リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第四十九鬼~赤鬼と訪問者~

side~宏壱~

 

 大輝との話し合いから一週間、ジメッとした梅雨の季節の到来だ。

 あの後、大輝は放課後になると遅くまで家で鍛練をしていく。朝は士郎と恭也、美由希、咲と一緒に汗を流し、夕方は俺の家で汗を流す。

 サイヤ人の体とやらがそうさせているのか、この一週間でめきめきと実力は付けていた。実力、と言うには語弊があるか。タフになっている。そう言った方がしっくり来る。

 精神、肉体共に既に並みの人間じゃない。どれほど打っても立ち上がるその姿は脅威と言って良い。

 まぁ、それでも俺達がタフなだけのガキに負けるなんざ有り得ねぇ話だけどな。

 

 

「そうだろ? 大輝」

 

「……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

 我が家の道場の壁に寄りかかり息を荒らげる大輝を見据える。

 

 

「ぐぅっ……まだ……まだぁあっ!」

 

 

 力を振り絞って立ち上がった大輝は俺に向かって肉薄する。

 体力の底を一切感じさせない走りだ。まるで肉体が衰えることを知らないかのように足を動かす。

 

 

「――ぁぁあああっ!」

 

 

 咆哮と共に振り上げられた右拳は、先程までと変わることのない強さを感じさせる。

 

 

「遅いぞ」

 

 

 通常なら脅威になり得るものだが、その速度でも俺には非常に緩やかに見えている。

 

 

「ふっ、しっ……!」

 

 

 右足で俺に迫った拳を弾き、回転して左後ろ蹴りを放つ。

 

 

「ぐううぅぅっ!!」

 

 

 もろに腹部に蹴りを受けた大輝は吹き飛び、道場の壁に強かに背中を打ち付けられる。

 

 

「ごほっ、ごほっ」

 

 

 大輝の口から吐き出された血が床を濡らす。

 やり過ぎ、そう言われればそうだろう。だが、大輝を鍛えるには一番の方法はこれなのだ。

 徹底的に痛め付けて回復。また、徹底的に痛め付けて回復。それを何度も何度も繰り返す。

 この方法を提案してきたのは大輝の方からだった。一応止めはしたが、聞いてはくれなかった。「それが今の僕が強くなる近道なんです!」って言われてな。

 

 

「はっ……あ……!」

 

 

 少し経緯を思い出していると、大輝は両手を床について肩を張っていた。

 眼光は鋭く俺を睨み付ける。ともすれば、それは殺気を孕んでいた。

 

 

「がぁあっ!」

 

 

 まさに獣。そう呼ぶに相応しい四足走行だ。上手く手を使い駆ける姿は黒い猛獣、その黒髪と合間って黒豹に見えないこともない。

 

 

「かぁっ……!」

 

 

 気合いと共に跳び上がった大輝は、超人的な跳躍力で3mの高さがある道場の天井に足をつけた。

 

 

「はぁっ!」

 

 

 天井を踏み砕く勢いで蹴り、鉤爪のように指を曲げた右手を伸ばして下に居る俺に迫る。

 

 

「狙いが甘いぞ」

 

 

 俺は数歩横にずれることで躱す。

 

 

「やあっ!」

 

 

 大輝は足を床につけずに倒立した状態で腕を捻った。それと同時に足は床と水平に伸ばされる。

 必然的に体は腕の捻りを加えられ回転、そうなると当然足も体に引っ張られて回る。

 

 

「っと」

 

 

 俺の側頭部を狙って回ってきた足を左手首で受け止めて……。

 

 

「ふんっ!」

 

 

 左足を曲げて、太股で下から掬い上げるように大輝の背中を持ち上げる。

 

 

「わっ! わわっ!」

 

 

 背中から浮き上がった大輝は、急に手が床から離れて慌てている。しかし、戦闘中に冷静さを欠くなんざ命取り以外の何物でもねぇ。ってことで。

 背中側から持ち上がったことで腰が曲がり顔は俺の方を向いている。それが重力に引かれて落ちる前に……。

 

 

「うらぁっ!!」

 

 

 打つ!

 

 

「――っ!?」

 

 

 空気を切り裂きながら迫る俺の右拳を大輝はその目で捉える事に成功した……。

 

 

「がっ!」

 

 

 ……まぁ、成功しただけだが。防御しようとした手は間に合わず、俺の拳をもろに顔面で受け止めた大輝は、鼻血を散らしながら壁際まで吹き飛んでいった。

 

 

「……うっ……あ…………」

 

 

 完全に意識が飛んだらしい、ピクリとも動かなくなった大輝。そんな彼にこの一週間で、パートナーとして板に付き始めたエストが駆け寄り介抱を始めた。エストは俺と大輝の模擬戦を壁際でちょこんと座って見ていたのだ。

 初めてエストを見たときは、少し二人の間に壁があるように見えたが、今はその壁も薄れている。なにか話し合ったのかもな。聞くのも野暮な話だ。

 

 

「エスト、大輝が目を覚ましたらシャワーを浴びてこい。そう伝えてくれ」

 

「はい」

 

 

 自分の主人をここまで伸されて特に怒りらしい感情を見せないのは、薄情なのか、ここまでやる意味が理解できているのか……。

 彼女と対面して日の浅い俺にはその無表情から読み取ることはできなかった。

 

 

 

 

 

「じゃあ気を付けて帰れよ」

 

 

 屋外はシトシトと雨が降っている。既に日は落ち切れ掛けの街灯がチカチカと頼り無く瞬いていた。

 そんな中、俺はさっき目を覚ましてシャワーを浴び終えた大輝を、傘をさして我が家の門前まで見送りに出ていた。

 

 

「ありがとうございました」

 

 

 エストと相合い傘をした大輝が一度エストに傘を預け、腰を曲げて深く頭を下げる。

 

 

「気にするな。死合たいならいつでも相手になるぞ」

 

「…………今、物騒なことを言いませんでしたか?」

 

「……? 気のせいじゃないか?」

 

 

 少し血の気の引いた顔で可笑しな事を言う大輝に首を傾げる。血を流しすぎたか?

 

 

「そ、それじゃあ。……帰ろう、エスト」

 

「はい、ダイキ」

 

 

 エストに預けた傘を受け取り、大輝は俺に背中を向けて歩き出す。エストと大輝、二人で歩幅を合わせて歩く姿は微笑ましいものだ。

 二人の姿が雨のカーテンで見えなくなった。

 

 

「こう雨が降ると、この季節でも寒くなるな」

 

 

 大輝達を見送ってここに居る意味がなくなった俺は、踵を返して玄関まで続く石畳を歩く。

 

 

「そうは思わないか? 正滋」

 

 

 玄関の前で止まり、傘を畳みながら突如背後に出現した二つの気配の内一つに声を掛ける。

 

 

「……あ、ああ、そうだな」

 

 

 振り返れば、戸惑いの表情を見せる正滋、それと驚いた表情で俺を見下ろす金髪の男が居た。

 

 

「今日来るとは聞いていなかったが?」

 

「それは、すまない。このお方は多忙で都合の合う日がなくてな。今回もスケジュールの合間を縫って来ていただいたんだ」

 

 

 金髪の男に平伏して語る正滋の声が若干震えている。それほど位の高い人間ということか。

 端整な顔立ち、輝く金髪、何より正滋が傘をさしているのに対して、金髪の男は傘をささず雨ざらしになっているにも拘わらず濡れていない(・・・・・・)

 まるで雨が男を避けているように見える。

 

 

「あんたが正滋の言ってた上司か?」

 

「はい、この度は――「まぁ、待て。長くなるんなら中に入れよ。さっきも言った通り、今日は少し冷える」――……では、お邪魔させていただきます」

 

 

 男の言葉を遮って中に促す。男に言葉を遮られた事を大して気にしたそぶりはない。

 

 

「お、おい! 宏壱! この方は……!」

 

「誰だろうが関係ねぇよ。人だろうが、そうじゃなかろうが、な」

 

「ほぅ……」

 

 

 慌てる正滋を躱し金髪の男に視線をやる。明らかに人じゃない。雨が避ける……何て不可思議なこともそうだが、気配が人を逸脱しすぎている。

 神聖さ、潔癖さ、気高さ、気品、何者にも汚されぬ者が纏う白さを感じる。話に聞く天使……そんな存在に見える。

 

 

「ほら、入れよ」

 

 

 この男がなんであれ、話してみないことには何も分からない。そう判断した俺は、取り敢えず家の中に促すことにした。

 

 

「では、お邪魔します」

 

 

 正滋と男を居間に上げた俺は、キッチンに行き人数分のコップと茶を用意して盆に乗せて居間に運ぶ。

 

 

「はいよ。……んで? 俺に何の用だ?」

 

 

 二人の前に緑茶の入ったコップを置き、向かい側に座る。

 

 

「スー……はい、まずはお礼をさせてください」

 

 

 静かに茶を口に含んで飲み下した男は、その整った顔に笑顔を張り付ける。

 

 

「はぐれ神父マキア・セルバンの処罰はこちらも手を焼いていました。我々のやり口は彼も把握していましたから、裏をかかれる形で包囲を幾度となくすり抜けられていたのです」

 

「ふーん。……で、テメェらの失態でこっちが苦労したって訳かよ?」

 

 

 男は俺の言葉を受けてもその表情を崩すことはない。正滋は口をパクパクさせて少し慌てているが……。

 

 

「そう言われても仕方のないことだと思います。我々の対処が愚鈍だった為に失われた命も多い、私が頭を下げてどうにかなる話でもありません」

 

 

 張り付けた笑顔が一瞬崩れ、苦虫を噛み潰したようなものに変わるもほんのコンマ数秒の間だけ、瞬きする間には既に笑顔に戻っていた。

 感情が欠落している……そういう訳でもなさそうだ。

 

 

「当然だ。お前の頭がどれだけ高かろうが、一般人には関係ねぇんだよ」

 

「はい、それは心得ています。ですが、諸々を説明してご理解いただく、というのもまた……」

 

 

 そうなんだよなぁ。説明して一般人を巻き込むわけにはいかないし、そもそも誰がそんな与太話を信じるかって話なんだよ。

 

 

「分かってるよ。何も知らねぇやつらは泣き寝入りする他ねぇってことはな。でもさ……」

 

 

 俺は目を細めて濃密な殺気と覇気を目の前にいる人ならざる者に叩き付ける。

 男の顔から笑顔が消えて、ゴクっと生唾を飲み込む音が聞こえ、一筋の汗が額から流れ落ちるのが見えた。

 

 

「……呪うぞ」

 

「――……っ!?」

 

 

 言葉を叩き付ける。それと同時に、殺気と覇気の密度を倍増させる。常人なら確実に死に至らしめるレベルのものだ。

 男は喉を押さえて必死に息をしようと口を開閉する。のたうち回るような無様は晒さないが、それでも息苦しさっていうのは人を超越した存在でも耐えがたいものがあるようだ。

 

 

「ミカエル様っ!?……宏壱! 何をした!」

 

「……呪いだよ」

 

 

 激昂した正滋がミカエルと呼んだ男の背を擦りながら俺を睨み付ける。

 

 

「今すぐやめろ!」

 

「……」

 

 

 頃合いでもあったし、折角出来た友人を失いたくはない。そんな思いもあって、男に叩きつけていた殺気と覇気を引っ込める。

 

 

「――ぁっ!……はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 

 

 重圧から解放された男は貪るように空気を吸う。

 

 

「俺達は、ミカエル様はお前と争う為にここに来たんじゃない! 無抵抗な――「やめ……なさい……」――……ミカエル様……」

 

 

 俺に抗議の声を上げる正滋を男が止める。息はまだ整ってはいないが、それでも部下を持つ者としての気概だろう。真っ直ぐに臆することなく俺の目を見る。

 

 

「今のは呪いだ。死んだ者達の呪詛、大切な誰かを失った者達の嘆き。俺は一度奴を仕留めるチャンスを得ながら仕損じた。だからこそ背負う。お前も覚悟があるのなら背負え。受け止めて生きていけ」

 

「…………分かりました。背負いましょう。『四大熾天使(セラフ)』そして……全天使の長として、このミカエル、貴方に与えられた呪いを背負いましょう」

 

 

 その言葉を放つと、男はふらりと立ち上がり眩い黄金の光に包まれる。

 

 

「「――っ!?」」

 

 

 思わず目を瞑る。眩む目を数秒かけてゆっくりと慣らし、霞む目で男を見るも黄金に輝く発光体しか見えない。

 漸く目が見えるようになった。

 

 

「そういうことをするなら事前に言っておいてくれ。目が痛いぞ」

 

「はは、申し訳ありません。先程のお礼ということで」

 

 

 朗らかに笑う男の背中から八枚四対の黄金に輝く翼が生えていた。

 強い視線だ。天使の長とやらは伊達ではないらしい。

 

 

「そうかい。だが、肝が冷えただろう?」

 

「ええ、貴方は幼い少年の姿をしていますが、その中身は最上級悪魔にも匹敵するほどの力をお持ちのようです。その身に内包する魔力は人体で耐えうるものではないようですし……何者ですか?」

 

 

 人の体では耐えられない……か。多分それを可能にしているのがリンカーコアか。

 今の俺の魔力量はSランク、その最上級悪魔ってのは、悪魔の中でも上位に位置するんだろうな。それと同等、か。

 

 

「聖祥大付属小学校三年生、山口宏壱。しがない魔導師をやっている」

 

「天使長『四大熾天使』のミカエルです。貴方と貴方の所属する組織との友好関係を結ぶことは可能ですか?」

 

 

 おいおい、そんなもの匂わしたつもりはねぇぞ。いや、これはカマ掛けか?

 

 

「何の話だ……?」

 

「ふむ、読み取れませんね」

 

 

 やっぱりカマ掛けか……。ただ、俺がどこかの組織に所属している、これは目の前の男、ミカエルの中では確定事項らしい。

 

 

「……そうか、あんたの目的は俺の人となりの確認か」

 

「……」

 

 

 ミカエルの訪問の目的が今一分からなかったが、これではっきりしたな。

 

 

「それで? 俺は排除の対象なり得るのか?」

 

「……違います。できれば勧誘を……それが目的でした……が」

 

 

 黄金に輝く翼を仕舞いミカエルは座って茶を一口啜る。

 

 

「どうやら貴方は誰かに与する器ではないようです。であれば、私の取る行動は一つ」

 

 

 そこでミカエルは俺に向かって頭を下げる。それを見た正滋も慌てて頭を下げた。

 

 

「今回の私共の不手際の対処をしていただき誠にありがとうございました。天界を代表してお礼申し上げます」

 

 

 深く頭を下げるミカエルの声音は真摯そのものだ。これを受け入れず突っ撥ねれば『赤鬼』の名が廃る。

 

 

「俺が出来ることだったからやっただけだ。出来ないことならあんな無茶はしない」

 

 

 笑って言ってやる。当然、力がなければ戦うなんてことはしない。俺はそんな自殺願望は持ち合わせちゃいない。

 

 

「それよりも、頭を上げてくれ。上の人間?がそう頭を下げるもんじゃない」

 

「宏壱君……」

 

 

 頭を上げたミカエルはどこか尊敬しているような眼差しを送ってくる。

 むず痒くなった俺はそっぽを向いて手をしっしと犬を追い払うように振る。

 

 

「話が終わったんなら帰れ帰れ」

 

「ふふっ……そうですね。少し長居しました。正滋さん、帰りましょう」

 

 

 張り付けた笑顔ではなく、柔らかな微笑みを浮かべたミカエルは正滋を促して立ち上がる。

 

 

「は、はい。じゃあな宏壱」

 

「ああ」

 

 

 正滋はそれに従い立ち上がって俺に言葉を掛ける。

 手を振ってそれに答え、居間を出ていく二人を見送ることなく後ろに倒れ込んで息をつく。

 

 

「はぁ……あれが本物、か。翼を出したときの存在感はヤバかったな」

 

 

 思い出すのはミカエルが八枚四対の翼を出した瞬間だ。

 圧倒的な存在感、それこそこの世の全てを白に塗り替えるのでは?とさえ思えてしまう潔白さだった。

 

 

「くくくくっ」

 

〈無限、主から闘気が溢れ出過ぎています。結界を〉

 

〈うむ、既に敷地内は封時結界で覆ってある。物が壊れても問題はない〉

 

 

 刃と無限の声が遠い。

 戦場に出たときの極限なまでの集中力が、周りの音を置き去りにすることはよく有る事だ。それと酷似した状態なんだろう。

 

 

「強くなるぞ。もっと、もっと強く……!」

 

 

 決意を新たにして、体を起こし机に手をついて立ち上がる。

 手を付いたときに机が粉々に砕けたが、気にせず一歩踏み出すと畳が砕け藺草が飛び散った。

 向かうは地下室の訓練場。俺は更なる高みへと挑む。

 

 

 

 

 

side~ミカエル~

 

 私は今日、凄まじい少年と出会いました。

 

 はぐれ認定して協会から追放したマキア・セルバンを倒した少年です。

 彼と友人関係を結んだと言う正滋さんから話には聞いていました。年齢は9歳。非常に穏やかで冷静、口調は荒く激情に駆られやすい。相反するもののようですが、戦場においては重要な要素です。

 その口調が相手を威圧し、燃え滾る心が戦意を昂らせ、冷静な頭が状況を素早く把握し、穏やかさが他人に安らぎを与えます。

 そして内包する重圧。他を圧倒する殺意と圧迫感。あの小さな体でどれだけの戦場を駆け抜け、死を見てきたのか……誰のために泣き、誰のためにその幼い手を血で濡らしてきたのか……。計り知れません。

 

 私達とは経験が劣るでしょう。何千年と生きた私達ではそれはほんの数年、欠伸をしている内に終わってしまうような時間です。

 ですが、人にとっては濃密な時間だったと思います。

 

 

「ミカエル、居ますか?」

 

 

 そこでノックが私の自室に響きました。天界にある私の自室は白一色に染められ、ベッドと職務をするための机だけがあります。

 これは私だけではなく、私を含めた『四大熾天使』であるガブリエル、ラファエル、ウリエル。彼らを筆頭に上級天使、中級天使、下級天使、全ての天使達の部屋が(広さの違いはあれど)似たような作りになっています。

 これは私達の性質によるもので、嗜好を持ちすぎると堕天してしまう可能性があるからに他なりません。

 

 

「ミカエル?居ないのですか?」

 

「いえ、開いています。入ってください、ガブリエル」

 

 

「失礼します」そう言って入ってきたのは、天界一の美女と謳われているガブリエルでした。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「今日、マキア・セルバンを倒した少年に会いに行ったのですよね?」

 

「ええ、それがどうかしましたか?」

 

「どういった方だったのか、と思いまして」

 

 

 唐突な質問ですね。どう答えたものでしょうか……。

 

 

「そうですね……例えるなら、台風のような少年、でしょうか」

 

「台風……?」

 

「はい、周囲には暴威を振り撒く危険な存在ですが、その中心は至って穏やかで内側に入った者を優しく包み込むような……と言えば伝わりますか?」

 

「では、我々にその暴威が振るわれることは?」

 

「今後の付き合い方次第、としか言えません」

 

「……なるほど。分かりました、ありがとうございます」

 

 

 そう告げて彼女は踵を返し、部屋を出て行きます。

 彼の情報が欲しかっただけのようです。良くも悪くも、今回の事件で我々天界側は彼に恩が出来ました。それに、人間との付き合い方を見直すことも……。

 

 

「いずれ彼が何者か知るときが来るでしょう」

 

 

 それまではゆっくりと関係を深めていきたいところです。

 

side out




最近は書き上がるのが本当に早いです。今回は以前のように6000文字を越えたのですが、案外早く書けました。

大まかなプロットはありますが、細かな部分はその一話一話で考えているので中々に時間が掛かっています。

さて、今回は彼が言ったように上司に当たる人物の登場でしたが、大物が出てきました。彼が出てきた理由は誠意を見せるため、です。
大物に気を掛けてもらえるんだ。という特別待遇を受けたことで宏壱の気を引いて勧誘に持ち込むつもりでした。
早々に断念して友好関係を気付くことに切り換えましたが。

では、また次回お会いしましょう。
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