リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第四鬼~赤鬼と刃、無限~

side~宏壱~

 

「お前は、確か貂蝉が俺に渡したデバイスってやつか?」

 

 

 俺に語りかけてきたネックレスにそう問いかける。

 

 

〈はい、主〉

 

 

 俺の問に、そう簡潔に返すその声にどこか柔らかいものが含まれていた。

 

 

「(ん? でも確か二つあったような)……なあ、確か二つ受け取ったと思うんだが。あーこの場合二機か?」

 

 

 疑問に思った事を問う。親父の教えは『聞く恥よりも知らぬ恥』だった。無知ほど罪なことはない。前世でも、前々世でもそれが身に染みて分かった、学んだことだ。

 

 

〈どちらでも構わないかと。彼女は裏の道場に居ます〉

 

「さっき、見たときは何もなかったけどなぁ」

 

 

 道場というのは、この家の裏にある幅約10m、長さ約20mほどのもので、二人で鍛練するならちょうど良い広さのものだった。

 因みに、廊下の奥に引き戸が付いていて、そこから道場のある裏庭に出られるようになっている。

 

 

「つーか、まだ起動とかしてないんだけど俺。どうなってんだ? それに主って登録もしてないんだけど」

 

〈その話は、彼女と合流してからにしましょう〉

 

「まぁ、説明してくれんなら、別にもんくはないけどな」

 

 

 そう言って立ち上がり、テーブルの上にあるデバイスを取り、玄関から靴を持って裏口に向かい、そこから道場に向かう。

 滑るように道場の木でできた戸が開く。靴を脱ぎ道場に入ると、ギッギッと木の床板が鳴る。周りを見渡せばすぐにそれは見つかった。

 

 

〈御主君、こちらです〉

 

 

 そいつは嵌め込まれた黒色の宝石を点滅させながら俺を呼ぶ。(この場には俺しかいないし、多分俺のことだと思う)

 

 

(まぁ、ボケッと突っ立てるわけにもいかねぇしな)

 

 

 そんなことを思いながらそのネックレスの下へ向かい、床に正座して黒色の宝石を嵌め込まれたネックレスの横に、白色の宝石を嵌め込まれたネックレスを置く。

 

 

「そんで、何でお前ら起動してんの?」

 

〈〈それは、一時的な起動許可を貂蝉/貂蝉殿から頂いたからですよ〉〉

 

 

 二機がそう声を揃えて言う。

 

 

「アイツそんなもんも持ってんのか」

 

〈ええ、一応我らの製作者ですし〉

 

〈厳密には違いますが〉

 

 

 白色の宝石がそう言い、続くように黒色の宝石が補足する。

 

 

「厳密には違うってのはなんだ?」

 

〈主、あなたですよ〉

 

「は?」

 

 

 思いもよらぬその言葉に、間抜けな声が漏れる。

 

 

〈ですから。御主君、あなたが我らの産みの親なのです〉

 

「……いやいやいや、なに言ってんだ? 俺が作ったことがあるのは〈刀であってネックレス、ましてや我らのようなものではない、と?〉………何で知ってんのか知らねぇけど、そういうことだよ」

 

 

 俺がデバイス達の言葉を否定するために、少し大きな声を出すと落ち着けるように、白色の宝石が優しく声を被せてくる。白色の宝石が言ったように、鍛冶師から指導を受けながら刀を打ったことはあるが、ネックレスなんざ作ったことねぇし、当然デバイスなんてあるわけがねぇ………いや、待てよまさかなぁ。

 

 

「なぁ、お前らの名前って」

 

〈今の我らに名はありません〉

 

〈強いて名乗るとすれば〉

 

 

 そう言って二機は少し間を空け、俺の予想通りの名を名乗る。

 

 

〈我は『骨龍刀・刃』〉

 

〈我は『黒龍刀・無限』〉

 

〈〈我ら『赤鬼・山口(さんこう)』最強の矛なり〉〉

 

「やっぱりかぁ……」

 

 

『骨龍刀・刃』、『黒龍刀・無限』。この二本の刀は俺が前世から愛用してきた刀で、明命(周泰)が愛用していた『魂切』を作った人物でもある。ちょっとした縁があり、『刃』、『無限』を作るときに師事した人だ。ホント苦労した。「最強の武器にしてやる! 龍を狩ってこい!!」何て言い出すもんなぁ。お陰で……まぁ、今はいいや。話を戻そうか。

 

 

「で、お前らが刃と無限だってことくらいは何となく分かった。なんでまた、わざわざ起動許可までもらって話し掛けたんだ?」

 

〈主と会話をしてみたかったというのもありますし〉

 

〈貂蝉からの言伝もあるのですよ〉

 

「貂蝉から?」

 

 

 貂蝉からの伝言? 何か他に言うことでもあるのか?

 

 

〈はい、『蜀伝の書』を起動する際に注意してほしい事があるとか〉

 

〈貂蝉から音声データを預かっています。刃、再生してくれ〉

 

〈ええ、分かっています。では、再生始めます〉

 

[山ちゃん聞こえるかしらん?]

 

 

 そう刃が言うと、暫くして貂蝉の声が道場内に響き始めた。どうでもいいがネックレスから、野太いオカマの声が聞こえるってすんごいシュールだな。

 

 

[これを聞いてるということは、無事そっちに着いたみたいねぇん。少し伝え忘れたことがあるのよぉん。山ちゃんが目を覚まして二週間後、『蜀伝の書』の調整が完了するって話だったけど、いきなり劉備ちゃん達皆を召喚することはできないわぁん。]

 

「はぁ? 何で?」

 

 

 貂蝉に声が届くはずもないのに、思わずそんな声を上げてしまう。

 

 

[って言うのも山ちゃんの身体に、リンカーコアが馴染みきってないのよん。『蜀伝の書』から劉備ちゃん達を召喚するには、それなりの魔力が必要なのよん。幼いうちからある程度リンカーコアに負荷をかけて魔力量の絶対値、魔力放出量を鍛えるのは可能よん。だからこそ、そこまで幼くしたの。劉備ちゃん達一人ひとりが、召喚する度に凄まじい魔力量を持っていくわ。召喚した後なら召喚時に持っていった魔力と、空気中にある魔力素で外に出ていられるのだけれど、魔力が切れれば『蜀伝の書』に戻るから安心してねぇん。]

 

「あ~、まぁ言いたいことは分かった」

 

 

 ま、取り敢えず鍛えろってことだろ。なら何も変わらねぇな。

 

 

〈今簡潔に、まとめましたね〉

 

〈それが、御主君の良いところだろ? まだまだだなお前は〉

 

 

 フッなんて鼻で笑いながら(鼻ないけど)見下しように刃にそういう無限。

 

 

〈むっ、私とあなたの誕生日はそれほど変わらないでしょう!〉

 

 

 無限に声を荒げてそう言う刃。

 

 

〈だいたい、あなたは昔からそうなんです! 何かにつけて姉面をしようとして! 身長や乳房なら私があなたより高いし大きいです!〉

 

〈なっ!? それは関係ないだろう! そもそも身長はともかく胸は小さくないぞ! 馬超並みはある! 充分巨乳の部類だ! そもそも――〉

 

 

 形勢逆転だなぁ、なんて現実逃避をしていたが、そろそろ我慢できなくなってきた。

 

 

〈だいたい、あなたはがさつすぎるんです! 女だと言うのなら身嗜みに、もっと気を付けなさい!〉

 

〈なら言わせてもらうが、お前のあの下着はなんだ! 透け透けじゃないか! それで何を隠すつもりだ!〉

 

〈ひ、人のタンスを勝手に開けたのですか!? この下着漁り! 変態!〉

 

〈誰が変態だ! 誰が!〉

 

〈あなたしかいないでしょう!〉

 

〈そんなことを言えば御主君は――ガシッ――っ!? ご、御主君?〉

 

「お前は何を言おうとしたん? ん? 怒らへんから言うてみぃ?」

 

〈ひいぃ!〉

 

 

 おもろい話が聞けそうやったから、無限を優しく(・・・)左手に持って笑いかけたら悲鳴あげよった。失礼な奴やで、ホンマ。

 

 

〈あ、あの主何も無限は悪気があって言ったわけじゃなくて、その〉

 

「あ~ん? 何が言いたいんや? はっきり言うてみぃ、ん?」

 

 

 刃が声かけて来よったから、刃の方に顔を向けて優しく(・・・)聞いたる。何か震えとる気がするけど……気のせいやろ。

 

 

〈えっと、だから〉

 

「あ、そういやお前も何か言おうとしとったなぁ」

 

 

 特になんも言うてへんだけど、何となく右手が手持ちぶさたになり、刃を掴む。

 

 

〈え? あ、主?〉

 

 

刃が戸惑ったような声を上げる。

 

 

〈な、何で私まで!? 無限、あなたが主を怒らせたのです! なんとかなさい!〉

 

〈なっ!? わ、私か!?〉

 

〈あなたの所為でしょう!〉

 

〈うぐっ! ………よ、よし〉

 

 

 二機がなんか怒鳴りあっとんのを、暫く聞いとったらなんか無限が決意固めよった。まぁ聞きたいこともあるし、させへんけど。

 

 

〈あ、あの御主君――ビキッ――え?〉

 

〈あ――ギリッギリギリ――るじ〉

 

 

 無限のネックレスにちょっと罅いっこったけど気にせえへんよ? 俺強いもん。

 

 

「さて、んだらいろいろ聞こか? 洗いざらいはいてもらうでぇ?」

 

 

 そう言いながら握る力を強め………優しくソフトに持ったる。

 

 

〈あ、主待ってください!〉

 

〈い、今ご説明しますから!〉

 

「おう、聞いたるからキリキリ吐けや」

 

〈で、ですからこの手を離してください!〉

 

〈このままでは喋れません!〉

 

「ははは、まぁ頑張れや」

 

 ギリギリギリ、ミシミシミシ

 

〈〈イィヤアァァァァ〉〉

 

 

 道場の外まで二機の悲鳴は響いた。

 

 

 

 

 

 所変わって此処は客室、押し入れにあった寝具を引っ張り出して枕元に置いた刃、無限と会話している。

 

 あれからあったことを簡単に説明しよう。

 何でも魏を頂点とした、蜀、呉、魏の三國での和平を結んだ辺りから付喪神としての意識があったそうだ。意識自体は、俺が作ったときから有ったらしい。俺と共に戦場を駆けるなかで、命を奪うこと以外にも役に立ちたかったらしい。

 そう思うなかで、平和が訪れたら自分達は、用済みで捨てられるんじゃないかと不安に思っていた矢先、人間の姿になれた、でも今度は人数が増えて俺が大変なんじゃ、なんて思いもあり陰で見守ることに徹することで意見が一致、でも想いは抑えきれない。そんなときに貂蝉から今回の話を持ち込んできた。

 何でも、俺の魔力量が一定値を超えればその魔力を利用して、前世のように人の形をとれる、武器が喋ってもおかしくない世界だからこそだな。

 ま、そんな話をした後、腹が減ったんで飯食って風呂入って、俺が目を覚ました部屋はドアを開けるのが疲れるから、客間で寝ることにして今に至るわけだ。

 

 

〈主、ありがとうございます〉

 

「ん? 急にどうした?」

 

 

 ちょっとした回想に耽っていると、優しく静かに刃が話しかけてくる。

 

 

〈いえ、言ってみただけです〉

 

「なんだそりゃ………まぁ、でも、どういたしましてって返しとくよ」

 

〈はい〉

 

 

 刃と静かに会話していると、嫉妬心でも起こしたのか、少し焦った風に無限も話しかけてくる。

 

 

〈御主君!〉

 

「うおっ! びびったぁ。近くにいんだからそんなでかい声出さなくても聞こえるって」

 

〈まったくです。そそっかしい〉

 

〈うっ。と、兎に角聞いてください〉

 

 

 俺と刃に嗜められたのが効いたのか、少し声量を落とす無限。

 

 

「はは、で? なんだ?」

 

 

 そんな無限に少し笑みが零れた。

 

 

〈これからもよろしくお願いします〉

 

「おう」

 

 

 無限の言葉に短くそう答える。

二人(・・)の言葉の意味を考える。相棒として共に戦場を駆けた二人。おそらく桃香達よりも長い時を一緒にいただろう。そんな俺に自分達は物の怪のような存在だった、それを受け入れてもらえたからこその『ありがとう』だったんだろう。

 そして、これからも俺の矛として奪うんじゃなく、守るために戦う、心身共に支えるという意味での『これからもよろしく』だったんだと思う。

 真意は別にあんのかもしれない、でもこれもあながち間違ってねぇんじゃねぇかなと思う。

 ま、明日から忙しくなるんだ。早く二人を人形にできるようにしねぇとな。桃香達のこともあるし、な。

 

 

「二人共、おやすみ」

 

〈〈御休みなさいませ主/御休みなさいませ御主君〉〉

 

 

 二人の声を聞いて眠りにつく。

 

 

 

 

 

side~刃~

 

 主が眠りにつかれました。

 

 

《それにしても。聞いたか? 刃》

 

 

 主の眠りを妨げぬようにとの配慮でしょう、無限が

 思念通話で私に問います。

 

 

《ええ、二人(・・)ですか》

 

 

 無限に倣い私も思念通話で返答します。

 

 

《うむ、最初は二機だったのに我らが共に戦場を駆けた『骨龍刀・刃』、『黒龍刀・無限』だと知ったとたんにだ。ほとんど疑いもしなかった》

 

《確かに》

 

 

 そう同意しながらも、当然だと私の心が言います。ええ、当然なんです。この程度のことで揺らぐほど、私と無限、そして主の絆は脆くはないし、不安定でもありませんだからこそ〈当然なんです〉

 

 

〈ん?〉

 

〈当然なんですよ。無限〉

 

 

 思わず声に出た言葉に反応する無限。だからこそもう一度同じ言葉を繰り返します。繋いだ絆が確かなものであると再確認しながら。

 

 

〈当然、当然か。そうだな。ああ、当然だ〉

 

〈ええ〉

 

「ん……んん………すぅー……すぅー」

 

 

 主が少し顔を顰めて寝返りをうち、また静かに寝息が聞こえてきました。

 

 

《我らも休もう。それほど長い時間動けるわけではない》

 

《そうですね。今は主も眠っていますが、もともと気配に敏感な方です。あまり騒がしくしては眠りを妨げることにもなりかねません》

 

 

 それでなくても、今の私達では後もって三日もすれば、主からの再起動を受けなければならなくなります。それも先の話になるでしょう。お側にいられる時間を自ら減らすこともない、もう休みましょう。

 

 

〈御休みなさいませ、主。無限、お休みなさい〉

 

〈御主君、お休みなさい。刃、お休み〉

 

 

 その言葉を最後に私と無限はスリープモードへ移行し意識を闇にとかしていきます。最愛の主の温もりと、友の存在を側に感じながら。

 

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