第三鬼~赤鬼と始まり~
side~宏壱~
「ん……ここは?」
意識の覚醒と同時に、周囲の確認を行う。どこかの部屋のベッドで寝ていたらしい。左手側に扉が見える、右手側は窓だな。
窓から外を見てみると、少し離れた所、目測で40m程の距離に民家が見える。眼下には広めの庭があり松の木や柿、梅の木なんかが植えられているのが見えるし、石造りの灯籠なんかもあるな。まさに懐かしき日本庭園だな。
「結構広い家だな。外に出てみるか」
そう呟いてベッドから足を下ろし立ち上がろうとして……。
「っ~~いってぇ、なんだぁ?」
下ろしたときに、床に足がつかずそのまま落ちてしまう。
「……おいおいマジかよ!」
自分の体、正確には視点の低さに違和感を覚え立ち上がって体を見下ろす。
「は?」
あまりにもな光景に間抜けな声が漏れる。
「いやいや、確かに年齢は下がるみたいなこと言ってたが……これは」
そこにある手や足は少年と言うよりも、幼児のそれ。床があまりにも近すぎるし、なにより正面にあるドアノブに手が届くかどうか微妙なんだが。
「まぁ、考えててもしゃあねぇか」
取り敢えずこの部屋から出てみることにして、扉に近付く。
「んくぅ~っあと、ちょっと」
ググ~っと背伸びをする。
「よし!」
なんとか手が届きノブを回して扉を開ける。
部屋を出ると正面に扉があり左右には廊下が広がっていて、右を見ると、同じように向かい合わせになるように扉があり、突き当たりに一枚扉が見えた。左にも扉が向かい合わせになるようあり、その先に下へ降りるための階段が見えた。
「他の部屋は無理だな。手が届かねぇ、何てことはないが疲れる。下に降りてみるか」
そう呟いて階段へと足を向けて歩き出す。キィ、キィと木の板を嵌め込まれた床を踏み鳴らしながら進み階段を降りていく。階段を降りた先には引き戸のガラス戸が見えた。恐らく玄関だろう。靴箱とか見えるし。
「上はどっちかって言うと洋風だったけど、下は和風って感じだな」
そのまま降りて、玄関に置いてある靴を履いて外に出る。5m先ぐらいに門が見える。門まで続く石畳を歩く、3m程の幅でそこから先は、雑草の生えていない綺麗な土が見えていた。
「へぇ、なかなか良い外観だな」
石畳の中頃で、一度振り返り出てきた家を見る。屋内は一階は和風、二階は洋風って感じだったけど外から見れば、二階建てのちょっとした屋敷みたいだな。
そんなことを考えながら、止めていた足を門に向かって進める。門は開けられていて、そこから顔を出し左右を確認する。正面には普通の民家、左はずっと塀が続いていて、30m程で左に折れている。右側も同じで民家と隣接はしてないようだ。門から体を出し門を見上げる。向かって右側に表札があり達筆な文字で『山口』と書かれていた。
「ここが俺の家になるみたいだな。少し回ってみるか?」
そう自分に問い、周囲を塀づたいに左側から回って見ることにする。
「ガキの体ってのは不便だな。歩幅が小さすぎて時間が掛かるぞ」
そんなことを呟きながら道を左に曲がっていく。
「なげぇなおい」
正面に広がる道をみて、少し辟易する。100mほど続く塀を見れば誰だってそう思うだろう。ましてや今の俺の歩幅は2、30cm程度しかないのだから当然と言える。
「はぁ、言っててもしゃあねぇか」
その言葉とともに再び足を進める。おそらく平日の昼頃なんだろう、人影がないし、なにより飯の良い匂いが俺の嗅覚を刺激してくる。
「はぁ、ふぅ」
塀を一周したがどうやら隣接している民家はないようだ。
「しっかし、かなり体力落ちてんな。この程度で息が上がるとか……はぁ、鍛え直しだなこりゃ」
そう呟きながら門を潜り、石畳を歩いて家の中に入る。靴を脱いで、上がって向かって左側には手前に二つの襖と奥に一つの扉があり、右側には手前に一つの扉、続いて二つの襖があり奥に一つの扉がある。
まずは、左側手前にある襖から開けてみる。スゥっと静かな音をたてて開けられた襖の先には、15畳ほどの居間があり、真ん中を隔てるように20人ほどが座れるようなテーブルがある。
左の方には液晶テレビがあり正面にガラス障子、縁側、庭が広がりその庭の向こう塀のそばに小屋が見える。右の方を見ると、そっちにもガラス障子がある。その障子を開けてみると、キッチンがあった。左手側に換気扇がついている。どうやら電気コンロのようだ。右側に襖があり、そこを開けると廊下に出た。
「あ~、なるほど居間とキッチンは繋がってるわけだ」
納得がいったところで一番奥の扉を開ける。そこにはなにもなく6畳ほどの空間があるだけだった。
「ああ、物置か」
そう結論付け、向かいにある扉を開ける。そこには下に行く階段があるだけだった。
「地下があんのか………後回しだな」
階段のあった部屋を後にし、他の部屋を見て回る。
奥から順に客間二部屋と洗面所、その奥にトイレだった。風呂場が見あたらないが、多分外にあった小屋じゃねぇかな、とあたりをつけている。
ちなみに、洗面台にあった鏡を覗くと、そこには3歳ぐらいの俺がいた。(台を使わないと、洗面台に届かないことに、涙がホロリときたのは、ここだけの秘密だ)
「取り敢えず、外も調べたし、後は地下だけなんだけどなぁ」
庭の方も調べ終わって、今は居間にいる。案の定居間から見える小屋は、脱衣場兼風呂場だった。風呂事態もそれなりに広く、20人ほどなら余裕で入れそうだった。この家を貂蝉が用意したと言うのならグッジョブと言わざるを得ない。
〈何を一人で頷いているのです? 主〉
「いやな、これで桃香達と風呂に入れると思うとな……ん?」
薔薇色の未来に想いを馳せていると声をかけられる。その声は女のようなんだがどこか機械音声のようなものだった。
(っつーか今この場には俺しかいないんだけど)
そう思いながらも辺りを見回すが誰もいない。
〈こちらです主〉
「お前、か?」
いつの間にあったのか、俺が気づかなかっただけなのか、テーブルの上に嵌め込まれた白色の宝石をピコピコと点滅させながら語りかけてくる十字架のネックレスがあった。