〜sideアレクシア〜
『悪魔憑き』治療の少し前。
「はあああ!」
「フン」
二人の激しい剣撃が、地下で轟く。
「すごい」
この光景に、アレクシアは愕然とした。デュールがゼノンと渡り合っていたからだ。
「くっ、まさか君がこれほどまでとはね」
両者共に、傷を負っていた。
「フッ、憧れに焦がれ、鍛えに鍛え続けた結果だ」
「そうか。では君に、時期ラウンズの剣を見せてあげよう」
剣の素早さ、鋭さが変わり、デュールを防戦一方にする。
しかしそれでも受け流せず、腕や頬に傷を負っていく。
「っ……」
負けないで、と心の中で強く思った。そして気づく。自分があの剣に、魅せられていると。
「ぬぐっ!」
「ハハハ。流石の君でも、これは無理なようだね」
ゼノンは勝利を確信する。しかし……。
キィン!
横からの太刀を防いだ。
「無理なんかじゃ……」
持ち方を変え。
「ない!」
下から斬り上げた。
「ゴフッ!」
やつが血を吐いた。
「まだまだ!」
立て続けに、ゼノンを攻める。
「あいつを完全に押してる。これが貴方の言う憧れの、『凡人の剣』なの?デュール」
美しい、アレクシアはそう思った。それと同時に、その剣を嫌い、彼に八つ当たりした自分が恥ずかしいとも思った。
「グハッ!」
さらに、ゼノンの脇腹が裂けた。
「ぐっ、おのれ!」
「これで終わりにする」
刀身が白く輝き出す。
「『シャインオブパッション』!」
「がああああああ!」
輝く一太刀を浴びせる。ゼノンは吹き飛ばされ、壁に激突した。
◆〜sideデュール〜
「はぁ。はぁ」
(ちょい疲れた。本来の40%しか出せないの辛い)
今の俺は分身だ。本気は出せない。さらに一定のダメージを受けたら消える。魔剣士見習いのデュールとして戦わないといけない。かなり頭を使った戦いだった。
「勝ったぜ。アレクシア」
わざと足を引き摺り、彼女に近づく。
「貴方、大丈夫?」
「このくらい平気。それより、どうだった?俺の剣は?」
「ーーーー凄かったわ。まさに私が夢見た理想の『凡人の剣』よ」
「フフ、そっか。それは良かった」
剣をしまう。
「帰ろう。全身痛くて堪らないんだ」
「ええ」
歩み出そうとした瞬間、何かが音を立てた。
「「っ?」」
二人で振り向くと……。
「逃……すか」
ボロボロなゼノンが立っていた。
「まだ生きてんのか」
(まっ、計画通りだけど)
「大丈夫よ。あれほどの手負いだったら、私一人でやるわ」
「舐めるな!お前みたいな優等生如きに、これを使う時が来るとは……」
ビンを取り出した。そこには、赤い錠剤がいくつか入っていた。
(やっぱ持ってるよな。ドーピング剤)
「常人が使えばその圧倒的な力に体が耐え切れないが、私が使えば……」
それを一気に全て、噛んだ。
「覚醒者となる!」
瞬間、何重もの赤黒い稲妻が不穏に走る。
「グワァァァァ!!」
肌がダーティーなものへと変わり、髪の艶は失い、目が赤へと変容する。そして何より、多大な魔力量を得た。
「なんて、魔力量なの」
アレクシアの足が竦む。
(まっ、当然の反応だ。表世界じゃ、こんなやつはいない。そして今ここに、倒せるやつもいない)
そんな中、俺はほくそ笑む。
(だが、運が悪かったな。こっからの相手は、お前がゴミに見えるほどの狂人だ)
カツカツカツカツ
足音が嫌なほど反響した。
「何者だ!」
そしてその主が、姿を現す。
「漆黒を纏いし者……貴様が教団に楯突く野良犬か」
(さて、フィナーレは任せるよ。相棒)
「我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者」
フードから、ワインレッドの瞳が覗く。
「小規模拠点をいくつか潰しているが、貴様らが潰した拠点に、『教団』の主力は一人もいない」
「どいつを狩ろうとどこで狩ろうと同じことだ」
「残念だが同じにはならない。『教団』の主力はここにいる。
貴様は今日、私の剣によって、狩られる!」
踏み出し、正面からシャドウに挑む。
しかし、シャドウは容易く受け流し、一閃を入れた。
「ごはっ!」
ゼノンを袈裟斬りにする。
「シャドウ、後は任せても?」
「デュールか。無論だ。あのような醜き者に、最強を語る資格などないのだからな」
再度ゼノンと激突する。
「アレクシア、見ておくといい」
「え?」
「俺の憧れた『凡人の剣』を。世界最強(狂人)を」
さぁ、フィナーレの始まりだ。
シャドウ「借り物の力で最強に至る道はない」
シュヴァルツ「借り物の力で最強に至る道はある。ただし、使いこなせれば、な」