◆〜sideアレクシア〜
王都下水道の地下、小さな研究室の牢屋。
ポチャン!
「はっ!」
水滴が当たり、アレクシアは目覚める。
四肢を動かそうとするが……。
「っ、魔力封じ」
鎖に繋がれ、起き上がれない。
「あいつは……」
ふと、デュールを思い浮かべる。
ジャラン!
「っ、誰かいるの?」
右を向くと、赤い目で彼女を見る『悪魔憑き』がいた。
瞬間、独房が開かれる。
「王族の血、王族の血。ようやく、ようやく手に入れた」
気色悪い男が迫ってくる。
「ご機嫌よう。貴方が誘拐犯?」
彼女の問いに答えない。よく見ると、トレーの中に注射器が見えた。
「王族の血、王族の血……」
彼女の腕を捲り、注射器を刺し、血を抜く。
「一つ、聞いてもいいかしら?私の血を何に使うの?」
「き、ききき君の血は魔人の血。血血血、血血血。魔人を現代に蘇らせるぅ。ハッハッハッ、ヒッヒッヒ」
赤い目は、変わらず彼女を見続ける。
◇
それから、何日たったか。
「……」
何度も血を抜かれ、赤い目は虚に、顔もこけて来ていた。
あの赤い目は、ずっと彼女を見続ける。
突然、上が騒がしくなる。
「ああああああああ!!奴らが、奴らが来やがったぁぁぁ!おしまいだ、皆殺し、皆殺しだぁぉぁぁ!!!」
急に男が錯乱し始める。
「騎士団は無用な殺生はしないわ」
「騎士団なんてどうでもいい!奴らは皆殺し、皆殺しなんだ!」
男が巨大な注射器を取り出す。赤い液が満タンまで入っていた。
「し、試作品は作った。これなら、出来損ないでも役に立つ」
『悪魔憑き』に近づく。
「さぁ、見せてみろ!」
「やめておけば?嫌な予感がするわ」
「ディアボロスの!片鱗を!」
刺す。瞬間、赤黒い稲妻が彼女を包む。
「ああ!素晴らしい!素晴らしいz」
潰された。
「だから言ったのに……」
元からダーティーな肌は肥大化し、右腕が鉤爪のように変化した。左腕は胴体と融合している。
「っ……」
アレクシアに爪が迫る。
ガーーン!
金属音が響き、鎖だけを断った。
「……助けてくれたの?」
「グワァァァァァァ!!!」
咆哮し、この場を破壊する。
その場を離れたアレクシアは、剣を見つけた。
「この剣、貰うわね」
剣を拾い、歩き出す。
瞬間、後ろから走る音が聞こえた。
「誰?」
振り向くと……。
「ガッチャ!見つけた。アレクシア」
デュールだった。
◆〜sideデュール〜
化け物が現れる少し前。
路地裏。『招待状』に従い、デュールは来ていた。
(お、いたいた)
物陰に隠れ、例の拷問官共を見つける。
「結局、監視の連中は一度も連絡を寄越さなかったか」
「どこで遊んでいるやら」
「連中、組織の恐ろしを分かって無いんじゃないか?」
(ボロを出したな。そろそろ出てやるか)
わざと足音を出す。
「おい、来たぞ」
出た瞬間、靴を投げられる。
もちろん、キャッチする。
「よぉ、色男。アレクシア王女の靴なんか持って、どうしたんだ?」
「あーあーあー、バッチリ魔力痕跡残ってるなぁ」
ニタニタと笑っている。大根役者だな。
「なるほど。どうしても俺を犯人に仕立て上げたいと」
二人が剣を抜いた。
「ああ。そう言うことだ。さっさと口を割れば、痛い思いせずにすんだのによぉ」
「デュール・ホロブアーク。王女誘拐の罪で逮捕する」
「抵抗するなよ?まっ、お前にそこまでの……」
バタン!
何かが倒れる音に、二人が振り向く。
「っ、こいつら」
「見張りの」
『AKUMANOCARIS』
『ドレイン』
「「グハァ!/ゴボッ!」」
触手が二人の胸部を貫く。
「騎士団にこんなことして、ただで済むと思って」
「案ずることはない。夜(よ)が明ければ全て……」
『漆黒』へと変わる。
「終わる運命(さだめ)にある」
触手が鮮血に染まる。絶命した。
一方、ベータは……。
「その刹那、偉大なるシュヴァルツ様は人智を超えた速さで卑劣な騎士の前に立ち、高貴なる声で語るなり否や叡智より作られしカードで」
ガッシャーン!
建物崩壊の音がした。書いていたベータは、思わずメモ帳を胸にしまう。
「デルタも始めたか。ベータ、行(ゆ)け。俺は王女のお迎えに行く」
「は、はい。承知しました」
予定通りアルファの元に向かうベータ。
(しゃあ!決まった!陰の実力者プレイ!最ッ高の爆上げだ!
さてさて、主人公ムーブで腹黒王女を助けたいけど……。普通に下水道を通れば怪しまれるし、どうするか……?)
「グワァァァァァァ!!!」
数百メートル先に、怪物が姿を現した。
「ん?あいつの下は確か……」
魔力で透視し、アレクシアの姿を確認する。
(ビンゴ。発見理由が出来た)
怪物の下へ、走り始めた。
◇
「貴方、どうしてここに?」
「怪物が下から現れて、もしかしたらと思って来たら正解だったわけ」
「そう」
サムズアップと朗らかな笑みに、アレクシアも気が緩んだ。
「出ようか。ここは危ないし、まだ奴らが君を狙ってる」
「奴らって誰よ?」
「後で話すから、早く出」
「それは困るな」
聞き覚えのあるムカつく声がした。
「やっぱ来たか。ーーーーゼノン・グリフィ」
底知れぬ微笑みが、2人の前に立ち塞がる。
次回、壱式登場します。