ガチで戦えダンジョンマスター   作:まっすァき

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第一話 最初のパッション

『本気で攻略しようとする人間たちを退けるため、あなたを招聘しました。この迷宮を、より難攻不落にしてください』

 スピーカーから投げかけられたその声は、感情を持たない機械の合成音声。まるで人間のようでありながら、決して人間ではない生命体。

 

 しかし、人工知能らしくないどこか差し迫った焦燥を感じる。

 この状況を、まずはなるほどね、と自分の中で咀嚼し、納得してみようと私は試みる。

 視線の先にあるのは、見上げるほどに巨大なホログラムの迷宮立体図と、天井を覆う複雑怪奇な魔力回路の群れだ。

 ダンジョンを制御するための魔力回路なのだろうが、可読性がクソだ。

 

 物理的なラベルも無い上に、物理的なボタンもない。魔法をわざわざ魔力回路一つごとに、能動的に発動させなければないカスのような配線構造。

 

 こんな粗雑な設計でも頼らなきゃ行けなくなった最大の原因は、思い返せば、すべては十年前から始まった。

 

 空間跳躍の場をすべて歪め、どこにワープしようにもここに来るよう空間的に隔離した。

 

 物流は大混乱、しかしやらねば並行世界から侵略を受ける。

 この世界の各地に建造された巨大な拠点へ、侵略者たちを迎え撃つために人員と物資が強制的に割り振られるようになった。

 

 異世界の侵略者、あるいは逆侵攻を行うための防衛ライン、それこそがこの『ブラックホール』という建造物なのだ。

 

 世界の存亡を賭けた総力戦だ。だから死力を尽くすべきだが、防衛戦争の様相は時代とともに変質していった。

 より楽に守れるように人工知能を用い、設計を省力化。

 

「なるほどねえ。機械によるおバカな自動設計じゃ、あの侵略者どもはもう止められないってわけだな」

「だから、人間の手による賢い設計に外注しにきた、と。そういう事だね?」

 

 私が皮肉げに唇の端を持ち上げると、スピーカーは淡々と言った。

 

『……言葉の端々にトゲがありますが、大筋で間違いありませんね』

『すでにこの迷宮は第二層まで侵攻を受け、いくつかの重要な防衛拠点を攻略されています。このまま機械的なアルゴリズムに基づいた防衛兵力の配置や迎撃を繰り返したところで、すり潰されるのはこちらの人員と魔力資源ばかりです。であれば、迷宮そのものの構造を根本から改良し、連中の足を完全に止めさせるべきだと判断しました。あなたを外部アドバイザーとして呼んだ理由は、まさにそこにあります』

 

 

「ふーん。で、きみの自慢の迷宮、今の構造はどんな感じになっているわけ?」

 

 私が問うと、目の前のホログラムがぐわんと音を立てて拡大し、幾層にも重なるダンジョンの全景が目が痛くなる赤と青と緑の線で描き出された。

 

『ご覧の通りです。広大な空間にそれぞれ容積の大きな部屋をいくつも用意し、侵略者がどちらに進むべきか迷うように、通路を多数、網の目のように分岐を複雑に設置しています。迷路としての複雑さは十分に確保しているはずなのですが……』

 

 その説明を聞いた瞬間、私は自分のこめかみを押さえたくなった。

 ああ、最悪だね、と心底うんざりした溜息が零れ落ちる。

 

 

「まずさあ、ユーザビリティがクソでしょ」

「RGB値で意味付けをしてるんだろうけど、魔力回路のみならずホログラムでそれやる? 機械しか細かい数値は分かんねえし色と意味付けをすぐにやれないよ」

 

「あと構造についてもそうなんだけど」

「バカか?」

 

『バカ、とは』

 

「この広い部屋……意味付けがあるのかどうか知らないけど、攻略されてるなら意味が無いじゃん。コレ、いらないよ。通路も広すぎる」

 

「私なら魔法を使って水浸しにする。魔力資源は使うけど、侵攻速度は大幅に減少する」

 

『しかし、魔力資源の節約をしなければ』

 

「魔力資源の節約? ああ、攻略されたいのか? それなら別に私に従わなくてもいいんだが」

「あと、立体ホログラムは直感性の高い画面にしてくれ!」

「見ずらい! 本当にさあ!」

 

「機械が見るだけならそのままでもいいよ? でも、人間がいるんだからさ、直感性のある立体ホログラムを作成してね。めんどいだろうけど一つの迷宮に二種類のホログラムを作って、わかりやすい方のホログラムを私に表示しろ」

 

「あと操作システムもひどい! こんなのを操作しなきゃならないなら絶望だぜ!! きみが全てやってくれるならこのままでも良いがな!」

 

 

 人工知能はパッションで訴えかけるほうが通じる。つまるところ、声がでかい方が勝つ! ここで態度を変えさせなければならない。

 

「少なくとも何を意味するのかをホログラムで表示するか、物理的なラベルを作成しろ!」

 

「全ての操作は直感的に把握する必要がある!!!!!」

 

 

『ならば、操作タブレットを使用してください』

『私がタブレットに入力された事をします』

 

 

「まあ、それくらいならまだいいさ」

「とりあえず構造を大幅に変える必要があるから、第三層を私がすべて監督しよう」

 

 

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