貞操逆転魔法少女世界×堅物天然軍人(異世界産) 作:とっとこ馬鹿野郎ッ!!
妙な怪物と戦っていた少女を救出した後、彼女の仲間であろう少女がやって来た。
己の置かれた状況を知るためにも、是非とも友好的な関係を築きたいと思っていたのだが、どうやら俺を敵だと誤認したようであった。
襲い来る凄まじい槍の連撃。見事な技量であった。彼女を傷つけずに説得を行うのは困難であると判断した俺は、その場から逃走することにし――――――――。
「……腹が…………減った…………」
こうして、行き倒れかけている。
ちなみに俺は現在、普段着の状態にある。『龍脈』の隊員に支給される軍服と軍刀は特別製であり、魔力によって何時でも装着することが出来る。そのため、突発的な戦闘にも対処できる。
ひとまず、周囲に危険はなさそうなので、目立つのを避けることにしたのだ。
だが、まさか現代日本(らしき場所)で行き倒れることになろうとは………。
転移前は任務中だったということもあり、現金は持っていない。見知らぬ場所であるが故に、土地勘も知り合いも無い。実にまずい状況だ。
「魔導通信機も反応しない……一体ここは何処なのだ」
少女たちの使っていた言語や、この街並みから日本であろうことは分かるが…………。
あの怪物は何なのだ? それにあの少女たちも……あのような魔導士部隊など聞いたこともない。
本当にここは日本なのか? …………駄目だ、俺は頭が鈍い。いくら考えても答えは出ない。
それに、今はそんなことを考えられる余裕も無い。
こんなことなら、携帯食料を持っておくべきだった。
後悔先に立たず、とはまさにこのことか…………!
「あの、大丈夫ですか………?」
おっとりとした雰囲気の女性が話しかける。
「いや、大事ない。心配をかけて申し訳―――――」
ぐぅ~~~~
鳴り響く、腹の音。
二人の間に気まずい空気が流れる。
「あの、よければ何か食べるものでも………近くに私の喫茶店があるんです」
「すまないが、俺は今無一文。返せるものなど…………」
「いえいえ、困った時はお互い様ですから」
そうして、彼女……
たまご、レタス、ベーコンにトマトを食パンで挟んだもの。所謂、ホットサンドというものと、軽いサラダ。そして、デザートにヨーグルト。コーヒーまで付けてくれた。
見知らぬ土地で触れる人情。心を温めてくれる。
食事を与えてもらっただけでも大変ありがたいことなのだが、事情を話すと宿まで貸してくれるという。なんという心優しき御仁か………!!
しかし、何もせずその厚意に甘える訳にはいかない。そう言うと、喫茶店の仕事を手伝ってくれと言われた。剣を振るしか能のない男だが、この御恩を返すため、全霊をもって働かせて頂くとしよう。
__________________
私、春乃美咲は元魔法少女であり、現在は喫茶店を営んでいる一般人である。
戦いからは身を引いて、日常の小さな癒しの場となる場所を作ろうと、日々励んでいる。
そんなある日、私は―――――道端で倒れている男性を拾った。
年齢は十代後半から二十代前半くらいだろうか?
筋肉質で、容姿端麗。まるで、物語から飛び出してきた氷の王子様といった様相。
空腹で倒れていた彼を、私の営む喫茶店に招待して、色々と事情を聞いた。
彼の口から飛び出したのは魔導士だの、転移だのという摩訶不思議なことばかり。
お金も持っていないし寝床もないという。御両親について聞くと、随分前に亡くなったと言っていた。多分、他人には言えない深い事情があって、あのような言い訳をしたのだろう。
まぁ、彼が話したくないなら、無理に聞くことでもないだろう。
それに、そんなことはどうでもいいのだ。
家がないという彼に、私の家の一部屋を貸すことになった。
つまり、つまりこれ――――――――
「同人誌の導入じゃねーか!!」
えっちな同人誌の導入だよこれぇ!!
闇深イケメンを家に泊めるとか、滅茶苦茶見覚えがあるよ!!
正直に言おう。私は、倒れていた彼……久遠刃くんを、めっちゃ性的な目で見てる。
しょうがないじゃん! あの子、すっごくえっちなんだもん!
腕の筋肉とか、すっごく男の子って感じしてるし、顔もすごく好みだし。
それに………超無防備なんだよ! しょっちゅうシャツから腹筋とかがチラ見えしてるし、ボディタッチとかしても全然気にしないんだよ!!
くっ………理性が、理性が削れる…………!!
処女の私には、あまりに刺激が強すぎる…………!!
世の中の男は大抵、なよなよしてて女性嫌いな感じの人か、自分が一番偉いって感じでワガママな人かのどっちかなのに………刃くんは、ちょーいい子なんだよ。食器洗いとかも率先してやってくれるし。え? ちょっと理想的すぎない? 世の中知らない女子中学生が書いた自作小説の世界にしかいないような子なんだけど。
これ、彼氏がいない歴イコール年齢の私が生み出した妄想とかじゃないよね?
「済まない。服まで貸してもらって…………」
「い、いえ……いいのよ? むしろごめんなさい。サイズとか合わないでしょ?」
「いや、着るものがあるだけで十分だ。ありがとう」
いい子!!そして、すごくえっち!!
火照った体、湿って肌に張り付く髪の毛、パツパツの服で強調される筋肉!
全部が官能的すぎる! ダメよ、私。ここでがっついたりしたら引かれちゃう。そんなことになったら普通に死ねる。
「何から何まで、本当に申し訳ない。この恩は体で返す」
「!?!?!?」
「明日からしっかりと働かせてもらう。こき使ってくれ」
「あ、ええ……そうね。そうよね…………」
ンアーーーッ! この男、無自覚えっちすぎます!!!
こんなの、勘違いするに決まってるじゃない!?
ああ、私にもっと度胸があれば………今頃…………。
「美咲さん? 顔が赤いようだが、大丈夫か?」
「え、ええ。大丈夫。全然平気だから」
「そうか?」
この日の夜は、なかなか寝付けなかった。
__________________
「今日は平和でしたね。先輩?」
「そうね。ま、昨日みたいなのは早々起こるもんじゃないけど」
今日は怪人が一体も出ることなく、先日の大混乱が嘘であったかのように平和な一日であった。
正直に言えば、怪人が出てくれればまたあの人に会えるかも、なんて期待をしていた。
魔法少女らしからぬ不謹慎である。言葉に出していれば、先輩に叱られていただろう。
そうして、ほんの少しの落胆を胸に抱きながらも、先輩と一緒に行きつけの喫茶店に行くことになった。このお店は先輩の先輩がやっているお店で、店長さんは元魔法少女だという。とても落ち着いた雰囲気のお店で、この喫茶店にいると魔法少女の職務のことも忘れてしまう。だから、ゆっくりと休みたいような気分の時に来ることが多い。
そうして歩いていると、例のお店についた。
先輩がドアを開けると――――――――。
「いっらしゃいませ」
昨日の王子様がいた。
「あ、貴方は………!?」
「ん? 君は……昨日の子か。怪我はないだろうか?」
「うぇ!? だ、大丈夫ですぅ!!」
し、心配してくれた~♡
「貴方、ここで一体何をやっているのかしら? 事情によっては、今ここで……」
「バイトだ」
「は? バイト?」
「ああ。金も宿も持っていなかった俺を、ここの美咲さんが拾ってくれた。当分、俺が元々いた場所に帰れそうもない故、美咲さんにお世話になっている。感謝してもしきれん」
「は、はぁ…………?」
「刃くん、誰と話して―――――あら? 葵ちゃんに、遥花ちゃんじゃない? いらっしゃい」
「美咲先輩! 一体どういうことですか!?」
先輩の大声で、トリップしていた意識が引き戻される。
お、お礼! お礼言わないと!!
「あの! 昨日はありがとうございました!!」
「俺は当然のことをしただけだ。礼を言われるようなことじゃない」
け、謙虚!!
益々好感度が上昇していく。
「あの、私は翠遥花って言います! お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか!!」
ど、どうしよう。勢いに引かれたりしてないかな?
いきなり名前を聞いて、セクハラとか思われてないかな?
「俺は久遠刃。こちらこそ、よろしく頼む。君たちとは、是非もう一度会って話したいと思っていた」
まさかの好感触!? これ、あるんじゃないの? マジであるんじゃないの!?
やったよ、お母さん。私、大人の階段上ります………!