アレクシアが入院した。致命傷はシャドウが治したが、完治させたわけではないから当然だ。
「それで、気分はどう?」
登校前。俺は彼女のお見舞いに来ていた。
「快調、ではないわね。まだ少し痛むわ。それと、ありがとう。貴女が私を見つけてくれたんでしょ?姉様から聞いたわ」
「ああ。あの時はびっくりしたよ」
(俺とシドでの自作自演だかな)
寮に帰ってからの動きはこうだ。
部屋に到着→手紙が届いてる→路地裏で王女が倒れてるから助けにこい(byシャドウ)→アレクシアを病院に届けた。
と言う流れである。
「まっ、無理はするな。ほい、見舞い品」
朝イチで買ったフルーツバスケットを机に置く。大大大大大将軍と同じ内容だ。後チョコも。
「あら?それはチョコレート?」
「うん。なんか最近、流行ってるらしくて。とある伝で、最高級を手に入れた」
「へぇ、そう。最高級の……」
何故か頬を赤くする。
「……舌に合わないことはないと思うぞ」
「別にそんなこと思ってないわよ!」
大声で言われる。
「ほ〜ん。そっ」
「ーーーーところで、私が昨日遭遇した人斬りのことなのだけど……」
「ああ。アイリス様から聞いた。怪我の理由もそれだし、『シャドウガーデン』を名乗る偽物、なんだろ?」
「ええ。シュヴァルツは家族の名を騙りし愚者共、と言っていたわ」
(愚者共、ね。本当ならゴミクズと言いたかったけど)
シュヴァルツの性に合わない為、流石に抑えたが。
「だとすると、あいつら絡みかもな」
「この前言ってた、『ディアボロス教団』?」
「多分。ガーデンのことを知っているのは、極一部だから」
(ニューの拷問終わってるし、後で聞けば分かる)
「うし。じゃあ俺、学校行くわ。また来るよ」
病室を後にした。
◇
放課後。一人でベンチに座り、足を休める。
(あの2人、マジで消そうかな?)
ジャガとヒョロのことだ。会った中で、今日が一番カスでゴミでクズで変態だと言うことがよく分かった。
一つ目、昨日のシドの野糞を言いふらした。シドは殴らなかったが、代わりに腹パン(見えない)しておいた。
二つ目、言ってた通り、チョコで女の子堕とし作戦を実行した。
まずヒョロ、婚約を控えてる人にプレゼントチョコをした。結果、その筋っぽい旦那さんに連れられ、ボコボコにされた。自業自得だ。
次にジャガ、簡単に言えば、ストーカー。相手の情報(スリーサイズや下着の色まで)を調べていた。んで、そのまま女子に凸り、「キャー!!ストーカー」と叫ばれ、おそらく騎士団行き。
最後にシドだが……トイレに行ってて見れなかった。
三つ目、シドをブシン祭選抜大会に入れやがった。作戦が失敗したことへの八つ当たりだ。流石のシドも、これには二人を殴った。
「はぁ、本当ドッと疲れた」
「隣、失礼します」
女性が座る。
「……ニューか」
「はい」
お団子ヘアに眼鏡をかけ、制服を着ていた。彼女の特技、変装だ。
「見たよ。今朝のアート作品(愚者の末路)。すごく良かった」
「お褒めいただき光栄です」
今朝、王都の大通りに凄惨な死体が吊された。腹に『愚者の末路』と書かれた遺体。顔からは恐怖と苦痛が滲み出ていた。最大限の絶望を与えたのだろう。
俺が施したのもあって、かなり成長している。
「それで、情報は?」
「残念ながら、引き出せませんでした」
「ニューが?もしかして、チルドレン3rd(サード)?」
「はい」
チルドレン3rd、もとい『ディアボロスチルドレン』。世界中の貧民街の子供を攫い、洗脳教育と薬物投与、戦闘訓練を積んだ者達のこと。
階級があり、3rdは精神が壊れており、与えられた命令しかこなせない。
2nd(セカンド)は3rdよりも強く、何より精神の安定が図れている。
1st(ファースト)は名を持ち、世界有数の実力者となる。
「おそらく『教団』の目的は、『シャドウガーデン』の名を騙り、我々を誘い出すことでしょう」
(反吐が出る作戦だ)
「それと先日、王都でネームドのチルドレン1stが確認されました。確認されたのは『叛逆遊戯』のレックス。
彼らは何らかの目的をもって集結していると思われますが、レックスを見失い現在調査中です」
「『叛逆遊戯』……」
(敵ながらかっこいいな)
「分かった。ありがとう」
「お役に立てて何より……」
(……ん?)
彼女を顔を見る。浮かない、物憂げな表情だ。
「未練、ある?学園生活に」
「っ……いえ」
抑揚のない声で答える。
(嘘、下手だ。いや、隠すのが上手い。上手すぎて、分かりやすい)
「ーーーーそっか」
立ち上がり、手を差し伸べる。
「買い食いとかしない?せっかく今は学生なんだし」
「そんな、私などと?」
「などなんて言わない。まっ、傑作を作ったご褒美だと思ってさ」
俺の意図を理解したのか、ハッとし、嬉しそうに笑う。
「承知しました。シュヴァルツ様」
「違う」
「え?」
「今はデュール・ホロブアークだ」
「はい」
手を取った。
「分かりました。デュール君」
その後門限までの間、買い食いや買い物などを楽しんだ。
このことをアレクシアが知り、自分が苦しむことになるのは、まだ先の話。
◇
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
狂ってしまうほどの熱気が、ドーム会場を包み込む。ブシン祭選別大会だ。
ブシン祭、2年に一度行われ、世界中の猛者達が集まる剣術大会。ちなみに、我らが団長のアイリス様も優勝している。
予選と本戦があり、この選抜で優勝すれば、予選をパスできる。
「勝者!クレア・カゲノー!」
(いやー、本当強くなったな。姐さん。
シドに『悪魔憑き』治療してもらったし、ラムダに鍛えてもらえば、『七陰』クラスまで強くなりそう)
「次、シド・カゲノーvsローズ・オリアナ」
(あー、ローズ先輩か。確か、2年生の最強格だったっけ?)
ローズ・オリアナ、『芸術の国オリアナ公国』の王女。この学園には、留学と言う形で通っている。
何回か会ったことあるが、いい人だ。真面目で、優しくて、人気もある。
「?」
シドが小さく「この幸運に感謝しないとな」と言った。
(幸運?何するつもりだ?目立つようなことはしないと思うが)
◇
「……」
頭が疑問で埋め尽くされていた。
(いや、マジでさ、あれがモブっぽいと?)
先のシドの戦い。マジで何やってんの?と言いたすぎて呆れていた。
合図が鳴ると同時に、先輩に切り飛ばされ、血を吐いた。様に見せているが、斬られる前に血糊を食べ、それを吐いたのだ。『モブ式奥義・きりもみ回転受け身(ブラッディートルネード)』と言う奴だ。
(最初は良かったのに、何十発も耐えちゃったらモブじゃないよ)
その結果、審判に止められて、強制的に敗北。その後、担架で医務室へと運ばれていった。
(先輩のあの顔、「試合は勝ったが、心の戦いは負けた」と思ってる。
……多分敬意まで払われてる)
「勝者!ティーガ・マルチー!」
(おっ、次は俺か!)
そんな中、いよいよ俺の番が来た。
嬉々として剣を取り、観客席から離れる。
「湧いてきたぜ」
通路を通り、場へ出る。
先程よりも大きな歓声が上がる。
それも当然だ。何せ、対戦カードは……。
「来たわね。デュール」
「ウッス。姐さん」
3年生最強vs1年生最強だからだ。
「いや〜嬉しいッスヨ。また姐さんをボコボコに出来るなんて」
自分で言うのもあれだが、今はすごいニヤついた顔をしている。
だがこれは仕方のないことだ。姐さんを煽るの面白すぎるのが悪い。
「それはこっちの台詞よ。今度こそ、その気持ち悪い顔、ズッタズッタのギッタンギッタンにしてやるわ!」
「うわーやだー。怖いよぉ。降参したいよー(棒読み)」
「ちゃんと本気で来なさい!」
もはや殺意に近い闘志が彼女に宿る。
(やっぱ姐さん煽るの楽しーーー!!毎回毎回ムキになってくれるから、煽り甲斐しかないんよ。
さて、それはそれとして勝たせてもらう。シドからの許可も得てるし)
結果、俺の勝ち。若干苦戦しつつ、上手く立ち回って勝ったって感じ。
◇
《残りの奥義を発表できる機会が有ると良いけど》
会場近くの道を、顔面包帯まみれのシドと共に歩く。
医務室で問題ないと判断され、俺が迎えとして行き、今はその帰りだ。
《はぁ〜、シド。やるにしても、3回までだよ》
《どうして?》
《だってさっきの、全くモブじゃないから》
《え?何で!?どこが!?どこをどう見ても絶対王者に無様に負けるモブなのに!》
シドが大きく驚いた。
《どこにそんな絶対王者の攻撃を何十発も耐えるモブがいるの?》
ビビーンと、シドに稲妻が落ちた。
《そ、そうか。確かに……。じゃあ、今の試合》
《目立ってた。「あの1年、中々やるな」とか言われてたよ》
《ま、まさか、僕の完璧なモブムーブがあぁぁぁぁ!!》
顔こそ涼しいが、声と心が悲痛に満ちていた。その時……。
「あの……」
後ろから、可愛い控えめな声が聞こえた。
振り向くと……。
「あ、あの。お怪我は大丈夫ですか?」
(……何故、ここに?)
桃色の瞳で、心配そうに見つめるシェリー・バーネットがいた。
◇
立ち話は何なのでと、近くのカフェ?へ場を変えた。
「その……試合、見てました」
「そう?ありがとう」
シドが答える。
「剣術の試合とか、あまり見ないんですけど」
(だろうね。貴女は研究者だし)
「何度も立ち上がって、すごくかっこよかったです」
特大の笑顔を見せる。
(うわ眩し!なんだこの可愛さの塊みたいな笑顔は。
シドのほうは困惑してるし)
「あの先輩。一つ聞いても?」
「はい?」
「俺の親友と、いつお会いに?」
すると彼女は、頬を赤くして説明してくれた。
まず最初の出会いは、2日前。昼休みに、シドとぶつかったらしい。おそらくシドが、俺とアレクシアとの交際継続宣言を見終わり、教室に帰っている時だ。
そして昨日、あの最高級チョコを図書室でホイと彼女に渡したとのこと。
そして今日、チョコのお礼にクッキーを手渡した。
(間違いない。この子、シドに恋してる)
しかもシドは、好かれてることも、チョコを渡した相手だと言うことも分かってない。
(どうすっかなこれ。仲介して恋のキューピッドになるか、何もせず見守るか)
「もし宜しければ、お友達からお願いします」
「いいよ」
(なんも考えず答えただろ)
「やった。やりました。お父様、友達になりました」
後ろにいるルスラン副学園長にそう告げる。
彼は優しい目で、俺たちを見ていた。
「同席させてもらうよ」
こちら側に来た。
(この雰囲気……俺空気だな。試合でも観るか?)
ちなみに、護衛のお二人はある程度離れて見守ってる。
「やっぱり、どこか痛いんですか?」
「いやいや、大丈夫」
「ちゃんと医師に診てもらいなさい。いいね?」
コーヒーを飲みながら、聞く。
「この子は研究一筋でね。今も騎士団の依頼を受けて、研究に没頭している。
そのせいで、ろくに友達もいなくてね」
「もぉ、お父様!」
「ハハハハハ」
笑いながら、彼女の頭を撫でた。
「今はこうしているが、昔は色々あったんだ。出来れば、仲良くしてやってくれ」
(義理とはいえ、本当いい親子だ。
見てるか?ライダーのクズ親父共。少しでもルスラン副学園長を見習え)
「この場で聞くのもあれですが、例のアーティファクト、どうですか?」
気になった為、聞いてみた。悪意探知眼(仮称)も発動し、教団員らしき者もいないので問題ない。
「えっと、ごめんなさい。貴方は?」
「あ、俺は」と説明しようとしたら……。
「デュール・ホロブアーク君だね?」
「え?あ、そうです」
「噂で聞いているよ。一年生で最強だと。後、依頼の時もいたね」
「え。とゆうことは、『紅の騎士団』の人ですか?」
「はい」
「ご、ごめんなさい。あそこにいた人たち全員は覚えてなくて」
勢いよく頭を下げた。
「いえいえ、俺ただ何も喋らず突っ立ってただけですし」
《デュール知り合いだったの?》
《前話したじゃん。『紅の騎士団』の調査依頼で会ったって》
《あれ?そうだっけ?》
(この様子だと、ニューの報告とか全く聞いてないな)
「それでえっと、アーティファクトの話ですよね?」
「ええ。気になっていたので、聞いてみようかなと」
彼女が後ろを向き、グレンさん達を見る。
すると、「話しても大丈夫」とサインが出された。
「あれの進捗は順調です。このまま行けば、5日後には調べ終わると思います」
「へ〜、そんなは……や、く」
ふと、副学園長の方を見た。その老体には、他と比較にならない赤いオーラが見えた。
「どうしたんだい?」
「え?あいや、何でもないです」
次にはそれが消え、青く優しいオーラが見えた。
(気のせい……だったのか?)
その後の雑談の内容は、はっきりと覚えていない。
ナンバーズの中だったら、ニューが1番好きです。皆さんはナンバーズだったら誰が1番好きですか?