裏社会のジョーカー、現代ダンジョンで成り上がる ~世界最大の賭場に人生を賭ける~   作:パラレル・ゲーマー

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第4話 最初のクラスは戦士でいく

 第4話 最初のクラスは戦士でいく

 

「ギャッ、ギャッ!」

 

 黒く口を開けた洞窟の奥から、複数の甲高い叫び声が反響して届く。

 湿った岩壁に木霊するその音は、あきらかに単独の個体のものではない。二つ、あるいは三つ。複数の足音が、不規則なリズムを刻みながらこちらへと急速に近づいてきていた。

 

 隼人は無言のまま、冷え切った空気を肺に吸い込んだ。

 現在の状態は、Lv1。クラスは未選択。剣術の経験は今日ここに来るまで皆無であり、手にしているのは量産品の【初心者用ロングソード】だ。

 だが、左腕には先ほど手に入れたばかりの国宝級の異常な装備、【万象の守り《パンデモニウム・ガード》】が装着されている。最大HPは161。先ほどの擦り傷を差し引いても、現在のHPは155残っている。F級のダンジョンにおいて、初心者としては破格の耐久力と言えた。

 

 初めてのドロップで大当たりを引き当てた高揚感が、胸の奥で微かに熱を帯びている。ギャンブラーとして、これほどテンションの上がる瞬間はない。

 だが、隼人の思考はどこまでも冷え切っていた。「国宝級の装備を手に入れたから、これで無双できる」などという安い慢心は微塵もない。

 

 視界の端を流れるARコンタクトのコメント欄が、隼人の思考を裏付けるように次々と更新されていく。

 

 名無し:来た来た

 名無し:足音的に三体じゃね?

 ベテラン探索者:一対多は一対一とは別物だから気をつけろ。囲まれたら終わるぞ

 名無し:国宝装備の初陣だな

 ベテラン探索者:装備が強くたって、棍棒食らっていいわけじゃない。死ぬときはあっさり死ぬぞ

 

 経験者からの忠告。それは、隼人自身が誰よりも理解している真理だった。

 賭場において、手元のチップがどれだけあろうと、ルールを無視して雑な賭け方をすれば一瞬で吹き飛ぶ。それはカードゲームでも命のやり取りでも同じだ。

 

「分かってる」

 

 隼人は配信の向こう側にいる顔の見えない観客たちに短く返し、ロングソードの柄を力強く握り直した。

 

 暗がりの中から、濁った緑色の肌をしたゴブリンが姿を現した。

 最初に視界に飛び込んできたのは二体。

 一体目から得た経験により、隼人はすでにゴブリンの基本的なモーション――右肩を上げ、右足を踏み込み、棍棒を真上から振り下ろすという一連の流れ――を知っている。

 

 だが、今度は状況が違った。

 二体が同時に、殺意を持って動いているのだ。

 先ほどのように、一体の右肩だけを集中して見ていれば済むような単純な一対一のゲームではない。

 右側のゴブリンが正面から突進してくる。同時に、もう一体が少し遅れたタイミングで左側へと回り込もうとしていた。

 

(挟撃か。知能が低いとはいえ、数の利は本能で理解してるらしい)

 

 隼人は前に出ず、後退を選んだ。

 相手の攻撃範囲に入らないよう、慎重に足運びを意識しながら、数歩後ろへ下がる。

 

 名無し:ちゃんと下がった

 名無し:さっきより慎重だな

 ベテラン探索者:二体まとめて正面から相手すんな。地形を使って一列にしろ

 

 コメント欄を流れるベテランの指摘。隼人も全く同じ判断を下していた。

 現在地は、やや開けた広間に出る手前の、細い坑道だ。

 隼人はさらに後退し、坑道の幅が最も狭くなっている場所までゴブリンたちを引き込んだ。これなら、二体が同時に横へ並んで攻撃してくることは物理的に不可能になる。

 相手を圧倒する剣の技量がなくとも、地形を利用して「有利な盤面」を強制的に作り出すことはできる。手持ちのカードが弱ければ、勝負の形を自分に有利なものへ変えればいい。それが、JOKERという男の戦い方だった。

 

 先頭のゴブリンが、待ちきれないとばかりに甲高い声を上げて飛びかかってくる。

 右肩。

 右足。

 振り下ろし。

 

 完全に読めている。

 隼人は棍棒が振り下ろされる軌道を見極め、最小限の動きで横へと身体をずらした。

 空を切った棍棒が岩床を叩く。

 その隙を見逃さず、隼人はロングソードを斜めに振り抜いた。

 刃がゴブリンの胴体を浅く切り裂く。

 

 先ほどの戦闘であれば、ここから剣の勢いを殺し、次の構えへと移行するまでに確かなタイムラグがあった。素人が重い鉄の剣を振り回せば、当然の物理法則として隙が生まれる。

 ところが今回は違った。

 斬り抜いた直後、剣に込められた慣性を、見えない力が滑らかに相殺していくような感覚。

 筋力が上がったわけではない。剣そのものが軽くなったわけでもない。

 ただ、自らの『攻撃を終えて次の動作へ移る』という一連のプロセスそのものが、魔素の力によって強制的に加速されている。

 

(……速い)

 

 隼人自身が、その明確な違いに驚いた。

 体感にしてほんの一瞬。だが、その一瞬が命のやり取りにおいては絶大な意味を持つ。

 ゴブリンが攻撃後の硬直から立ち直り、反撃へ移ろうとするよりも早く、隼人はすでに次の斬撃のモーションに入っていた。

 流れるような二撃目が、ゴブリンの首元へ吸い込まれる。

 

「ギャッ……」

 

 先頭の一体が光の粒子となって霧散した。

 

「十五パーセントって、数字で見るよりでかいな」

 

 隼人は思わず口に出していた。

 ただ剣を振る速度が15%上がるだけ。計算上は些細な変化に思えたが、実戦において『相手より先に次の手が打てる』というアドバンテージは、数字以上の価値を持っていた。

 

 一体目を倒した直後、すぐ後ろに控えていた二体目が棍棒を振り上げて襲いかかってきた。

 隼人は深追いをせず、剣を引いて再び距離を取る。

 視界の端で、コメント欄が反応を示していた。

 

 名無し:分かる

 名無し:AS(攻撃速度)は実際に触ると体感かなり変わるよな

 ベテラン探索者:いや、通常攻撃だけならまだ地味な方だぞ

 

 隼人はゴブリンとの距離を測りながら、小さく眉を寄せた。

 

「そうなのか?」

 

 余裕があるわけではないが、有益な情報はすぐにでも拾い上げたい。

 

 ベテラン探索者:Lv2になったら、最初のクラス選択と『スキルジェムスロット』が解放されるんだよ

 名無し:そういやJOKERまだLv1だったな。その状態でAS15の恩恵受けてるからな

 ベテラン探索者:スキルジェムを装備すると、ただの通常攻撃じゃなくて、専用の『攻撃スキル』が使えるようになる。攻撃速度補正は、その手の攻撃スキルにも乗る

 中級クラフター:スキルによって相性の良し悪しはあるけどな。手数でダメージを稼ぐスキルだと、ASの価値はかなり高い

 

(……スキルジェム、か)

 

 詳しい仕組みまでは、まだ分からない。

 だが、レベル二になれば通常攻撃とは別の攻撃手段を使えるようになる。

 今はそれだけ分かれば十分だった。

 

「なるほど」

 

 隼人は二体目のゴブリンが繰り出した大振りの棍棒を半歩下がって回避しながら、短く応えた。

 

「情報サンキュー」

 

 画面を見ながら棒立ちになるような真似はしない。ARのコメントは視界の端に流れており、相手の攻撃を躱した瞬間や、距離を取った僅かな隙間に文章を処理している。

 

 二体目との戦闘は、先ほどよりもさらにスムーズだった。

 隼人は『相手の攻撃を誘う』→『回避する』→『反撃する』という基本的なサイクルを正確に繰り返す。

 《万象の守り》の攻撃速度+15%のおかげで、攻撃後の隙が明らかに短い。

 以前なら一回しか斬りつけられなかった隙間に、無理なく二撃目までをねじ込むことができる。

 二体目も、数回の攻防の末に光の粒子へと変わった。

 

【経験値を獲得しました】

【Lv1:EXP 56%】

 

 一体倒すごとに28%。経験値のゲージが半分を超え、明確に数字として積み上がっていくのが見える。

 

 だが、続く三体目のゴブリンとの戦闘で、隼人は小さな失敗を犯した。

 

 攻撃速度の恩恵に慣れ始めた隼人は、ゴブリンの隙に対して『さらにもう一撃』余分に剣を叩き込もうとしたのだ。

 一撃目、二撃目。そして三撃目。

 だが、それは明確な欲張りだった。

 ゴブリンの硬直はすでに解けており、三撃目の刃が届く直前、振り払うように振るわれた棍棒の先端が隼人の右脇腹を掠めるように叩いた。

 

「ぐっ……!」

 

 鈍い痛みが脇腹を走る。

 

【HP:149/161】

 

 ダメージ自体は6。最大HPからすれば小さいが、前話で受けた肩への一撃と同じく、紛れもない本物の痛みだ。

 

 ベテラン探索者:ほら言っただろw

 名無し:欲張ったな

 名無し:国宝装備着てても、物理の棍棒は普通に痛いぞ

 中級クラフター:三色耐性は属性攻撃用だからな。物理攻撃には何もしてくれんぞ

 

 コメント欄が容赦なく隼人のミスを突く。

 隼人も痛みに顔をしかめながら、自嘲気味に苦笑した。

 

「だな」

 

 すぐに大きく後退し、安全な距離を確保する。

 強装備を手に入れた直後の慢心。ギャンブルにおいて、少し勝ちが込んだ途端に掛け金を不必要に吊り上げ、一瞬で破滅する素人と同じ心理状態だった。

 隼人は即座に思考を修正する。

 

(攻撃が速くなったことで、一撃多く入る余地が生まれた。だが、だからといって『毎回限界まで一撃多く入れるべきだ』という結論にはならない)

 

 リターンが増えたからといって、常に最大利益を取りに行く必要はない。リスクとの天秤を見誤れば、いずれ致命的な一撃をもらうことになる。

 勝負の基本に立ち返り、隼人は冷静に三体目を処理した。

 

【経験値を獲得しました】

【Lv1:EXP 84%】

 

 荒い息を吐きながら剣を下ろした隼人の視界に、コメントが流れる。

 

 名無し:しかし、レジ25×3が完全に暇してるなw

 ベテラン探索者:今はな。だが、上に行けば火も冷気も雷も普通に飛んでくるようになる

 中級クラフター:むしろ後になるほど、耐性(レジ)が重要になる。属性攻撃が痛いダンジョンも増えるからな

 名無し:HP100だけでも今は十分壊れてるけどな

 

 隼人は息を整えながら、その言葉を反芻した。

 

「ゴブリンは、ただ棍棒で殴ってくるだけだからな。今は無駄になってるが……なるほど、いずれ必要になるわけか」

 

 今は腐っている能力が、いずれ先の階層で命を繋ぐ要になる。

 知識のピースが、一つずつ隼人の頭の中で組み上がっていく。

 

 そこからの探索は、先ほどまでの手探り感が嘘のようにスムーズに進んだ。

 隼人は次のゴブリンを探して、薄暗い洞窟の奥へと歩みを進める。

 

 一体目と対峙したときは、未知の生物に対する本能的な恐怖があった。棍棒が振り下ろされるのを『見てから』逃げていた。

 二体目からは、動きの起点が『右肩』にあることを理解し、肩が上がった時点で回避行動へ移れるようになった。

 三体目になる頃には、予備動作を過剰に意識しなくとも、相手の重心の移動や身体の僅かな変化から、次にどんな攻撃が来るのかを予測できるようになっていた。

 

 だが、それは隼人の剣術が急激に成長したからではない。

 同じ敵の、同じ行動パターンを何度も反復して観察したことで、『未知』の領域が『既知』のゲームへと変換されたからだ。

 ディーラーのシャッフルの癖を見抜くように。対戦相手のブラフのタイミングを測るように。

 剣が上手くなったわけではない。相手の持っている手札が、透けて見えるようになっただけだ。

 

 四体目。

 少し開けた広間に、ゴブリンが一体だけ徘徊していた。

 隼人に気づき、奇声を上げて突進してくる。

 もはや、戦闘に時間をかける必要はなかった。

 

 ゴブリンの右肩が動く。右足が地を蹴る。

 隼人は半歩だけ軸足をずらし、棍棒の軌道を躱した。

 そのままの勢いでロングソードを一閃。

 滑らかな反転から、首元への二撃目。

 

 今回は無傷だった。

 

 名無し:処理早くなったな

 名無し:一体目の時と全然違う動き

 ベテラン探索者:まあ、同じ敵を何匹かやれば普通は慣れるもんだ

 名無し:でも初日でこれは結構落ち着いてる方じゃね?

 

 コメント欄は過剰に褒め称えることはしない。

 既存の探索者から見れば、まだゴブリンを数体倒しただけの新人だ。

 

 ゴブリンが光の粒子となって霧散した、その瞬間だった。

 隼人の全身を、これまでとは違う淡く温かな光が包み込んだ。

 

 ARコンタクトの視界中央に、ひときわ大きなウィンドウがポップアップする。

 

 ====================================

 

【LEVEL UP!】

 

 神崎隼人

 

 Lv1 → Lv2

 

 ====================================

 

 身体の奥底から、じんわりと熱が広がる。

 筋肉の疲労が急速に抜け落ち、棍棒で受けた肩や脇腹の痛みも消えていく。

 同時に減っていたHPとMPも回復し、基礎ステータスが更新された。

 

【HP:173/173】

【MP:53/53】

【Lv2:EXP 12%】

 

(経験値は余った分が繰り越されるのか)

 

 素の最大HPも61から73へ上昇している。

 そこへ《万象の守り》の+100が加わり、最大HPは173になっていた。

 

 名無し:レベルアップ!

 名無し:初Lvおめ

 名無し:ついにLv2だな

 名無し:これでクラス選択だ

 ベテラン探索者:F級Lv2で初心者卒業とか調子乗って言うなよ

 名無し:誰も言ってねえw

 

 コメント欄も、初レベルアップを軽く祝うような和やかな空気に包まれる。

 だが、本番はここからだった。

 

 レベルアップの表示が消れると同時に入れ替わるように、新たなシステムメッセージが展開された。

 

 ====================================

 

【クラス選択が解放されました】

 

 最初のクラスを選択してください。

 

[1] 戦士(Warrior)

[2] 盗賊(Rogue)

[3] 魔術師(Mage)

[4] 無職(Jobless)

 

 ※選択したクラスによって、成長傾向および利用可能なスキルが変化します。

 

 ====================================

 

 さらに、画面の端に小さな通知が表示される。

 

【スキルジェムスロットが解放されました】

【装備中のスキルジェム:なし】

 

 隼人は、空中に浮かぶ四つの選択肢を静かに見つめた。

 戦士、盗賊、魔術師、無職。

 登録センターで見た《複数人の人生》の説明に並んでいた四つの可能性が、今、実際の選択肢として目の前に現れている。

 

 隼人の口から、低い呟きが漏れる。

 

「……これか」

 

 ここでようやく、【複数人の人生《マルチアカウント》】というユニークスキルが何を意味するのか、その輪郭がはっきりと実感できた。

 複数の人生とは、つまりクラスも、ステータスの配分も、装備も、スキル構成も異なる人生を、それぞれ独立したビルドとして持てるということなのだ。

 

 配信のコメント欄は、当然のように盛り上がりを見せていた。

 

 名無し:クラス選択きたあああ

 名無し:JOKERなら盗賊(ローグ)だろ!

 名無し:名前的にローグ一択w

 中級クラフター:いや、万象あるなら戦士もかなり良いぞ

 名無し:魔術師いこうぜ!派手な魔法見たい!

 名無し:無職で!!

 名無し:↑人の人生だと思って適当言うなw

 

 視聴者たちが各々の好みを書き込み、意見が割れる。

 だが、隼人は周囲のノイズに流されることなく、ARで各クラスの簡易説明を呼び出した。

 

【戦士(Warrior)】

 近接戦闘に適したクラス。HP・筋力・防御面の成長に優れる。近接武器系スキルとの適性が高い。

 

【盗賊(Rogue)】

 敏捷・回避・クリティカルに優れる。高い瞬間火力と機動力を持つが、耐久力は低い。

 

【魔術師(Mage)】

 MP・知力・魔法攻撃に優れる。多彩な属性魔法を扱うが、接近戦には不向き。

 

【無職(Jobless)】

 特定分野への成長補正を持たない。クラス由来の装備・スキル制限が少ない。

 

 隼人の性格、そして『JOKER』という裏社会での在り方からすれば、回避とクリティカルに優れた【盗賊】が最もイメージに近いかもしれない。

 実際、コメント欄でも盗賊推しの声は多い。

 

 名無し:絶対ローグ

 名無し:JOKERならクリティカル特化のギャンブル型だろ

 

 一瞬、その選択肢も頭を過った。

 だが、隼人は自分自身の現在の立ち位置を極めて冷静に客観視していた。

 

(俺の戦闘経験は、今日ダンジョンに入ってから一時間にも満たない。剣術の経験はゼロだ。ダンジョンでは死亡=終わり。そして何より、左腕には【万象の守り】がある)

 

 最大HP+100と、攻撃速度+15%。

 今持っている長所をさらに伸ばし、生存率を高める。

 戦闘の素人である自分が、現状で最も安定して勝ちを積み重ねられるのは戦士だと、隼人は判断した。

 

 それに、普通の探索者であれば、最初のクラス選択は今後のビルドを大きく左右する重い決断になる。

 だが、隼人には【複数人の人生《マルチアカウント》】がある。

 いつか希少な【魂の水晶】を手に入れることができれば、第二の人生――別のアカウントを作成できる。

 戦士を選んだからといって、盗賊や魔術師への道が永久に閉ざされるわけではない。

 

 もっとも、【魂の水晶】は極めて希少で、高価な代物だ。

 四億近い借金を抱えている現在の隼人が、気軽に手を出せるようなものではない。

 

(なら、なおさら一枚目を遊びで選ぶ理由はない)

 

 隼人は、一つの結論を下した。

 

「戦士だな」

 

 その言葉に、コメント欄がざわめく。

 

 名無し:え!?

 名無し:ローグじゃないのかよ!

 名無し:JOKERなのに戦士選ぶのかw

 ベテラン探索者:いや、妥当な判断だ

 中級クラフター:初見ダンジョンのソロ攻略なら、普通に戦士は安定だろ。万象とも噛み合ってる

 名無し:ギャンブラーなのに妙に堅実だな

 

 隼人はロングソードを肩に担ぎ、配信のカメラに向かって少しだけ笑った。

 

「勘違いしてる奴がいるな」

 

 JOKERの目が、静かに細められる。

 

「ギャンブラーだからって、毎回一番危ない目に張るわけじゃない」

 

 一拍。

 

「勝てる方に張る。負ける賭けをするほど、ギャンブル好きじゃないんでね」

 

 名無し:それ言う奴がダンジョン来るのかよw

 名無し:でも言ってることは分かる

 ベテラン探索者:なるほどな

 

 隼人は指先を伸ばし、空中に浮かぶウィンドウの【戦士(Warrior)】をタップした。

 

【このクラスを選択しますか?】

 

『YES』

 

 その瞬間、淡い光が隼人の身体に吸い込まれた。

 身体の芯に何かが定着し、先ほどレベルアップした時とはまた違う力が全身へ染み込んでいく。

 

 ====================================

 

【クラスを獲得しました】

 

【戦士(Warrior)】

 

 ====================================

 

 ステータス画面に『クラス:戦士』の文字が刻まれる。

 

【HP:173/173】

【MP:53/53】

【クラス:戦士(Warrior)】

 

 そして同時に、『スキルジェムスロット』が正式に使用可能となった。

 

 隼人は期待を込めて、新しく解放されたスキルのウィンドウを開いた。

 

【スキルジェムスロット:空】

 

「……で?」

 

 そこに表示されていたのは、無情な空白だけだった。

 

 名無し:草

 名無し:ジェム持ってねえw

 ベテラン探索者:そりゃそうなる

 名無し:スロットだけあっても何も出ねえぞw

 

 隼人は苦笑しながらウィンドウを閉じた。

 

「なるほど。まずはジェムをどうやって確保するか、そこから調べないとな」

 

 新たな目的が自然な形で生まれた。

 レベルが上がり、クラスを得た。次はそれを活かすための『技』を手に入れる番だ。

 

 隼人は左腕の《万象の守り》を見下ろした。

 ただの通常攻撃ですら、攻撃速度+15%の恩恵は明確だった。

 そこへ、先ほど聞いた攻撃スキルが加わる。

 

「通常攻撃でこれなら……」

 

 名無し:そういうこと

 ベテラン探索者:スキル使い始めてからが本番だな

 名無し:次にやること増えたなw

 

 視聴者たちは好き勝手にコメントを流すが、隼人はすぐにはポータルの巻物に手を伸ばさなかった。

 クラスを選んだからといって、ここで探索を打ち切るにはまだ早い。

 現在のHPは満タン。ポータルの巻物も十分に残っており、現在位置も入り口からそこまで深くはない。撤退を選ぶ理由は、まだなかった。

 

「せっかくだ。もう少し、この奥を見ていく」

 

 隼人はロングソードを軽く振った。

 魔素に補助された刃が、空気を鋭く切り裂く音を立てる。

 

「攻撃速度十五パーセントでこの感覚か」

 

 隼人の口角が、抑えきれない興奮で釣り上がる。

 

「スキルまで乗せたら、一体どうなるんだろうな」

 

 視線の先には、未知のモンスターとドロップが眠る、さらに深い洞窟の闇が広がっていた。

 

「……面白くなってきた」

 

 神崎隼人――配信者《JOKER》は、確かな足取りで、ダンジョンの奥へと再び歩き出した。

 

 

 

 # 神崎 隼人(かんざき はやと) / JOKER

 

 ## プロフィール

 - **名前:** 神崎 隼人(かんざき はやと)

 - **年齢:** 22歳

 - **配信者名:** JOKER

 - **過去:** 裏社会でその名を知られた凄腕の代打ちギャンブラー。依頼人に代わって大勝負に挑み、妹・美咲の治療費を稼いできた。

 - **目的:** 難病『環境魔素不適合症』に苦しむ妹・美咲の莫大な治療費を稼ぎ、約4億円の借金を返済すること。当面の目標はA級探索者への到達。

 - **性格:**

  - 冷静沈着で、常にリスクとリターンを計算している。

  - 必要な時には、大きなリスクを受け入れてでも勝負に出る胆力を持つ。

  - 「勝てないゲームはしない」という現実的な思考を持ち、情報を集めて勝率を高めてから勝負する。

  - ギャンブラーではあるが、無意味に危険な選択をするわけではなく、「勝てる方に張る」ことを基本としている。

  **経済状況:** 妹の治療費は月約300万円。裏社会への借金は約4億円。直近の代打ち仕事で1000万円を得ているが、その多くは妹の治療費と返済資金として確保している。

 

 

 

 

 

 ## ステータス (4話時点)

 - **レベル:** 2

 - **クラス:** 戦士 Lv.1

 - **アセンダンシー:** 未解放

 - **HP:** 173 / 173 `(基礎73 + 万象の守り100)`

 - **MP:** 53 / 53 `(基礎53 / 予約: 0)`

 - **筋力 (Strength):** 23

 - **俊敏 (Dexterity):** 23

 - **知性 (Intelligence):** 14

 - **幸運 (Luck):** ??

 - **パッシブスキルポイント:** 残り: 1

 - **HP自動回復:** 0 / 秒

 - **MP自動回復:** 0.9 / 秒

 - **物理ダメージ軽減:** 0%

 - **精度 (Accuracy):** 補正なし

 - **移動速度:** +0%

 - **攻撃速度:** +15% `(万象の守り15%)`

 - **チャージ上限値:**

  - **持久力チャージ:** 3

  - **狂乱チャージ:** 3

  - **パワーチャージ:** 3

 - **耐性値:**

  - **火耐性:** 25% `(万象の守り25%)`

  - **氷耐性:** 25% `(万象の守り25%)`

  - **雷耐性:** 25% `(万象の守り25%)`

  - **混沌耐性:** 0%

 - **ダメージ補正:** なし

 - **堅牢化:** なし

 

 

 ## 取得済みパッシブスキル (合計0ポイント使用)

 ### アセンダンシーノード

 - なし

 

 

 ### キーストーン (大型パッシブ)

 - なし

 

 

 

 ### 中ノード (Notable Passives)

 - なし

 

 

 ### 通常パッシブ (小ノード)

 - なし

 

 

 ## スキル

 - **ユニークスキル:**

  - **【複数人の人生(マルチアカウント)】:** 複数の人生=独立したキャラクタービルドを作成・保有できる。レベルと経験値は全アカウントで共有されるが、クラス、ステータス配分、パッシブスキル、装備、スキル構成、フラスコ構成などはアカウントごとに独立する。新たなアカウントの作成には、極めて希少な【魂の水晶】が必要。現在の所有人生は1。

  - **【運命の天秤(フェイト・スケール)】:** 世界のあらゆる「確率」に干渉し、その結果を捻じ曲げる。等級SSS。具体的な効果の大部分と代償は不明。第3話では《変質のオーブ》使用時に反応し、【錆びた鉄の小手】が通常ではあり得ないユニーク装備【万象の守り】へ変質した。

 - **カスタムスキル:**

  - なし

 - **発動中のオーラ/バフ:**

  - なし

 

 - **切り替え用オーラ:**

  - なし

 

 

 ## 装備品 (4話時点)

 - **武器:** 【初心者用ロングソード】

  - 効果: 特殊効果なし / 装備要件: Lv1

 - **盾:** 未装備

 - **頭:** 未装備

 - **胴:** 未装備

 - **手:** 【万象の守り】 (ユニーク)

  - 効果: HP+100, 攻撃速度+15%、火耐性+25%、氷耐性+25%、雷耐性+25% / 装備要件: Lv1

 - **足:** 未装備

 - **首輪:** 未装備

 - **指輪 (左):** 未装備

 - **指輪 (右):** 未装備

 - **ベルト:** 未装備

 - **インベントリ保管:**

  - 【F級魔石・小】

  - 【ポータルの巻物】

 

 ## フラスコ

 - **スロット1:** 未装備

 - **スロット2:** 未装備

 - **スロット3:** 未装備

 - **スロット4:** 未装備

 - **スロット5:** 未装備




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