特異現象はダメ!死刑!! 作:最推しはアツコ
評価と感想ありがとう。もっとくれ。
「ゲヘナ何もないんだけど!!」
ゲヘナに来て、はや一か月。
今日も今日とて火山に潜り、事件を鎮圧し、書類仕事を手伝い、ヒナの家で家事を行い、拠点で眠ろうとしていた……ところで目をかっぴらいた!
いかん、日常になりかけている。気を張りなおさないと。俺にそんな余裕は一切ないのだ。
布団を跳ね除け、机に向かう。
できる事ならヒマリに相談したいが、さっきまで通話してたから分かる。今頃はぐっすりだろう。
取り敢えず、俺一人でこれからについて考えよう。
ゲヘナには、現状一切の取っ掛かりがなかった。ヒノム火山も、既に調べつくされていたような感覚すらあった。
……前にリオが言っていた『昔のゲヘナ』にいた
となるとまあ、期待値低いのに留まる理由かないし、次の土地に行かないとな。
目的地候補はトリニティか百鬼夜行。
百鬼夜行は百花繚乱と多少の交流があるし、明らかに日本モチーフな学園だから神秘的なのがある可能性は濃い。
アヤメを頼れば色々してくれそうだけど、頼りすぎると溜め込んじゃうタイプだからあんま頼りたくないんだよなあ。
トリニティは……正義実現委員会と折り合い悪いんだよな。結構潔癖というか、取り敢えず俺を捕まえてから話を聞こうとしてくる。こういうとこで校風が出るよな。ゲヘナだと緩めなんだが。
後、剣先ツルギが怖すぎる。一度追っかけまわされたが、普通に泣いてしまった。悪い人じゃないのは分かるが……みたいな評価になる。
だからトリニティで任務をした後はこっそりティーパーティーの所に報告書を置いていったものだ。
……普通にバレて死ぬかと思ったりもした。なんとか話を通して、何故か一緒にお茶を飲んだりした。桐藤さん元気にしてるかな?
「……トリニティだな」
俺は行先をトリニティに決めた。正実に追っかけまわされるのを覚悟した上で、だ。
いや、マゾとかじゃなくてちゃんと理由はある。
仮定として、俺が暴走するまでのタイムリミットは数か月~一年の間ぐらいだ。リオのデータ、後は頭で喚いている声の大きさ的に信憑性はある。
んで、力を使った場合、当然それは早まる。
タイムリミットが近づいた時どうなりかは分からない。最悪、体の自由が利かなくなっていく、みたいのもあるかもしれない。
なので、先に面倒なとこを終わらせときたいのだ。ゲヘナに真っ先に来た理由もそれだしな。
「思い立ったが吉日だな」
その日以降は全て凶日、でもある。ベジタブルスカイに行きたいです(隙自語)
風紀委員との嘱託契約も月更新で切れるし、まあ問題ないだろ。ヒナも別に、俺がいる必要がない完璧さだから心配はない。
よし、決まりだ。明日からトリニティに行こう。
△△△
「──という訳で世話になった。ありがとう」
「それ言うの私でいいの?」
「空崎さんとか天雨さんとかいないじゃん」
「そうだけどさ……これ大丈夫かな……?」
翌日、風紀委員本部を訪れた俺は見かけたイオリに経緯を話していた。
ヒマリからも賛成を貰っている。暫くはセキュリティと格闘するためオペレーターはできないことも伝えられた。トリニティでは単独行動になるが、エージェント時代で慣れたものだから問題はない。
既にお世話になった救急医学部のセナ委員長や給食部のフウカ、偶に遊んだイブキなどにはお別れを告げている。
イブキに泣かれそうになった時が一番しんどかったですね……
特にお礼を言いたかったヒナ(周りに誰かいるときは空崎さん呼びのままでとお願いされた)や天雨さんは、運悪く出動中で不在だった。
少し残念だが、仕方がない。
「まあ、直接言っときたかったけどモモトークあるし後で送っとくよ。あ、ありがとうございましたって言っといてくれ」
「う~~ん、まあ……それならいい……かも」
そんなやけに歯切れの悪いイオリとの会話も区切りをつけ、纏めた荷物を背負い、本部に背を向ける。
やっぱ同い年だと気楽(当社比)で話せていいな。
次なる学園はトリニティ。俺も潜ったことのない巨大カタコンベが目的地だ。
頼むから何かあってくれ。ゲヘナに来て再度実感した。このまま年齢=彼女無しで死ねるか。
お願いだから何か全部丸く収まって彼女とかできねえかな……
△△△
「────は?」
「ひっ」
低い声だった。
ひれ伏してしまいたくなる重圧だった。
現に、風紀委員の何人かは膝をついて大量の汗を地に落としている。
「……コノハが、ゲヘナを去った?」
何時ものように温泉開発部を反省房にぶち込んで、本部に戻った。
そんなヒナの耳に入ってきたのが、この話だった。
聞いていない、そんな話は一度たりとも彼から聞いていない。
戦闘中も今日のご飯は何かな、と考えていたヒナにとって、それは理解し難い内容であって。
「ほ、本当だよ。朝、コノハが言いに来たんだ。世話になった、後ありがとうございましたって」
セワニナッタ?
アリガトウゴザイマシタ?
意味が分からない。脳が理解を拒み、現実を認識できない。
だが、体は勝手に動く。
「……そう。分かった、皆は仕事に戻って」
「なっ、いいんですかヒナ委員長!? あの馬鹿──トンチキ──クソボケを連れ戻さないで! あ、私は別に構わないんですが……」
「いい。元から、暫くの間と決まっていたでしょう」
「それは……そうですが…………」
繰り返された反復動作。
風紀委員長としての空崎ヒナは一切の動揺なく冷静さを乱しはしない。その様子に、アコもまた黙る。
「し、失礼します! 第三区画にてチンピラの抗争が発生しました!」
「私が行く。後始末は任せるから」
今も尚、絶大な圧迫感を放ちながら、ヒナは翼を大きく広げた。
この日、ゲヘナで起きた騒動はその全てが発生から五分と経たずに空崎ヒナによって鎮圧された。
圧倒的なその姿に、陰りは欠片も見当たらなかった。
その内心がいかなものかは、置いておくとして。
まだ日が暮れて間もない時間に、ヒナは帰宅した。
彼女の活躍があまりにも圧倒的だったが故に、誰も彼もが身をひそめ、嵐が過ぎ去るのを待ったからだ。
普段であれば溜まっている書類を処理するのだが、生憎と今日はそれすらなく、こんな時間に帰れたという訳である。
「…………」
なのに、体は重い。いや、心なのだろうか。
一人で帰るのは、酷く静かだった。彼が居ない家は、酷く広い。
何をするでもなく、ベッドに倒れ込んだ。
このまま寝て起きたら、悪い夢も覚めるのか。
目を瞑って蹲って、そんなことを考えていた。
ピコん、と着信音が鳴る。
薄眼でスマホを確認すれば、コノハからのモモトークだった。
飛び起きて、画面を凝視する。
『碌に挨拶できなくて悪い。ヒナなら俺が居なくても問題ないと思うけど、あんま頑張りすぎないようにな。今度会ったらお詫びに何かするから、それで許してくれ』
短い文面。
彼は、自身を軽いものとして扱っている。無自覚か、或いは意識的にしているのか。
「…………ふふ」
脳裏を過る、過去の記憶。
彼と初めて出会った時のこと。
彼を制圧し、捕まえるためゲヘナ中で『鬼ごっこ』をした。
『──何処までだって逃げてやるから、捕まえられるんなら捕まえてみろよ! もし捕まったら大人しく言う事聞いてやるわ!! あっちょ機関銃はやめて、それもうビームだろ──』
結局、彼の逃亡を許してしまった、そんな記憶。
それを思い出し、軽やかな笑みがこぼれる。
瞳には強い、暗くすら思える重圧を伴った意志の光を宿し、少女は立ち上がる。
「あの時の続きね────絶対に逃がさない」
今度こそ捕まえた時は、ちゃんと言うのだ。
これからはずっと一緒よ、と。
械枷コノハ 恋愛にうつつを抜かしている暇がないと分かっているが、それでもラブコメをしたいとは思っている。リオに彼女が欲しいとぼやいたら「交際関係は結果として成立するものだから、その考えは非合理的よ、先ずはその関係に至りたいと思える対象を作るのが合理的じゃなくて?」とボコボコにされた。
空崎ヒナ 弱火でじっくり焼かれた。執着強めだが、自分から探しに行くのはエデン条約が結ばれるまで我慢している。ちゃんとしていた方が褒めてもらえるから。
殺してくれと頼まれても、もう殺せない。
天雨アコ 鬼モモトークをした。謝罪と今度会った時に買い物に付き合うの言質を獲得。
桐藤ナギサ いつもティーパーティーとして気を張ってるのに度々やってくる口調の荒い変な男が来た時は体裁を気にせずいられるため、深夜に行われる秘密のお茶会が楽しみになっていることに背徳感を覚えてたら俺はどうすればいいんだ。