ゴミの始末を終えた俺は、別の屋上で血まみれのシドと合流し、話を聞いた。
大まかに2つ。1個目、午後の生徒会選挙の説明時に、ガーデンを名乗るテロリスト(と勘違いしている『教団』)が襲撃。ちなみにその際、説明に来ていたローズ先輩を『モブ式奥義・10分間の臨死体験(ハートブレイク・モブ)』で庇ったらしい。
2個目、生徒は全員大講堂に集められるてること。騎士団も駆けつけてはいるが、魔力阻害を理由に突入が難航している。
「と言うことで、暇つぶしにスナイパーごっこしてたんだ。ほら、あそことか」
見ると、何人かがスライムで撃ち抜かれていた。
「なるほど。暇つぶし、か」
(遊びと思ってるとはいえ、自覚してないのか?……って、今更か)
「ところでデュール、問題。
隠れてる生徒がいないか捜したり、創意工夫が見受けられる彼らだけど、一つ欠点がある。それは何でしょう?」
「欠点?う〜ん」
(かなり綿密に練り、仕掛けてる作戦だし、欠点は……あ)
「……美的センスに欠ける、か?」
「そう!TPOを無視してあんな真っ昼間から黒ずくめで。あれじゃ勘違いのクソダサファッションになってしまうではないか!」
顔が俺に迫る。
「お、おう」
(どんなとこで怒っての。そこはガーデンと名乗ったとこに怒ってよ)
「黒いロングコートを着るなら夜。そうに決まってるだろ」
「……んまぁ、目立つからな。自衛隊の迷彩服の方がよっぽどマシだな」
「でしょ!いやー、ほんとデュールが分かってくれて嬉しいよ」
すんごい満足そうな顔になる。
(はぁ、なんか緊張ほぐれたな。……ん?)
先の校舎の廊下を見ると、見慣れたピンク髪が見えた。
「ねぇシド。あれ、シェリー先輩」
「あ、本当だ」
よく見ると、ペタペタ鳴るスリッパを履いたり、なんかブツブツ言っててバレバレすぎる。
「行ってきたら?ほら……ストーリーのキー人物っぽいし。周りは俺が全部殺っとくから」
「いいね。じゃあ行ってくる」
屋上から飛び降り、彼女の方へ向かった。
「さぁてーーーー」
スライムで銃を作る。
「狩り、開始」
◇
おそらく4時半頃。俺は狩りを終え、シドの魔力痕跡を頼りに、部屋まで来た。
(ここだな)
開ける。
「「「「デュール君/デュール/やぁデュール/デュールくん」」」」
シドと先輩、グレンさんとマルコ先輩も居た。
「無事だったか」
「ええ。無傷とはいきませんでしたが」
偽装のため、頬や腕に傷、制服を少しボロボロにした。
「シェリー先輩も見つけられたんですね」
「ああ。彼と一緒に居た」
シドが軽く微笑む。
「そうですか。ーーーーさて、どうします?この状況」
「その打開策を今話していたんです」
要約するとこうだ。
この状況の原因は、『強欲の瞳』と言うアーティファクトのせいで、魔力を一時的に吸収・貯蓄できる。『教団』が魔力を使えてるのは、それに魔力の波長を覚えさせているから(微細・莫大すぎる魔力は例外)。
ただし一時的なため、許容力を超えれば学園一帯が吹き飛ぶほどの爆発が起こる。この危険性を考慮し、副学園長が国に提出したらしい。盗まれたか、模造品かは不明。
そしてそれを制御するものが、調査依頼のアーティファクトだ。本来はこれを使い、魔力を長期保存するものだと言う。
「このアーティファクトの解析が終わったら、地下から大講堂に向かいます」
「地下から?」
「はい。学園の施設には脱出用の隠し通路がいくつか残されているんです」
「そんなものが……」
グレンさんも驚いていた。
「起動したアーティファクトを『強欲の瞳』に近づけることが出来れば、機能が停止するはずです。ただ……」
明るい声から、一気に暗くなる。
「アーティファクトの調整に必要な道具を研究室に置いてきてしまって」
「であれば、我々に。マルコ」
「はい」
二人が立とうとする。
(これはまずい。そろそろニューの報告も聞きたいし……)
「待ってください。俺が行きます」
◇
(よし。着いた)
研究室に入る。
止めるお二人とシェリー先輩を何とか納得させ、俺一人で道具を取りに行っていた。
「さて……ニュー」
「はっ、ここに」
瞬間、目の前に現れる。
「遅くなりましたが、報告します。
現在、『シャドウガーデン』は学園の周囲に潜伏し、待機しています。ご指示があれば、いつでも動けます」
道具を回収しながら聞く。
「ただ、魔力が制限された状況下での戦闘にはリスクが伴います。
普段通り動けるのは七陰の皆様ぐらいですが、現在王都にいるのはガンマ様だけです」
(え、マジ!?ガンマしかいないの?ちょっと心許ないな)
「それで……あの、ガンマ様はあまりこういったことが得意ではないというか……」
「ああ。絶対とは言わないが……ゼロに近いな」
どっかで転び、鼻血を出してるのが目に浮かぶ。
「あの……はい。わ、私も普段の半分ほどの力しか出せませんので……」
(ナンバーズじゃそのくらいだよね)
「ガンマ様が現在全体の指揮を執っています。魔力が制限された状況はそう長くは続かないとガンマ様は予測しています。
『教団』側には動きはありません。魔力を封じると言う理を最大限に活かし、防衛体制を構築しています」
「ふぅ〜ん。なるほど」
「騎士団ですが、戦力になりそうなのがアイリス王女と増援の部隊長くらいです。王宮の意向もあってか、指揮権の問題が発生しているようです。
御二方からのご指示が無ければ、動きがあるまで待機と言うことになりますが」
「うん。それでいい。今、シェリー・バーネットがアーティファクトの最終調整を行なっている。魔力吸収の打開策として」
全ての道具をトレーに入れる。
「おそらく日が堕ちる頃には完成する。それに合わせ、俺たちは動く」
「では我々も、それに合わせて動けるよう準備します」
「ああ。シャドウの方には俺が伝えとく」