リリカルなのは~赤鬼転生記~   作:コントラス

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第六鬼~赤鬼と試験前・チームメンバー~

  side~宏壱~

 

「受験者の受付はこちらになります。時間も余りありませんので、まだ済ませていない方は、お早めにお願いします」

 

 

 今、俺は第一管理世界ミッドチルダの首都・クラナガンと呼ばれている場所にいる。午前中の授業を終え早退、家に帰り優雪に家の留守を任せ、付き添いの菫とここに来た。ここは、さっきも言ったように第一管理世界ミッドチルダの首都・クラナガン。そして時空管理局地上本部の演習場前隊舎の中にある受付の前だ。

 

 

「宏壱様」

 

「おう」

 

 

 菫の呼び掛けに答え、受付へ向かう。

 

 

「えっと、君が受けるのかな?」

 

「ん? ああ、そうだけど、おかしいか?」

 

「え? いや、そうじゃないんだけど………本当に君が? そこの人じゃなくて?」

 

 

 受付の女が、あまりにもしつこくて眉間に皺が寄る。

 

 

「そこの名簿を確認すりゃあいいだろ? 山口宏壱、ちゃんと書いてるはずだ。それに、筆記試験の受付の時に証明写真を渡したはずだ。それを確認すれば分かんだろ」

 

 

 少し乱暴な物言いになったが、まぁ、気にしてなさそうだし、構わねぇだろ

 

 

「あ、う、うん。えっと……こういちくん……こういちくん……あ! あった! 受験番号7番山口宏壱くん、顔写真とも一致!」

 

 

 そんな受付嬢のテンションに「はぁ」と溜め息が漏れる。

 

 

「あ、あはは、ごめんなさい」

 

 

 乾いた笑いの後に頭を下げて謝罪する彼女に驚く。

 

 

「こんなガキに素直に頭を下げるとか、あんたおかしくないか? どっか頭のネジ飛んでんじゃね?」

 

「ひどっ!? それは酷くないかな!」

 

「そんな事より早く案内してくんね?」

 

「そんなこと!? どんどん私の扱いが酷くなっていくよ! 訴えてやる!」

 

 

 横に置いて話を進めようとすると受付嬢が騒ぎ出す。「めんどくせぇ女だな」

 

 

「声に出てるから! 思いっきりめんどくさいって、声に出てるから! 思うだけにしてよ!」

 

「菫」

 

「御意」

 

 

 受付嬢を無視して菫に声をかける。何処からともなく菫が取り出した台の上に乗り、受付嬢の頭に手を伸ばす。ちょっと涙目の受付嬢がかわいいと思ったのは内緒な。

 

 

「ほ~ら、よしよし、もう苛めないからな~」

 

 

 そう言って受付嬢の緑色のちょっと癖っ毛のある髪を撫でる。

 

 

「ううっ、こんな子供に子供扱いされるなんてぇ」

 

「はははは」

 

 

 一通り受付嬢で遊んだ後、案内をしてもらう。

 

 

「ううう、じゅ、受験者の方はこれを持ってあちらにある扉を潜り、係の者にお渡しください。付き添いの方は、あちらに控え室がありますので、そちらでお待ちください」

 

 

 受付嬢が少し目の端に浮かんだ涙をぬぐい、気を取り直し俺に受験番号と氏名の書かれた手のひらサイズのカードを渡し、俺と菫にそれぞれ向かうべき場所を手で指し示す。

 

 

「了解っと、じゃあな菫。行ってくる」

 

「御武運を」

 

「おう」

 

 

 菫と別れ、受付嬢の示した方へと歩く。

 扉を潜った先には、500m四方を建物に囲まれた場所があり、等間隔で建物に沿うように木が植えられている。上から見ればカタカナのロ、若しくは漢字の口のような形になっているんだろう。

 

 

(係員はっと)

 

 

 辺りを見渡すと、猫耳としっぽを生やした女がいた。多分あれが係の人なんだろうけど………人? かあれ。

 

 

「あー、これを渡せって言われたんだけど」

 

「んにゃ? あー、はいはいっと」

 

 

 近づいて女に声を掛けるが、何が気になるのか10mほど先にある木から視線を外さずに、俺の差し出すカードを取る。何かいんのか? 鳥とか。

 そんな女を頭の先から爪先まで、眺める。髪が短く黒を基調とした服を着た女だ。スタイルなかなかだし、足が長い、かなりの美脚だな。と言うか露出し過ぎだろ! ワンピース?の丈がさ、太股見えてんだよ! チラリとかじゃねぇよ! 見えてんの! んで柔らかそうだな!おい! 胸も星並みにあるし!何より………強そうだなぁ、ええ?

 

 

「っ!?」

 

 

 女が弾かれるように、俺に顔を向ける。目は大きく見開かれていた。

 

 

「今のは……あんたが?(この子、なに? 尋常じゃない魔力を感じる。しかも、あたしに向ける視線、目が語ってる闘いたいって)」

 

 

 へぇ、気づけるんだな。ちょっと闘気を漏らしただけなんだけどなぁ。

 

 

「そんなことより、何処に行けばいいんだ?」

 

 

 闘気を納め女の言葉を無視して尋ねる。暫く俺を睨んでいたが、反応しないと分かると浅く溜め息をついて表情を緩める。

 

 

「付いてきて(考えるのは後でもできる。なら、この試験中に見極めればいいんだ)」

 

 

 女が前を歩き、その後ろを俺が追う。

 

 

「他の受験者は良いのか? 後から来る奴とか」

 

「ああ、あんたで最後だから、もうあそこにいても意味はないんだよ」

 

「ちょっと遅れたか? 受付じゃあそんなこと言ってなかったけどなぁ」

 

 

 頭を掻きながらそう言う。

 

 

「まだ予定の時間にもなってないよ」

 

「そうか。なら良かった」

 

 

 他の連中が早かっただけみてたいだな。

 

 

「あんたの名前聞いても良いか?」

 

「あたし? あたしはロッテ、リーゼ・ロッテ。双子の姉がいるからロッテって呼んで」

 

「知ってると思うが、山口宏壱だ。じゃあ俺も宏壱で」

 

 

 幾つか言葉を交わす。中々に気さくで話しやすい、馬が合うってやつだな。

 ロッテに聞いたんだが、どうもロッテと姉のアリアは使い魔ってやつらしい、ギル・グレアムっておっさんが主らしく父様って慕ってんだと。ファザコンだってのはすぐ分かったけどな。

 向かいの建物に入りブリーフィングルームと書かれた部屋の前に来る。

 

 

「しつれーしまーす。最後の一人連れてきたよ」

 

 

 ドアをノックしそう言いながら部屋に入るロッテ。

 

 

「受験番号7番、山口宏壱今着きました」

 

 

 慣れない敬語? を使い部屋の中に入る。

 入り口側にホワイトボードがあり、それに向かって椅子が並べられている。凡そ二十五名の人が座り、その前に一人の男とロッテを含めた四人の女が並んでいる。ここに来るまでにロッテが教えてくれた席に座る。

 

 

「これで全員だな」

 

 

 真ん中に立つ男が確認するように言う。黒髪の長身の男、その実力から裏付けされた確かな自信を感じる。目を見れば分かる。強いな、他のやつらもロッテを含めかなりの実力者だ。

 

 

「では、我々の自己紹介から始めよう。………俺はゼスト・グランガイツ、今回の実技試験官の責任者だ」

 

 

 黒髪の男、ゼスト・グランガイツが名乗ると右横にいた、青色の長い髪をポニーテールにした女が一歩前に出る。

 

 

「クイント・ナカジマです。ゼスト隊長の補佐をさせていただきます」

 

 

 クイント・ナカジマ、か。ファミリーネームが日本人みたいだな。クイント・ナカジマが下がり、今度は反対側に立っている、紫色の長い髪をストレートに下ろしている女が前に出る。

 

 

「メガーヌ・アルピーノです。クイント・ナカジマと同じくゼスト隊長の補佐をさせていただきます」

 

 

 メガーヌ・アルピーノが下がり、その横に控えていたロッテと多分ロッテが言ってた双子の姉アリアだろう(髪の長さ以外はほとんど見分けがつかないけど)が前に出る。

 

 

「わたしは、リーゼ・アリア」

 

「あたしが、リーゼ・ロッテ」

 

「わたしとロッテは双子なの」

 

「あたし達もゼストの補佐をするから」

 

 

 この場にいる男は俺も含めて十八人、そのうち子供が四人、俺以外の三人は十~十五歳ってところだ。(俺が最年少みたいだな)そいつら含めて男共の雰囲気が色めき立つ。残り八人の女達の目が冷たくなる。

 まぁ、男共の気持ちも分からんでもない、ロッテを始め他の三人も美人でスタイルも良い、男を興奮させるには充分だろうからな。

 

 

「こほんっ、では今から実技試験の説明をする。聞いているとは思うが、筆記と実技共に合格点を取らねば、今回の試験に合格することはできん。筆記は一定以上の点数を取れば合格できるが、実技は我々五人全員を満足させねばならん。忘れるな」

 

 

 色めき立つ男共の雰囲気を咳払いで払拭し、合格基準を改めて説明するゼストさん。そこから実技試験の説明を始めていく。

 

 

「今回の実技試験は君たちで五人一組のチームを4つ、六人一組のチームを1つ組んでもらう。我々五人のうち一人と模擬戦を行い試験官から合格をもらうことが今回の試験だ。尚、一度模擬戦を行った試験官を選ぶことはできない」

 

 

 またも室内が騒がしくなる。今回は驚きと困惑、そして憤り、か? 何人かが拳を握りしめているのが見えた。まぁ、ここに来てるんだ、それなりに腕に覚えはあるだろうし、プライドだってあるはずだ。それを、複数で掛かってきても負けねぇ! なんて態度をとられたら当たり前だろうな。

 この場にいる連中が目の前の五人に勝てるとも思えねぇけどな。

 

 

「今から30分の時間を与える。その時間内に決めてくれ」

 

 

 ゼストさんがそう言った瞬間に動き出す受験者達。

 

 

(当然だろうな。魔力量の多いやつを自チームに引き込みたいよなぁ、普通)

 

「君、ちょっといいかな?」

 

「ん?」

 

 

 人数の少ないとこにはいりゃいいかなぁ、なんて考えてボーッとしていると声をかけられた。声の方に顔を向けると四人の女と一人の女顔の少年がいた。所謂男の娘ってやつか?

 

 

「何だ?」

 

 

 聞くと、一人の十二歳くらいの背が低く小柄でライトグリーンの髪を短めに切り、青い花の髪飾りを右側頭部に刺した少女が体をビクつかせる。

 

 

「あ、えっと、良かったらでいいんだけど、私たちのチームに入ってくれないかぁ、なんて」

 

 

 吃りながら喋る、長い赤毛首元で二つに結って背中に流している活発そうな女。

 

 

「ああ、いいよ。一人足りないとこに入ろうと思ってたから」

 

「そ、そうなんだ」

 

 

 五人が微妙な顔をする。ちょっと言い方が傲慢すぎたか?

 

 

「んっ! んんっ!」

 

 

 咳払いして声の調子を整える。そんな俺に首をかしげる五人。

 

 

「誘ってくれてありがとう。助かる」

 

 

 少し頭を下げて礼を言った。

 

 

「あ、う、うん! みんなもこの子でいいよね?」

 

「は、はい! 大丈夫です!」

 

「まぁ、人数合わせみたいなもんだし、良いんじゃない?」

 

「はい、僕も大丈夫です」

 

「……」

 

 

 それぞれの返事を返す。一人ウトウトしてるけど。

 

 

「じゃあ、自己紹介しよっか。取り合えず出身世界と名前、得意な魔法でいいかな?」

 

 

 赤毛の女の言葉に、頷く俺たち。まだ時間もあるし、そんくらいなら出来んだろ。

 

 

「じゃあ、私から。出身世界は第10管理世界コトブス。緑の多い世界で、いろんな鳥がいるよ5cmくらいのやつから10mぐらいのやつまで。名前はルイーヤ・バルセット、みんなはルーヤって呼ぶ、そう呼んでくれると嬉しいかな。得意魔法は捕獲系だよ」

 

 

 赤毛の女、ルーヤを皮切りに自己紹介する。

 

 

「えっと、うんっと」

 

「落ち着いて深呼吸して。大丈夫、君ならできるよ!」

 

 

 ルーヤがさっき俺の言葉で体をビクつかせていた少女を落ち着かせる。周りを気遣える娘なんだろう。

 

 

「は、はい。すぅー……はぁー……すぅー……はぁー……」

 

 

 目を閉じて二回、三回と深呼吸して目を開ける。芯の強い目をしている。切り替えがうまいな。

 

 

「わたしは、レイ・アセル・モーズです。レイって呼んでください。出身世界はミッドチルダ西部エルセアです。幻術魔法が得意です」

 

「あたしは、アル・フェルト、アルでもフェルトでもどっちでも良いわ。出身世界は、第52管理世界ギュストロー、変換資質『炎熱』を持ってる。射撃魔法が得意よ」

 

 

 おそらくこの中では最年長、歳は二十前後、蒼色の髪を肩口で切り揃えた気の強そうな女がめんどくさそうに言う。

 

 

「僕は、ニッツ・マーケン、ニッツって呼んでください! 第三十七管理世界パイネ出身です! 星の九割が海に覆われていて僕たちは浮遊島で暮らしてます! 魚が美味しいです! 今度来てください! 僕もアルさんと同じく射撃魔法が得意です!」

 

 

 男の娘、そんな表現がしっくり来るほどの女顔。アッシュブロンドの髪をボブカットにしたニッツが言う。て言うか元気良いなコイツ。

 視線は眠そうな少女に移る。

 

 

「ふわぁ~~あふぅ、むに? あ、わたしのばんでふかぁ~?」

 

「う、うん。そうだよ、えっと、大丈夫?」

 

 

 眠そうな少女にの質問に律儀に答えるルーヤ。

 

 

「はひ、わらひはぁ~、あーあー、んっんんっ! わたしはデリッツシュ・マッサロですぅ~。リッシュって呼んでくださいぃ~。出身世界は第22管理世界リーザトールですぅ~。陽気な気候で眠たくなるんですぅ~。のんびりするには良いところですぅ~。得意な魔法はシールド系ですぅ~」

 

 

 肩甲骨まで届く淡い桃色の髪を緩くカールさせている眠たそうな女、リッシュの自己紹介も終わり俺の番になる。

 

 

「山口宏壱だ。山口でも宏壱でも好きなように呼んでくれ。第97管理外世界地球の生まれだ。魔法は発展してない、お伽噺だと思われてる。得意な魔法は特にないが、強いて言えば強化魔法だな。あと氷結変換資質を持ってる。得意な距離はクロスレンジ」

 

「へぇ~、珍しいね」

 

「そうなのか?」

 

「はい! 電気や炎熱なら僕の周りにも何人かいますけど氷結はいません!」

 

「あんたそんなことも知らないの? これだからお子ちゃまは」

 

「……関係ないと思いますけど」

 

「はぁ、んなこといいから、誰にするんだ?」

 

 

 少し脱線し始めたから、誰に挑むかを話し合うように持っていく。時間も少ないしなぁ、後で時間とるんだろうけど、10~20分程度じゃ無駄だろうしな。

 

 

「じゃあ、誰がいいかな?」

 

「誰でも良いでしょ。この人数よ? 一人に負けるはずないわ」

 

「はい! 僕もそう思います! 僕たちは一人多い分有利です!」

 

「で、でも用心はした方がいいんじゃ」

 

「そうですねぇ~、試験官を務めるくらいですしぃ~、実力はかなりのものだと思いますよぉ~」

 

「うん、宏壱君はどう思うかな」

 

 

 黙って話を聞いている俺に、ルーヤが問いかけてくる。

 

 

「こんなガキンチョに聞いても意味ないでしょ」

 

「で、でもみんなで話し合わないと」

 

 

 アルが無駄だと言い、ルーヤがみんなの意見を聞かないと、と主張する正反対だな。まぁ、聞かれたら答えないわけにもいかんでしょ。

 

 

「一緒だよ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

 メンバー全員がキョトンとする。

 

 

「いや、ゼストさんと闘いてぇ、って言ったんだ」

 

「いや絶対違うでしょ。もっと短かったわよ」

 

「じゃあ、僕そう伝えてきますね!」

 

「えっ!? ちょ、ちょっと!ニッツ君!」

 

 

 俺の言葉を疑うアルに、俺の言葉を聞いて立ち上がり伝えにいくニッツ、ポカーンとしているレイに、手を伸ばしニッツを止め切れなかったルーヤ。カオスだな。因みに俺はニヤニヤ、リッシュはニコニコと種類の違う笑みを浮かべていた。

 

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