ソシャゲのネタ一般人キャラが超有能過ぎる! 作:あらあら
西暦2089年の世界にて大流行していたソーシャルゲームが存在した。
その名は――《エーテル・アルテミア・オンライン》、通称《EAO》。
ファンタジーをベースに現代の要素も取り入れた王道の冒険ストーリー。
主人公は祈手と呼ばれる存在となり、世界をまたにかけて世界誕生の歴史を究明していく事になる。
祈手たちはクランを結成し、飛行船に乗り込み世界を旅する。
多くの仲間たちと出会い、謎の敵勢力とも戦い。
成長と共に、仲間たちとの絆を深めていく。
キャラクターたちは一癖も二癖もあり、デザインも美麗であった。
誰からも好まれるデザインであり、運営の神対応も相まって世界中で流行していた。
そんなソシャゲの世界には、所謂、人権キャラというものが存在する。
大体の人権キャラが最高レアリティのキャラクターに対し。
EAOでの人権キャラは――☆1の低レアキャラであった。
課金様子が無い簡単なミッションの達成で仲間になる存在。
それも、華々しい経歴の無い工場の仕事を退職したばかりに52歳の中年である。
デザインもごく普通であり、ただのくたびれたおじさんだった。
誰しもがこんなキャラを使う事は無いと当初は思っていた。
が、運営から謎に押しが強く。
仕方なしにパーティに入れていたプレイヤーたちは舌を巻く事になる。
『はぁ……あるよ』
『大丈夫? これ、使いな』
『なんか慌ててたから、勝手にやっといたよ』
一日に一回、プレイヤーの望むアイテムであればドロップ率も関係なしに調達し。
死ぬ未来が確定していたキャラクターたちも、おじさんがパーティにいるだけで救済が成される。
プレイヤーの絶望的なプレイミスでさえも意味不明な方法でカバーする。
攻略不可能とされる高難易度ミッションであろうとも、強力なサポート能力によって解決する超有能キャラ。
気づけば、この何処にでもいるおじさんは文句なしの人権キャラになっていた。
否、人権を通り越して殿堂入りを果たしていた。
おじさんの名前は“茂雄”。
公式から明かされた存在する筈の無い唯一の日本人キャラ。
本来、繋がる事が無かったゲームの世界と現実世界が繋がる時。
茂雄の未来は本来のものから――大きく変わっていく事になる。
〇
朝の6時。
お日様の光を浴びながら、縁側で茶を啜る。
「はぁ……暇だなぁ」
渋い緑茶を飲みながらぼやく。
長年勤めていた会社をやんごとなき理由で退職し、少し早めの隠居生活を送っているが。
やる事が無くて暇で暇で仕方がない。
空島の一つであるムール島のエリア5。
一等地に家を建ててはみたものの、伴侶も友人もいないので広くて仕方ない。
適当に売り払って、もっと小さいところに住もうか。
そんな事を考えていれば、あっと言う間に52歳になっていた。
「時の流れはぁ、早いよなぁ……はぁ」
趣味と呼べるものはボードゲームくらいしかない。
テレビを見ても、面白いと思えるのは漫才くらいだ。
自分自身にギャグセンスがなく、会社の忘年会で披露した一発ギャグも滑ってばかりだった。
何か一人で出来る楽しみを見つけないと、そんな事を考えて――飛行船を見つけた。
「あれまぁ、随分と近いなぁ……なんか、こっちに来てねぇか? あれ」
飛行船がハッキリと見えた。
それも一つ二つではなく、十隻以上だ。
間違いなく此方に向かって来ていて――家の前にいかりが降りて来た。
ごすごすと音がして、中には庭に落ちて来たものもある。
そうして、人が飛行船から降りてきて――三人の若者たちが駆け寄って来た。
「ああああの!! 茂雄さんですよね!?」
「あああ握手してくださいぃぃ!!!」
「ぜ、是非、俺たちの仲間になってくれませんかぁ!?」
「お、お、お? 何々? 何だね君たちはぁ? 仲間ってこんなおじさんに何させる気よぉ」
若い男女。
その装いは白を基調とした神官のようなものだった。
バイザーのようなものを着けていて、手には錫杖のようなものを持ち――また誰か降りて来た。
一人は大きな剣を背負った露出の凄い筋肉質な長い赤毛で長身の女性。
もう一人は青を基調とした和服を身にまとう青髪三つ編みのたれ目の女性。
もう一人はぺろぺろキャンディーを齧る大きなハンマーを持ったギザ歯の金髪ツインテール少女。
「……あぁ? そいつがマスターの言ってた絶対に欲しい人材ってか? ……全然つよそうにみえねぇんだが?」
「あらあら、そんなおじさんに目の色を変えて。私の方がお役に立てますよ。うふふ」
「えぇぇ、おじさん絶対にお荷物じゃん! いらないよぉ」
「……散々な言われようだねぇ。初対面なんだけど……まぁおたくのお仲間さん? も言ってるしさ。人違いですってことで」
「「「――てめぇら今なんつった?」」」
神官みたいな若者たちが首をごきりと後ろに向ける。
瞬間、派手派手な格好の女の子たちが腰を抜かした。
底冷えするような声で男女が吐き捨てるように発言する。
「茂雄さんがいなけりゃ、私たちは死ぬんだよ? さっき説明したよね?」
「茂雄さんがついて来てくれなかったら、誰が道を切り開くんだよ」
「茂雄さんだけは絶対に変わりがいねぇんだよ。お前ら、分かって言ってる?」
「「「う、うぅ」」」
「お、おぉ? すごい高く買ってくれるのは嬉しいけど……どっかで会ったことある?」
不思議な人たちだと思っていれば、此方に顔を向け直し満面の笑みを浮かべる。
「お、お食事に行きましょう! お腹減ってますよね!?」
「何でもご馳走しますよ!!」
「お好きなもの言って下さいよ!!」
「え、え? 急にんな事言われてもなぁ……本当に良いの?」
「「「是非!!!」」」
「そう? じゃお言葉に甘えましょうかねぇ」
「「「ぐぬぬ」」」
若い男女に手を引かれる。
こういう日もあるんだと思いながら、自分の人生が変わるような気がしていた。