特異現象はダメ!死刑!!   作:最推しはアツコ

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前話にてアリウス総出で救出と書いたんですが、展開がちょっと決めかねているので修正しあやふやにしています。申し訳ありません。
毎度のごとく雑です。


結論、風呂と飯で仲間は増やせる

 アリウスの現状について一度整理しよう。

 

 昔に追放され、カタコンベの奥、隠匿された土地に逃げ込んだ彼女たち(アリウス)は、長年内戦が続いていたそうだ。

 限られた物資や教義の解釈による分かれが、この土地を蝕んだ。今も尚寂れた様相が多く残っているのは、その時の名残だった。

 

 悪化する治安とどんどん尽きていく物資、そんな困窮した事態の中、現れたのがベアトリーチェと名乗る『大人』である。

 ベアトリーチェは内戦を治め、自らを生徒会長としアリウスを掌握する。一見すると希望がある展開だが、そんなことはなく、ベアトリーチェは生徒たちに徹底的な思想教育、戦闘訓練を課した。

 

 アツコが言ってたヴァニ何たらとかいう虚無主義は、それによって植え付けられたものだ。

 そうしてアリウス生は改善されない劣悪な環境もトリニティ、ゲヘナ、何より自分たちが悪いという歪み切った思想の元育てられた。

 

 そんな中、トリニティから桐藤さんと同じ生徒会長の一人、ティーパーティーの聖園ミカがやってきて、アリウスとの和解を提案する。

 アリウスから生徒を一名トリニティに送ったりと、行動こそあったものの結果として和解とはならずに、そこから発展して『エデン条約』に反対だった聖園ミカと共謀(利用)とするようになる。

 

 百合園セイア襲撃事件は、こういう経緯で起きたのだ。

 

 

 

 

 いや普通にベアトリーチェが悪くね???

 

 かいつまんでこの事情をアツコから聞いた俺はだったが、忌憚のない感想はこうなる。

 どう考えてもろくでもなさ過ぎる。てか大人が生徒会長ってなんだよ……先生とかでいいじゃん。

 

 確かに実行犯も罪だし償わなきゃとは思うが、やっぱり心情としてはこういう裏で糸を引いてるタイプが悪いだろ……になるんだよな。

 

 それとアツコはロイヤルブラッドとかいう、歴代アリウス生徒会長の血筋だそうだ。つまり、ベア何某が現れなければ彼女が生徒会長に就任していたという事。正統後継者である。心が強え奴かな?

 

「なら、君が生徒会長になればいいんじゃないか?」

「私が?」

「おう、そしたら全権が君のものになるんだろ? なら、しよう。革命!」

 

 革命家ハチワレになりつつ、俺はそう提案する。

 

 ここにきて、各地で任務を行っていたのが功を奏した。ありがとうレッドウィンター。

 おかげでぱっと革命って発想が浮かんだ。毎週ぐらいの頻度で革命起こしてんのは意味わかんないけどな。

 

 方針が決まり、どうやって生徒たちをこちら陣営に引き入れるかの相談をし、俺たちは革命を宣言したのだった。

 

「は?????」

 

 口元を覆うマスク越しにも口を開けているのが分かる動揺っぷりを見せているのが、アツコの言う『サッちゃん』こと錠前サオリだろう。

 見た感じ神秘も他の生徒に比べて強いし納得だな。彼女を落とせば、かなりやりやすくなる。

 

「アツコ、頼んだ」

「うん」

 

 あ、俺が倒した生徒たちは教室の一角に纏めて寝かせている。彼女たちへの説明は後でだ。

 ここで俺たちを待ち構えていた彼女らへの説明、説得はアツコに任せる。客観的に見て謎の不審者でしかない俺が何を言っても怪しいだけだからだ。

 

 その間に、俺は俺でする事がある。

 

 いくらベアトリーチェの施した教育がゴミにも劣る終わってるクソだとしても、長年それを受けてきた生徒がすぐさま反旗を翻すことができるとは思えない。

 幼少期から虐待を経験した子の中に、それを虐待と認識できない子がいるのと似ている。()()が普通だったから、もう慣れてしまっているのだ。

 

 そういう子を仲間にするためには、実益がいる。

『これがあるならこっちの方が良いな』と思わせたら俺の勝ちだ。

 

 そして、幸運なことに俺にはその術がある。

 久しぶりにクソ能力に感謝する時が来た。

 

 俺のこの力は、物を再構築する力だ。正確に言うと存在を情報として認識し、それをリソースとして変換・再構築するものなのだが、それは置いておく。これも急に分かった情報で怖いし。

 

 つまり、それを応用すれば、()()()()()()()()()ことも可能なのである。

 

 地に手を当てる。

 意識を集中させ、空間に満ちる神秘を知覚する。

 

 暴走を経て、先ほどの戦闘でも躊躇わず使用したからか、これまでにない程()()()()()()

 頭の中で一層騒がしさを増した怨嗟すら、極限の集中を前に消えた。

 

 神秘、物質、構造が一切の余白なく頭に流れ込む。

 それに、俺の神秘を乗せる。全てを分析し、把握し、再構築する。

 そうして、校舎を改造する。

 

 調理室にはコンロや冷蔵庫、調理器具を追加設置。

 寝室として数個の教室に簡易ベッドを設置。

 後シャワー設備や洗濯機を備えた……大浴場とかやっちゃうか。

 うん、温泉入りたい。なんかマイナスイオン生まれてそうだもんな此処。マイナスイオンが何かあんま分かんないけど。

 

 初めてやるけど、なんか楽しいなこれ。

 建築系ゲームやってるのと近い。俺豆腐しか作れないけど、建築が人気なのも分かる気がする。

 絶対侵食加速するから滅多にできないけど、今はやらないとだからね。なら楽しんだほうが精神的にもいいだろう。

 

「危ないかもだし、出よっか。行こ? サッちゃん」

「あ、ああ……これは何が起きてるんだ……? ──お前たち、一先ず校舎から離れるぞ!」

 

 そうして魔改造をすること暫く。

 俺の中の匠も会心の出来と頷くので能力を切る。

 額を伝う汗を拭えば、心地いい疲労感と満足感が心を満たす。

 

「天職を見つけてしまったな……」

「お疲れ、何を言ってるの?」

 

 適当な事(この場にヒマリとかいたら信じられないぐらい怒られそう)を言っていれば、後ろからアツコが話しかけてきた。

 うわびっくりした。耳元で囁くの心臓に悪いから止めて欲しい。ASMR売ってそ……売ってない気がしてきた。

 

 振り返れば、呆然と俺を見てくる錠前サオリ──錠前さんと始めとしたアリウス生たち。

 

「どうして俺を凝視してんの?」

「校舎が急にピカピカ輝いて、ガゴゴゴ……って鳴り出したから、皆びっくりしちゃったみたい」

「そんな面白い感じになってたのか……」

 

 操作してる感覚はあったし、中に人もいるしで慎重にしたつもりだったけど、珍百景みたいだったのかよ。

 

「それで、話はできたか?」

「うん、まだ完全に納得はできてないみたいだけど……サッちゃんと数人は仲間になってくれそう」

「本当に凄いな」

 

 こんな意味の分からない男と改革起こそうとして、話しただけで数人は引き込めるのどんな人心掌握術だよ。うすら寒さすら覚える。

 ロイヤルブラッドは、名だけではないと思わされる恐ろしさだった。

 

 だが、錠前さんを仲間にできたのはデカい。アツコの言っていることが正しいのなら、百合園セイア襲撃事件は彼女の類いまれなる指揮能力があってこそのものらしい。彼女がいないのなら、桐藤さんが襲撃される危険性もぐっと下がるそうだ。

 

「俺の方も上々だし、一気に勢力を確立させるか。──おーい、案内するから付いてきてくれ!」

「皆も見よう? きっと、凄いことになってるから」

「待ってくれ姫。色々起こりすぎてまだ追いついてないんだ──姫? 置いてくよじゃない。待ってくれ」

 

 さっきまでは凄い睨まれてて怖さしかなかったけど、今の姿を見ると真面目な人なんだな、と思う。

 警戒しつつも狼狽えている他の生徒も、俺の後をついてくるアツコや錠前さんを見て、同行することを決めたようだ。十名ぐらいの集団で、俺印リフォームが施された校舎に足を踏み入れる。

 

「な──」

「わあ」

 

 中に入りまず目につくのは、これまでの踏めば軋む床ではなく、汚れのない白を基調とした床だ。

 全体的に寂れ壊れ汚れているが、見た感じアリウスって白がイメージなのでそれを意識した。それに合わせ、壁や天井も同色で揃え、壊れていた照明も直し、明るい光が校舎を満たしている。

 

「此処は……調理室か? これは……何だ?」

「わっ、冷たい。これが冷蔵庫、って言うんだよね?」

 

 電気自体は一応通っていたので感覚で整備し、電化製品も使用可能となっている。司祭たちの記憶なのか、なんとなく分かったんだよな。きしょいけど助ける。感謝はしないし早くくたばってくれ。

 流石に食料は作れない。やろうと思ったら出来るかもだけど、たぶん絶対にディストピア飯とかしかできないだろうから止めておいた。

 食料かあ……トリニティに買い出しに行くか……?

 

「お湯がこんなに……? シャワーも、こんなにあるのか……!?」

「ウォータータイムじゃなくても、温かい水が支給されるの……?」

「すご……」

 

 大浴場、それと隣接したシャワー室。脱衣室には洗濯機やドライヤーといった諸々も完備してある。女性用のスキンケア製品とかは無理だったので、これも食料と一緒に買い出しに行くべきだろう。

 

 ここが一番反応がよかった。

 俺としても最も手を加えた部分なので鼻が高いよ……(後方製造者面)

 温泉にはたぶん神秘由来の薬効とかありそうだし、入ったら疲労回復、血行促進、免疫増強……その他多数の効果がある筈だ。もう俺が入りたいな……

 

 はい? 一緒に入る? マジで冗談でもそんな事言うなよ。俺の心臓がびっくりしちゃうだろ。

 

 ちらほらと、入っていいの? 本当に? 私、こっちにつこうかな……という声が聞こえてくる。

 やはり女子高生。お風呂とか温泉とか、女の子なら嫌いなわけがないだろう。

 

「り、りりリーダー! 何ですかここ!? 私たち、校舎に居たはずじゃ……?」

「うわ、湯気? なにこれ……?」

 

 心が掴めた実感にガッツポーズをしそうになるのを堪えていると、俺が気絶させた面々がやってくる。

 ここで説明するのも面倒だな……いや待て、()()()()()()()()

 

「アツコ、皆でお風呂入って、中で説明してくれるか? たぶんそっちの方が引き込みやすいと思うんだけど」

「そうしよっか。私も、入ってみたかったし。……コノハは?」

「入る訳ないだろ。普通に死んじゃうから。食べ物とか仕入れに行こうと思うだけど、誰か同行できないか? そっちの方が皆安心できるだろうし」

 

 風呂入れて、ぐでぐでに蕩けさせたところにちゃんとした飯を食わせれば何人かは陥落してくれるだろう。

 買い出しに行くにしても、俺一人に任せるのはまだ無理だろうし、てかこの人数の食料を一人で持つ方が無理だな。

 

「……私が行きます。信用はできませんが、この子たちにご飯を食べさせられるのなら、従いましょう」

 

 アツコが声をかけると、一人が前に出てきた。

 梯スバルという三年生らしく、よく周りの面倒を見ていたらしい。言葉の通りに、下級生のために体を張ってくれたというわけだ。何か言い方が同人誌みたいだけど、ただ買い物するだけだからね?

 

「ですが、カタコンベの出入り口は既に変わっている筈です。新しいものを知るには、マダムが必要なのでは?」

「ああ、それなら大丈夫。俺なら出入り口作れるし道も分かるから」

「はい?」

 

 来た時にも感じたが、カタコンベの何処通ればいいかも感覚的に分かる。

 ……俺の能力、生徒へのガンメタってより()()()()()()()()()メタ張りか……?

 

 こいつ頭大丈夫か……? とでも言いたげな梯さんを連れカタコンベに向かう。

 やはりというべきか、予想通りに出入り口を再構築で作り出し、こちらを迷わせるような道を直感で踏破する。

 迷いなく進んだおかげで、あまり時間をかけずに抜けることができた。梯さんはめちゃくちゃ目を開いて俺を凝視している。

 

 カタコンベを抜けると、既に日が落ちている。

 それでも新鮮な空気がありがたい。梯さんも大事そうに深呼吸をしていた。

 それでは買い出し……と、行く前にすべきことがある。

 

 桐藤さんへの報告、それと説得だ。

 

 俺がやろうとしている事は、トリニティからしても無視できない重大な事柄だ。本来なら、即刻トリニティの兵力を動員し鎮圧するのだが、どうにかそこに待ったをかけないといけない。

 

 アリウスの生徒はトリニティにも深い憎しみを持っている。梯さんのトリニティを見る目も、鋭く、そして濁っていた。

 ここで下手に鎮圧なんてしてしまえば、これから先に関わる大きな断絶が生まれてしまうだろう。或いは、更に広がってしまう。

 

 エデン条約前にそんな弱みをゲヘナに見せるのは得策ではないため。そこを上手くつけば延期してくれるかもしれない。その間に革命を果たせば、もうこっちのものだ。

 

 そう覚悟を決め、俺と梯さんは桐藤さんの自室に忍び込むことを決めた。最近忍び込んだり不法侵入ばっかしてんな……

 

「いいですよ」

「え?」

「だから、いいと言ったんです。エデン条約が締結されるまで、アリウスについて手出しはしません」

 

 拍子抜けな程あっさりと、俺たちの要望は聞き受けられた。

 為政者としての顔をしたまま、桐藤さんはそう約束をしてくれたのだ。

 

「謎だった危険がアリウスであると判明し、その脅威を既に一部取り除いたのでしょう? まだ一日と経っていません。本当に驚嘆に値します。それに、今のまま警戒を怠らなければ危険は少ないと、他ならないコノハさんが言ってくれたんです。拒む理由の方が少ないと思いますが」

 

 最も、エデン条約後の約束はできませんが。そう、微かに笑みを受けべ彼女は言った。

 逆にまだ受け入れられてない俺に、桐藤さんは何かを握らせる。見てみると、黒いカードだった。

 

「聞いた話の通りなら、大量の物資が必要そうですので、資金は私から提供させてください」

「餌を貰いすぎた猫みたいになっちゃうんだけど」

「え?」

「なんでもないです」

 

 軽いはずのカードが、金塊より重く感じる。ポケットマネーとか言ってるけど、そういう問題ではない。軽々しくこんなの渡しちゃ駄目でしょ。

 

「私はコノハさんを信頼していますから。裏切らないですもんね?」

「それはそうなんすけど……」

 

 後ろから梯さんの視線がビシバシ刺さっている。『こいつ終わってるな』みたいな軽蔑が込められてるのが見ずとも分かった。

 やめてくれよ、これじゃあ俺が我儘ばっか言ってるヒモみたいじゃんか。

 

 冷や汗をだらだらと流しながら、感謝しつつ退散する。本当に申し訳ないが、あまり時間をかけられない。早く帰って飯を作ってやらないといけないのだ。

 窓に足をかけると、背中にふわりと体重がかかる。

 

「──でも、これだけは忘れないでください。あなたは私()味方、ですよ?」

 

 桐藤さんの囁きは、心の奥にずっしりと乗っかるような、そんな重たさを秘めていた。

 

 マジで迷惑ばっかかけてすみません……

 

 

 その後、ずっと軽蔑の視線をしてくる梯さんとさっさと買い出しを済ませた。一先ず今日の分の食料とケア用品、後お菓子とか。梯さんがお菓子コーナーに興味惹かれていたので、にやにやしながら欲しいものを聞いたら蹴られた。この人からかい甲斐があるな。

 

 急いでアリウスに帰り、追加で送られてきた生徒をボコし、風呂に突っ込んだアツコたちと合流。

 あまり刺激になれていないであろう胃のため、消化のいいシチューを作り、食わせた。

 

 初めての温泉故かぽかぽかになって脳が動いていないアリウス生たちは警戒せず食べてくれた。中には、涙を浮かべる子もいた。

 

 見捨てられないという思いが、一層強まった。

 

 この日共に食卓を囲った全員が、アツコ率いる新・アリウスにつくことを決め、俺たちの勢力は最低限の影響力を持つにいたる。今いる数十人であれば、ベアトリーチェ勢力も考えなしに突っ込んできたりはしないだろう。

 

 仲間を増やすことに注力しよう。

 捕え、風呂にぶち込み、飯を食わせる。そうすりゃこっちの味方だ。

 

「俺、軍師の才能あるのかも」

「何言ってるの? あと、トリニティの偉い人からお金貰ってるって本当?」

「何言って」

「本当なんだ?」

「いや」

「後で詳しく教えてくれるよね?」

「はい……」

 

 梯さんチクりやがったな。限定お菓子欲しがってたの暴露してやる。

 




思ったより続いてるのと、最近適当になっていたので後書きは簡略します。
面白かったら評価と感想をよろしく。
次回はセイア襲撃に触れつつもう一人のお姫様も出てくる予定です。
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