始めに視界に飛び込んできたのは、先程までの荒野が嘘のような緑豊かな自然と湖畔、そしてその中心に立つ城塞だった。
「あれは……何だろう。中世の城……?」
「噂には聞いたことがありますわね。パパゴホロウは侵入者の記憶から空間を形成すると。まさかそんなことがあるものかと聞き流していましたが……」
ホロウの外も大概時代錯誤な荒野だったが、それ以上に、むしろ世界観すら飛び越えるような異様な光景に、あたしは思わず後ずさる。けれど肝心の旅人は、「何あれモンド城じゃんテンション上がってきたかも」と呑気なもので──ん?
「モンド城?」
「そう。ちょっと前に話したテイワットの国の一つ」
「……つまり、アレは旅人さんの記憶が元になっている可能性が高いと?」
うっわ絶対面倒なヤツじゃんそれ。まさか他のホロウに影響したりとか無いよね? まあそれに関してはどうせ殲滅するつもりだから良い(良くない)にせよ──旅人がいた世界の再現とか、もう既に嫌な予感しかしない。
「こんな状況でも無ければ、観光でもしたいくらいだけど……」
天然の堀に囲まれた城塞都市。今や何処であろうとホロウ災害の危機が懸念されるこの世界では、自ら逃げ道を塞ぐような都市設計はまず見られないだろう。
足が止まっていたあたしを、都市を繋ぐ橋の上から旅人やルーシーさんが急かす。慌てて駆け寄れば、よほど故郷の風景が嬉しいのか旅人はテンションが高いまま手慣れた様子で橋にいた鳩を雷で気絶させて、例の如く虚空に回収を──
「……何してるの?」
「つい癖で……あ、この前のスイートフラワー漬け焼きここの鳩だから」
「え????? あれ野生の鳩だったの?????」
いや鳥なんて野生なのが当たり前なんだけど。ウチの集落ですら今時こんなワイルドな材料調達はしていない。今になって人様から出された料理にケチ付けるつもりは微塵もないけれど、地味に衝撃の真実である。
「中々壮観ですわね」
「そうだね……」
城門なんて初めて見た。本当に映画の世界に紛れ込んできたかのようだ。けれどここはかの有名なパパゴホロウ。堀の外側にはしっかりとハティやティルヴィングの姿が散見されるし、気を引き締めて行かなくては。
「え?」
城門を潜ると、そこは雪国だった──いやどこかの作品のもじりとかそんな意図はなくて。本当に雪がしんしんと降り注ぐ銀世界だったのだ。けれど気温はホロウ外の荒野と体感ほぼ変わらず、背後に見える森林は青々としていて脳がバグりそうになる。
いつにも増して混沌とした空間。『神の迷い路』の異名は伊達ではなく、ただ歩くだけですら精神に多大な負担を強いる。ここを単独で走破したとかかの初代虚狩りは化け物か。あるいはそれだけ“迷宮のキャロット”とやらが優秀なのか。
「なんでスネージナヤにフライムが……」
しかしそこは安定の旅人。時折エーテリアスに混ざる謎生物をあっさりと蹴散らし、いつもの調子でガンガンと進んで行く。空間が正常化されるにつれて城門やら雪景色やらが元の荒野へと変貌していく姿はそれはそれで悪い事をしているような気持ちになったが、旅人が苦戦するようならいよいよ絶望だったのでそこは安心した。
「はぁ〜……これは大したものですわね。私はてっきり、エーテルを枯渇させる専門の兵器でも開発したのかと思っていましたが、よもや体質でのゴリ押しとは」
「……実はあたしたち、無断でこれを繰り返しているだけだったり……」
「ひとまず英断と言っておきましょう。無闇に公開して事態が好転する未来がまるでさっぱり見えませんわ。彼女の肉を食べれば並外れたエーテル適性が得られる──なんて未だ人魚の伝説を信じてる脳に海藻の生えた老害が、他でもない彼女の活躍で増えていそうなのが救えませんわね」
「……ホント、なんというか色々と申し訳なくてね……」
小声での会話。あまりに酷い言い草だが、これが単なる被害妄想ではなく、むしろ絶対にいると確信できるのが何よりも悍ましい。
色々と不穏な情報が増えるたびに、このまま計画を進めていいのか不安になる。適度にホロウを残しておかないと、今度は人間同士の醜い殺し合いに発展するのではないか、とも。
「いざとなれば、私の方からも普段は役に立たない実家に一声かけましょう。
いつも私にやかましく高貴なる者の義務を講釈垂れておいて、よもや見ず知らずの女のケツをみっともなく追い回すような獣が親だとは思いたくありませんし」
「あ、あはは……」
明言されていないだけでほぼ確定みたいなものだったが、やはりルーシーさんは良いところの出身か。まあ最悪、彼女の実家がどうあれ彼女自身はかなり信用できそうだし、頼れる味方が増える分には大変ありがたい。
「それにしても流石は自称宇宙人なだけはありますわね。剣に炎を纏い、雷の速度で移動し、風で宙を飛び、蔦で相手を捉え、水球で防御し、切断面を凍結させる──ここまで器用な魔法使い(?)は、あちらでも中々居ないのではなくて?」
「どうなんだろう。とりあえずドラゴンを倒せるくらいには強いみたい。あと、本人は魔法じゃなくて“元素力”って言ってたよ」
「元素。物質の組成の概念ですわね。言葉通りのことが出来るなら、むしろ雷を起こす程度は易しいくらい。尤も、それを成すだけのエネルギーが一体何処から来て、何処へ消えているのか謎ではありますが……」
それは確かに。けど錬金術とかも普及してるみたいだし、あっちでは当たり前の技術なんじゃないだろうか。ちなみに錬金術ならあたしも真似できるかもしれない云々の雑談は聞かなかったことにした。この世界の経済が壊れちゃう(迫真)
「あ、スライム」
「……ゲームなどではありがちですが、こうして目の当たりにすると反応に困りますわね」
溶岩が球状になってそのまま動いているようなナニカ。ファンタジーでは定番も定番と言った存在ではあるが、触れたら火傷じゃ済まなさそうなので地味におっかない。幸い、動きは遅いのでこの程度なら簡単に避けられる。それにあくまで旅人の記憶からの再現体で組成そのものはエーテルなので、旅人から借りてる賢者がどうこうのなんかすっごい杖で適当に小突いたらあっさりノイズと化して消えていった。
「……心配するだけ損な気がしてきましたわ」
何か嫌な思い出でもあるのか、バイクに乗った変わったエーテリアスを凄い目で睨んでいたルーシーさんが、それを旅人に割と瞬殺されて微妙な顔になる。
「パパゴホロウはラマニアンホロウとほぼ同等の規模。でも、ここは元が荒野で道が整備されていないのが地味に影響していそう。このペースだと4日はかかる計算になるね」
「十分過ぎますわ。正直、貴女たちがある意味でTOPSの象徴とも言えるホロウを潰し回って無事な理由がいまひとつ謎でしたが、確かにこれほどの電撃攻略なら防ぎようがありませんわね」
ホロウは外縁があまりに広く、しかも建築物を無視して広がっているから、侵入を拒むとなると事前に旅人を止めるしかない。けれど本人は6大ホロウふたつを単独で制覇できるほどに規格外で、人質として有用そうなあたしも頼れるお
特大のトラキアンとあの細腕で膂力を競う旅人の姿を眺めながら、あたしはついぽつりと、
「……なんで、みんな仲良く出来ないのかな」
「
即答。
あたしの零した愚痴。誰に届かせるつもりもなかった呟きは、しかしルーシーさんのはっきりとした言葉で力強く掴み取られる。思わず全身がびくっと震えたあたしを、ルーシーさんは真っ直ぐな目で見つめている。
「豊かでは、ない?」
「そも、人が誰かと争うのは、
「…………」
多分、それはあたしには考えもしない発想によるもの。ヒトを人としてではなく、
「誰かを憎むのも同じことですわ。“そいつがいない方が俺が楽になるから”──どんなにご立派な建前で飾り付けても、結局はそんなみっともない理由をウダウダと喚き散らしてるだけでしてよ」
「……じゃあ、みんなが仲良くなんて、最初から……」
「
力強い否定。先程からそうだが、あまりにも堂々とズバズバ言うものだからこちらが面食らってしまう。
「確かに貴女たちは、この残酷な世界において異端の側に入るのでしょう。ですが幸か不幸か、貴女たちは初手で“ラマニアンホロウ消滅”という、誰にも無視できない結果を示した。
単に道端で声高に可能性を仄めかすだけでは、貴女たちはとっくに周囲から爪弾きにされていておかしくはありませんでしたわ。けれど実際は、こうして監視のみに留めて泳がされている」
「………」
ルーシーさんが言いながら視線を明後日の方向へと向け、釘バットをゴルフクラブのように扱い、足元の石を近くの物陰へと弾き飛ばすと、そこから姿こそは見えないまでも、エーテリアスにはありえない不自然な物音が聞こえてくる。
鋭い──というより、多分あたしが鈍いのだろう。ホロウ内部は基本的に無音だ。風もなく無人で機械も疾うに侵蝕されて動かない。故に聴覚が占める割合は大きく、自身以外の音がどこからか響けば、そこを警戒するのは当然の話だ。
でも、あたしは夜守り人の体質を生かし普段からホロウ内部に入り浸っていたことでホロウ空間にも慣れていて、そもそも異端児と一族からも視線を逸らされることが多かったから──いや、これらもただの言い訳か。気を付けようと思えばいくらでも出来た。怠慢の言い訳に他人を使うのは良くない。
「このまま泳がせるのが正解か否か。おそらくはTOPS内でも相当に意見が割れてますわね。ただ、他でもない市長がホロウ根絶派なのは周知の事実ですので、アリスはそちらに話を持ち掛けたのでしょう。
そうなると、如何にTOPSと言えどそう簡単には手を出せませんわ。それが可能なら、とっくにあの方は失脚なり暗殺なりされてましてよ」
「……なんか物騒な話をしてるね?」
「た、旅人?!」
見れば。
いつの間にあの特大のトラキアンを始末していたのか。既に緑豊かだった周囲の光景は荒野へと逆戻りしていて、剣を虚空に仕舞いながら旅人が歩み寄ってくる。
「ホロウ根絶がどうこうって聞こえたし、察するにホロウに関する話?
ホロウのエーテルエネルギーを転用して云々って話は私も小耳に挟んだけど、こんな人間を怪物に変化させるようなエネルギーは、いくら便利でもあまり使わない方がいいと思う」
まあそれはそう。確かにそう。でも“転用”とかそんなレベルじゃなくてこの世界では既にそれが生命線なんです。もう何処もかしこもエーテルエネルギーに頼り切りなんです。それを強引に断ち切った地区が今どうなってるのか考えたくないくらいには。
旅人は語る。曰く、テイワットでも“アビス”と呼ばれるエネルギーがあって、それはその気になれば世界を支配できるほどの力を秘めていた。けれど、それは同時に世界を壊しかねない危うさに満ちていた。
「多分だけど、ホロウも似たようなものなんだと思う。誰かの強欲で、あるいは誰かの好奇心で。ホロウを支配しようと目論んで──結果として今の世界がある。
もちろん全部推論ではあるし、そもそもそれはホロウがこの世界を侵蝕し始めた時点でやがて訪れる規定事項で、その誰かさんは時計の針をほんの少し進めただけかもしれないけどね」
「……………」
ホロウがここまで急速に広がっているのは、おそらく人為的な要素が絡んでいる。妙に恣意的な発言ではあるが、これも納得できるところはある。というか多分そうなんだろう。
零号ホロウは旧エリー都の中心部で急速に拡大した。そんな偶然があり得るだろうか。バレエツインズの件のように、ホロウが建設したばかりの建物を狙ったように侵蝕する例もある。けれど他でもない零号ホロウが、何故かホロウを研究していた施設から爆発的に広まった。穿った意見が出るのも当然と言える。
「──だ、そうですけれど。そこの貴方たちはどうお考えですの?」
「え?」
ザシュ、と釘バットを荒野の砂に突き入れて、先程物音がした廃屋の方へとルーシーさんは問いかける。
度胸がある、なんてものじゃない。そりゃあ監視がついていることなんて承知の上でも、まさかその監視を呼び付けるなんて無茶苦茶だ。けれどお金持ちだと護衛がいるなんて慣れっこだろうし、慣れきったらこうもなってしまうのか──いや、それでも色々とおかしいけど。
「………」
「………」
「………。………旅人さん。あちらに潜伏したエーテリアスが──」
「はいはーいお待たせしました!! ホロウ探索にお困りならお任せあれ! オペレーター番号2493、ダイアリンがご対応致しま〜す!!
な、なので、その……その物騒なモノは仕舞って頂けると……」
そりゃあ姿を見せるわけないよね! と思っていたら、ルーシーさんに促されて動きを見せた旅人を制すようなタイミングで、一人の女性が廃棄された建物の影より現れる。
左右に白黒のツートンカラーで分けた長い髪と、それと同色の配分の旗袍姿が特徴的などこかで見た覚えのある女性。服装からして衛非地区出身なのだろうか。少なくとも旅人が浄化した直後の廃屋に潜んでいた時点で、偶然と言うには無理があるだろう。
「……最近のオペレーターはわざわざホロウにまで出向くんだね?」
違うそこじゃない。この人監視! 明らかに監視とかそういう系の人だから! というかこの人バスに居たよ! なんかウサギのシリオンの子や全身藍色の女性と一緒に座っていた3人組のひとりだよ!
覚えているのか素で忘れているのか。どこか惚けた回答をする旅人に対し、ダイアリンを名乗る女性はその発言を受けて水を得た魚のように、
「分かってくれますか!! いやぁウチの上司ってば酷い人でして、本人は机でふんぞり帰っているのに、あたしたち下っ端をホロウなんて危険区域に平然と放り込んで!!」
ぎゅ、と旅人の両手を握る女性。馴れ馴れしい、というより強かと評価するべきだろうか。彼女がそれを狙っているのかは定かではないが、普通の感性の持ち主なら肉体的接触のあった相手に対して敵意を抱きにくい。これだけ友好的(に見える)な態度なら尚更だろう。
あとこの人いくら上司の命令とはいえ、仮にも6大ホロウのパパゴに侵入してる時点で絶対強いと思う。ばっちり対侵蝕装備で武装してるし。
「あちらの方々は……まあいいでしょう。それで、貴女の上司サマはこの件をどうお考えでして?」
「あ〜……いえ、その──はい。正直に申しますと、いちオペレーターのあたしには分かりかねます。
貴女の言う市長からの圧力か、あるいはウチのボス自身が他でもないホロウ根絶派なのか。あたし個人にとっても有難いことに、あたしたちに託された任務は“貴女達の監視”。何なら窮地には助けて恩を売れ、とまで言われています。
TOPSでも──ああウチはTOPS側の勢力なんですが、とにかくそちらでもかなりホロウ根絶派は多いみたいです。現在のお偉方となると、それは即ち旧都陥落をもれなく体験しているということですので」
「旧都陥落……」
額をぽりぽりと掻きながらダイアリンさんは語る。内容はどこか世知辛く、更にはこちらを便利な道具くらいにしか見てない感はあるが、とりあえず思ったほど悪い感情は抱かれてないっぽい。
「親を、子を、友人を、恋人を。地位や財産──あの旧都陥落を経て失われたものはあまりにも多く、それだけ根が深い問題でもある。それこそ他の何を犠牲にしても、あの零号ホロウだけは必ず討ち亡ぼすと覚悟を決めたヒトをそれなりに知るくらいには」
「……なるほど」
分かっているのかそうでないのか。旅人はたまに見せる腕を組んで口元に手を当てる仕草をすると、ある意味では残酷な言葉を紡ぐ。
「……じゃあ、申し訳ないけど、零号ホロウは最後に回した方が良さそうだね……」
「え。あ──……と」
少しの困惑、しばしの沈黙。のちに絶叫が荒野に響く。
「ああああ、確かにそうなりますよねぇ……!! マぁジで勘弁して頂けませんか“旅人”さん! こちとらどうにか零号ホロウまで誘導するようせっつかれていますので!!」
最優先で! どうか最優先でお願いします!! と旅人の足元に縋り付く彼女を見て、なんか色々と警戒していた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
無論、あくまで彼女が所属しているのはTOPSの一部門に過ぎず、それ以前に彼女がとんでもない嘘つきである可能性も否定はできないが、それでも“零号ホロウに恨みを持つ者が一定数存在する”というのは、嘘偽りようがない真実だろう。
だからこそ残す。最後まで残す。そうすれば零号ホロウ憎しで動いている人材が、それまではまるまる味方(?)側に回るから──うーん実に冷静で隙のない判断。旧都陥落の恐怖を根底から刻まれているこの世界の住民には中々出せない発想だろう。流石は宇宙人。
「でも、あくまで依頼主はリュシアだから。リュシアがそうしたいなら私は従うよ」
「え?????」
唐突なキラーパスに、土下座を通り越して半ば地面を這いずっていたダイアリン氏が、すごい勢いでこちらにすり寄ってくる。
「リュシア・エロウィンさん!! 今なら貴女が頷けば、その時点で貴女の一族の名誉は全回復!! 加えて貴女やご友人、もちろん旅人さんも含め老後の保証までばっちりと!!」
「いやどうやって?????」
もうあまりに露骨なセールストークだが、内容がめちゃくちゃ過ぎて逆にどうやるのか気になってきた。そもそも一族から見放され気味なあたしがその名誉とか別に……いや夜守り人としてのプライドみたいなのはあるけどね? というかそれこそ感情で意見が割れたりして簡単には解決しないんじゃ?????
「ふっ……甘いですねリュシアさん。民衆なんてのは、自分でロクに調べたりもせず、与えられた情報だけでどこまでも残酷になれる生き物なんですよ。
そもそもホロウ攻略が貴女達のおかげであるのは疑いようのない真実。ならばそれを大々的に知らしめれば、多少思うところがあっても大っぴらに批判する人はいないでしょう。
そこに夜守り人の特徴なり使命なりを匂わせたら倍率ドン!! あっという間にあまりに重い責務を背負わされた敬虔な信徒の完成です!!!!」
「……。……いや、それは流石に……」
実際にプランを聞いてみると、確かになんか割と行けたりしちゃうかも、とは思ったものの、それで今更手のひらを返されてもなんだかなぁと微妙な気持ちになる。
妙に実感が篭っているのはさておき、ここまで具体的なプランを示されてしまっては、こちらとしても大っぴらに否定するのも憚られる。とはいえ、流石に今は保留するしかないだろう。まだパパゴ攻略も半ばだというのに、パパゴの何倍もの規模を誇る零号の攻略ばかりに目を向けていては、どこかで足元を掬われるかもしれない。
「ささっ!! では張り切って向かいましょう!!」
紆余曲折の果て、何故か監視のダイアリンさんまで仲間に加わって、あたし達は再びこの迷宮を歩き始める。
宇宙人に現地人、その護衛にその監視と、一見すると訳の分からない組み合わせではあるが、目的そのものは共通。ならば多少噛み合わなくても、この場で協力する程度ならばどうにでもなるだろう。
何より、この先を目指すとなると、彼女なんかの比ではないくらい厄介な相違が待ち構えてるのだから、それに今のうちに慣れておくのは、案外悪い選択でもないのかもしれない。
砂から唐突に現れた水場へと足を踏み入れ、誰にも聞かれないようにため息をつく。それを目敏く見逃さなかったルーシーさんが、どこか遠くを見ていたのが印象的だった。