっ!!」

 

「でもっ!」

 

「いいからっ! ここにいられる方が邪魔!!」

 

「~~~っ! 必ず応援を呼んできます! それまで持ち堪えてください!!」

 

 

 あたしの怒声を聞いて納得がいかないようだったけど、一人が一言残して走り出すと、後に続くように他の武装隊の面々もこの空間から出ようと駆け出す。

 

 

〔グルアッ!〕

 

「やっ!」

 

 

 最後尾を走っていた青年に飛び掛かるリザードマンを飛び蹴りで蹴飛ばし距離を空けさせ、即座にリング バインドで拘束し、更にその上からチェーン バインドで簀巻きにする。……でも、それはものの一秒で破壊される。

 

 

〔グルルルルル〕

 

「これは……死んだ、かな?」

 

 

 冷や汗が頬を伝い、背筋が寒くなり、体中の体温が失われていく感覚。ここ最近では感じなかったもの。その名前は『恐怖』。お父様とアリア、三人で乗り越えてきたものが今顔を見せている。もちろん自分の命を諦めるつもりは毛頭ない、足掻いて足掻いてアリアと宏壱が来るまで持ち堪える。

 

 

〔グウァァアアア!!〕

 

 

 高速で接近するリザードマンに向けて魔力弾を五発放つ。が、全て逸れていく。

 

 

「……やっぱりダメ、か。ぐうっ!?」

 

 

 懐まで接近を許してしまい殴り飛ばされる。腕をクロスにしてガードしたけど……凄く痺れる。

 

 

「わっと!」

 

 

 空中で体を捻るとさっきまであたしの体のあったところをリザードマンの尻尾が貫くのが見えた。

 

 

「伸びた!?」

 

 

 リザードマンの位置はあたしを殴り飛ばした場所から動かず、尻尾が伸びていた。……っ!?

 

 

「か、はっ!!」

 

 

 リザードマンは伸ばした尻尾を縮めることなく横凪ぎに振るった。あたしは防ぐこともできず横っ腹に打ちつけられ吹き飛び、真っ白なタイルを破壊して二転三転と転がる。クルクルと回る視界の中で、リザードマンがこの空間の入り口に向かって駆け出すのが見えた。

 

 

「……行かせ、ないっ!」

 

 

 あたしの左掌にミッド式の魔法陣が浮かびチェーンが飛び出す。タイミングを計りリザードマンの足に絡めて引く、一瞬体が浮き上がる。即座に体勢を立て直そうと浮き上がった足をタイルにつけ――る前に右手でチェーンを掴む。

 

 

「だらぁぁああ!!」

 

 

 あたしの回転はまだ止まってない。その回転にヤツを巻き、込む!!

 

 

〔グルアッ!〕

 

 

 チェーンの長さにより生まれた遠心力でリザードマンの体は簡単に浮き上がる。タイミングを計りチェーンを消すと、リザードマンは天井に叩きつけられた。

 

 

「……っと」

 

 

 体勢を立て直し着地する。

 

 

「……っつぅ~!」

 

 

 尻尾で打たれた部分を押さえる。骨は……折れてない。大丈夫まだ戦える。天井を見上げ、四つん這いになり天井に張り付きあたしを睨むリザードマンを見ながら、全身に魔力を浸透させていく。

 

 

「力も、速さも、タフさも向こうが上。だけどアイツはあたしを殺せない」

 

 

 さっき響いた声、その男の命令でヤツはあたしを殺すことを禁じられてる。虫酸が走るけどそこには感謝しないとね。ぐっ、と両拳を握り締め、張り付いていた天井から下りたリザードマンに向けて駆け出す。

 

 

〔グルアアアァァァ!!〕

 

「はぁあっ!!」

 

 

 再び伸ばされた尻尾を跳んで躱し、そのまま飛行魔法で加速をつけ、リザードマンの首に蹴りを叩き込む!

 

 

〔グルルルルルッ〕

 

「ぐ、あっ!」

 

 

 硬い!予想以上にリザードマンの鱗が硬い!足が痺れて……っ!?

 

 

〔ギシャァアア!〕

 

「ごふっ!!」

 

 

 あたしのお腹にリザードマンの拳がめり込む。咄嗟に張った障壁も易々と破られ吹き飛ばされた。

 

 

「がっ!」

 

 

 視界が霞む。かなりの距離を飛ばされたみたいで壁に叩きつけられた。

 

 

「づ、あっ、く」

 

 

 声がでない。良いところに入ったみたい。……体中が痺れてる。

 

 

〔グルルルルル〕

 

 

 唸り声が近付いてくる。あたしの意識を刈りに来たのか、それとも……。

 

 

〔ギヒィ〕

 

 

 壁にへたり込み立ち上がることもできないあたしの前で止まる。

 

 

「ぐっ、く、そ」

 

 

 漸くハッキリと見えてきた視界に映ったのは、腕を高く振り上げその鋭い爪で、あたしを切り裂こうとするリザードマンだった。

 

 

(……命令、どこにいったんだよ。………試作品って言ってたっけ、まだ記憶能力が無かったりするのかも)

 

 

 振り上げられた腕をぼーっと見ながらそんなことを考えていた。

 

 

「「「「「チェーン バインド!!!」」」」」

 

〔グルゥッ!?〕

 

「「ブレイズ キャノン!!」」

 

〔グブアッ!!〕

 

 

 リザードマンは降り下ろそうとした腕を絡め取られ、足を固定され、首と胴をぐるぐる巻きにされ、魔力弾を諸に受けた。

 

 

「ロッテ!」

 

「……アリ、ア?」

 

「ロッテ、……大丈夫?」

 

「はは、うん、なんとか、ね」

 

 

 リザードマンを迂回して駆け付け、後ろに武装隊の青年を引き連れて現れたアリアがあたしに呼び掛ける。それに苦笑で返すと、呆れたような目で見られた。

 

 

「まったく、無茶ばっかりして、宏壱に似てきたんじゃない?」

 

「……それって、誉め言葉?」

 

「そんなわけないでしょ。はぁ、直ぐにここを離れるわよ。手伝って!」

 

「はっ!」

 

 

 軽口を言い合って緊張が解けたように息を吐き、連れてきた青年に声をかけてあたしの両脇を二人で支え、飛行魔法で素早くその場を離れ、チェーン バインドを行使している武装隊の面々の近くへ下りる。

 

 

〔グルアアアアッ!!〕

 

 ギチギチギチ カシャアァァァァン!!!

 

 リザードマンがチェーン バインドを引き千切る。

 

 

「マズイよ、アリア。アレは本当にヤバイ」

 

「……うん、分かってる。姿を見ただけで体の震えが止まらない」

 

 

 そう言ったアリアの手は確かに震えていた。当然だと思う。アイツから感じる威圧感はドラゴンそのものだから。

 

 

「……どう、する?」

 

 

 痛みを堪え、支えてくれていたアリアから離れリザードマンを見据えてアリアに聞く。

 

 

「わたし達じゃ勝てない」

 

「……アリア?」

 

 

 リザードマンが一歩踏み出す。それに会わせてアリアも前に出る。

 

 

「わたしとロッテが連携を組めばなんとかなる。そこに武装隊のサポートがあれば、ね」

 

 

 更に一歩踏み出す。

 

 

「だけど、今のわたし達は腰が引け足が竦んでる」

 

 

 もう一歩近付く。

 

 

「でも」

 

 

 リザードマンの足を動かす間隔が早くなっていく。その時にはアリアは一番リザードマンに近い位置に立っていた。

 

 

「アリア! そこに居たら危ない!」

 

「あの子はそうじゃない」

 

 

 リザードマンが腕を伸ばせば届く距離までアリアに近づいた。目で捉えられても体が動かない。この地下で――ヒュッ――と風があたしの横を通りすぎた。

 

 

「……え?」

 

 ドゴオ!!

 

「わたし達が戦えなくても、宏壱がいるから」

 

 

 アリアの前にいたリザードマンはトラックに撥ねられたように吹き飛んでいく。代わりにそこに立っていたのは、右拳を振り抜いた状態の背の高い男。180cm程の身長に広い肩幅と大きい背中、短く切られた黒髪に服の上からでも分かるほどに引き締まった腕と足。その体を包むのは黒地に所々深紅のラインが引かれたジャケット、同じく黒地にサイドに二本の深紅のラインが入ったスラックスの見慣れたバリアジャケット。そしてその拳を包む深紅のラインが引かれた白と黒の見慣れないグローブ。白は炎を纏い黒は雷を纏い男は周囲に冷気を振り撒く。要所要所であたしの知らないものがあるけど間違いなく変身魔法『グロウ』を使い大人の姿になった宏壱だった。

 

side out




……遅くなってしまいました。色々言葉の言い回しを考えたり、ちょっとリアルの方で時間が取れなかったりと……自分の都合ではありますが。今後の更新ですが、かなり不定期になると思います。一月空く、なんてことは無いと思いますけど……。

さて、そんなことは置いておいてポーク(豚)・サーロン(サーロイン)――ジュルリ――おっとヨダレが。
はい、ちょっとした名前の由来ですね。由来……と言うか、彼の名前を考えてるときに、何故か思い浮かんだんですけどね。それで書いてるうちにパクリと逝かれまして、まぁ、元々そういう目に遭う予定ではありましたけどね……退場が早すぎましたね。

それと、何気に宏壱くんのバリアジャケットが初公開です。自分はファッションセンス無い、と言うよりあまり服とかに興味がないだけなんですけど……普段は作業着で部屋着はジャージの自分には服の描写とか厳しいです。

と、裏事情(服の描写がほとんどない理由)を漏らしつつ、次回お会いましょう。ではでは。

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