リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第六十二鬼~魔法使い邂逅~

side~宏壱~

 

「覗きとは、趣味が悪いね。お嬢ちゃん」

 

「――っ!?」

 

 

 俺の声に反応して勢いよく振り返った少女の瞳は水晶のように青く、病的なまでの肌の白さと整った顔立ちは西洋人形のようだ。

 

 

「……貴様、いつの間に」

 

「――っ」

 

 

 少女の発した言葉で我に返る。

 桃香や愛紗、なのは、咲達のような多くの美女、美少女、美幼女を見てきた。

 絶世、そんな言葉を頭に付けるのは身内贔屓かもしれんが、俺の目には彼女達はそう映っている。

 だが、目の前の少女は俺が知る中でもずば抜けている。

 思い返せば、俺が見てきたのは東洋系の美人、目の前にいるのは欧米系の美人だ。

 ミッド人は確かに欧米系の顔をしている人が多いが、ここまで整った美人は知らない。

 要約すると、俺は彼女に見惚れていた。

 

 

「……聞いているのか、貴様っ!」

 

「……わ、悪い。聞いてなかった」

 

「くっ! この私を虚仮にしているのか!」

 

 

 怒りからか、彼女は白磁のような肌を紅潮させ声を荒げる。

 

 

「そんなつもりはない。それで、俺に何か用か?」

 

 

 内心の動揺を表に出さず、言ってのける。これは年の功ってやつだな。長い年月を経て、それなりに腹芸はできるのだ。

 

 

「……ふぅ……貴様は何者だ」

 

 

 気を落ち着けるように軽く息を吐いてキッと俺を睨め付ける。

 

 ……綺麗だ。じゃなくて。

 

 

「何の話か分からんな」

 

「惚けるな。貴様が放つ覇気に気付かないとでも思ったか」

 

 

 声も綺麗なんだな。聞いていて心地良い……じゃねぇよ。何だ? さっきから思考が変な方向に逸れるぞ。

 

 

「……魔導師だ」

 

 

 自分の感情の変化に戸惑いながら受け答えする。

 

 

「魔導師……だと? 魔法使いの事か?」

 

「その解釈で間違いない」

 

 

 これは……魅了(チャーム)、か? いや、それはないか。堂々とした佇まいに誇り、絶対的な自信がその綺麗な瞳から窺える。

 ……さっきから綺麗、綺麗、綺麗うるせぇな。それしか言えんのか!

 ……だが、まさか、この感情は……。

 

 

「……? 何故そこで顔を赤く染める?」

 

 

 ブロンドの少女は訝しげに眉を寄せる。自分の感情に気が付いた俺の顔は、赤くなっているらしい。

 この感情は、桃香や愛紗達に向けるものと全く同じものだ。

 ……一目惚れかよ。

 

 

「チッ……何なんだ貴様は」

 

「いや、すまん。真面目にやる」

 

 

 取り合えず落ち着け。COOLになれ俺。COOLに。

 

 

「……で、そう言うお嬢ちゃんは何者だ? 人……じゃねぇよな?」

 

 

 その言葉を受けて少女の目が細められる。値踏みでもされている気分だ。……悪くない。

 ……うん、諦めたね。目の前の少女の一挙手一投足が可憐で優雅に見える。二百年近い時の中で、一目惚れなんて初めてだぞ、クソが!

 

 

「お嬢ちゃんは止めろ……。私を知らないのか……? この『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』を!!」

 

「……」

 

 

 非常になだらかな胸を張って声高に名乗る少女が微笑ましい。

 

 

「貴様っ! 何を笑っている!!」

 

 

 顔を赤くして声を荒げる少女。和んでいたのが顔に出ていたらしい。

 

 

「いや、何でもない。ただ、気に入ってるんだな。と思っただけだ。……で?その『闇の福音』さんが俺に何の用ですかね?」

 

 

 話題転換も兼ねて、そう話を振る。

 

 

「ふんっ、分かりきったことを……『赤鬼』を見に来たに決まっているだろう?」

 

「……」

 

 

 思ってもなかった答えが返ってきて驚いた。

 俺を知っている?確かに要所要所で『赤鬼』と口に出す事は間々あるが……。

 どうしたものか……。

 

 

「その赤鬼ってのは?」

 

 

 取り合えず惚けてみることにした。知られてどうこうって事はないが、情報源みたいなのがあるなら知っておきたい。

 火の粉が俺に降り掛かるだけならいいが、それがなのはやすずか、今日知り合った明日菜にまで被害が行くのなら対処しておきたい。

 世の中には、本人に敵わないから親しい人達に目を向ける奴もいるのだ。

 

 

「知れたことを……貴様の背後で揺らめく存在を見れば、大方の見当がつく」

 

 

 つまり、目の前の少女には『赤鬼』が見えている。しかもこいつに関する知識まであるってことか……。

 嘘を言っている可能性もなくはないが……どうにも疑う気になれない。

 

 

「……」

 

(だんま)りか……ならば貴様の口から肯定の意を吐かせてやろう」

 

 

 ニヤリと不敵な笑みを見せた少女の言葉と同時に、濃密な気迫が空気に伝播して届き、俺の肌を刺す。一発で人の意識を刈ることができる程の濃度だ。

 いつの間にかバトルフラグが立っていた。思慮深く見えて、案外短慮で短絡的らしい。

 いや、それだけ自分の力に自信があるってことか。

 だが……。

 

 

「……出来るのか? 縛り付けられたその身で」

 

「ふんっ……なにも魔力の総量や膂力だけが全てではない。やりようは幾らでも……チッ」

 

 

 少女はそこで言葉を切って舌打ちをする。どうやら撒いた連中に追い付かれたようだ。

 周囲を見渡せば、数十人の男女が、少し離れた建造物の屋上で各々の武器を身構えて、俺と少女を包囲している。

 少女も警戒対象になっているらしいな。

 

 

「少年、学園長がお呼びだ。ご同行願おう」

 

 

 俺の背後から、眼鏡を掛けた褐色肌の男が右手に持った拳銃を突き付けながら言ってくる。

 

 

「……人にものを頼む時は頭を下げろ若造」

 

 

 振り返って言葉を返す。俺の血管がこめかみの皮膚を持ち上げ、ドクッドクッと脈打つのが分かる。

 あんまりな態度にムカついた。ものを頼むのに武器を突き付ける奴がいるか? それは願うんじゃなくて、強制するって言うんだよ。

 

 

「……学園長がお呼びだ」

 

 

 若造の部分でこめかみを引くつかせながらも、再度の呼び掛け。

 俺が同行の意思を見せないことで、包囲している連中の気が高まった。

 こんなところでおっ始めるつもりか、こいつ等。眼下には一般人がいるんだぞ。

 

 

「それしか言えんのか《無限、連中と少女を巻き込んで結界を張れ。木乃香と刹那は外せよ》」

 

《御意》

 

 

 声に怒気を含めて放ちながら、同時に念話で無限に結界を張るように指示を出す。

 直ぐに周囲から色が抜けた。木乃香と刹那なら結界の展開を感知したかもしれんが、今のあいつらの実力で俺の結界を破るのは無理だ。

 明日菜もまだ傍にいる筈だしな。

 

 

『――っ!?』

 

 

 息を呑む音が響く。狼狽えて喚き散らさないのは、それなりに場数を踏んでいる証拠だ。周囲を見渡したり、眼下を覗いてみたり、携帯端末を開いたり、空を仰いだり、俺と少女を気にしながら状況の確認を行う。

 術者が俺であることも理解している。冷静な判断、素早い状況把握、練度はそれなりらしいな。まぁ、関係ない。

 

 

「少年、何をし――ぐあっ!?」

 

 

 言葉を言い切る前に体をくの字に折って吹っ飛ぶクロ眼鏡。そのままの勢いで、吹っ飛ぶ先の建造物の窓ガラスを割り、姿が見えなくなった。

 

 

「ガンドルフィーニ先生!!」

 

 

 誰かが叫ぶ。ただ単純にクロ眼鏡の腹を右拳で軽くぶん殴っただけなのにな。

 

 

「誰でも良い、掛かってこい」

 

 

 掌を空に向けた状態で、人差し指と中指を野太刀を持った一人の長い髪をストレートに下ろした女に向けて、挑発するようにちょいちょいと二度、三度と曲げる。

 

 

「――っ! 嘗めないでくださいっ!!」

 

 

 白を基調としたスーツを着たその女が跳び上がり、手に持つ野太刀を振り上げて斬り掛かってくる。

 

 

「刃」

 

《御意》

 

 

 軽く言葉を掛ければ、刃は念話で短く返答する。首に掛けてある二つの十字架のネックレス、その内の一つが一瞬の発光を見せ、それが収まると俺の左手には潔白の刀身を持つ刀、『骨龍刀・刃』が納まっていた。

 

 

「神鳴流・斬岩剣!!」

 

 

 力強く斬り下ろされた野太刀を刃で受け止める。

 踏ん張った足元のコンクリートが、ミシッと軋みを上げて亀裂を走らせる。

 

 

「重いな……」

 

 

 中々に重たい一撃だ。女の細腕から放たれた一撃とは思えんね。

 

 

「くっ……!(重たいっ……何て頑強さですか!? まるで山じゃないですか!!)」

 

 

 女はそのまま斬り込んでくることはせず、後ろに跳躍して距離を取る。

 

 

「魔法の射手!! 火の11矢!!」

 

 

 鋭く男の声が響く。日本語じゃないな。何かの呪文か……?

 

 

「……っと」

 

 

 咄嗟に上体を後ろに反らすと、複数の熱源が俺の頭があった位置を、空気を焦がしながら右から左へ通過する。

 

 

「火の……矢?」

 

 

 俺の目にはそう映った。

 

 

「……頭を狙うとは凶悪だな。ご同行とか言っといて、殺す気かよ」

 

 

 女の起動は腕に向けてだった。しかも浅く斬る程度。殺す気がないのは明白だ。だが、今のは確実に俺の命を取りに来ていた。

 

 

《あり得ませんね》

 

《然り。任務を履き違えているようです》

 

 

 俺の呟きに刃と無限が念話で答える。

 体の向きを野太刀を持った女から、火の矢を放った男に変える。

 平凡な顔に萎れたスーツを着た若い男だ。その右手には魔法使いが持つような杖が握られている。年季は感じない。真新しいものだろう。それと……。

 

 

「戦場に立って浅いな。もしかして……今回が初陣か?」

 

 

 さっき思ったことに当てはまらない奴もいるらしい。

 

 

「何をしてるんだっ! 学園長の下まで連れていくのが俺達の仕事だぞっ!!」

 

「仕方ないでしょっ! ガンドルフィーニ先生がやられたんです! やり返さないとっ!!」

 

 

 話を聞くに、俺を攻撃した男はどうやら若手らしい。ともすれば、裏側に首を突っ込んだのは最近か?

 管理局員の研究者も、目の前の男と似たような目をする時がある。最新のプロジェクターの試運転の時とか、最新型のデバイスのテストの時とかな。となると……得た力を試してみたかったとか……?

 

 俺を……実験台に……した?

 

 

「む……? これは離れた方が良いか? 」

 

 

 そんな少女の呟きが聞こえ、直ぐに気配が遠ざかる。彼女に戦意はない。気にする必要性はゼロだ。

 

 

「そっちが火の矢ってんなら……こっちは槍だ!!」

 

 

 刃を持っていない右手に現れたのは炎の槍。轟々と燃え揺る熱き炎槍。ちっぽけな矢とはサイズも威力も違う。

 

 

「炎神槍!!」

 

 

 投げ放たれた炎の槍は、男の知覚を超える速度で迫り、若い男に悲鳴も上げさせずに爆発、後に――ゴオオオォォォッッ!!!――火柱を上げた。

 5mほどの高さまで渦巻き状に舞い上がる炎の柱に言葉もでないほど唖然とする他の連中。当然、非殺傷設定にしてある。少し火傷はしているだろうが、命に別状はない。

 

 

「まだ終わりじゃないぞっ! 俺を嘗めくさったテメェらに目にもの見せてやる!!」

 

 

 右腕を伸ばし、親指、人差し指、中指を伸ばして薬指と小指は握りこむ。

 

 

「炎龍・操傀(そうく)!!」

 

 

 伸ばした右腕の肘を曲げ空に向けて突き上げる。すると、火柱は龍の形を持つ。ワニのように鼻が伸び、目の部分は窪み、鼻先からは左右に一本ずつひょろひょろと髭がたゆたう。

 龍らしさはそこまでで、首から下は蛇のようにうねうねと動くだけで、前足も鱗も角もない。

 

 

『――っ!?』

 

 

 だが、迫力は十分だ。勿論威力も、な!!

 

 

「喰らえっ!!」

 

『う、うわああああっ!!?』

 

 

 炎龍は鎌首を擡げ、周囲にいる奴等に襲い掛かる。

 迫る炎龍に恐怖の色を顔に張り付け逃げ惑う連中。離れれば逃げ切れると思ったか? 甘いな。

 炎龍・操傀は右手の動きだけで思い通りに操ることのできる操作性のある範囲攻撃だ。逃がすはずもない。

 

 

「術者を倒せば問題ありません!」

 

 

 炎龍を躱して、さっきの女剣士が迫る。

 確かに俺を打ち倒せば炎龍は止まるが……。

 

 

「そう簡単に近付けさせるわけないだろ」

 

 

 右手の親指を二度、三度と弾いていく。合計で三十四回弾いた。

 すると炎龍の背に当たる部分から炎弾が空に向かって吐き出せれ、俺に迫る女剣士に上空から降り注ぐ。その数、三十四個。

 その間にも逃げ惑う連中を炎龍が追い、食らう。

 

 

「……っ!!」

 

 

 小さな吐息と共に女剣士が加速する。着弾するよりも速く駆け抜ける気か。

 

 

「させるか!」

 

 

 俺のレアスキルの一つ『重力操作(グラヴィティコントロール)』で炎弾のみに負荷を掛け、落下速度を上げる。

 けっして相手には使わない。理由は簡単だ。楽しくないから。動きの遅くなった相手と戦ってもシラケるだけだ。

 

 

「――っ!?」

 

 

 ――ドドドドォォォォンンンッ!!!――着弾。三十四個もの炎弾が、周囲の建造物を粉々に粉砕して爆炎と爆塵を舞わせる。何人かも巻き込まれたな。

 

 

「――っ!!」

 

「へぇ……あれを抜けるか。他の連中とは一味違うな」

 

 

 だが、それらを女剣士は突破した。

 俺のいる建物の屋上に着地、足を止めずに肉薄する。

 

 

「神鳴流・雷鳴剣!!」

 

 

 バリィッ、と野太刀が放電する。電気を帯びているらしい。

 その帯電した野太刀を顔の位置で水平に構えて腕を引く。突きの構えだ。

 駆けながらでよくやる。重心が一切ぶれていない。かなりの熟練者だな。

 

 

「刃、炎龍の操作は任せた」

 

《御意》

 

 

 炎龍は、実は必ずしも俺自身が操る必要はなく、刃が操ることもできる。感覚で言えば、マニュアル操作からオート操作に切り替える感じだな。

 

 

「はあっ!!」

 

「ほっ」

 

 

 俺の左肩に向かって鋭く放たれた突きを、刃を下から当てて逸らす。

 

 

「せやっ!」

 

 

 俺から見て左に回転。野太刀を振り上げて袈裟斬りに右から斬り下ろす。

 俺が右腕を使えないと思っての行動だろう。確かにその判断は間違っていない。……まぁ、炎龍を俺が操っていた場合は、な。

 操作を刃に任せた今は、関係ない。

 

 

「部分鉄塊・右腕」

 

 

 女の野太刀を右手で掴んで受け止める。

 

 

「なっ!?」

 

「残念でした」

 

 

 目を見開く女の腹部に刃をぶち当てる。

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 

 吹き飛ばす威力ではあったものの、女が野太刀を離さなかったためにその場で崩れ落ちた。

 驚きで筋肉が硬直して、手が離れなかったと見える。

 刃は付いているが、殺傷設定でもない限りは刃や無限で生物を切り刻むことは不可能だ。これが魔力刃なら話は違うんだが、刃と無限は実体がある。と言うのも変だが、確りと質量がある。だから非殺傷設定時は、刀ではなく、鈍器、棍棒のような役目になる。

 何が言いたいかと言うと……。

 

 

「青痣くらいにはなるだろうが、死にやしねぇから安心しろ」

 

 

 そういうことである。

 

 

「くっ……うぅ」

 

 

 伏した女に一言そう声を掛け、辺りを見回す。

 未だ逃げ惑う連中を炎龍が追い掛ける。俺がさっきやったように炎弾を空に打ち上げ、豪雨のように降り注がせる。枝分かれして連中を追う。結界内とはいえ、街がどんどん火の手に包まれていく光景は、世界最後の日を思わせる地獄絵図だ。

 

 

「やり過ぎたか?」

 

 

 結界内、しかも俺の背後に現れた気配に声を掛ける。飄々としているが底が全く見えない。そんな奇妙な気配だった。少なくとも、この場にいる連中よりは遥かに強い。それだけは分かる。

 

 

「……やり過ぎじゃわい」

 

 

 気配が答える。貫禄のある声だ。それなりの歳なんだろう。

 

 

「がく……えん……ちょう」

 

 

 倒れ伏す女がその人物を見て、途切れながらも声を上げる。

 

 

「学園長……だと?」

 

 

 向けていなかった顔を現れた人物に向け、その姿を視界に捉え……驚愕に目を見開く。

 

 

「なんじゃ、その目は」

 

「まさか、妖怪が人の子に勉学を教える者の頂点にいるとは……」

 

「なんの話じゃ。ワシは人間じゃぞ」

 

「……な、に? そうか! 何百年と生きて妖怪に……!」

 

「それも違うわ! ワシはれっきとした人間じゃ! 生物学上もなっ!!」

 

「!!?」

 

「その、有り得んものを見る目をやめい!」

 

 

 驚いた。こんな頭部の長い人間がいるとは……。

 

 

「世の中不思議がいっぱいだな」

 

「同感だ。だが、それは貴様にも言えることだがな」

 

 

 炎龍の被害を受けないように戻ってきた少女が、爛々と目を輝かせて言う。

 

 

「貴様じゃない、山口宏壱だ」

 

「……ふん、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ『赤鬼・山口(さんこう)』」

 

 

 ニヤリと笑って言う少女、エヴァンジェリン。どうやら俺の事を完全に見抜いたらしい。

 まぁ、不敵な笑顔が可愛いから許す。何を許すかは知らんが。

 

 

「ふむ……それらも加えて話を聞かせてくれんかの?」

 

 

 一瞬の思考を経て、じいさんはそう提案した。歳に似合わず……いや、この歳だからこそ放てる気迫を放ちながらだ。普通の奴なら抵抗する気も起きないだろう。普通の奴なら、な。

 

 

「ま、良いか《刃、炎龍を消せ》」

 

《御意》

 

 

 暴れ回り大火災を引き起こしていた炎龍は一瞬で霧散、姿を消した。

 

 

「皆の命に別状は無いようじゃの」

 

 

 ホッと息を吐くじいさんを横目に刃をネックレスに戻す。エヴァンジェリンはそんな俺の行動に更に目を輝かせていた。

 

 

「それでは、来てくれるかの? こちらで話し合いの場は設けておるのでの」

 

「了解した《無限、結界を解いてくれ》」

 

《御意》

 

 

 念話で無限に結界を解くように頼むと、直ぐに世界が色を取り戻す。

 粉々に崩壊した建造物も、世界を包んでいた炎の海も、全ての戦い(蹂躙?)の跡形が消え去った。

 眼下では学園祭を楽しむ人々に、何事もなかったように聳え立つ建造物があるだけ。変わったことなど何もなかった。

 

 

「不思議な魔法じゃのう」

 

 

 染々と呟くじいさん。分からんでもないが……。

 

 

「「じいさんが言うな/ジジイが言うな」」

 

 

 俺とエヴァンジェリンの声がハモった。

 何はともあれ、次は話し合いか……ドンパチやってる方が楽なんだけどな。




ガンドルフィーニ先生?炎弾に巻き込まれましたよ、ええ。

魔法を使ったのは名も無き新人君だけ。まともな戦闘を行ったのは、神鳴流の彼女だけ。
十歳の少年に為す術なく蹂躙される彼ら。
……多くの魔法先生にトラウマを残した気がする。
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