“パエトーン”に過剰反応する系の偽旅人   作:融合好き

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虚ろに潜む報復劇の話

 

えっちな おねえさん が なかまに なった!!

 

やったぜ。とはいえ、そもそもそれを言い出したら今の私も割とえっちの部類に入る。でもレミエールさんのえっちさは次元が違うと思います。もう普通に歩いてるだけでたゆんたゆんしてるのよお胸が。あまりにエッッ過ぎて集中出来ませんなんですかその黒子。あとクーパー靭帯とか大丈夫なんです?????

 

まあリュシアもだいぶ無防備だし、雅さんもあれだけ動く割に軽装というか胸当て付けろって感じなので、多分シリオンの子は普通の人と比べてクーパー靭帯がものすごく強靭なんだろう多分。その割には月城さんとかも割とおっぱい放り出した服着てた気もするけどあの人一応戦闘員なんだよね? 私? 私は宇宙人だからセーフで。

 

ちなみに話を聞くところによると、レミエール女史は翼のシリオンなんだそうな。翼って何です??? ここに来て衝撃のカミングアウトである。鳩とかじゃねーのかよ。羽の生えた動物なんていくらでもいるだろうにわざわざ翼って分類されてるってことは、つまりシリオンそのものがいわゆる普通の獣人じゃなくて過去の人体実験の名残である可能性が微レ存。ちょくちょく闇見せるの勘弁してくだしぁ。

 

やっぱこの世界割ととんでもねぇな???? でもエッッッだからOKです。みんな割と悲壮感ないし深く考えると負けな気がするので私はそうしてる。だけど私のイチモツは相変わらず行方不明のまま。なんで過去の私は空くんを選ばなかったのか。あまりにほたちんがエッッッッだからですね分かります。おちんちんがあったら即死だった。ならいいかよくない。

 

 

閑話休題。

 

 

「初代“虚狩り”、レミエール・ダン中佐……まさか御存命で有られたとは」

 

無事(?)にプルセナスホロウを攻略した私たちリュシア御一行であったが、対面に仮設基地を作り待ち構えていた月城さんが目撃したのは、何やら見慣れないえっちなおねえさんの姿。当然の如く囲まれて、しかし彼女が名乗れば状況は一変。戦力的にも詐欺師の可能性は限りなく低いことを我々に保証されて、月城さんは頭を抱えているわけである。

 

「H.A.N.D本部に戻ればHIA以前のデータも残されているので確認は容易ですが、まず間違いなく殉職扱いでしょう。ご希望であれば特例として復帰も可能ではありますが」

「あ〜……いいかな、ややこしいことになりそうだし。引退したロートルが出しゃばっても迷惑なだけってのは分かってるつもりだし」

「そう、ですか……。……その、宜しければ握手を……」

 

おっと思ったより動揺してるなこれ???

 

まあ無理もない。未だ私は“虚狩り”云々の話にピンと来てはいないけど、彼女も軍に所属してるってことは当然その手の逸話を聞いて憧れてたりしたんだろう。私とて旅人ボディになるなんてトンチキでなく、実際に旅人本人に会ったりしてたらサインをねだるくらいはしただろうし。

 

「こほん。えー、貴女たちが次に向かう予定のハワーラホロウですが、照さんからの情報があった通り、各所で讃頌会らしき人物の存在が確認されています。

彼らの目的は不明ですが、どうせ碌でもないことですので遠慮なくやっちゃって結構です」

「ああ、まだいるんだアレ……」

「います。それはもうウンザリするくらいに。一体どこから湧いてくるのやら……」

 

反応が台所で黒光りするアレなんよ。

 

讃頌会。ホロウ攻略に際してたびたび名前が出てくるこの組織は、私たちを支援してくれるホロウ根絶派の人たちとは真逆に、ホロウの存在を崇め奉るカルト宗教なんだそうな。

 

しかも精神がホロウ側に拠っている影響か、侵蝕されても変異せず理性を保ったままでいる実例がいるのも厄介で、それを餌に信者を呼び込んでいるとかなんとか。まあだいたいアビス教団と同じと見ていいだろう。どうでもいいけど今思えば序盤にトワリン苦しめたアビスの魔術師凄すぎない???

 

「司教であるメヴォラクの打破。そして何より拠点であるラマニアンホロウ消滅により、暫くなりを潜めていた彼らですが、幹部と思しきサラがラマニアン跡地にて確認されたことを皮切りに、徐々にその動きを強めています。

よもや課長や旅人さん、それにダン中佐が不覚を取るとは考えにくいですが──くれぐれもご注意を」

 

そのメヴォラクさんが讃頌会でどの程度の存在なのかは分からないが、その手のカルトの定石に則るなら司祭、枢機卿、教皇と更に上の役職がありそうだし、油断できるような相手ではないだろう。

 

とはいえ我らが最強護衛三人衆に勝てる存在がいるのかと言うと甚だ疑問ではあるが──というか“虚狩り”が想像の10倍くらい強いんよ。当たり前のように雷速の私にタメ張るわ跳躍で風を使う私に並び立つわ挙げ句の果てにデフォルトで空を飛ぶわと。いくら人間辞めているとはいえ、物量でのゴリ押し以外でこんなのに勝てるやつなんているの??

 

しかし、ホロウ内部はそのゴリ押しが唯一通用する場所でもある。あちらも聖域であるホロウを潰し回る存在なんて不倶戴天の敵でしかないわけで、となると全面戦争は避けられない。かと言って大人しくやられるような私たちではないが。

 

でもホロウを消滅させるには──ん?

 

「あれ? 今更だけど、ホロウに入らないで外からエーテルを吸収すればそれでいいんじゃ……」

「え?」

「へ?????」

「はい?」

 

三者三様の反応。あまりの名案に戸惑っている様子。でも最近は裂け目とか経由する必要もなくなったし、ワンチャン行けるんじゃないかと思うんだ。

 

「──それが可能なら、だいぶ前提が変わりますね。ホロウの外からであれば、慮外の戦力などH.A.N.D(こちら)でも対応できる。こちらが対応し切れないほどの戦力──無数の機動兵器などをあちらが持ち出したとしても、それはそれでホロウ内部に避難すれば事足りる……」

 

精密で強力な兵器ほどホロウの侵蝕に耐えられず、ホロウに適応した存在ほどホロウの外では生きられない。

 

つまり、あちらはそんな板挟みの状態でこの世界でも最高峰の戦力を相手にしなければならない無理ゲーを強いられるのだ。私ってあったまいー。

 

しばらくぶつぶつとその案を検討していた月城さんであるが、やがて考えが纏まったのかこちらを見据えて、

 

「まずは近場の共生ホロウで試しましょう。その上で──その案を実行するとなると、讃頌会からの干渉によりホロウを短期間で行き来する可能性を考えて、ホロウの出入口を迅速に、この場合は僅かなラグもなく探れるプロキシの存在が必要不可欠になります。

──そして、私の知る限り、その条件に該当する人物はひとり……いえ、ふたりしかいません」

 

何故かそのタイミングで隣にいたリュシアがビクッと震える。けれど月城さんも最近の挙動不審な彼女の反応に慣れたのか、まるで気にした様子もなく次のように告げた。

 

「それは、とあるプロキシ稼業を営む兄妹──かつて伝説と呼ばれたプロキシ“パエトーン”。

しかし、その彼らのひとりは現在、ホロウ侵蝕による影響で、非常に危険な状態に陥っています」

「え……?」

 

まさかここでその名前が出るとは思わず、私もリュシア同様に、驚愕で目を見開く。

 

愚かなパエトーン。哀れなパエトーン。報われないパエトーン。伝説などと謳われても、それでもこの世界さえそんな扱いなのか。けれど、あの世界任務とは違って、まだ間に合うというのなら。

 

かつて踊らされた彼らへの償いとして、その一助となることは、“旅人”にとっても本望だろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「旅人。今日はどうして、“パエトーン”って名前に反応したのか聞いてもいい?」

 

その日。あたしは思わず旅人にそう問いかけていた。

 

いつも飄々としている彼女。いつも穏やかな顔で笑う彼女。あたしは何だかんだとそんな旅人の笑顔が好きで、だからこそその名前を聞いた瞬間、顔が露骨に強張った彼女の真意を聞いてみたくなったのだ。

 

「あまり愉快な話じゃないけど、聞きたい?」

 

うん、と答えると、彼女はとある一冊の本を取り出して、

 

「それは……?」

「常世国龍蛇伝。まあこれは関連する本ってだけだけど、さて。

むかしむかし、あるところに白夜国と呼ばれる国がありまして──」

 

そうして語られる物語。淵下宮。白夜国。賢者アブラクサス。大日神輿。魔神オロバシ。そして──太陽の子、“パエトーン”。

 

悪徳国家の神輿役。大人になる前に『処分』されてしまう哀れな子ども。贅を尽くす大人の下で、道化の如く弄ばれる小さな太陽。パエトーンたちはみな踊る……。

 

「………」

「そんなわけで、つい警戒しちゃってね。自分からそう名乗っているのなら、誰かに名付けられたのなら、どうしてそんな名前にしたのかって。まあ私はその名前の元ネタも知らないけど」

「パエトーン……」

 

パエトーン、もしくはパエトン。太陽神アポロンの息子。父親に身の丈に合わぬ装備を強請って案の定暴走させ、世界中を焼き払った挙句にその暴走を止めるべく名のある神に殺害された。

 

「……あたしもち(・)ょ(・)っ(・)と(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)なぁ」

「そう?」

 

ネットの繋がりの更にその繋がりだし、あまり深くは考えていなかった。だけど自らそう名乗るにしてはあまりにも縁起でも無い名だ。単に響きで選んだにしてはパエの部分が間抜けに聞こえてそれも考えづらい。ならばやっぱり誰かにそう名付けられて──?

 

邪推であるのは分かっている。旅人だってそう認識してる。それでも警戒には値する。当人が後ろ暗い商売をしてるってのもある。

 

でも、それでもリンさんはあたしの友人なのだ。怪しさはある。恐怖も抱いてる。だけど、あの時の善意が嘘だとは思いたくはない。あの笑顔が嘘だったと考えたくもない。

 

あたしはここにいる誰よりも頼りなくて、馬鹿で間抜けで軽率な人間だけど。それでも人の巡り合わせだけは誇れるものだから。だから、だから──

 

 

「リンさん!!」

 

柳さんから話を聞いてすぐ、駆け付けたビデオ屋では、時代に逆行したような商売をしているとは思えないほど賑わっていて、ボンプが店番をしているなかなか趣き深い場所だった。

 

しかしそれよりもとボンプの子に促されて奥の部屋へと進むと、そこにはソファに倒れているリンさんと、彼女を介抱している美青年の姿が。

 

「君は……」

「リュシア……!? どうしてこんなところに……!」

「どうして、って──大丈夫なの?!」

「だ、大丈夫だよこんなの、良くあることだし……」

「良くあることが問題なのでは??(名推理)」

 

ある意味で空気をぶち壊して侵入して来たのは我らが旅人。ダン中佐の輸送でグロッキー気味なあたしとは違い、まるで三半規管にダメージを受けた様子がないのは流石というか何というか。

 

「“旅人”……?!」

「初めまして、“パエトーン”。早速だけど、彼女を診せてもらっても?」

 

敢えてその呼び名で揶揄し、返答も聞かずにリンさんの手を握る。態度が厳しいのは以前に聞いた淵下宮での話が由縁だろうか。あるいは──それほどにリンさんの容態が切羽詰まっているのか。

 

「……私、なら。目のソレごと悪いとこ全部取り除けるけれど」

「………!!」

 

切り出した旅人の言葉に、しかし彼の兄は答えない。普通なら考えるまでもないことなのに、まるで宝物を取り上げられた子どものような目をしている。

 

(パエトーン……)

 

哀れな子。愚かな子。そもそも彼らはこうして立派な稼業を嗜んでいるのに、何故プロキシなどという後ろ暗い商売をしているのか。やはりそれだけの事情があるのか。旅人が指す目の奥にはどんな秘密が隠されているのか。

 

「………」

「………詮索は趣味じゃないし、何か事情があるのは分かってる。思っていた程じゃないからソ(・)レ(・)にも干渉するつもりはない。

ただ、今回の対価として協力を要請する。また、その間の負担も全て私が担う。

ただし、それ以降の不調にあってはそれがどれだけ危急の事態でも対応しない。それでいい?」

「………ああ、頼む」

 

なおも葛藤していた彼の抱える闇。この世界にはありふれた悲劇のひとつ。それを知りたいと思うあたしは、やはり傲慢なのだろうか。その軽率さが今の状況を招いたというのに、それでもその好奇心を止めることは叶わなかった。

 

 

「お、おふたりさぁ〜ん。その子もいいけど、頑張った私もちょっとは労って欲しいかなぁって……」

「んん? だけど中佐殿は、旅人ちゃんに悪いトコ全部治してもらったんじゃないのお?」

「それはもうばっちりと。もういつ以来かってくらい身体が軽くて、やっぱり改めてタウミエル(アレ)が身体に良くないものって実感したね」

「……今更ではあるけど、対価についてはアレでいいの? 貴女の名声を思えば、復職を抜きにしてももっと毟り取れたと思うけどぉ」

「ううん、いいの。旅人からスカモ……ソ(・)ロ(・)ブ(・)ホ(・)ロ(・)ウ(・)の(・)消(・)滅(・)を確約して貰ったから──今はそれで十分。あそこは規模もそこまでじゃないし、一(・)刻(・)も(・)早(・)く(・)消してあげないとね」

「………。……照ちゃん、実は貴女たちみたいな“英雄”はあんまり好きじゃないけどお。今の貴女のことは、案外嫌いじゃない、のかも」

「ふふっ、ありがとう」

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