あれから三年。俺たちは13となった。
アルファの尽力で廃村も綺麗になり、人員も俺含め九人となった。
「ふぅ〜、ミテミラーの錬成完了」
現在、自室でレプリケミーの錬成を行っていた。
「これでようやく半分。作れてないのが、ファンタスティックとコズミック、その他30体か。
…………あっ!」
(そういや今日。あの人が学園に行く日じゃん!うわミスったー!錬成に夢中ですっかり忘れてた)
コンコン!
「誰?」
「シュヴァルツ様、ベータです」
「……入れ」
「失礼します」
入ってきたのは、銀髪エルフのベータ。俺が初めて治療した悪魔憑きだ。
最初こそ団員を殺すのに抵抗があったり(そりゃそうだ)、悪夢に魘(うな)されたりしていた。そこで昔、甥や姪にやっていた童話や御伽話、はたまたライダーの読み聞かせでメンタルケアを行った。
「どうした?『教団』関係か?」
「はい。クレア様が拐われました」
「えっ?姐(あね)さんが?」
クレア・カゲノー、シドの姉にして、俺が親しみを込め、姐さんと呼んでいる存在。そして今日、ミドガル学園に旅立つ人だ。
シドが「うちに遊びに来てよ」と言い、訪れた際に出会った。一言で言うならブラコンオブブラコン。シドのことになると、途端に周りが見えなくなる。
初訪問時は、「シドの友達に相応しいかどうか、確かめさせてもらうわ」とか言われ、模擬戦したもんだ。……俺が勝ったけど。
それからは俺が来る度に、模擬戦をし、俺が勝ち、煽っている。
「それで、拐った奴らは下っ端か?」
「いえ、『教団』の幹部クラスの可能性があります」
「幹部…………ラウンズやその候補者じゃないよな?」
「ええ、ラウンズではないはずです」
「そうか」
(良かった。ラウンズにはいい思い出ないからな)
「どうせ奴らのことだ。姐さんに英雄の子孫として悪魔憑きの疑いをかけた、と言ったところか?」
「っ……その通りです。シュヴァルツ様!」
無茶苦茶尊敬?の目を向けてくる。
(まただ)
アルファを含めベータ達は、度々こういう目で俺とシャドウを見てくる。普通のことを言ったとしても。
今だってそうだ。
姐さんは女性で、家系的に英雄の子孫の可能性アリ→悪魔憑きになる可能性大アリ→『教団』が拐う可能性アリ
と考えただけである。
別に悪い気はしないが、俺たちを崇拝?心酔?しているのを見ると、少し怖く感じる。
「んで、奴らのアジトは?」
「はい。こちらをご覧ください」
地図を出し、説明を始める。
「我らが突き止めた奴らのアジトです。
しかし、この中のどこにクレア様がいるかは……」
「……大体分かった」
マークの付いていない所を指差す。
「おそらく、ここに姐さんはいる」
「えっ、ですがここには何も……はっ!?」
「気づいたか?そこには地図に載ってない洞窟がある。俺だったら、ここに姐さんを運ぶ」
「御身自ら足を運び、場所を把握する。流石ですシュヴァルツ様」
(ゴルドダッシュで走ってた時に、たまたま見つけただけだけどね)
「シャドウも気付いてるはずだ。作戦は今夜決行するだろう。
さて、俺はシャドウの所に行き、少し話してくる」
◇
数十分走り続け、カゲノー邸に着いた。
「よっと。邪魔するね。シド」
窓からシドの自室に入る。
「やぁデュール。ベータから話聞いたよね?」
「ああ。そっちこそ、イプシロンから聞いたろ?」
「もちろん。いや〜すごいよね。彼女達の手にかかれば、ただの『盗賊』も『教団』に早変わり。
演技も上手いし、文句なしだね」
あっけらかんどころか、彼女達をベタ褒めする。
(遊びと思ってるとはいえ、家族が拐われたんだから。心配一つでもして、人の心を見せて欲しいもんだ)
「だな。一応聞くんだが、決行は今夜にしたんだろ?」
「うん。僕たちは陰に潜み、陰を狩る存在だからね。夜の方がカッコいい。そう思わない?」
ただ純粋で、曇りない眼で問うてくる。
「んまあ気持ちは分かる。ドレッドも夜の方が映えるからな」
「だよね。シュヴァルツはよく分かってるよ」
「はいはい。んじゃ、俺は帰るわ」
「もう行くの?」
「ああ。俺にも準備があるんでな」
「そっか。じゃあまた今夜」
◇
夜になり、アルファ達との集合地点に着いた。
「お待たs」
「シュヴァルツ様ぁぁぁぁぁ!!」
「ぐべっ!」
「んふぅ、会いたかったのです!」
「相変わらず元気だな。デルタ」
「ふへへ、撫で撫で気持ちいいのです」
俺に飛びつき、乗りになっている犬耳娘はデルタ。俺が2番目に治した子だ。
実力こそあれど、頭があれなアホの子。「強い者に従う」が考えらしく、俺とシャドウ、アルファには絶対服従。
「そこら辺にしときなよ馬鹿犬。シュヴァルツ様が困ってるだろう」
「む、雌猫は黙ってろなのです」
今デルタを嗜めたのは、猫(正確には金豹)耳娘のゼータ。俺が3番目に治した子だ。
彼女、いや彼女達との出会いは惨劇そのもの、とだけ言っておこう。当時の俺が、命を懸けたほどの。
「まあデルタ。ちょっと退いてくれ。これ終わったら、狩りやピクニック行こうぜ」
「本当!?じゃあ退く」
イナズマプラズマ並みのスピードで、退かれた。
「ふぅ。そういや、シャドウは?」
「マスターなら……別の所から入った」
シャドウをマスターと呼び、今にも眠りそうな子はイータ。シャドウが治療したワインレッド髪のエルフだ。
まるで桐生戦兎が女になったかのようなマッドサイエンティストで、俺や他のメンバーに開発物を無許可に試す問題児でもある。
「なるほど。まあシャドウのことだ。何か考えがあるんだろ」
(本当は何もないんだろうが)
「では、正面から攻めるのは、我々8人と言うことですね」
水色のツインテールを揺らし、言ったのはイプシロン。この子もシャドウが治したエルフだ。
魔力操作がアルファ並みにでき、ピアノが上手。シャドウから教わったこと全て吸収していて、おそらく世界最高峰。
「そういう事だな。んじゃガンマ、改めて作戦の説明を」
「はい。承知しました」
今回の作戦を立案したこの子はガンマ。シャドウが治療した長い藍色髪のエルフ。
かなり頭が良く、『シャドウガーデン』のブレイン。しかし、運動神経はゼロオブゼロで、何もないのによく転ぶ。デルタと真逆である。
「前衛はアルファ様、デルタ、ゼータ。
後方支援でベータとイプシロン。
最後尾にイータ、シュヴァルツ様、そしてこのガンマの配置で攻め入ります」
「オーケー。『シャドウガーデン』、アタック!」
指鳴らしの音が、夜に溶けた。
今更ですが、誤字脱字あればご報告してくださると幸いです。