メジロマックイーンの華麗なる現実ライフ。甘味を添えて。 作:灯火011
契約を交わした翌朝、マックイーンは帝国ホテルから用意された車に乗り込み、都内のとある大学病院の極秘区画へと移送された。
そこは一般の患者が立ち入ることのない、地下の特別医療フロアだった。
彼女を待ち受けていたのは、JRAの研究所と同様に、三親等まで徹底的な身辺調査が行われ、国家機密保持の誓約書にサインをした各分野のトップエキスパートたちで構成されたスペシャルチームだった。
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「これより、被検体の生体構造および遺伝子レベルでの詳細な解析を開始します」
リーダー格の医師の冷徹な号令とともに、マックイーンにとっての「モルモットとしての日常」が幕を開けた。
まずは基礎的なデータの収集。数十本にも及ぶ血液の採取が行われ、皮膚や口腔内の粘膜から細胞が採取される。ウマ娘の常識外れの回復力や筋力を支える秘密を探るため、検査は人間に対するそれよりも遥かに執拗で、かつ徹底的なものだった。
午前中は、消化器官の検査が続いた。
喉への局所麻酔を施された後、黒く細いファイバースコープ、つまり胃カメラが口から挿入される。咽頭を抜け、食道、胃、そして十二指腸へと至るまで、ウマ娘の消化吸収のメカニズムがモニター上に克明に映し出されていく。
異物が体内を這い回る不快感に、マックイーンは冷や汗を流しながらも、決して声を上げることはなかった。
そして、午後。
マックイーンは、冷たい無影灯が照らす内診台の上で、屈辱的な検査に耐えていた。
「……次、生殖器官のカメラ観察に移行します。力を抜いてください」
無機質な医師の声。人間の女性とは異なる部分があるのかどうかを確かめるため、デリケートな部位に医療用の特殊なカメラが挿入される。
「構造上の大きな差異は見られませんが……子宮壁の厚みと弾力性が人間の数値を大きく上回っていますね。映像、記録しておいてください」
淡々と交わされる医学的な所見。マックイーンは目を強く閉じ、無言のまま顔を真っ赤に染めていた。
恥辱と恐怖で体が小刻みに震える。だが、これは自分が「元の世界に帰るため」に交わした契約なのだ。メジロの令嬢としての矜持を総動員し、彼女はただひたすらに耐え忍んだ。
「……観察終了。続いて、卵子の採取および骨髄穿刺(こつずいせんし)に入ります。麻酔科医、全身麻酔の投与を開始して。量は成人男性を基本としよう。体重一キロに対して0.05ミリリットル。ただし、被験体は構造が異なるため、バイタルの変化には細心の注意を」
医師の合図とともに、点滴の管から冷たい液体の感覚が血管へと流れ込んでくる。
(……お祖母様……。わたくし、は……)
薄れゆく意識の中で、マックイーンは最愛の家族の顔を思い浮かべた。
視界が白くぼやけ、やがて完全な暗闇へと落ちていく。
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彼女の意識が途切れた後、医療チームは容赦なく作業を進めた。
超音波のガイド下で、腟から穿刺針(せんししん)が卵巣へと刺し入れられ、この世界にとって未知なる遺伝子を秘めた「卵胞液」ごと、卵子が慎重に吸引・回収されていく。
さらに、それと並行して、マックイーンの腰骨(腸骨)には太い針が突き立てられた。
骨の中心にある「骨髄液」を採取するためだ。造血幹細胞を調べ、ウマ娘の驚異的な酸素運搬能力や免疫力の根源を解析するための、痛みを伴う過酷な検査。
白い密室の中、ただの「新しい知的生物のサンプル」として横たわる少女。
彼女の体から引き抜かれた血液、細胞、卵子、そして骨髄液は、厳重に保管され、国家の未来を左右する極秘データとして解析へと回されていく。
こうして、メジロマックイーンの心身は、現実世界の冷徹な科学のメスによって、文字通り「隅から隅まで」暴かれていくのだった。