第二十四鬼~赤鬼と進級、転入生~
side~宏壱~
目が覚めると事件が終わっていた。いや、何を言ってるのか分からねぇと思うが、自分でも分からねぇ。……順を追って説明しよう。
目を覚ます。
いつか見た天井で、医務室だと分かる。
ロッテが丸椅子に座って寝てた。(多分診ててくれてたんだろう)
リンディさんが部屋に来る。
起きている俺を見て嬉しそうにした瞬間気まずそうな顔になる。
事件が解決した。←今ここ
訳わからん。何や? どう言うこっちゃ。何で俺が寝とる間に事件解決しとんねん!? 事件に関わって俺が解決したるわ!みたいに意気込んでたのに!? 知らん間に知らんとこで解決してるってなんやねーん!! なんやねーん!
「はぁ、はぁ、はぁ、うぐっ!~~っ!」
あまりの急展開に思考が乱れ、頭を抱えてベッドの上をゴロゴロと転がった。まだ癒えていない右肩が痛い……。
「落ち着いたかしら?」
「……すんません。取り乱してしまいましたわ」
「宏壱、口調戻ってないよ」
「んんっ、これで良いか?」
俺がテンパってる間に起きたロッテに言われて口調を戻す。口調、と言われて喉の調子を整えてしまうのはなぜなんだろうか?
「余りはしゃがないでね? 肩の傷も治ってないんだから」
「うっす」
最後にやられた一撃、念のために鉄塊、武装色、魔法障壁、と三つの方法でガードしたもののそれを全部ぶち抜いて攻撃された。ただ意味がなかった訳じゃなくて、それが無かったら俺の右腕は胴体とお去らばしてたそうだ。それを聞いたときは流石に肝が冷えた。
「で、リンディさん、事件が解決したってのはどういうことだ?」
「ええ、実は」
そう言って説明してくれたリンディさんの話を簡単にまとめると。ミッドチルダの下調べに行った緋川翔(今回の事件の首謀者の名前らしい)は非番でブラブラしてたクイントさん、メガーヌさん、紫苑の三人を見つけて自分のものにしようとした。緋川翔の尾行に気づいた三人は裏路地に誘い込み対処しようと考えた。それ自体には成功したが、どこで知ったのか紫苑の真名を呼んだ。で、キレた紫苑に速攻で昏倒させられ、事情を聴くために地上本部へ連行、その際に目を覚まし暴れだす。その時に今回の事件の関係者しか知り得ないことを口走り更なる追及が行われ、首謀者だと発覚、その場で逮捕となった。
アホか。どんだけ間抜けだそいつ。
「上層部で正式に管理局に迎えたい、という話があるのだけど。どうかしら?」
「どう、と言われてもな。俺が決められることじゃないし、あいつ等の意思を聞かないとなんとも言えんしな」
〈そう仰ると思いまして、すでに連絡済みです〉
「流石刃だな。で、あいつ等はなんて?」
〈主の力になれるなら、と〉
「出来れば海に来てほしかったのだけど……」
そう言って苦笑するリンディさんはどうやら知ってたみたいだな。
「それと、山口二等陸尉」
「ん?」
苦笑いを止め真剣な表情を作ったリンディさんが階級込みで俺を呼ぶ。
「あなたに処分を言い渡します」
「ちょっ! リンディ!?」
ロッテが驚いた声を上げるが、当然だな。ハッキングと資料の改竄の話はまだしてないが、それ抜きにしても殺傷設定での魔法行使は、その部隊の最高指揮官の許可がいる。今回の場合、俺は一時的にとは言えリンディさんの指揮下にいる。権限はリンディさんにあるんだ。勝手に解除はできない。
ようは軍規違犯に相等するもので、退局も有り得ない話じゃない。
「半年間の謹慎処分とします」
「は?」
謹慎処分?なんだ?聞き間違い、か?
「いや、軽くないかそれ。あ、そうだ。俺、ウェイン・ボルクの――「資料の改竄、でしょ?」――……何で知ってんだ……」
「刃さんから聞きました。それに、あなたの上司や同僚の皆さんからも言われています。休ませてやってほしい、と」
ゼストさん達が……。確かに有休とかはとってないけど、一応学校のある平日は緊急性がない限り、出勤は4時を回ってからってことになってる。充分休暇は取れてるはず、なんだけどな。
「そ・れ・に」
徐ろにリンディさんが俺に顔を近付け――ツンツン――ひぐうぅっ!?
「こ、宏壱っ!」
〈〈主!/御主君!〉〉
「くうぅ~~~~っ!!? な、なにを!?」
「痛いでしょ?」
負傷していない左腕を突つかれた。その瞬間体中に激痛が走る。心配して声を上げるロッテ達に言葉を返す余裕もなく突ついたリンディさんを見やれば、少し申し訳なさそうにしていて、俺にも見えるようにモニターを展開していた。
「こ、これは?」
「あなたの体を診断した結果資料です」
「細胞の焼死? それと成長と分裂を繰り返す再生?」
そこに書かれた文字を読む。どういうことだ? 俺の細胞が焼死していて、成長と分裂を繰り返して再生を促している?
〈主、それは殺傷設定で炎神を使った弊害です〉
〈我らも想定できませんでした。まさか、炎神が御主君さえも焼き殺そうとするとは〉
「それだけ強力な魔法、と言うことです。殺傷設定での使用自体が危険なもの。もう使わないで、ね?」
「あくまで殺傷設定ではって話だから、非殺傷設定なら良いんだよ。でも当分は鍛練も模擬戦も実戦もなし。今、無理に体を動かすと細胞の成長を妨げることになるから、治りも遅くなるし後遺症が残る可能性だってあるんだ」
刃、無限、リンディさん、ロッテと順に言われて、そういえば体が妙に軋むなぁ、と他人事のように思う。ただ、これが命を奪った代償と言うにはあまりにも安すぎるな。
「分かりました。その処分、慎んで受けさせてもらいますよ」
そう言ったのは既に三ヶ月前。今は桜も満開で見頃、春野菜も多く出回り筍が美味い季節だ。
今日、俺の通う私立聖祥大附属小学校も入学式を終え、自分達に割り当てられたクラスに入り担任になる教師の話を聞いている。
「あ、えっと」
「あの子、可愛い~」
「彼氏いんのかな?」
「お前声掛けろよ!」
現クラスメイト達がひそひそと話している。どうやらこのクラスに転入生が来たらしい。それを右から左に聞き流しながら更なる回想に耽る。
俺は後で知った話だが、実はあの施設の地下には実験台にされた人達がいたらしい。ご丁寧に名前、年齢、住所、家族構成と彼らのプロフィールがデータとして残っていたらしい。ポーク・サーロン(事件の関係者で『黄金の騎士団』の科学者らしい)の趣味で、実験体は成功していようが失敗していようが綺麗なまま保存する。プロフィール込みで、だ。胸糞悪い話だよ。ほんと。
「た、高町咲、です。海鳴市に引っ越して来たばかりで不慣れな面もあると思いますが、よろしくお願いします」
パチパチパチ
特に聞いていなかったが、形だけの拍手をする。
当然、実験台にされた人達はみんな息を引き取っていて生存者はゼロだった。被害者遺族には事情説明と少なくない慰謝料を管理局が出すことになっていて、遺体の送還も既に行ったらしい。葬儀も各々の世界で仕来たりやら伝統やらがあって管理局が全面的に執り行うことはできないが、半分の出資をするらしい。
「それじゃあ、質問とかは放課後にやってね。さて、皆初めての子もいるだろうから自己紹介しましょうか。まずは相川さんから」
「はい!相川です。趣味は――」
クラスメイトの自己紹介が始まった。
ウェイン・ボルクの件は早々に片が付いた。裁判自体が執り行われず終身刑で決まり、無人世界の何処かに流された。詳しい場所は知らない。そもそもウェイン・ボルクは殉職したことになっている。幸いヤツは天涯孤独で恋人なんかもいなかったらしいしな。
後は、ウェイン・ボルクに協力を強制させられていた将官、佐官だな。彼らは情状酌量の余地あり、ってことで三年間の無休で良しとされた。彼らを逮捕なり何なりしてしまえば、少なくない人数が関わっていたせいで、多くの空きが出てしまう。ただでさえ人手不足の管理局だ、これ以上減らして自ら首を絞めることもない。と言うことでそういう処置がとられた訳だ。
最後は緋川翔だ。今回の事件の首謀者緋川翔、コイツは死刑になった。もうこの世にはいない。管理局で例がない訳でもないが、極刑が下るってのは過去数回あった程度らしい。「――君」一応裁判自体は開かれたが、無意味に次元世界を混乱させた、ということが分かっただけだった。「俺様はオリ主だ」とか「必ずなにかご都合主義が起こる」、「俺様の仲間が必ず助けに来る」等々理解できない言葉を放つのみで裁判官と話が噛み合わないまま閉幕。「山―君!」んで、コントロール能力が弱いとは言っても何も知らない人間と接触すると、操られる可能性が無いこともない。そういった理由から判決が下された訳だ。
「山口宏壱君!!」
「ん?」
「ん? じゃ、ありません!! 先生何回も呼んでるんですよ!? 無視するなんてっ! もっと頼り甲斐のある子だって宮内先生から聞いてたのに」
宮内先生は俺の二年生の時の担任だ。女の先生なんだがかなりドン臭い先生で授業で配るプリントが多い時があったんだが、持てないなら分けて運びゃいいのに、一度に全部運ぼうとして廊下にぶちまけてたのを目撃して、放っとけなくて拾うのを手伝ったのが切っ掛けだった。ちゃんと教室まで運んだぞ? そこからちょいちょい授業で使う資料を運ぶのに呼び出される。
「いや、すみません。少し考え事をしてまして」
「もう、今度はちゃんと聞いてね?」
「うっす」
俺がそう返すと、杉原先生はうんうんと頷いて「生徒を優しく諭す私、カッコいい!」なんて小声で言ってる。涙目で生徒に懇願する先生はカッコいいとは言わない。そう思ったが口にしなかった。この杉原先生も宮内先生と同じ臭いがする。勿論、体臭という意味ではなく、雰囲気という意味で。
「山口宏壱、それなりに身体能力には自信がある」
席を立って軽く自分のことを話し、座る。戸惑いながらも拍手をしてくれる今年度のクラスメイトは、気の良いヤツばかりなんだろう。
「ん?」
その中で俺に妙な視線を送っている少女がいた。俺と目が合うと慌てて視線を逸らしたが、なんだ?
《主、魔力反応です》
《あー、アイツか?》
《御主君、かなりの魔力量です》
《AAAは下らないかと》
刃と無限が言っているのは、俺に妙な視線を送っていた少女。確か高町咲、転入生だっけか?
《如何致しましょうか?》
《どうもしねぇって。ここは管理外世界、管理局の管轄じゃねぇよ。それこそ、次元震を引き起こしかねない事件とか違法魔導師が潜伏してるとかじゃなければ、な》
《《承知しました》》
声を揃えて言うと二人は同時に黙る。仲良いな、ホント。
「それじゃあ、日直、はまだ決まってないから先生が言います。起立、礼、さようなら。明日も元気な顔を見せてね?」
杉原先生の号令に合わせて行動、最後にクラス全体でさようならの合唱だ。
「公園行こーぜ」
「オッケー、何するー?」
「みきちゃん、猫触りに行ってもいい?」
「いいよー」
「あたしも行きたーい」
クラスメイトは皆放課後に何をするのか相談しながら教室を出ていくもの、教室に残り話をしているものに分かれた。俺も特にすることないし帰るか。
学校指定の鞄を持って教室を出る。高町の方に視線をやれば、クラスの少女達に囲まれていた。質問攻めにあっているようだ。……また目が合ったな。見ていたんだから当然なんだろうが……。
「悪意はないみたいだし別に良いけどな」
そう呟いて誰もいない家へと帰る。桃香達は正式に局員になった。俺みたいに特別枠がある訳じゃなくて士官から、だけどな。それでも陸にとっては大きな戦力であることは間違いない。
タッタッタッタッ
「ん?」
下駄箱に向かっていると、俺の横を一人の少女が駆け抜けた。背は低く制服もまだ着ている、と言うより着せられていると表現した方がしっくり来る。ただ、俺が気になったのは特徴的なツインテール。見覚えのあるそれは俺が三ヶ月前に出会った少女のものと酷似したものだった。
「なのは」
「え?」
それなりに距離は離れていたはずだが少女、なのはには聞こえたらしい。
《何故、隠れているんですか?》
届くと思わなかった声が届いて、咄嗟に柱の影に隠れてしまった。
「??」
なのはは首を傾げて、また足を進める。
アイツに会うには後ろめたさがある。一ヶ月後に会えるとか言っておきながら、怪我の治療に専念するために家から出れず会いに行けなかった。喫茶・翠屋に行けばいいんだが……今更、と言う思いがあり行けずにいる。
「はぁ、アホくさ」
帰ってトレーニングしないとな。傷は一ヶ月前に完治した。軽くなら体を動かす許可も得た。それからずっと基礎トレーニングを続けている。なのはのことを頭から追い出し、トレーニングメニューを考えながら靴を履き替えた。
校門を通る際に一組の男女を見つけた。夫婦……だろうか?端々から聞こえる言葉に、なのはやさき、だいきと名前らしき言葉が聞こえた。そのうちの一人と目が合う。
「君」
「あん?」
声を掛けられた。背が高く黒い髪を短く切った穏和そうな男。何かしら武術でもしているのか、纏う気が鋭敏でこちらを射抜くような目。それに僅かながらに血の臭いがする。獣臭さはなく鉄分の濃い臭いだ。目に狂気の色が無いことから快楽殺人鬼って訳でもなさそうだし。んー、仕事関係って考えんのが妥当、か?
「あー、それで、俺になにか?」
向こうも俺を品定めでもするようにじっくり観察していたが、俺の呼び掛けに目の前の男は、はっと我に返った。
「あ、いや、すまない。知り合いに似ている気がしたんだ」
「知り合い?」
「彼は大人だったけどね。何となく君と雰囲気が似ている気がして。呼び止めてすまなかったね」
「いえ」
それだけの会話を交わし、俺はその場を離れる。
「士郎さん、お知り合いですか?」
「いや、僕の勘違いみたいだ」
「おとーさーん! おかーさーん!」
なのはの声が聞こえたが、振り返ることなく俺は家路を急いだ。
side~咲~
「山口宏壱、それなりに身体能力には自信がある」
それだけ言って席に座り直す男の子を見る。山口宏壱君、彼から魔力を感じる。私をこの世界に転生させてくれた人が、もう一人別に転生者がいるって言ってたけど、彼がそうなのかな? 魔力を感じるし、なんだかすごく落ち着いた感じがするし……。
鋭く尖った目、他の男の子より拳一つ分くらい高い背、何よりも自然体の中で垣間見える隙のない所作。只者じゃないのは明らか……だよね。
私の名前は高町咲。
突然だけど私は転生者。この世界に来る前は普通にOLをやっていた。ただ、出勤途中に乗っていたバスが事故に遭った。交差点で信号無視した大型トラックに横からぶつかられ、大きな衝撃を受けて、そこから私の意識は闇に落ちた。
気付けば真っ白な空間に居て、目の前にはふよふよと浮かぶ球体。それから一瞬の発光。あまりにも眩しくて目を開けていられなかった。目を開けたとき私の目に映ったのは、真っ白な空間……じゃなくて青空が広がり風に靡く草花、そして球体の有った場所には綺麗な金髪を風に踊らせながら私に微笑みかける女の人だった。彼女は私にこう言った。
――転生してみませんか?――
と、その声は耳を通さず直接頭の中に語りかけているみたいだった。
意味が分からず聞いてみても要領を得ないものばかりだったけど、要約すれば私はあの場所で死ぬはずじゃなかったってことらしい。それなのにどうして死んだのか、理由はよく分からないし、話しても理解できないと言われた。
――転生するならどんな世界が良いですか?――
って聞かれたから、好きだったアニメの「魔法少女リリカルなのはがいいです!」って答えたの。そしたら。
――色々な世界と混ざり合ってしまっていますが…――
って困った風に言われて、それでも良いかなって思ったから「それでもいいです」って答えたの。
――特典が三つ選べます――
そう言いながら彼女は右手の指を三本立てた。「特典?」意味が分からなくて首を傾げる私に彼女は説明してくれる。私が転生する世界には危険が付きまとう、だから生き残れる力をくれるんだって。
そう言われても、私のアニメとか漫画の知識は乏しいものでこれと言って思い浮かばない。んーー………ナルト、かなぁ?
――ナルトですか?――
うん、ってあれ?私声に出してました?
――いえ、今のあなたは剥き出しの魂ですから、思ったことは筒抜けになるんです。魂に心は宿りますから――
へぇ~、なんだか恥ずかしいね。そういうの。えっと、じゃあナルトでお願いします。
――…………ナルト、と言っても様々な能力があるようですが……――
あ、そっか。えっと、あんまり詳しくないんだよね。
――では、こちらで選定しておきましょうか?――
あ、はい。お願いします。
――それでは後二つを………――
そうして私は三つの特典を貰って、この世界に産まれたの。元々お母さんは私を産んで直ぐに病気で亡くなって、お父さんも二ヶ月前に仕事で死んだ。それで、その話を聞いた同僚の士郎お父さんが私を引き取りに来たの。
お母さんの事は覚えてないし、お父さんも仕事で家にいないことが多くて、年に5回会えれば良い方だった。だからかな? お父さんが死んでもあんまり悲しくなかったのは……。
でも、お葬式の夜はいっぱい泣いた。前世での両親を思い出して、もう会えない恋人を想って泣いた。年に数回しか顔を会わせないお父さんを想って泣いた。会えば頭を撫でてくれた大きくて温かい手、学校の勉強を見てくれたときの優しい顔、全部が好きだった。失って初めて好きだったんだって分かった。
それから士郎お父さんが来て、私を引き取りたいって言ったの。考える時間が欲しいと彼に伝えた。それで一週間時間を貰って、決めた。彼の娘になることを、独りは寂しいから、辛いから、だから……なのはちゃんに同じ思いをして欲しくなくて、私が一緒に居てあげれればって……思ったんだけど。
「咲お姉ちゃん!」
「あ、なのはちゃん」
今日出来たクラスメイトに囲まれて質問攻めされていた私に、最近出来た妹の声が聞こえた。
「高町さんの妹さん?」
「わぁー、可愛い」
「新入生?」
「え、あ、えっと?」
「うん、私の妹のなのはちゃんだよ」
鞄を持って戸惑うなのはちゃんに近寄る。
「なのはちゃんももう終わり?」
「うん! だから咲お姉ちゃんを迎えに来たの! お父さんとお母さんも校門で待ってるって!」
「そっか。じゃあ皆、また明日ね」
「バイバーイ」
「また明日ね~」
さっきまで話していたクラスメイトに別れを告げて、なのはちゃんと手を繋いで下駄箱まで歩いていく。
「なのはちゃんもうお友達は出来た?」
「え~、まだだよ。そんなにすぐ出来ないもん」
「それもそっか」
と、こんな風になんだか元気だ。士郎お父さんが退院したのは三ヶ月前、元気になるにしても早いよね。
「なのは」
「あ、大輝君」
「大輝君、なのはちゃんを待ってたの?」
「はい、咲さん。うちの親も士郎さん達と一緒にいますから」
下駄箱で待っていたのは大宮大輝君。この春に家の隣に引っ越してきたお隣さんで、今日なのはちゃんと一緒にこの私立聖祥大附属小学校に入学した男の子だ。
「なのはちゃんと大輝君は同じクラス?」
「いえ、違います。僕は1組でなのはが」
「3組なの!」
「そっか~。残念だったね」
上履きから運動靴に履き替え、校門まで今日あったことを話ながら三人並んで歩く。真ん中になのはちゃん、右側に私、左側に大輝君という並びだね。
「あ、おとーさーん! おかーさーん!」
なのはちゃんが士郎お父さんと桃子お母さんを見付けて駆け出す。傍には大輝君のご両親が居てこっちに向かって手を振っている。士郎お父さんと桃子お母さんもそうだけど、すごく若い。
「って、あれ?」
士郎お父さん達のところまで行くと、今日同じクラスになった男の子の後ろ姿が見えた。
「咲、どうしたの?」
「あの男の子」
「さっきの男の子?」
私が指した指の先を追った桃子お母さんが首を傾げる。
「さっき?」
「士郎さんが呼び止めていたの」
「何の話だい?」
士郎お父さんの名前が出て、なのはちゃんと話していた士郎お父さんが反応して聞いてくる。
「咲が士郎さんが呼び止めた男の子を気にしているの」
「なんだ~? 咲ちゃんもう気になる男の子が出来たのか~?」
「あらあら、おませさんねー」
「へ? ち、違います!! そういうのじゃなくて! えと、あの! 士郎お父さん違うからね!」
話に聞き耳を立てていたのか、グッドタイミングと言うかバッドタイミングで話に割り込んできた大宮夫妻。士郎お父さんと桃子お母さんの娘になって一ヶ月も経っていない私にも、その、えっと、あ、あああ、あ愛、を注いでくれる人達だ。それは、なのはちゃんは勿論、恭也兄さん、美由希姉さんに与えるものと何ら変わりないもの。そんな士郎お父さんがこんなことを聞いて黙っているはずが……。
「ふむ」
「って、あれ?」
「士郎さん?」
「お父さん、どうしたの?」
翠屋でお手伝い中の美由希姉さんに、好意を持つ美由希姉さんの男子クラスメイトが言い寄って来たときは、スタッフルームに連れて行って『O☆HA☆NA☆SHI』してたんだけど……。家に帰ってからも「美由希にはまだ早い」って言ってたし。
「良いんじゃないかな」
「え?」
「もしも、もしも彼が僕の知る人物だとすれば、僕は咲を応援するよ」
「士郎お父さん………って、だからそんなんじゃないってばー!!」
四月の青空に私の絶叫と皆の笑い声が響き渡った。
side out
日常を考えるのは難しいですね。なかなか思い浮かばないです。
それは置いておいて、相川歩(あゆみ)、何故彼女に名前があるのか?当然この先頻繁に登場する人物だからです。分かる人には分かるんじゃないでしょうか、勿論他の方々も出します。自分の好きな作品の一つですから。
ここで高町咲の特典が一つ明らかになった訳ですが他の二つが重要だから明記しなかった……という訳ではないんです。そこで回想から現在に引き戻さないと、長くなりすぎて戻しどころが見つからなかったんです。
と言うことで残り二つはここに記させていただきます。
一つ、なのはと同等の魔力量。
一つ、高い身体能力(鍛えれば鍛えるほど際限なく強くなる)。
この二つですね。ナルトに関してはまだ模索中です。ご容赦を。ただ瞳術は無しにしようと思います。
ここから原作開始までまだまだ掛かると思いますが長い目で見て(読んで)やってください。ではでは、また次回お会いしましょう。