ソシャゲのネタ一般人キャラが超有能過ぎる! 作:あらあら
最低限の荷物を鞄に入れて背負い。
甲板に出て見れば――自然が広がっていた。
巨大な木々が鬱蒼と生い茂り、それ以上に巨大な白い建造物の一部が微かに見えていた。
ほぼジャングルであり、怪しげな鳥やら獣やらの鳴き声が響き渡っていた。
ムーアとは比べられないほどに広い空島で……んー?
「なぁんか……見覚え、あるなぁ?」
「茂雄さん? どうかしましたか?」
「ん、あぁ、いやぁ……大丈夫大丈夫。そんじゃ行きましょうかねぇ」
「はい! よろしくお願いします!」
「「「……」」」
・
上陸メンバーの発表が行われて、島に上陸した。
生憎と、ザックス君もサラサちゃんも居残りであったが。
二人はバックアップは任せろと意気込んでいた。
ネイちゃんもおじさんを応援してくれていて、初めてのちゃんとした仕事であるから頑張りたいと思った。
「……神殿はこの奥ね……レント! どう思う?」
「……術式の反応がありますね。恐らくは……焼却の類でしょうか。感知タイプなので、踏めばアウトだと思います」
「……って事は、踏まずに何とか辿り着くしかねぇんだな? だりぃなぁおい」
「ふふふ、関係ありませんわ。罠があろうとも、我が天雷に掛れば全て一刀のもとに」
「やめてくださいよ。罠の術式を切断するなんて荒業、聞いたことがありませんよ。全く」
「……まぁ慎重に進みましょう。万が一があるからね」
サシャちゃんが端末を見ながら歩き始める。
レントと呼ばれた眼鏡を掛けたパリッとしたスーツにマントを羽織った青年はため息を吐く。
最初に会った大きな剣を背負った女の人はからからと笑っていた。
そして、和服の人はおじさんの事をちらりと見てから歩き出す。
「……あれね。レント、索敵を続けて」
「了解しました」
「……んー?」
暫く歩いて行けば、神殿と思わしき建物が見えて来た。
全員が初めて見るような反応だが。
やはり既視感があった。
見たことあり……やっぱり、若い時に来てたかなぁ?
歳なので思い出せないがそんな気がする。
考え事をしていれば、全員が一歩踏み出そうとし――
「待った」
「「「……?」」」
全員に待てを指示する。
サシャちゃんはどうしたのかと私に聞いて来る。
私はその場にしゃがんで、じっと前方を見つめて……何かあるなぁ?
「やめよう。真っすぐは多分、危ないよ。そのまま大きく左に回ってから……あの岩山を沿うように移動しよう」
「貴方は何を言ってるんですか? 僕の索敵には何も引っかかっていませんよ」
「あぁん? もう目の前だってのに、態々、あそこを通って行けって? 馬鹿言うんじゃねぇよ」
「ふふふ、役に立ちたい気持ちは分かりますが。あまり余計な事を言わない方が良いですよ?」
「……うーん、信じてくれないかなぁ? 本当に危ないんだけどなぁ」
頭を掻きながらどう説得しようかと悩み――サシャちゃんが動き出す。
「よし、じゃ全員、あの岩山まで移動しよう」
「「「……!?」」」
「お、話が早いねぇ。助かるよぉ」
三人が目を丸くする中で、二人で岩山へと向かう。
すると、遅れて三人が駆け寄って来た。
「な、何故ですか!? おかしいじゃないですか!? 何故、僕じゃなくてこんな素人の言葉を信じるんですか!?」
「そうだぜ!! 明らかにこのおっさんは魔術について知らねぇだろ? 何でそんな簡単に」
「最初からおかしいと思っていました。明らかに、このおじさんへに接し方は異常です。理由の説明を」
サシャちゃんが足を止める。
そうして、ゆっくりと振り返る。
「――茂雄さんだからだけど?」
「「「……ぇ?」」」
サシャちゃんはそれだけ言って再び歩き出す。
絶大に信頼されている思いながら、私も彼女の後をついていった。
岩山に手をつき、沿うように移動する。
下は谷になっており、落ちれば一巻の終わりだ。
全員が慎重に歩きながらも、ぶつぶつと文句を言っていた。
「……何で、この僕が……くそ」
「……はぁ、くそが」
「……チッ」
「空気が悪いねぇ。へへ」
「……アレ見て!」
先頭を行くサシャちゃんが足を止めた。
そうして、先ほどまでいた場所に指を向ける。
全員がそちらを向けば、鹿がとことこと歩いていた。
何かを探しているようで、そのまま無警戒で罠のある場所に足を踏み入れて――瞬間、地面が変化して巨大な口が出現した。
「「「……!?」」」
「おぉ、丸のみだねぇ」
「……やっぱり」
巨大な口はそのまま一瞬で鹿を喰らった。
そうして、何事も無かったように口は地面と一体化する。
ものの数秒で最初から何も起きなかったかのように整ったままの状態の地面に戻っていた。
三人は目を瞬かせて私を見つめる。
サシャちゃんは得意げな顔をしていた。
再び歩き始めれば、震える声でレント君が尋ねて来た。
「な、何で、分かったんですか? 術式の痕跡は何も無かった筈ですよね。い、一体」
「――勘?」
「か、かん?」
「そ、勘……まぁ地面を見て、明らかに他よりも土壌が良かったし、草がね? 整い過ぎてたんだよ。後は、空気が若干、生暖かい感じがしたくらいかなぁ? それで、何かいそうな気がして……それだけだよ」
「そ、それだけって……まるで、熟練の冒険者じゃないですか」
「「……っ」」
「はは、冒険者なんて大層なもんじゃないよぉ? ただ、若い頃は暇さえあれば旅に出かけてたねぇ。いやぁほとんど覚えちゃいないけど、楽しかったねぇ」
昔の事を語っていれば、サシャちゃんが足を止めてこっちを見ていた。
私はハッとして無駄話をして悪かったと謝る。
「……戻ったら、聞かせてくれませんか?」
「え、今の?」
「えぇ、私、すごく気になります」
「そう? 別におじさんの昔話なんて面白くないと思うけど……まぁ、いいよ!」
「ありがとうございます! ……信頼イベントでも聞けなかった裏話。ふふ」
「「「……?」」」
何やら楽しそうだと思いつつ、そのまま安全な場所を進んでいく。
既視感の正体は分からないものの。
あの中にも、何か危険なものがあったような気がしてならない。
白く立方体状の神殿。
表面を心臓の鼓動のように青い光が走っていて。
神秘的でありながらも、生命の力を感じるようで……ま、何でもいいけどさ。
旅は楽しく、仲間と共に喜びを分かち合う。
それこそが旅であり、アクシデントも楽しみの一つだ。
何が待ち受けているのかと楽しみに思いながら、おじさんは一人で鼻歌を奏でて見た。