side~宏壱~
「兄上、デートをしましょう」
愛紗(関羽)……横文字の発音が良くなったな。じゃなくて。
「急にどうした?」
「今日は学校もお休みですし、管理局へは謹慎が解けていませんから行けませんし、軽いトレーニングなら兎も角、激しくなる摸擬戦も出来ません」
「抑えてやれば――「抑えられないでしょう!」――何も怒んなくてもさぁ……」
こほん、と咳払いをして愛紗はバツが悪そうに俺から視線をそらす。
「今日は私も非番ですし、その、二人でゆっくり何処かに行けたらなぁ、と思ったんです」
「何処か、ねぇ」
「はい、商店街を散策するだけでも良いんです。兄上と二人で出掛けたいのです。ダメ、でしょうか?」
何時もはキリッとして凛とした表情が、今は何処か不安そうに揺れていた。
「ま、いいか」
「それではっ!」
「ああ、序でに夕飯の買い出しでもするか」
「はい!あっ、少し兄上にお頼みしたいことが――」
そんな遣り取りをしたのが昼前。今の時刻は2時5分前、俺は大人の姿で海鳴駅前広場、そこにある時計塔の下で愛紗を待っている。
愛紗が愛読している少女漫画のシーンをちょっと再現したいらしい。
愛紗が言ったように今日は休日。新学期始まっての初めての休みだ。愛紗も非番で今日は二人家でのんびりする予定だった。因に今日は翠(馬超)と雛里(龐統)が管理局に出勤している。
「兄う……こ、宏壱さん。待ちました、か?」
「いや、今来たと、こ、ろ……」
後ろから愛紗の声が聞こえ、俺は予め愛紗に用意されていた台詞を言う。語尾が弱くなったのは愛紗の格好の所為だ。
膝裏まで隠れる白のワンピースに水色のリボンで襟首を結び、その上に淡いピンクの薄手のカーディガンを着ている。何よりも目を引くのがその艶やかな髪だ。いつもはサイドテールにしている長い黒髪を下ろし、背中に流している。
水色無地のカッターシャツにジーパン、カッターシャツの下は黒無地のシャツの自分が何となく恥ずかしい。見映えがいいのは、いつも首に掛かっている二つの十字架のネックレスぐらいだ。………当然、刃と無限だけど。
「うわー、あの人キレ~」
「何処かのモデルかな?」
「お嬢様じゃねーの?」
「なんかナンパできない雰囲気だよな」
「声掛けられないって、あれは」
男女問わず注目を浴びる。そのほとんどの視線が愛紗に向けられ、俺に気づいている奴がいるのかどうかも怪しい。
「あの、兄上? どうかしたのですか?」
「あ、いや、髪下ろしたんだ。……って何言ってんだ、俺は」
愛紗の声で我に返るも、
「男連れかよ」
「なーんだ。でも似合わねー」
好き勝手言いやがんな。愛紗は……周りの声聞こえてないな。と言うか、なんかもじもじしてる。
「あ、そうか」
「兄上?」
「その服、似合ってんぞ。すごく綺麗だ。愛紗の髪によく映える」
「~~っ!!?あ、ありがとうございます!」
愛紗は、ぱぁっと満面の笑みを浮かべて頭を下げる。その時に香ったシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐった。
「あー、行くぞ。遅くなる」
「はい!」
愛紗は歩き出す俺の横に並び、極自然に、これが当たり前だと言わんばかりに腕を絡めてくる。その豊満な胸に俺の腕が埋もれる。初めてではないが、何度されてもこの感触は心地いいものだ。柔らかで、それでいて張りがあり腕を押し返そうとする。
「くぁぁああ! アイツ羨ましい!!」
「ケッ、リア充爆発しろ」
外野がうるさいな。まぁ、こんな美人に腕を組まれて、俺にだけ向けてくれる笑顔を端から見てるんだ、妬みもするだろ。そんなことより……。
「それと、名前で呼んでくれるんだろ?」
「あ、そうでした。あに……宏壱、さん」
うっすらと頬を朱に染め、はにかむ愛紗の破壊力は半端じゃなかった。
「……4時か」
「時間が経つのは早いですね」
「楽しい時間ってのは特にな」
「……はい」
照れて俯く愛紗。いや、ホント可愛いな。普段の凛とした印象とのギャップがすごい。
ここまで海鳴商店街を冷やかして回った。ときには服を見たり、アクセサリーを見たり、これがいい、これは微妙、何て二人で言いながら歩くだけ。それだけで時間を忘れ人々が行き交う商店街をゆっくり歩いた。
その最中に最近こっちに引っ越してきたらしい夫婦と出会った。関西の出身らしく、独特なイントネーションで喋る二人だった。地図を見ながら町を散策していて、迷ってしまったらしいところに出会い道案内をした。その際に他愛もない雑談をして自己紹介をした。八神郁人さんと八神美果さん。物腰の柔らかい二人だったな。
「小腹が空きましたね」
「んー、そうだな。あそこに入るか?」
八神夫妻と別れて再び二人で散策して暫くすると、愛紗が唐突にそんなことを切り出した。何かないかと辺りを見渡せば、一軒の喫茶店を見つけた。
「喫茶店、ですか」
「ああ、軽めにケーキでも食うか」
「はい!」
嬉しそうだな。まぁ、家の女性陣は皆甘いもん好きだけどな。
「いらっしゃいませー! 何名様でしょうか?」
店内に入ると元気な声が響く。中学生位だろうか、眼鏡をかけた黒髪の少女が笑顔で迎えてくれた。
「ああ」
「申し訳ありません。今はカウンター席しか空いてなくて」
「それで良い。愛紗、良いよな?」
「はい、宏壱さん」
「では、ご案内します」
そう言って背を向け、歩き出す少女に付いていく。店内を見渡せば確かに空いている席はなさそうだ。
それにしても、女性客が多いな。女性客達の手元にはかなりの割合でシュークリームがあった。いつも紫苑が買ってきてくれるやつと、どっちが旨いんだろうか。
「こちらがメニューになります」
「ありがとう」
「ごゆっくり~」
俺がメニューを受け取り礼を言うと、少女は定型文を言って他の仕事に向かう。
「あれ、何かやってんな」
「はい。剣道……いえ、剣術、でしょうか」
「そこらへんだなぁ」
足運びなんかもそうなんだが、何より軸のブレが少ないのが俺と愛紗の目に止まった。熟練したもの、という訳でもないが才能があるのは確かだな。
「お客様、ご注文は?」
少女の動きを注意深く見ていると、向かい側から声を掛けられた。その声には怒気と若干の殺気が含まれていた。
「っと、そうだった。愛紗、どうする?」
疑問に思いながらも少女から受け取ったメニューを、自分と愛紗の間で広げて訊く。
「そうですね……では、このチョコレートケーキとオレンジジュースを。宏壱さんは?」
「う~ん、シュークリームとアイスコーヒーで」
「かしこまりまし、た」
なんか今変な切れ方したな。と、メニューに落としていた視線を上げ、カウンターの中にいる人物を見る。目の前には何処かで見た男が呆けたように俺の顔を見ている。
「君、は。宏壱君、かい?」
「あ? ああ、そうだけど。あんたと何処かで会ったことあるか?」
「え?……覚えていないのかい?(?でも確か宏壱君は、今は八歳だと言っていたような……これは、どういう?)」
何処で会ったんだっけか。あー、始業式、じゃなくてあれは入学式、か? そうだ、確か校門で呼び止められたんだったな。
《その通りです》
《心を読むな。無限》
ナチュラルに心を読んできた無限に、ピシャリと言い放ち念話を切る。
そういえばなのはの声が聞こえてたな。父親、か?
「……魔法使い」
ピクッ、と愛紗のこめかみが動いた。顔はカウンターの奥に立つ男に向けたまま横目で俺を見る。その目が「どういうことか説明しろ」と語って――《後で話があります》――……念話で言われたな。
「それを知ってるってことは、あんたやっぱり」
「なのはの父、高町士郎だよ」
「山口宏壱だ。あんたが俺を知ってる理由が分かった。あんたが出会った俺は多分、思念体だろ?」
「思念体?」
「んー、説明しても良いんだけどな……腹へった」
その俺の言葉に一瞬キョトンとした高町士郎は、すぐに笑顔を浮かべ「それはすまなかったね」と言って厨房に顔を出し俺と愛紗の注文を告げ、先にアイスコーヒーとオレンジジュースを入れてくれる。
「説明はまた今度聞くとして、そちらは君の彼女かい?」
「ああ、似たようなもんだ」
「?表現がハッキリしないね?」
「あるんだよ、色々とな」
「関 愛紗と申します」
そう言って愛紗は浅く頭を下げる。愛紗だけでなく桃香や鈴々、星達にも名乗るときは姓と真名を名乗ってもらっている。姓・名・字を名乗らせても相手を混乱させるだけだしな。
高町士郎、士郎さんは頭を下げる愛紗を見ている。見惚れているって訳じゃなさそうだな……所作、動作、目のやり場、それらから愛紗の力量を測っている、のか?
「君は」
「はい?」
士郎さんがポツリと漏らした言葉は愛紗の耳にギリギリ届いたようで、先を促すように愛紗は小首を傾げる。
「君は人を――「あーーーっ!!お父さんが女の人に見惚れてるーーっ!!」――え?」
言葉を続けようとした士郎さんを遮り、さっき俺達を案内してくれた少女が叫んだ。
「親子だったんですね」
「みたいだな(ってことは、あの子がなのはの言ってたお姉ちゃんか)っ!?」
そんなことを考えていると、寒気がした。隣を見れば愛紗も同じようで、身を固くして一点を見つめている。何を見ているのかとそこ、士郎さんの奥に視線をやれば……。
(……怖っ!?)
笑顔の女性がいた。笑っているんだが、目が据わっている上に、女性の周囲が黒い靄で霞んで見える。
「も、桃子。こ、これは」
「士郎さん」
「は、はい……」
「少しお話があります」
「…………はい」
声小っさっ!? さっき怒気と殺気を放ってた人物とは思えないぐらい悲壮感に満ちてるよっ!!
女性は俺達に一度会釈して士郎さんに視線だけで合図?を飛ばし先を歩いていく。その後を士郎さんが肩を落として付いていった。
「……あ、まだ来てない」
「……って俺らが注文したもんは!?」
「お待たせしましたー、チョコレートケーキとシュークリームになりまーす」
女性と士郎さんが店の奥に消えて2分弱、愛紗の呟きで我に返り、注文したものがまだ来てないことを思い出した。とほぼ同時に横合いから手が伸びてきて、俺と愛紗の前に皿を置いた。
「……店は良いのか?」
「あはは、お客さんも落ち着いてきましたし、今なら大丈夫ですよ」
苦笑して言う少女の言葉通り、あれだけいた店内の客はいつの間にかまばらに残っているだけだった。
「……いつの間に」
「気づきませんでした」
「お父さんとなにか大事な話をしていたみたいですから」
「まぁ、そんなたいしたものでもなかったんだけどな」
「それよりも、早く食べてください。そのシュークリーム、うちのおすすめなんです!」
どうぞどうぞと急かす少女にひとつ頷いて、愛紗はフォークでチョコレートケーキを切り、俺は拳大のシュークリームを手に取り口に運ぶ。
「「……美味い/……美味しい」」
「でしょ!お母さんの得意料理で――」
語りだした少女とそれに困った顔で取り合えず相槌を打つ愛紗を置いておいて、今食べたシュークリームの事を考える。
外はカリッと中はふわふわで、しっとりとして濃厚なカスタードクリームとマッチしている。そう言えば甘く感じるかもしれないが、胸焼けを起こすことなく幾らでも食べられる程度に抑えられていて、甘い物が苦手な人でも充分に満足させれるものだ。ただ、気になるのはそれじゃなくて、紫苑が買ってきてくれるやつと同じ味がするってことだ。ほのかに香る甘いハチミツの匂いが全く一緒なんだよな。……訊いてみるか。
「なぁ――「それに紫苑さんがすごく美味しいって誉めてくれたんです! あ! 紫苑さんは
「そのようですね」
聞くまでもなく客の情報を喋りまくる眼鏡少女。紫苑はかなり懐かれているらしい。
「「ただいまー!」」
「……美由希、何をしている」
幼い声が二つ店内に響き、続いて低い青年の声が聞こえた。声の発信源を見やれば、一人の青年と二人の少女、幼い少年がいた。少女には見覚えがある。高町なのは、この町で出来た俺の友達、そして同じクラスの高町咲。引っ越してきたって話らしいが……何か事情でもあるんだろうな。
「あ、恭ちゃんお帰り~。どうだった?」
「ああ、間に合った」
「うん! こんなにいっぱい買えたの!」
そう言ってなのはが両手に持つビニール袋を掲げる。うっすらと透けて見えるビニール袋の中には特売の文字と肉の色、大量に肉を買ったらしい。四人全員が両手にビニール袋を持っている。その店の肉買い占めたのか?ってくらいに。
「咲? 大輝くん?」
「……あ、な、何でもないよ! えっとお客さん?」
「うん、だってまだ閉める時間じゃないし」
「そっか……そうだよね。何言ってるんだろ、
私……」
高町と大輝と呼ばれた少年が俺と愛紗に視線を向けていた。正確には高町は俺に、大輝少年は愛紗に、だけどな。妙な視線だ。驚いてる、のか?
「大輝くん? どうしたの?」
「いや、何でもないよ。なのは」
なのはの声で我に返った大輝少年は、一度愛紗に視線をやり一瞬俺を見て興味が失せたように視線を逸らす。
「……あの
「抑えろ。ガキにマジになるなよ」
愛紗が怒りの視線を向ける。
大輝少年から視線が来た瞬間、俺に向けて放たれた殺気、児戯にも等しいそれを浴びたところでどうということはない。それでも気になるのはなのはと大輝少年以外の反応だ。
眼鏡少女に恭ちゃんと呼ばれた青年は、目を細めて静かに重心を前にやり臨戦態勢。
恭ちゃん青年に美由希と呼ばれた眼鏡少女と高町は、身を固くしていて緊張しているのが分かる。
なのはは何がなんだか分からず視線を行ったり来たりと忙しなく動かし、元凶の大輝少年は小首を傾げている。状況が分かっていない? 鈍感なのか、本人に見合った力じゃないのか、どっちなんだろうな?
「あら? 恭也達も帰っていたの?」
奥から士郎さんを連れていった女性、高町母が出てきて恭ちゃん青年は臨戦態勢を解く。それに合わせて愛紗も怒気を納める。
「あ! お母さん! お父さん!」
「っと、お帰り、なのは」
「ただいま!」
高町母に続いて奥から出てきた士郎さんに、なのはが駆け寄り飛び付いた。士郎さんはそれを優しく受け止め、なのはの頭をそっと撫でる。
「ふぅ~、おかーさんありがと~」
緊張が溶けて気が抜けたのか、眼鏡少女は近くの椅子に座り込んで机にぐでーっと体を投げ出す。高町もそこまではいかないが、息を荒くして呼吸している。
「???」
高町母はなんの礼か分かってないな。まぁ、それも当然だろうが……にしても、だ。若すぎないか? 恭ちゃん青年はどう見ても高校生くらいだ。17、8ってとこだろう。士郎さんと高町母、外見年齢は凡そ20代前半、見る人によれば10代後半でも通るかもしれん。これで三児の母、父って誰が信じるんだよ。
「恭也、いっぱい買ったね」
「ああ、大輝がよく食べるからな」
「すいません士郎さん」
そう言って頭を下げる大輝少年に、「構わないよ」と笑いかけた士郎さんは、体を俺達に向け「バーベキューをするんだけど、君達も一緒にどうかな?」と誘ってきた。
「あー、いや俺達は――トゥルトゥットゥットゥルットゥ~♪トゥルトゥットゥットゥルットゥ~♪トゥルトゥ~♪――っと悪い、電話だ」
右から左へ受け流すような音楽が店内に響く。発信源は俺のジーパンの腰ポケットからだ。取り出した携帯の通話ボタンを押し出る。
「もしもし」
[あ、出た]
「いや、そりゃ出るだろ」
「なに言ってんだお前」とこれ見よがしに、通話先の相手にも聞こえるように溜め息をつく。
[仕方ないだろ! まだ慣れてないんだから!]
「翠、兄上の耳元でがなり立てるな」
底冷えするような声が傍から聞こえた。さっきの大輝少年の所為で、かなり気が立っているらしい。宏壱さんから兄上に戻ってるし。
[あ、兄貴……愛紗になんかしたのか?]
その愛紗の声は電話の相手、翠にも届いたようで若干震えた声で聞いてくる。愛紗、結構恐がられてるからな。説教長すぎて。
「いんや、俺じゃねぇよ。ただ、今は刺激すんな。ちょっとキレかけてるから」
[お、おう]
「別に怒ってなどはいませんが……」と拗ねる愛紗の頭を電話を持っていない方の手で優しく撫で落ち着かせ――「なぁっ!? あ、あ、あああああああに! あに!」――……逆効果だったな。この際行くとこまで行こう、と決意して慌てる愛紗の艶やかな黒髪を撫で続ける。めっちゃ顔赤いけど撫でる。払い除けられないし、逃げられないし。
周囲の連中は、微笑ましげにこっちを見てる。妙に突っかかってくる視線がひとつあるけどな。俺を蔑んでるような、嫌悪するような目だ。気に食わない……が、ここで愛紗を撫でるのを止めればそれに気付き『青龍偃月刀』が牙を剥くんだろうな。
「んで、どうした?」
[あー、ちょっとこっちで立て込んでてさ]
「立て込んでる? 応援要請か? お前と雛里が居るのに?」
[いや、今日は帰れないって報告]
「なるほど、了解。なら晩飯はいらないんだな?」
[おう。え?……兄貴、雛里が代わりたいってさ]
そう言って翠は雛里と交代する。
[か、代わりましゅた!]
「落ち着け、雛里。緊張しすぎだ」
[は、はいでしゅ! あわわ! また、噛みまひゅっ!?~~~~っ!!]
盛大な噛み方をしたようで、耳に当てた受話口から、悶絶する声にならない声が聞こえた。
「大丈夫か?」
[ら、らいひょうふれふ]
「……無理はするなよ?」
[はひ]
暫く雛里が噛んだ痛みが引くのを待つ。1分後痛みが引いたのか、雛里は今度こそ流暢に喋り出す。
[その、ちょっとした報告です]
「報告?」
[はい。今日ゼストさん達の部隊が、とある違法研究所を襲撃しました。不躾な質問ですが……お兄様は戦闘機人をご存知ですか?]
「いや、知らないな」
[戦闘機人は人体に機械を埋め込むことで、通常の人間の能力を飛躍的に上昇させた人造人間なんです。ただ、機械を埋め込むのにも適性がいるんです。その適性がないと被験体に拒絶反応が起きて、最悪死んでしまうそうです]
「それはまた、何で分かったんだろうな?」
[一定の成果が出るまでに少なくない犠牲者がいたようなんです……]
雛里の声は沈痛で悔いのあるものだった。嫌なものを見たのかもな。
どうしようもないと分かっていても、割り切れない思いがある。それだけ彼女が優しく、強い……その証明になる。スポーツなら敗けを引きずって良いことはない。そこは割り切って敗戦を忘れて次に打ち込むのが利口だろうが……命のやり取りをするのに、救えなかった命があるのに割り切る? それはただの忘却にすぎない。受け止め呑み込み己が糧とする。それが強さだ。彼女はその強さを持っている。何せうちの立派な軍師様の一人だからな。そんじょそこらの参謀気取りとは格が違う。
「それで? さっきの話とどう繋がるんだ?」
違法研究所の事をぼかして訊く。士郎さん達がいるから、違法研究所がどうの、人造人間がどうのと言い広める訳にはいかないからな。まぁ、大凡の見当はつくが、一応な。無いとは思うが、ここでつまらない勘違い起こして、実は別の話でした。とか笑い話にもなんねぇし。
[はい、ゼスト隊が検挙した違法研究所が、その戦闘機人生産プラントだったんです。実は、まだまだプラントが残っていることが分かりまして、当分のゼスト隊の任務はプラントの検挙になるようです。それで私達にも応援要請が掛かってるんです]
「なるほど……つまり数以上に別のなにかがあるんだな?」
[はい]
「……分かった。話は明日、お前らが帰ってきてからしよう」
[はい、です]
「んじゃ、無理はすんなよ」
[はい!]
Piっと通話終了のボタンを押し携帯を閉じてポケットに仕舞う。
「それで、翠は何と?」
「今日は帰れないんだと」
「そうですか……では、バーベキューにお呼ばれしては?」
「そうだな………」
愛紗と相談の結果、俺達は高町家、大宮家が海鳴市郊外にある山で行うバーベキューに参加することに決めた。
それを伝えたところ、高町夫妻と眼鏡少女、なのはは歓迎、恭ちゃん青年は訝しげ、高町は戸惑い、大輝少年は胡散臭げに、と様々な反応を見せた。
バーベキューグッズは既に現地に持っていってるようで、運ぶ物は食材と飲料水だけらしく俺は飲料水の入ったクーラーボックスを、愛紗はリュックに詰められた野菜を運ぶことになった。
戦闘機人の解釈は自分としてはこんな感じなんですがどうでしょう?もう少し深く、とも思ったんですけどそこで長く尺を取っても、と言うことでそれはまたの機会にと持ち越しました。
本当は翠屋に行かす予定はなくて、もっと別の人物との回顧が有ったはずなんですけど……いつの間にかバーベキューをすることに、何でこうなったん?
ま、まぁ、ちょっと書いてて、あれ?それて来てる?ま、ええか!何て思ってたんですけどね。
まだまだ原作に突入する気配はありませんね、最近五十話?無理です。と開き直っている自分がいます。
さて、ではまた次回にてお会いしましょう!