特異現象はダメ!死刑!! 作:最推しはアツコ
どうも、ほぼ確で死ぬのが決まった械枷コノハです。
いや~~予想に反して気分爽快だ。体は軽いし、ずっと五月蠅かった声も止んで頭の中まですっきり。手術怖いけどやったら思ってたよりいい感じだった、的な気分である。
ぶった切られた右腕も生えた、てか再構築したし、体調も万全だ。今なら空崎さんクラス相手でも普通に戦える気がする。
「本当に、コノハなのか……?」
サオリさんが何度も確認するように聞いてくるが、そんな変わったんだろうか。
主観的には感じないが、彼女たちからすれば違うのかもしれない。
「そんな変か?」
「あ、ああ。お前が光ったかと思ったら、先ほどの『天使』のような威圧感を出し始めたんだ」
ポケモンかな? 俺進化しちゃったのかよ。
自覚してなかったが、俺自身に強大な神秘が備わったらしい。つまり、これまでは大気とか対峙した相手から変換し利用していたそれを単独で使えるようになったってことだ。
指摘され、慌てて放出していた神秘を収める。感覚的に、どう操作すればいいかが分かった。こういうとこは本当にちゃんとしてるよな、司祭って。でも死んでね〜〜。
避難所となった集会場を改めて見回すと、これまでより明らかに生徒数が多い。
「ベアトリーチェ側にいた生徒たちも集まってるのか」
「この状況だ。もはや誰が味方か敵かを争っている場合ではないのは、皆分かっている」
梯さんが主軸となって、まだベアトリーチェ陣営だったアリウス生も保護し、ここに避難させたらしい。あの人は信頼高いし、皆逆らったりはしなかったそうだ。
彼女たちを見ていると不安や焦燥、絶望は色濃く残っていた。が、ざわめきや口争いもない。何か、皆静かだった。
虚無思想教え込まれてるんだからこのまま心中しようとしだす子とかも出てくるかもしれんとか思ってたんだけど、なんで?
とまで考えてから察した。
これ俺か。急にイカれた威圧感をぶつけられ、誰もが黙ってしまったのだ。
ちらちらと視線を感じるが、一旦無視。
今はサオリさんの意思確認を優先する。
「皆はトリニティに逃げて助けを求めるつもりだったんだろうけど、サオリさんは残って助けに行くつもりだよな?」
「……やはり、お前なら分かるか」
「まあ、アツコを置き去りにして素直に逃げるなんて考えられないな」
「……そうだ。逃げる手筈が整えば、スクワッドにだけ声をかけ姫──アツコの所に向かうつもりだった。例え無理だとしても、だ。そんな中、お前が目を覚まし『助けに行こう』と言ってくれた……希望が見えたんだ」
俺は未だ、彼女たちの過去を全て聞いた訳ではない。だが幼少期から一緒に居たことや、互いに大切に思い合っている事は聞いてある。
だから絶対に助けたいんだろう。それは俺も同じだ。なんていっても半分人間やめたみたいなもんだからな。
「さっき言った通り、他の助けも来る。希望はか細くもない、掴み取るなんて楽勝だ。だから、助けよう」
「……本当に、ありがとう」
なら、行動あるのみだ。
想定してた感じだと、集まったアリウス生の中でトリニティ拒絶派とかが生まれて~とかだったんだが、俺の圧が全てを解決してしまった。もしかして俺も
アリウスの『強い奴、勝った奴に従う』という野蛮な価値観に感謝である。
百合園さんに逃げたアリウス生の保護は任せてある。
あの人なら信頼できるし、アリウスを抜けるためのカタコンベの通り道は回収済みとのこと。
唯一アリウス脱出を邪魔していたのは想定通りトリニティ拒絶派だけど、それも解決した。
なので、もう何時でも逃げ出せるのである。
「梯さん、指揮は任せた。君なら皆安心だろうし、トリニティの生徒と話すときは俺の名前と桐藤さんの名前出しとけば大抵何とかなるから」
「……はい、こちらは任せてください。貴方も、気をつけてください」
「お、おお……『また女性の力を頼るなんて……見下げ果てますね』とか言われると思ってたからびっくりするな……」
「そんなこと言いませんよ!? ……腕がなくなった姿を見た時、本当に心配したんですからね」
本当にあるのか確かめるように腕を撫でる梯さんに申し訳なさを覚え、されるがままになっているとミサキが止めてくれた。
「そんな事してる場合じゃないでしょ。ほら、早く行って」
「……ええ、彼をよろしくお願いします」
「あなたのものみたいな言い方、やめておいた方が良いよ」
恙なく……うん恙なく準備が終わった。
ミサキにも、というか基本全員に心配をかけているので、俺は何も言えなかった。
けど、あんま近づかないでね。
今は大丈夫だけど、もうちょい権能が馴染んだら
△△△
という訳で、アツコ&聖園さん救出チームとアリウス脱出チームに分かれ、俺たち──俺+スクワッドは大聖堂に向かう。
どうやら此処の至聖所でアツコを生贄にする儀式を執り行う算段だったらしい。趣味が悪いというか、そういう因習というか。
場所は分かっているため、向かう足に迷いはない。
「『天使』は取り敢えず、俺に任せてくれ」
「……そう言って任せて、さっき死にかけたんでしょ? ていうか、なんで腕戻ってるの?」
「そ、そうですよ……人って腕生えませんよねえ……?」
心配してくれてるのが伝わる。いや腕の件は普通に気持ち悪そうにしてんな。
ピッコロみたいに生えたわけじゃないからキモくない筈だ。腕生えること自体が? はい……
心配も分かる。現に俺は敗れ、迷惑をかけまくったわけだしな。だが、今の俺なら違う。
どう説明すれば納得してくれるか頭を悩ませていると、先行していたサオリさんが緊迫した顔で振り向いた。
『天使』がこっちに向かってきてる事かな。
「ッ、小型『天使』が私たちの方に向かっている。隠れてやり過ごすか、それとも迎撃か……」
「
廃墟の街並みの奥から、小型『天使』が数体飛んでくる。
この小型すら、俺みたいな脱法ガンメタでないのなら倒すのに相当苦労するだろう。それだけの神秘を内包している。
来ていたことも、どれだけの強さなのかも、全てが分かる。
たぶん、今の俺はアリウス全域の
手を横に払う。動作に従うように、その先にいた『天使』達の神秘を
力を失ったように、全ての天使が塵になって消えた。
俺が何かをして、という事は分かったのだろう。三人は信じられないものを見た顔で俺を見ていた。
安心させるように、笑顔を浮かべる。
「──な、俺に任せて大丈夫だろ?」
「普通に怖いんだけど」
「お、恐ろしいですね……呆気なく消えちゃうなんて、人生みたいですね……」
「ああ、コノハになら任せられる。……頼りにしてるぞ」
言葉のサウナで整ってしまう。
能力の確認も今のでできたし、問題なさそうだ。
俺の権能に防衛本能が反応でもしたのか、続々小型が俺たち、或いは逃げたアリウス生に向かって翼をはためかせる。
が、問題はない。
「新しく小型が飛んでくるけど大聖堂への邪魔をする奴だけ処理して、急ごう」
「待て、それならスバルたちの方に行ってしまう──いや、
「ああ、あの人たちがいたら、問題ないよ」
とびっきりの戦力だ。こんな早く着いたのはたぶん、ヒマリが道中サポートしたんだろう。ミレニアムは、ヒマリにだけ頼んでいる。本当ならリオにも頼むべきなんだけど、流石に無理。今の俺見たら絶対殺しにかかるだろうし。
それでも、もう心配する必要はない。マジで安心できる人呼んだからな。
俺たちは一層足を速め、大聖堂の至聖所目掛け駆け抜けた。
△△△
『ですのでこれは、私
カタコンベに入る前に、彼女たちはその説明を聞いていた。
やけに所有権を主張するような物言いや、集まった他の面々を見て自分以外にも頼る先があることを突き付けられ不快感を覚えつつ、それを態度には出さない。
滅多にない、彼からの真剣な願いだからだ。それを個人の感情で邪魔し、迷惑をかける気など誰も毛頭なかった。
逃げてきたアリウス生は救護騎士団と一部の正義実現委員会に任せ、残りの正義実現委員会とコノハが頼んだ戦力がアリウス自治区に向かった。
そうしてカタコンベを抜け、昼間にもかかわらず夜空が広がるアリウス自治区に到達する。
着いて早々、事前に情報を共有されていた有翼の人型──『天使』が翼を羽撃かせ向かってきた。
「────邪魔よ」
何より早く、機関銃が吠える。
紫光の帯のように見える、大量の弾幕が『天使』に殺到する。通常の銃弾なら弾き返す翼はしかし、キヴォトスにおいて最強の一角には叶わない。穴を空け地に堕ちた。
「数が多い。分散して担当した方がいい。……私は特に狙われるだろうし」
ゲヘナの悪魔を、『天使』が狙わない筈もない。
空崎ヒナはそう分析し、一人離れた場所に向かう。
「それじゃあ、指揮はお願いね」
エデン条約締結前の、この両者を緊張が張りつめる時期に主導の一人が他校にて戦闘に参加するなど、本来はあり得ない。
だが、コノハからの頼みを断るわけもなく、抜け穴を使い彼女はやって来た。
「FOX小隊、
七度ユキノの号令に、小隊員全員が即座に首肯する。
全体指揮は任せ、小隊もまたカタコンベの入り口から先へと進んでいった。
「それじゃ、あたしは此処で大人しくしてようかな。別に、積極的に動くだけがアピールじゃないだろうし」
百花繚乱をナグサとキキョウに任せて、七稜アヤメもまたこの地を馳せ参じた。
本丸と言ってもいいカタコンベ入り口にて、何処かに居るコノハを想い、目を細めた。
そして、
「此処がアリウス……」
『学籍のない方……械枷コノハさん、そして百合園セイアさんからの依頼。アリウスの方々の為、私も頑張っちゃいますよー!』
「うん、ありがとう。
グレーのスーツをきっちりと着用し、その上から連邦生徒会の意匠を組んだコートを羽織った出で立ち。
手には一つのタブレットを携え、顔には疲労故か隈の跡が残る、紛れもない『大人』。
械枷コノハが、『この人が来たならたぶん大丈夫だろ』としたキヴォトスにおけるワイルドカード。
シャーレの『先生』が、生徒の頼みを叶えるためにやってきた。
△△△
大聖堂、至聖所
「──それじゃ、リベンジマッチだ。その顔ひっぺ剥がして強引にだって連れ出してやるよ、聖園さん」
「────」
吹き荒ぶ莫大にして強大なる神秘。
アリウスを滅ぼす者という概念がより完成に近づいたが故の終末の天使。
相対するは、キヴォトスを滅ぼす者。
『名もなき神々』によって造り変えられた機械仕掛けの神様。
アリウスを、そしてお姫様を救うための、神話の如き戦いが始まる。
ちょっとモチベ低下気味なので、評価と感想くれ~~~