暗い拷問部屋。鈍い肉の音が響く。
「ごはっ、ごっ!」
パンツ一つで、殴られ血を吐く。
「おらっ、まだ足りんのか?」
拷問官二人が、邪悪に笑う。
連行された俺に、『聞き取り』と言う名の『拷問』が襲った。
「お前しか考えられないんだよ。犯人は!」
「もう一度聞く。アレクシア王女を、どこに隠した?」
「知らないものは、知らないと、言っている。ごぶっ!」
木棒で打たれる。
(痛い。苦しい。これが拷問。ドレッドよりマシだが、やばいなこれ。
ああ。シドだったら、どんなモブっぽいことをするか)
「さっさと吐け!その方が楽だぜ」
「苦痛にもバリエーションをつけてやんねえとなあ」
細針を出す。
(早く、終わってくれ)
◇
5日後。夕暮れの町にて。
「おら、さっさと行け!」
馬車から放り出される。
(終わっ……た)
パンツ一丁に剣、その他諸々も投げられる。
制服を着て、歩き出そうとしたら……。
「あ、いたいた」
「シド、迎えに来てくれたのか?」
「まあね。君がいないと、陰の実力者プレイが面白くないし」
(やばい。ちょっと泣きそう。シドにも人の心あったんだ)
「ありがとう。助かる」
「早く帰ろう。デュールに手伝って欲しいことがあるし」
「手伝い?まあいいけど」
こうして、二人で帰っているのだが……。
《見張りが二名。バレバレだな》
《だね。モブらしい下手さだ》
やはりまだ疑われてるらしい。変装して尾行されてる。
(全く、親友との帰宅を邪魔するとはな……)
瞬間、白ローブの女性が目の前を通った。
「後で」
軽く頷く。
《デュール、今のって……》
《ああ。アルファだな》
数秒後、モブの悲鳴が聞こえてきた。
◇
数分間歩き続け、ようやく寮に着いた。
シドとは一旦さよならだ。
「到……着」
ドアを開けると……。
「っ……」
白金髪が靡き、紫の瞳が俺を見る。ゼータだ。
「久しぶり。ゼータ」
「久しぶり。シュヴァルツ様。お腹、空いてるでしょ?」
マクドnーーーーもとい、『マグロナルド』のマグロバーガーを手渡して来た。
「ありがちゅ」
包装を解き、食べる。久々のまともな食事だ。
「うま。つか、さっきアルファとすれ違ったけど」
「アルファ様は主の方だよ」
「ああ。なるほど」
「厄介なことになってるね」
「ああ。ほんと散々だ。そっちは?」
「教団の調査を更に進めてるよ。まだ『教団』には及ばないけど、着々と成長しているかな」
「学園が忙しくて拠点に来れてなかったけど、その調子じゃ大丈夫だね」
包装紙を丸め込み、投げる。
「うし。ナイシュー」
ゴミ箱へ入った。
「あー、マジきつい」
ベッドへ倒れる。
「大丈夫?」
顔を近づけてくる。
「大丈夫では……ないな。王女の誘拐犯として処刑されるかも」
「騎士団は信用できないよ」
「うん。あいつらのオーラ見たけど、赤い。誘拐も、あいつらの手引きだろ」
全員ではないが、かなりの数がそうだ。
「『教団』の目的は何だ?」
「濃度の高い、英雄の血だね」
「はぁ〜、あいつらめ」
(確かに王族なら、そこらの悪魔憑きよりよっぽどいいのが取れるだろうな)
「それにしても、何で王女なんかとロマンスを繰り広げてるの?」
「色々とな。てか、ロマンスはない」
「まっ、分かってるよ。シュヴァルツ様は、いつも考えて動いてる」
(今回ばかりは違うけどな)
起き上がり、『スライムボディスーツ』を着る。
ついでに、魔力で傷も消す。
「でも、もう少し私たちを頼って欲しいな」
「助かってるよ。特に情報戦に関しては……」
頭を撫でた。
「さてと、シドに手伝いで呼ばれてる。そっちに行かないとな」
「主に?分かった。……ところで、あの拷問官達、先に消していい?」
瞳から光が消えている。怒りをフツフツと感じる。
「フン、悪いがあれは俺の『獲物』。俺直々に罰を下す」
「そっか。でも気分が変わったら言ってよ」
体を擦り付けてきた。柔らかいし、色々と当たってる。
「ちょちょ、何やって!」
「マーキング。馬鹿犬より先に、付けておかないと」
「デルタも来てるんだ」
「む、今は私だよ。シュヴァルツ様」
「ああもう。分かった。分かったって」
その後、5分くらいマーキングされ、帰っていった。
ゼータとデルタ。仲良くないくせに、息はぴったりなんだよな。
「さぁて……」
ドレッドライバーを持つ。
「今行くぞ。相棒」
◇
寮に着いた時には、シドが準備を始めていた。
「全てはこの日の為に」
「よっ、シド」
「おっ、デュール。ちょうどいいところに」
部屋の中は、数多の絵画や高級な家具、陰の実力者っぽい椅子があった。
「すっご。盗賊狩りまくってここまで集めたの?」
「うん。後は節約して何とか買って来た」
「そっか。俺は、何をすれば?」
「デュールは、この『モンクの叫び』飾って。次は……」
そうして、部屋を陰の実力者色に染め上げた。
「じゃあシド。これもいい?」
一枚の封筒を取り出す。
「それは……?」
「処刑場ご案内の『招待状』だ」
「ああ。なるほどね。そしたらそれをここに……set」
ワイン瓶の下に挟んだ。
「後は時を待つだけ」
シドが椅子に深々と座る。
「だね」
右側にもたれかかり、腕を組む。
数分後……。
(来たな)
扉が開かれる。
「わあああ」
ベータが感嘆を漏らす。
「時は来た。今宵は陰の世界」
シャドウがワインを飲む。
「陰の世界。月の隠れた今宵は、まさに我らに相応しい世界ですね」
「それではベータ、報告を」
「はい。アルファ様の命により、動員可能な者は、全て王都に集結させました。その数114人」
「114人?」
「も、申し訳ありません。今動員できるのは、これが最大で」
「逆だベータ。よくこれほどまで動員出来た」
「ありがとうございます。シュヴァルツ様」
《ねえデュール》
《なんだ?》
《エキストラでも雇ったのかな?》
《……流石にそうじゃない?》
《だよね〜》
「ベータ。続けてくれ」
「はい。作戦は、王都に点在する『ディアボロス教団』フェンリル派アジトの同時襲撃です。
それと同時に、アレクシア王女の魔力痕跡の調査。突き止め次第、確保します」
(フェンリル……ラウンズの第五席次か)
「作戦の全体指揮はガンマが、現場指揮はアルファ様が取り、私はその補佐を。イプシロンは後方支援を担当、デルタが先陣を切り作戦開始の合図とします。部隊ごとの構成は……」
『招待状』を取る。
「それは……?」
ベータに渡す。
「読め」
「っ、これは……」
顔を顰めた。
「デルタには悪いが、序曲(プレリュード)は、俺が奏でる。いいね?」
「はい。そのように手配を」
シャドウが立つ。
「今宵、世界は我らを知る」
窓が開き、コートが靡いた。
皆さんは犬派ですか?猫派ですか?私は猫派ですが、デルタの方が好きです。