旅人の皆さん、こんにちは。ツカッチと申します。
この物語は、「もしも、雷電姉妹に弟がいたら……」と言うお話です。タグにある通り、原神の歴史に関してはかなりのにわか(ほとんど覚えてない部分もある……)ですが、スマホを駆使して頑張ります。
桜が、風に揺れていた。
淡い桃色の花びらが舞い落ちる下で、五人の姿があった。
「……それで?」
御輿千代が、手にした杯を傾けながら尋ねる。
「陽の姿が見えないけど」
「そういえば、そうですね」
狐斎宮も千代の言葉に頷いた。
少し離れたところでは、笹百合が静かに酒を飲んでいる。その隣では、雷電影が腕を組みながら二人の話を聞いていた。
そして、彼女たちの前に座る雷電眞が、穏やかに答えた。
「城下を歩いているはずよ」
「また?」
千代が呆れたように笑う。
「今日も人々の話を聞いて回る、と言っていたから」
「本当に陽は人が好きだね」
笹百合が口元を緩める。
「魔神ともあろう者が、毎日のように城下へ降りていく。民からすれば雷神よりも印象深い存在なのではないか?」
「それは……」
眞は少し困ったように笑った。
「否定できないわね」
「姉上も甘いのでは?」
ふと、影が口を挟んだ。
「城下の民は守るべき存在。だからこそ、魔神である私たちは一定の距離を保つべきです」
「そう言うけれど」
眞は笑みを浮かべながら影を見る。
「陽が人々の声を聞いてくれるから、私たちも稲妻のことを知ることができるでしょ?」
「……それは、そうですが」
「それに、あの子はあの子なりに、役目を果たしているのよ」
眞の言葉に、影はそれ以上何も言わなかった。
「影も城下に降りてみれば、何か分かるかもしれないわよ?」
「そう言う姉上こそ、あまり城下に降りられないでしょう」
「あらら……」
放った言葉をそのまま返された眞は思わず苦笑い。
そんな二人を見比べていた千代が、楽しそうに笑う。
「相変わらずね、二人は」
「何がです?」
「眞は陽を甘やかして、影は陽に小言を言う。本人がいなくても話題になるんだから、よほど愛しているんだね」
「……別に、私は」
影が言葉を濁す。
その時だった。
「あっ、いた!」
遠くから声が響いた。
全員が振り返る。
桜並木の向こうから、一人の少年がこちらへ駆けてくる。
紫の短い髪を風になびかせ、額には薄く汗を浮かべている。
その顔には、どこか嬉しそうな笑みがあった。
少年――雷電陽は、息を整えながら眞たちの前までやってくる。
「陽。遅かったですね」
「ごめん、眞姉様」
「何かあったのですか?」
「城下でいくつか頼まれごとがあって」
そう言って、陽は笑った。
「困ってる人がいたから、放っておけなくて」
「ふふっ!」
千代が声を上げる。
「やっぱり “人” が好きなんだ!」
「……千代さん、それは褒めてるの?」
「もちろん!」
千代は楽しそうに笑う。
影はそんな弟を見ながら、小さく息を吐いた。
「全く……無茶はしないでくださいね?」
「分かってるよ、影姉様」
「それを信用していないから言うのです」
そう言いながらも、その声はどこか柔らかかった。
すると、桜の花びらが一枚。
陽の肩へと落ちる。
陽はそれを指先で摘まみ上げると、空へと放した。
「綺麗だ」
「そうですね」
眞が答える。
「今年も、よく咲きました」
「来年も咲いてくれるよ」
陽は何気なく言った。
その言葉に、誰も疑問を抱かなかった。
来年も。
そのまた次の年も。
きっと、同じように桜が咲く。
そして、同じようにここに集まるのだと。
そう、信じていた。
眞も。
影も。
陽も。
そして、この場にいる誰もが。
――この穏やかな時間が、永遠に続くものだと。
キャラクター紹介
名前 雷電陽(らいでん よう)
種族 魔神(魔神名/ハウレス)
使用武器 片手剣
神の目 雷
命ノ星座 照世座
陽は、人の心に寄り添うことのできる子よ。
城下へ足を運んでは、人々の声を聞き、時には私たちのもとへその願いを届けてくれる。あの子がいるからこそ、私たちは稲妻の人々が何を思っているのかを知ることができるの。
……少し、人のことを気にかけすぎるところはあるけどね。
───雷電眞
彼は、少々人と馴れ合いすぎるところがあります。魔神と人間では立場が違うのですから、もう少し自覚を持ってほしいものです。
……とはいえ、陽が人々を大切にしていることは知っています。困っている者がいれば放っておけず、誰かに頼られれば必ず手を差し伸べる。
あれは、陽にしかできないことなのでしょう。
……まあ、無茶だけはしないでほしいものです。
───雷電影