リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第五十三鬼~赤鬼と戦闘機人・クローン~

side~宏壱~

 

 複数の魔力弾が俺に迫る。

 

 

「しっ!」

 

 

 中に浮かぶ俺はそれらを叩き割ることで回避してみせた。

 

 

「……」

 

 

 ふっ、と沸いたように背後で気配が生まれた。『見聞色の覇気』を用いても気配を捉えるのは容易じゃない。

 

 

「――っ!? ぜあっ!」

 

 

 が、反応できない程のものでもない。

 背後に現れたやつが、手に持つダガーを振るう前に回し蹴りを叩き込んで落とす。その隙を突いて再び魔力弾が俺に殺到する。

 

 

「ファースト ムーブ!」

 

 

 高速移動でその場から離脱、魔力弾を放った地上に居る三人の男達に肉薄する。

 三角形の陣を組んでいた男達は、手に持つ杖型のデバイスを振るった。

 円陣の魔法陣が浮かび上がり、中心に魔力が集まる。

 

 

「砲撃かっ!」

 

 

 発動された魔法が何か分かった。しかし、接近をやめる理由にはならない。

 

 

「高速移動中の俺を捉えるのは上出来だが、それが脅威に成り得るわけでもないぞ!」

 

 

 そう吐き捨て、更に速度を上げる。直後、――ゴウッ!!――放たれた三本の砲撃は俺の真横を飛び、俺が残した残像を貫いてドーム状の天井に着弾、少しの穴を開けた。

 

 

「ふんっ!」

 

 

 先頭に居る男の前に着地、反応されるよりも早く裏拳の要領で鞭のように腕をしならせて振りきる。

 

 

「……っ!?」

 

 

 男は声を発することなく吹き飛んだ。乱雑に捨てられた生体ポッドの山にぶつかり埋もれて沈黙した。

 

 

「ふっ!」

 

 

 次に、斜め右側の男の懐に飛び込んで、男の腹に肘を突き入れた。

 

 

「……っ!?」

 

 

 苦悶の表情は浮かべるものの、声を上げることはない。

 

 

(全員同じ顔、声も出さねぇ、気味の悪い連中だ)

 

 

 胸中に浮かべた思いを外には出さず、肘を瞬時に戻して蹴り飛ばす。

 

 

「……っ!?」

 

 

 その結果を確認せず、左側の男の背後に回り、跳んで首に蹴りを入れる。

 例のごとく声を出さない男に更なる気味悪さを覚えながらも、迫る複数の気配を捉える。

 正面から二人、後ろから三人。地を這うような姿勢で疾駆するそいつらの動きは、近接戦闘に秀でたものなのは疑う余地もない。

 

 

「おらっ!」

 

 

 沈めた男が持っていたデバイスとそれの持ち主を、正面から迫る二人に向けて蹴り飛ばす。

 

 

「「……っ!?」」

 

 

 二人は動きを止めて横に転がって躱す。仲間意識は少ない。ひょっとするとそんな感情すら持ち合わせていないのかもな。

 

 

「ブレイクキャノン」

 

〈Shoot〉

 

 

 そう考えながら後ろから迫る連中に背を向けたまま魔力弾を放つ。

 

 

「「「……っ!?」」」

 

 

 息を呑む音は聞こえるが、やはり声は上がらない。

 三人はそれぞれ別の方向へと飛んで躱す。上に逃げたのが一人、左右に分かれて逃げたのが二人。左右に逃げた二人を魔力弾を操作して追尾させる。

 

 

「炎神槍っ!」

 

 

 体の向きを変えて、上に逃げた男を飛んで追い掛ける。その時に正面、今は後ろか……体勢を立て直して再度駆け出す後ろの二人に炎の槍を射つ。

 

 

「「……っ!?」」

 

 

 背後で火柱が上るが、気にせず眼前に迫った男を見据える。

 

 

「……っ!」

 

 

 言葉を発さず、男は直射弾を射ち出した。正確に俺の眉間に迫るそれは……速い。だが……。

 

 

「しゃらくせぇっ!」

 

 

 叫んで右腕で弾く。弾いた直射弾は、暴発することなく追尾弾から逃げる男の眼前に着弾する。足を止めた男は背後に迫る追尾弾の餌食となった。

 

 

「……っ!」

 

 

 ダガーを構えた男は懐に入り込んだ俺の首を狙い、コンパクトに最小限の動きで刈り取ろうとする。

 

 

「っと」

 

 

 男の右手首に左腕を当てて首に迫ったダガーを止める。

 硬直、一瞬だが動きを止めた男の右腕を掴んで体を俺の下に強引に持っていき……。

 

 

「おらぁっ!」

 

 

 蹴り落とす。そして更なる追撃を掛ける。

 落ちる男に両手の指を向ける。十本の指が男を捉えた。そして指先に魔力を集める。

 

 

「雷神槍・十指弾!!」

 

 

 集まった魔力は全て射ち出され、男に迫る途中で深紅の雷の槍へと姿を変えた。

 20cm程度の長さしかないが、威力は折り紙付きだ。

 

 

「……っ!!」

 

 

 体を撃ち抜かれた男は気を失い受け身を取れずに強かに地面に叩き付けられた。

 因みに非殺傷設定だから死ぬことはない。痛烈に痛いだけだ。

 

 

「ここからは通行止めだ」

 

 

 未だ追尾弾の追跡から逃げる男の前に降りて宣言する。

 

 

「……っ!」

 

 

 速度を落とさずに、男はダガーを掌でくるくると回転させて逆手に持ち振るう。

 

 

「おっと」

 

 

 俺の側頭部を狙った横凪ぎは、頭を下げることで躱し、相手に頭部を見せたまま一歩前に踏み出す。

 

 

「……っ!?」

 

 

 と、男の腹部に俺の頭が頭突きを噛ます形になり、動きが止まる。

 

 

「プロテクション」

 

 

 俺と男を隔てるように魔法障壁を張る。三角形の魔法陣が現れて――ドオオォォンッ!!――男を追尾していた魔力弾が接触、その爆発の衝撃から俺を守った。

 

 

「……終わったか」

 

 

 煙が晴れると男は意識を失い倒れている。

 他にもこの場には多くの男達の亡骸が――〈死んでいません。気を失っているだけです〉――……気分が台無しだぜ。

 

 

「ナチュラルに心を読むな無限」

 

〈主君の気持ちを理解してこそ、真の従者と言えるのです〉

 

「そうかい」

 

 

 ったく、殺伐とした雰囲気に緩和材を投入しようとした俺の考えも――〈主、地下に入った孔明様より入電です〉――……。

 

 

「……分かった、繋いでくれ」

 

〈御意〉

 

 

 刃の言葉に答えるとすぐにディスプレイが空中に展開され、淡い金髪をショートボブにした少女が顔を見せる。

 

 

[お、おつかれしゃまでしゅ!]

 

 

 噛んだ労いの言葉を放ちながら勢いよく頭を下げた少女は、その勢いで落ちそうになったベレー帽を[はわわ!]と慌てながら押さえる。

 

 

「ははっ、ああ、おつかれ、朱里」

 

 

 こんな雰囲気の中で思わぬ癒しに笑いが溢れる。

 

 

[む~、笑わないでください!]

 

 

 いったい誰が、唇を尖らせそっぽを向いて拗ねるこの少女が希代の名軍師、諸葛亮孔明だと信じるのか? 俺ならそいつの頭を疑うな。

 

 

「いやいや、すまん。余りにも朱里が可愛くてな」

 

[か、かわっ!!?~~~っ!! も、もう、しりましぇん!!]

 

 

 顔を真っ赤にして更に顔を明後日の方に向ける朱里。昔からこの手の言葉には弱い。

 初さが一切抜けないのか……?いや、弱いと言っても顔を真っ赤にするほどでも無かった筈だ。

 30歳を越えた辺りではかなり落ち着きも……精神が身体年齢に引っ張られてる? 可能性は十分あり得るな。雛里もそんな感じだし。

 

 

「ごめんって、お詫びに一つなんでも言うことを聞いてあげよう」

 

[ほ、本当でしゅか?]

 

「お、おう」

 

 

 上目遣いで確認してくる朱里に快く頷く。まぁ、朱里ならそんな無茶は言ってこないだろう。

 それにしても、赤ら顔で上目遣い……俺じゃなかったら死んでたな。

 

 

[はいはい、ご馳走さま。まったく任務中によくやるわね]

 

 

 呆れた声が聞こえ、ディスプレイが新たに開く。

 そのディスプレイには青髪をポニーテイルにした女性局員、クイント・ナカジマが顔を映す。

 

 

「まぁ、これが俺達だからな」

 

[子供が生意気言ってぇ]

 

 

 あんたよりずっと年上だけどな。とは言わない。

 まぁ、今の俺と朱里は似たような背格好だからな、微笑ましく見えるんだろう。

 現に、朱里の後ろに見える局員達の口許が緩みまくっている。

 

 

「はぁ、朱里、何か報告があるのか?」

 

 

 溜め息を吐いて朱里に用件を聞く。ここからは頭を切り替えて動く為に気を引き締めた。

 

 

[……はい、データの抽出完了しました。これからは被験者の保護を最優先に動きます。まだ残敵が居るかもしれません、警戒を怠らないでください]

 

「了解」

 

[宏壱君、こっちからもお願い。全方位になるけどいける?]

 

「任せとけ」

 

 

 つまり任務変更なしってことだな。警戒を最大レベルに引き上げる。

 

 

「見聞色の範囲を広げる」

 

 

――慎重に運んでください。変に揺らすと被験者の方々に負担が掛かります。

 

――了解!

 

 

 これは地下に居る朱里達の声か……。

 

 

――警戒を怠らないで。まだ何か潜んでいる可能性があるから慎重に外に出ましょう。

 

――了解!

 

 

 こっちはクイントさんだな。両方とも声が近付いてきているし、任務の終わりも近い。

 

 

――ヒュンッ!

 

 

 ……何だ?何か変な音が……。

 

 

――ヒュンッ!

 

 

 まただ。空気を切るような……。

 

 

――ヒュンッ! ヒュンッ!

 

 

 増えた……?

 

 

――ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!

 

 

 ……違う!近付いてくる!

 

 

〈御主君! 強力な魔力反応がこちらに!?〉

 

「分かってるっ!!……すぅ」

 

 

 無限の報告に怒声で返して、息を大きく吸う。肺がパンパンになるほど吸う。バリアジャケットの上からでも分かるほどに俺の胸が膨張する。そして……。

 

 

「全員っ!! 衝撃に備えろおおおぉぉぉぉッッッッ!!!!」

 

 

 吐き出す!

 ――ゴッッ!!――建物が揺れ、俺を中心に衝撃波が生まれ足元のコンクリートが割れた。その亀裂は大きく広がる。

 

 

〈来ますっ!〉

 

 

 刃の言葉と同時に何かがドーム状の天井を通り抜け、コンクリートを通過していく。

 見えない何かが、通り抜けた天井を注視していると、うっすらと、それも無数に裂けたような箇所が幾つも見えた。

 

 

「――っ!?……な、に?」

 

 

 鋭い痛みを指先に感じて手を見る。人差し指を見ると、つーっと血が一筋の線を作って流れ落ちた。それを皮切りに指、手、腕、肩、頭、顔、胴、足と痛みを感じる箇所が増えていく。じっとりと熱い液体が肌を濡らすのが分かった。そしてそれの正体も……。

 喉から熱いものが込み上げてきた。

 

 

「……がはっ!?」

 

〈〈主っ!?/御主君っ!?〉〉

 

 

 それを吐き出すと口許を押さえた手が真っ赤に染まる。……血だ。恐らく、いや、確実に、今俺の体を濡らしているのもこれと同じものだ。

 

 それを再認識すると同時に……天が崩れ、世界が崩壊した。




何の脈絡もなく始まった戦闘。世界の崩壊。宏壱や朱里、クイントの運命やいかに!?

今回の事情は次回語られる予定です。

では、また次回お会いしましょう。
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