今の自分が一体何者なのかという疑問は、私が初めての夜を経てからずっと考えていた。
容姿は『原神』のゲームにおける主人公のひとり。性別は女性。意識は男性。しかしこれもあくまで自認で、肉体が入れ替わったからか過去を思い返そうとするとテイワットにいた頃の存在しない記憶がフラッシュバックし、けれど『原神』というゲームをプレイしていた記憶に関しては鮮明に思い出せる。どういうことだってばよ。
思いつく限り色々と試して、出来そうなことは全部やって。それでも“私”という存在の根拠は曖昧なまま。所作は完全に女性らしさに溢れ、肉感的な女性を見て「えっちだなぁ」とは思っても身体は欲情してくれない。
導き出した結論としては、『本物の旅人ではなく、ゲームにおける
他にもシナバースピンドルを代表とした、シナリオ上イベントを経験して所持してないとおかしい武器の一部を後発組である私が所持していなかったり、視認性の都合から使用を渋っていたヴェスナの新兵は取り出せるのにヴォジャニーツァのパチパチ蓄音ダックは何処にもないと言った超個人的な都合が反映されていたり、作中で旅人が長いこと使っていたはずの斬岩・試作が新品のようにピッカピカだったり──
宇宙船を取り出せたことにはたまげた。私の場合は鍵をまだ保有していたので、宇宙船自体が“旅人の持ち物”として認識されていたからだろうか。なら茲白の傘もどうにか取り出せないか試したりもしたが、あれは“私がテイワットに置いて行った”扱いであるらしい。塵歌壺がログアウトの度に収納される仕様で本当に助かった。似た設置物である晶蝶を集めるアレも取り出せなかったので、そうじゃなければこれまでの旅路はずっとテント暮らしとなっていたことだろう。
「これって……その、旅人。これを直してるってことは、直ったらこの星を出て行くってこと?」
「ん〜……」
錬金台で創り上げた部品の形を岩元素の力で調整しながら、リュシアからの疑問にどう答えたものかと思い悩む。
この星を出る。それも選択肢の一つではある。けれど何処へ向かえばいい? 既に私は“旅人”ではない。今更テイワットに戻ったところで不幸な結末になるのは目に見えているし、万一パイモンに出会ったら絶対違和感に気づかれる自信がある。それ以前に“私”の自認ではテイワットは“帰るべき場所”ではなく、あくまで“ゲームの舞台”という認識。そういう意味では目指すべきは地球になるが、そもそもこの世界に地球が存在しているのかどうか。
何より、この星のホロウを駆逐したからと「じゃ、あとはよろしく!」と去るのもなんか違う気がする。だから迷っている。どないしよ。
「……実はあんまり考えてない。テイワットに戻ろうにも、変な空間の渦にでも飲み込まれたのかログはぶつ切りだし、仮に戻れたとしてそこにはもう、きっと“私”の居場所はないだろうから……」
「あ──」
「それに、リュシアからの依頼は“ホロウをどうにかする”ことだから、なら夜空に浮かぶ
「……!!」
端材で月の模型を作り、草元素で全体を覆うように根を張り巡らせる。
過半を闇に覆われた満月は、まるでこの星の未来を暗示しているようにも見える。スリープポッドを引き摺り出したきっかけも、どうにかして月へ渡る方法はないだろうかとアイテムを片っ端から引き出していた結果なわけで。
「── ホロウとは空洞。月明かりに沿って地上に根を張らす木の
ふと。
難しい顔をしてしばらく黙り込んでいたレミエールさんが、そんな詩的な語り口から会話に踏み込む。その表情は真剣そのものであり、普段の朗らかな雰囲気とのギャップから、その場の全員が彼女に注目する。
「かつてサンブリンガーは、アーチ教授と共同で宇宙開発を進めていた。旧都の中央、後に『零号ホロウ』と呼称されるホロウが出現した際、それと連動するようにして月に黒い影がポツンと生まれたことに、彼女たちは非常に高い関連性があると踏んだ」
すたすたと歩み寄るレミエールさんは私が作った模型を手に取ると、全体が覆われた蔦の一部を円型に抜き取り、禿げたその部分をくるくると指先でなぞりながら続ける。
「旅人はさっき、月がこの星の未来を暗示してるって言ってたね。けれど実は、
都市を覆うように包み込む洞、ダークウォール。人類の生存圏と
「ま、待って。それじゃあ……」
リュシアの声が震えている。彼女の発言が真実であるのなら、自分のやっていたことは何だったのかと。その苦悩に意味はあったのかと。何かに縋ろうとして、けれど直前で梯子を外されたかのようなか細い声。
「ホロウの実体はこの星に存在しない。故に干渉は本来なら不可能なことで、その対処法も存在しないはずだった。よもや月から降り注ぐ無限のエネルギーすら枯渇させる勢いで、空間を維持する最低限のエーテルをも簒奪し、ホロウ空間を無理矢理崩壊させられる人間が現れるなんて、かのメイフラワーでさえまるで想定してなかった出来事なんだと思う」
そこでレミエールさんは月の模型を上空に放り投げると、落下してきたそれを順手でしっかり握り締める。手で月を握る、すなわち月にまで手が届くことの示唆か。つらつらと語られる情報は、内容の重さに反して随分と軽やかで、
「結局、宇宙計画は頓挫したって話は聞いた。どん底まで追い詰められた人類は、既に外へと足を向けられる余裕なんて無く、皮肉にもホロウから齎された恩恵をどうにかやりくりして、今の新エリー都を築き上げるのが精一杯だった。でも──」
そこでレミエールさんは言葉を区切ると、私、リュシア、そして私の背後にあるスリープポッドの順に視線を移して、
「もしもその方法が確立されて、手を伸ばした先、月に巣喰う病巣である
『
──よもや都市が隠し通したこの世の常識さえも破壊して、真の意味で人々が安心できる世界を。あるいは実現できるかもしれないね。
そう締め括り、彼女は手に持った月の模型を握りつぶす。握力ぱねぇ、じゃなくて。そもそもの大前提を覆す発言。ハンターハンターにおける暗黒大陸、あるいはトリコのグルメ界を彷彿とさせる世界観を塗り替える一言。情報統制をしてるっぽいところもあちらに酷似している。
この都市はホロウに閉じ込められている──言われてみれば、ホロウが“世界中に湧いた”と言われてるのに6大ホロウは全て新エリー都に集中していたり、人口が私の記憶にある地球より遥かに少ないのにあっという間にエネルギー供給の危機に陥ったりと、壮大な世界観の割にスケールが小さいなぁといくらか違和感を感じることはあったけど、それはむしろ当然だったと。なるほどなぁ。
「……じゃあ、私が月の問題を解決したら、諸々の問題が一気に解決する?」
「そう、だね──そうかもしれない」
煮え切らない反応。そもそもこの地の人類が月に足を踏み入れたことがない以上、全ては仮説であって真実ではない。けれど荒唐無稽というわけでもなく、その可能性は非常に高い。少なくとも、都市が謎の壁に覆われてるのは事実で、それがスケールこそ違えど月に映し出されたホロウの模様と何故か合致している。
(偶然……じゃないよね。やっぱり)
既に資源を搾り尽くされただろう生存域。その外側、壁を払い足を踏み入れることが出来たなら、少なくとも土地の問題は解決するし、まだまだ眠ってる資源だって無数にあるはず。
周囲を見渡す。顔面蒼白のリュシア、目を見開くダイアリンさん、神妙な顔のレミエールさん。そして私の宇宙船。
「………仲間を集めよう」
「え?」
「元々月には行くつもりだったから、それが地表のホロウと密接な関係にあるのならむしろ歓迎すべきこと。でも、今の話を聞く限り月にはエーテリアスの大元となる存在──凶悪な宇宙生物が生息している可能性が高い。
だから、時間がある今のうちに、月の攻略に備えて傭兵を雇う。船は二人用だけど中は結構広いから10人くらいはいけるはず。とはいえ無理に詰め込んでも事故が怖いから出来れば人数は5人以下、条件は人型で戦闘に自信があって且つ酸素がなくても活動できる人で」
「……旅人は?」
「私は月でも普通に動けるから大丈夫。だから私以外に何人か」
「ええ……?」
素直に答えたら何故かドン引きされた。解せぬ。私を何だと思ってたんだ我宇宙人ぞ? まあ私が月で活動できるのは月神の加護のおかげだけど。それ以前に私を省いたら宇宙船が動きませんことよ。
とりあえず今日は夜ももう遅いので一度解散となり、私はひとり宇宙船の側で偽物の空を眺めながら佇む。長いホロウ攻略の旅路も、ようやく終わりが見えてきてホッとしているのか。あるいはまだまだ厄介事がありそうだと辟易しているのか。少なくとも、どんな形であれこの依頼が一区切りした時、私たちはきっと今と同じ立場では居られない。煽てて引き込まれるか、はたまた拒絶され排他されるのか。
ただ、答えを出すには、私はまだまだこの世界について無知過ぎる。それはきっとリュシアも同じで、そんなどうでもいいところばかり似たもの同士だと、私はひとり自嘲するのだった。
☆☆☆
「なるほど。それであたしを……」
レミエールさんからの衝撃の告白から一日。他のみんなはそれぞれ心当たりを回るとのことで各自解散となり、一人になった私は、善は急げとのことで早速昨日の案件をドラキナさんに尋ねてみることに。
人型の知能構造体で小柄。加えて“虚狩り”だから事情も知っていて多分超強い。我ながら完璧な人選だと自画自賛していたわけなのだが、どうしてか彼女からの反応は鈍い。元から宇宙開発にも熱心だったようだし、今なら期限延長を引き合いに出せば割と簡単に釣れそうだなとかそんな打算もあったので、正直ここまで渋い反応をされるとは思ってなかった。そんなに嫌か。いや普通は嫌だよね月に行くのなんて。
勝手に納得しかけた私に、しかしドラキナさんは被りを振って、
「ああ、ごめんなさいね。他意があるわけじゃないの。ただ……そういう事情なら、残念ながらあたしたちは力になれそうもないわね」
「というと?」
「簡単よ。あたしたちは確かに知能構造体ではあるけど、身体が全て機械で出来ているわけじゃなくて、随所に生体部品が使われているの。もっと具体的に言うと、あたしたちは呼吸を必要とするし、食事も欠かすことはできないわ」
ああ、知能構造体ってそういうのも含むのね。ボンプと同じって割には肌とか完全に人間だなぁとか思ってたけど、身体を3つに分けたりしてるのも含めて彼女はアンドロイドやホムンクルスに近い存在だと。
私がその言葉に納得を示していると、彼女は更に続けて、
「ただ……宇宙船、となると流石に興味が湧いてくるわね。もし宜しかったら、修理の一部をこちらで引き受けることを条件に、少し見せて貰うことは可能かしら。勿論、基幹部分を覗こうなんて真似は絶対にしないと誓うわ」
「う〜ん……」
船の存在はこうして方々に協力を持ちかける案が出た時点で隠し通すのは無理だし、ひとりだとどうしても作業に難航する箇所があったのも事実だ。船体ひっくり返したりとか。
部品の作成は材料の都合から錬金術が無いと無理だとしても、組み立てと交換に関しては技術があれば誰にでもできるし、こちらも部品の作成だけに集中できる。見られちゃ不味そうな基幹部分に関しては私の持つ鍵がないと参照できない……まあ、大丈夫だろう、多分。
「まあ、構わないけど……」
「! 感謝するわ。それじゃあ早速──」
そこからはあれよあれよと工場らしき場所まで案内されて、死んだ目をした作業員の皆さんから無駄に壮大な歓迎をされる。だけど今にも倒れそうな人たちばかりなので、歓迎より先に労働環境をどうにかした方が良いと思う。まあ多分私のせいなんだろうけども。
で。
「これが本物の宇宙船──………機能美とは無縁のデザインをしているのね」
「まあ(多分)プライベート用だし……」
ゲームでは開始時点で既に墜落していたので、生憎と“
それこそ航空力学とかをガン無視したカッコよさ全振りの奇抜なデザインは、真剣にスペースシャトルなんかを研究していた彼女からしたら激怒案件だろう。しかし、彼女はそれを怪訝な眼差しで見てはいても、怒気は感じずむしろ興味深そうにして、
「これが……飛ぶの? どうやって……?」
「やってみる?」
「是非」
即答。やはり根っこは研究者なのか、こういう場面では一切の躊躇が感じられない。まあシステム周りは元から無事だったし、特に経年劣化が激しい外板とその周辺の機器がまだ全然修復できてない状態ではあるけど、浮かせるくらいなら問題ないだろう。
コックピットを開いて乗り込むと、なんか当たり前のようにドラキナさんも乗り込んできた。いや別にいいんだけど貴女さっきまでの遠慮は何処に置いてきたよ。研究者ってのはこんなんばっかりかおいあの世から聞いてるかドットーレ。そういうとこだぞドットーレ。
「じ、じゃあ浮かすよ……?」
「ええ」
じっ、と手元を見つめて来るドラキナ様の視線をなるべく意識しないようにして、工場の天井に機体をぶつけないよう慎重に機体を浮かせてみると、直後に懐から通信機らしきものを取り出した彼女は、
「──マリトゥ工場長! 周辺のエーテル濃度は!?」
うわびっくりした。じゃなくて、この人もう完全に検証とかそういうスイッチ入っちゃってるよ。なんかもうナチュラルに実験開始しちゃってるよ。
やがて何処からか『検知できません!』との放送が流れると、ぶつぶつと何かを呟き始めるサンブリンガーさん。怖い。いっそ逃げた方が良いか検討したけど、そうしたらコックピット好き勝手弄られそうで恐ろしい。おかしいな。ちょっとしたデモのつもりがどうしてこうなったんだろう。
「エーテルエネルギーを使用せずに浮遊できるの……?」
「え? それはまあ……そもそもエーテルなんてこの星に来て初めて知ったくらいだし……」
「ブースターが起動していないみたいだけど、揚力には何を?」
「浮かべるだけなら何も。進むためには別途推進力が必要で、今は事故でそれも空っぽになっちゃってるんだけど、前に進むだけなら最悪自力でどうにか……」
「燃料が空なのに飛べる……??」
特に理由もなく浮かぶ石はファンタジー世界の特権。それこそ層岩巨淵にはそんな感じの石が掃いて捨てるほどあった。ゲーム内ではマルから買える調度品かあるいはイベントで集める程度しか入手手段はなかったけれど、見本が手元に存在するなら錬金術の力があれば量産することは容易い。錬金術万歳。
未だ疑問符を浮かべているドラキナさんに、私は虚空から拳大の岩石を取り出すと、
「“浮生の石”って名前でね。これが埋め込まれた物質は重力を無視することが出来る。活性化には何らかの元素……まあ普通に電気とかでいいんだけど、とにかく一度刺激を与えて起動さえしてしまえば、逆に鎮静化を行わない限りは、半永久的に浮遊し続ける不思議な石だよ」
「……ちなみにその石、こちらで買い取らせてもらうことは可能かしら?」
「え??? 別に構わないけど……えっと、ひとつ一万ディニーくらい?」
既に船を浮かせるのに必要な分は組み込んだし、作成難易度もそう難しくない。というかインベントリにアホほど溜め込んでる水晶を少し加工するだけで作れる。その気になれば軽石でも作れるだろうけど、どうも密度がそのまま浮力に直結するみたいで、流石に群玉閣の中央に組み込まれているレベルのモノは作ろうと思っても無理だった。そもそも群玉閣のは仙人クラスの実力者が色々札とか貼って浮力を向上させてたっぽいし、私が作成したやつでも複数あれば馬鹿でかい宇宙船を浮かせる揚力くらいは得られるので、廉価版としては十分過ぎるけど。
そう考えての回答だったのだが、ドラキナさんはその言葉に過敏に反応し、今出せるものを全て買い取らせて欲しいと要求。値段もかなり吹っかけたのに即断で366万。流石は為政者。なんでも無茶が通る。傍目にはお淑やかな人(?)に見えたけど、こんな怪しい謳い文句の石ころをロクに検証もせず一括購入とは、冗談みたいな天空都市を作るだけのことはある。
そんな予想外のイベントこそあったものの、彼女も伊達や酔狂で“虚狩り”の称号を授かったわけではない。元が技術屋なだけあって指示は的確で、権力のゴリ押しで人材も無限に活用できる。更には細かな作業は例のボンプに委託したりと方々に隙がなく、手持ちの部品がものの数日で全て捌けてしまう結果に。
「……結果オーライ、かな?」
月攻略に向けた戦力を確保するという目論見こそ失敗に終わったが、その前提となる足回りの準備が出来たと考えたら悪くない結果じゃないだろうか。ただ、試運転の際には必ず呼ぶよう念押しされたり、いっそどうにかして月までついてこようとしたりと余計な騒動があったりはしたので、とりあえず私が自分から行動すると常識の齟齬から変なことになりかねないと、今後は大人しくリュシアに従おうと考える私なのだった。
☆☆☆
イカれたメンバーを紹介するぜ!
エントリーナンバー1番! 六分街より颯爽と参戦! スターライトナイト、ビリー!
エントリーナンバー2番! 治安局より舞い降りた! 麗しき治安官、青衣!
エントリーナンバー3番! 衛非地区より遠路遥々! 荘厳たる武人、盤岳!
以上の面子に私を加えた総勢四名が月への使者、特攻野郎Aチームのメンバーである。少なぁい!
だけど言い訳をさせて欲しい。そもそも知能構造体は存在自体がレアなのだ。加えて人型でエーテリアスとも張り合えるとなると希少種も希少種。その上で呼吸が必要ないなんて無茶振りもいいところ。むしろこれほど狭い交友関係で三人も見つかった方が驚きである。
「それでオーナー。俺らはソロブホロウ攻略まで待機ってコトでいいのか?」
そう問うて来たのはリュシアが連れて来た助っ人ことビリーさん。正直なところ、ドラキナさんの話を聞いた上でも人権が認められる機械ってどういうこっちゃと内心密かに疑問視してたのだが、こうして僅かな時間を共に過ごしただけで、既に私は彼を機械であると認識することが出来ずにいる。実は全身鎧を着た人間と言われた方が納得するレベル。確かにこれは特別扱いもやむなし。
なお、彼が私をオーナーと呼ぶのは、彼を雇うにあたり少なくない額の給料を払っているからである。無敵のスターライトナイトが月一億で仲間になるなんて安いモンだぜ!! いや実際希少性からしたらその10倍でも納得はする。どうせ金は有り余ってるし。ちなみに他二人はお助け料無料です。嬉しいけどなんかそれはそれで怖い。
「そうだね。でも、それだけじゃないよ」
「ん?」
「滞在中も給料は出るし、その間の諸経費はこちら持ち──即ち、ビリーさんなら銃や弾薬、オイルに破損したパーツと言った消耗品は勿論、今ならなんと強化パーツまで全部タダ!」
「おおお!!」
「というかお金で解決出来る問題はこの機にじゃんじゃん埋めちゃって欲しい。直前になって実は炉心が燃焼式だったから月ではマトモに動けない──なんてことになったら困るし」
「そういうことなら任せとけ! このスターライトナイトは、事前の準備もパーフェクトに決めて見せる!!」
便利な言葉ねスターライトナイト。文脈からして多分仮面ライダー的な特撮キャラなんだろうけど、これほど拘るのはやはり自我を獲得するに至った理由がそれなんだろうか。その辺りのドラマもなかなか面白そうだが、まあ正義の味方にこれほど分かりやすく憧れを示しているならそう悪いことにはならないか。
「“旅人”殿」
喜び勇んで街へと飛び出したビリーさんと、メイン武装の見直しのため同じく街へ繰り出した盤岳さんを見送っていると、二人きりになったタイミングで青衣さんが語り掛けてくる。
レミエールさんが連れて来た知能構造体。その型番を01NGⅥ捜査用玉偶。治安を取り締まる側として長きに渡り、この新エリー都を見守って来た彼女は、私のような存在に何を思うのか。
「まずはお会いできて幸甚の至りだ。我は青衣、今はただの傭兵として貴殿に従おう。
しかし、それは暫し先の話。ならばこの場は、白湯でも飲んで語り合おうではないか」
老齢な口調。盤岳さんとはまた違った方向で年季を感じる発言に思わず身構えてしまう私。そんな私を見た彼女は、見た目通りの童女のようにキョトンと首を傾げるのだった。