タイトルモチーフ「第22話 愛は刃!ケミー・ストーリーは突然に」
翌日の昼。食堂にて飯を摂る。
「いやぁー、まさかお前がアレクシア王女と付き合うなんてな」
「びっくりですね。デュール君はそう言うの興味ないと思ってたんですけど」
俺に今話しかけて来たのは、シドの生粋のモブ友の二人だ。
一人は、ヒョロ・ガリ。背が高い以外、特筆する物がないモブ貴族。後、かなりのクズ。
もう一人は、ジャガ・イモ。坊主頭以外、特筆する物がないモブ貴族。後、かなりのクズ。
「……んま、ただの一目惚れでの告白だよ。上手く行くとは、思わなかったけど」
(んな訳あるか。はぁ、マジでどう言う思考回路だあの王女)
周りもうるさく、「くっそー!アレクシア王女と付き合えるなんて!」だとか「私のデュール君取られた」とか、野次が半端じゃない。
《注目なんてものじゃないね。デュール》
《はぁ、いくら主人公だからって、目立ちすぎな気がする。最悪だよ》
二人に聞こえぬよう、魔力でのテレパシーで会話する。
《てかさ、シド的には高嶺の花と付き合うのって、主人公としてアリなの?》
《う〜ん。純粋な恋人ならナシだけど、感じからして、何かストーリーに関わりそうだし。いいと思う》
《オケ。その確認さえ取れれば大丈夫だ》
そんな会話をしていると……。
「ご一緒にしてもいいかしら?」
彼女(悪魔)が来た。
「どどどどどど、どうぞぉ!」
「こここ、こんな席で宜しければ、ぜひ!ぜひぃ!」
(わぁお。流石シドが吟味して選んだことはある。すっごいモブっぷり。
ありゃ、シドはもう消えてるし)
と、思っていると……。
「え、うわちょ!」
俺を押し退け、座って来た。
「下級貴族の席に……!」
「しかも距離が近い」
(だからうるさい!)
心で叫んだ。
そんな中、使用人?食堂の人?が王女の前に豪華な料理を並べていく。
(うわぁ!これが王族の料理。貧乏貴族の俺たちじゃ、頼めねぇな。てか……)
「やたら多い」
「いつも食べきれないの。本当はもう少し、下のコースでもいいんだけど」
(あっ、心の声漏れてた。まあいいけど。
でも、食ってみたいなぁ。王族の料理)
無意識によだれが垂れていた。
「食べていいわよ」
「え!?マジ。じゃあ、いただきます!」
適当な肉をつつく。
「うんま!マジうんま。ねぇ、これもいい?」
「いいわよ」
「やった!ありがとう」
俺の摘む姿に、モブ二人はドン引きしていた。
王女の方はやけにニコニコしてるけど。
「貴方、午後の授業は王都ブシン流だったわね?」
「え、うん」
(やべ〜、嫌な予感{take2}がする)
「相手になってくれないかしら?」
グイッと、顔を近づけてくる。
「で、でも、いつも組んでる子がいるし」
「大丈夫よ」
「え?」
「すでに話はつけてるから」
「…………は、はい」
◇
王都ブシン流第1部教室にて。
アレクシアと向き合い、剣を構える。
「ふっ〜、はっ!」
愚直に正面から突く。
「……」
しかし、無言で跳ね返される。
(全然攻撃してこないし、遅い。舐めプ?……いや、技や返しの確認しているのか。
つかさっき、俺をまねてストレッチしてたな。意識高いなあ)
打ち合って分かる。基本に忠実で、無駄のない剣。努力の跡が見える。一歩ずつ基礎を積み上げて来た賜物だと。だが辛口で言うなら、『地味な剣』。
そうして打ち合い続けていると……。
カーン!カーン!カーン!
「よし、今日の授業はこれまでだ」
今言ったのはゼノン・グリフィ、この教室の先生だ。ミドガルが誇る剣術指南役で、実際まあまあ強い。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
互いに礼をする。
「いい剣ね」
「そりゃありがとう」
「でも嫌いな剣。自分を見ているようだわ」
(上げて落とさないでよ)
ゼノンの方を向っていく。
「それが君の答えというわけかな?アレクシア」
「ええそうよ。彼と付き合うことに決めたの。ゼノン先生」
顔は見えないが、すごい悪そうな顔なのが分かる。
「やれやれ、まるで子供だな。いつまでもそうやって、逃げられるわけじゃないよ」
「大人の事情は、子供には分かりませんの」
「まだ公にはなっていないが、私たちの婚約は」
「また婚約者気取り」
(はぁ、無茶苦茶言い合うじゃん。空気になって帰ろ)
耳を塞ぎ、場を後にする。
◇
「つまり君は、ゼノン先生と結婚するのが嫌で、脅して俺を当て馬にしたわけか。しかも扱いやすそうな俺を」
放課後。街の噴水にて、事情を聞く。
「ええ。そうよ」
自慢げに答えた。
「その〜、出来ればもう悪目立ちしたくないし、他人の事情に巻き込まれたくないんだけど……」
「薄情ね〜、恋人の癖に」
「成りたくてなった訳じゃない」
「それはお互い様よ。危うく私を殺そうとしたデュール・ホロブアーク君?」
「うっ」
痛いところを突かれ、黙る。
「あら大丈夫?顔が盛大に引き攣ってるけど」
「ぐっ、この腹黒王女が……(小声)」
「何か言ったかしら?」
顔がドアップで迫る。
「ヴェッ、マリモ!(いえ、何も!)」
「とりあえず、恋人のふりを続けてもらいましょうか。期限はあの男が諦めるまでよ」
「あの男、諦めるかな?少なくとも俺じゃ、力不足だ」
「分かってる。なんとかするわよ」
「出来るの?」
「脅されてるのに、ごちゃごちゃうるさいわね」
金貨を取り出す。
「っ!」
「フン」
投げた。
「……俺があれに食いつくと?」
「ええ」
「……うん」
駆け出す。
「その通りだよこんちくしょー!」
(正直今の俺は金欠だ。貯めてたお金は全てカードの錬成に。仕送りもだ)
「はい」
また投げられる。
「しゃっ!」
猫の如く素早く取る。
(ガンマに頼めば簡単だろうが、自立できなくなる。ゆえに、俺は取る。猫に成ろうとも)
「よしよし」
撫でられる。
「いい子ね。ポチ」
(犬かよ。猫のつもりでやったのに)
「ほぉら取ってこ〜い」
「ワン!」
こうして、10万の金貨を3枚、30万もガッチャした。
◇
約2週間。恋人のフリは続いている。ちなみに、200万以上は稼いだ。すぐに消えたけど。
そんなある日。今日も今日とて、彼女と帰っていた。
「全く、ムカつくわねあの男。少し剣が上手いからって、いい気になって」
「ちょっと完璧すぎるよね」
「あの胡散臭い顔、ポチも見たでしょ?」
「見た見た。顔がイラッとするの分かる」
(ほんっと、王女とは思えない罵詈雑言だな。大衆の前では自重してるけど。
まあ気持ちは理解できるんだけどさ)
◇
階段でアイスを食べる。所謂買い食いだ。
世間に俺たちの交際を広めるためとのこと。
「理解してるつもりだけど、一応聞きたい。ゼノン先生の何が嫌い?」
「全部よ全部。あいつの存在全てが嫌なの」
「顔、実力、地位、その他諸々持ってるのに?」
王女が鼻で笑う。
「上部だけ取り繕ってるのよ。私みたいに」
「はは、説得力ダンチな言葉d」
アイスを口に突っ込まれる。
「何か言った?」
「……何でもありません」
「とにかく、私は上部だけでは判断しないわ」
「へぇ、じゃあどこで?」
「欠点よ」
(うん鋭い。実際人間は、欠点あった方が面白いと某天才エンジニアが言ってたし。
こう言うところは、好きなんだけどなあ)
「だから、実力しかない金欠の貴方のことは、嫌いじゃないわ」
またしてもドアップで迫ってくる。
「ありがとう。褒めてなくても言っておくよ。
ちな、先生の欠点は?」
「無いわよ。欠点のない人間なんていない。だから嫌なの」
「ーーーーもしいたとすれば?」
「それは大嘘つきか、頭がおかしいかのどちかよ」
「なるほど。いい考えじゃん」
「どういたしまして。欠点まみれのポチ。今日の報酬よ」
空高く金貨が飛ぶ。
「ハッハッハッ、ワン!」
◇
更に二週間。付き合ってちょうど1ヶ月だ。特に進展もなく、彼女の彼氏(ポチ)として過ごしていた。
夕刻の列車の中。寮に向かっていた。
「不思議ね、貴方の剣」
「急にどしたん?」
「基礎が出来てるのにただそれだけ。それ以外は何もないのに、何故か目を奪われる」
「ありがとう。それは俺の憧れに近づけてる証拠だ」
「憧れ、ね。尚更嫌いな剣だわ」
(だから上げて落とすのやめて)
「それ、前も言ってたね。何か理由が?」
ため息を吐き、語り始めた。
「私は、ずっとアイリス姉様に追いつきたいと思っていた。でも最初から、何もかも持っているものが違った」
アイリス・ミドガル。アレクシアの姉にして、第一王女。
この国の騎士団に所属しており、ミドガル最強の魔剣士と言われているが、俺から言わせれば……。
(えっ、マジで言ってる?あれで最強だったら、表世界狭すぎない?)
弱い。そう、『七陰』、いや『ナンバーズ』でも対処できるほど弱い。
魔力量自体は多いが、それを雑に流し込み、剣を振るってるだけのお嬢さん。これが俺の評価だ。
「だから私なりに考えて強くなろうとした。その結果、私の剣がなんて呼ばれてるか知ってるでしょ?」
「確かーーーーーーーー『凡人の剣』、だっけ?」
「そうよ。でも貴方も私と同じ『凡人の剣』。残念だったわね」
「残念とは思わない。さっきも言ったでしょ。憧れに近づけてる証拠だと。
だから自信を持って言おう。俺は君の剣、好きだ」
誰もいない車内に、ポツンと響いた。
「同じことを前に言われたことがあるわ。ブシン祭の試合で、私が無様に負けた時、姉様が言っていた言葉よ。
あの人に、私の気持ちなんて分からないでしょうね」
嘲るように言う。
「どれだけ惨めだったか。あの日から、自分の剣が嫌いよ」
(うわぁ〜、ドッッロ。井上◯樹さんが書きそうなシナリオじゃん。仕方ない。助言してあげよう)
「俺自身からは何も言えない。けど、俺の知ってるヒーローはこう言ってた。
負け犬がなんだ、根性見せろ!ってね」
「とんでも根性論ね」
「でも俺は、この言葉を胸に常に鍛錬している。才能や素質がなかろうとね。
だから言う。君の剣が好きだと」
剣を突きつけられる。
「その言葉に、何の意味があるの?」
「ただの純粋な気持ちだ。君と一緒にいて、嫌じゃないと言うのも含めてね」
列車が止まる。ドアが開き、駅員が驚愕した。
「そう。…………さようなら」
剣を下ろし、去ってった。
「はぁ、怒らせちまったな」
◇
翌日。久々に、シド達と登校していた。ずっと誰かさんのせいで一緒だったし。
「久々のメンツだな」
「そうですね。デュール君、ずっとアレクシア王女と登下校してましたしね」
「やっぱデュールいないと寂しいね〜」
「本当、久々に解放された気分だ」
「それで?」
「どこまでイッたんだよ?」
鼻息荒く聞いてくる。
「はぁ、お前らが思うようなものは何もない」
「ハァー!?どうしようもないヘタレだぜ!俺だったらもう、最後までやってやるぜ」
「ですね。チューまでは確実に……」
「行こうデュール」
「だな。構ってるとキリがない」
そうして、校門に向かおうとした時……。
「おん?」
ゼノン先生と、魔剣士二人に囲まれた。
「少しいいかな?」
「「ど、どうぞどうぞ」」
クズ二人が、俺を差し出す。
「俺に何か用で?ゼノン先生」
「実はアレクシア王女が昨日から寮に戻っていない」
「っ……」
「騎士団が誘拐事件として捜査したところ、最後に接触した君が、容疑者として浮かび上がった。
話を聞かせてもらいたい。協力してくれるね?」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーはい」
素直に従う。しかし、心の中では……。
(何でこうなんだよぉぉぉ!ふざけるなよぉぉぉ!)
そろそろ胃痛がしてきそうだ。
シドよりは金欠の理由まともですよね?