暗黒の破壊者になりたくて!   作:淫神リリム

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今回若干長めです。後、最近ゼノンの声がメガブルーを演じた松風さんと言うことを知って驚きました。

タイトルモチーフ「第22話 愛は刃!ケミー・ストーリーは突然に」


第8話 恋は刃(物理)!誘拐事件は突然に

翌日の昼。食堂にて飯を摂る。

 

「いやぁー、まさかお前がアレクシア王女と付き合うなんてな」

 

「びっくりですね。デュール君はそう言うの興味ないと思ってたんですけど」

 

俺に今話しかけて来たのは、シドの生粋のモブ友の二人だ。

一人は、ヒョロ・ガリ。背が高い以外、特筆する物がないモブ貴族。後、かなりのクズ。

もう一人は、ジャガ・イモ。坊主頭以外、特筆する物がないモブ貴族。後、かなりのクズ。

 

「……んま、ただの一目惚れでの告白だよ。上手く行くとは、思わなかったけど」

 

(んな訳あるか。はぁ、マジでどう言う思考回路だあの王女)

 

周りもうるさく、「くっそー!アレクシア王女と付き合えるなんて!」だとか「私のデュール君取られた」とか、野次が半端じゃない。

 

《注目なんてものじゃないね。デュール》

 

《はぁ、いくら主人公だからって、目立ちすぎな気がする。最悪だよ》

 

二人に聞こえぬよう、魔力でのテレパシーで会話する。

 

《てかさ、シド的には高嶺の花と付き合うのって、主人公としてアリなの?》

 

《う〜ん。純粋な恋人ならナシだけど、感じからして、何かストーリーに関わりそうだし。いいと思う》

 

《オケ。その確認さえ取れれば大丈夫だ》

 

そんな会話をしていると……。

 

「ご一緒にしてもいいかしら?」

 

彼女(悪魔)が来た。

 

「どどどどどど、どうぞぉ!」

 

「こここ、こんな席で宜しければ、ぜひ!ぜひぃ!」

 

(わぁお。流石シドが吟味して選んだことはある。すっごいモブっぷり。

ありゃ、シドはもう消えてるし)

 

と、思っていると……。

 

「え、うわちょ!」

 

俺を押し退け、座って来た。

 

「下級貴族の席に……!」

 

「しかも距離が近い」

 

(だからうるさい!)

 

心で叫んだ。

そんな中、使用人?食堂の人?が王女の前に豪華な料理を並べていく。

 

(うわぁ!これが王族の料理。貧乏貴族の俺たちじゃ、頼めねぇな。てか……)

 

「やたら多い」

 

「いつも食べきれないの。本当はもう少し、下のコースでもいいんだけど」

 

(あっ、心の声漏れてた。まあいいけど。

でも、食ってみたいなぁ。王族の料理)

 

無意識によだれが垂れていた。

 

「食べていいわよ」

 

「え!?マジ。じゃあ、いただきます!」

 

適当な肉をつつく。

 

「うんま!マジうんま。ねぇ、これもいい?」

 

「いいわよ」

 

「やった!ありがとう」

 

俺の摘む姿に、モブ二人はドン引きしていた。

王女の方はやけにニコニコしてるけど。

 

「貴方、午後の授業は王都ブシン流だったわね?」

 

「え、うん」

 

(やべ〜、嫌な予感{take2}がする)

 

「相手になってくれないかしら?」

 

グイッと、顔を近づけてくる。

 

「で、でも、いつも組んでる子がいるし」

 

「大丈夫よ」

 

「え?」

 

「すでに話はつけてるから」

 

「…………は、はい」

 

 

王都ブシン流第1部教室にて。

アレクシアと向き合い、剣を構える。

 

「ふっ〜、はっ!」

 

愚直に正面から突く。

 

「……」

 

しかし、無言で跳ね返される。

 

(全然攻撃してこないし、遅い。舐めプ?……いや、技や返しの確認しているのか。

つかさっき、俺をまねてストレッチしてたな。意識高いなあ)

 

打ち合って分かる。基本に忠実で、無駄のない剣。努力の跡が見える。一歩ずつ基礎を積み上げて来た賜物だと。だが辛口で言うなら、『地味な剣』。

そうして打ち合い続けていると……。

 

カーン!カーン!カーン!

 

「よし、今日の授業はこれまでだ」

 

今言ったのはゼノン・グリフィ、この教室の先生だ。ミドガルが誇る剣術指南役で、実際まあまあ強い。

 

「ありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

互いに礼をする。

 

「いい剣ね」

 

「そりゃありがとう」

 

「でも嫌いな剣。自分を見ているようだわ」

 

(上げて落とさないでよ)

 

ゼノンの方を向っていく。

 

「それが君の答えというわけかな?アレクシア」

 

「ええそうよ。彼と付き合うことに決めたの。ゼノン先生」

 

顔は見えないが、すごい悪そうな顔なのが分かる。

 

「やれやれ、まるで子供だな。いつまでもそうやって、逃げられるわけじゃないよ」

 

「大人の事情は、子供には分かりませんの」

 

「まだ公にはなっていないが、私たちの婚約は」

 

「また婚約者気取り」

 

(はぁ、無茶苦茶言い合うじゃん。空気になって帰ろ)

 

耳を塞ぎ、場を後にする。

 

 

「つまり君は、ゼノン先生と結婚するのが嫌で、脅して俺を当て馬にしたわけか。しかも扱いやすそうな俺を」

 

放課後。街の噴水にて、事情を聞く。

 

「ええ。そうよ」

 

自慢げに答えた。

 

「その〜、出来ればもう悪目立ちしたくないし、他人の事情に巻き込まれたくないんだけど……」

 

「薄情ね〜、恋人の癖に」

 

「成りたくてなった訳じゃない」

 

「それはお互い様よ。危うく私を殺そうとしたデュール・ホロブアーク君?」

 

「うっ」

 

痛いところを突かれ、黙る。

 

「あら大丈夫?顔が盛大に引き攣ってるけど」

 

「ぐっ、この腹黒王女が……(小声)」

 

「何か言ったかしら?」

 

顔がドアップで迫る。

 

「ヴェッ、マリモ!(いえ、何も!)」

 

「とりあえず、恋人のふりを続けてもらいましょうか。期限はあの男が諦めるまでよ」

 

「あの男、諦めるかな?少なくとも俺じゃ、力不足だ」

 

「分かってる。なんとかするわよ」

 

「出来るの?」

 

「脅されてるのに、ごちゃごちゃうるさいわね」

 

金貨を取り出す。

 

「っ!」

 

「フン」

 

投げた。

 

「……俺があれに食いつくと?」

 

「ええ」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆け出す。

 

「その通りだよこんちくしょー!」

 

(正直今の俺は金欠だ。貯めてたお金は全てカードの錬成に。仕送りもだ)

 

「はい」

 

また投げられる。

 

「しゃっ!」

 

猫の如く素早く取る。

 

(ガンマに頼めば簡単だろうが、自立できなくなる。ゆえに、俺は取る。猫に成ろうとも)

 

「よしよし」

 

撫でられる。

 

「いい子ね。ポチ」

 

(犬かよ。猫のつもりでやったのに)

 

「ほぉら取ってこ〜い」

 

「ワン!」

 

こうして、10万の金貨を3枚、30万もガッチャした。

 

 

約2週間。恋人のフリは続いている。ちなみに、200万以上は稼いだ。すぐに消えたけど。

そんなある日。今日も今日とて、彼女と帰っていた。

 

「全く、ムカつくわねあの男。少し剣が上手いからって、いい気になって」

 

「ちょっと完璧すぎるよね」

 

「あの胡散臭い顔、ポチも見たでしょ?」

 

「見た見た。顔がイラッとするの分かる」

 

(ほんっと、王女とは思えない罵詈雑言だな。大衆の前では自重してるけど。

まあ気持ちは理解できるんだけどさ)

 

 

階段でアイスを食べる。所謂買い食いだ。

世間に俺たちの交際を広めるためとのこと。

 

「理解してるつもりだけど、一応聞きたい。ゼノン先生の何が嫌い?」

 

「全部よ全部。あいつの存在全てが嫌なの」

 

「顔、実力、地位、その他諸々持ってるのに?」

 

王女が鼻で笑う。

 

「上部だけ取り繕ってるのよ。私みたいに」

 

「はは、説得力ダンチな言葉d」

 

アイスを口に突っ込まれる。

 

「何か言った?」

 

「……何でもありません」

 

「とにかく、私は上部だけでは判断しないわ」

 

「へぇ、じゃあどこで?」

 

「欠点よ」

 

(うん鋭い。実際人間は、欠点あった方が面白いと某天才エンジニアが言ってたし。

こう言うところは、好きなんだけどなあ)

 

「だから、実力しかない金欠の貴方のことは、嫌いじゃないわ」

 

またしてもドアップで迫ってくる。

 

「ありがとう。褒めてなくても言っておくよ。

ちな、先生の欠点は?」

 

「無いわよ。欠点のない人間なんていない。だから嫌なの」

 

「ーーーーもしいたとすれば?」

 

「それは大嘘つきか、頭がおかしいかのどちかよ」

 

「なるほど。いい考えじゃん」

 

「どういたしまして。欠点まみれのポチ。今日の報酬よ」

 

空高く金貨が飛ぶ。

 

「ハッハッハッ、ワン!」

 

 

更に二週間。付き合ってちょうど1ヶ月だ。特に進展もなく、彼女の彼氏(ポチ)として過ごしていた。

夕刻の列車の中。寮に向かっていた。

 

「不思議ね、貴方の剣」

 

「急にどしたん?」

 

「基礎が出来てるのにただそれだけ。それ以外は何もないのに、何故か目を奪われる」

 

「ありがとう。それは俺の憧れに近づけてる証拠だ」

 

「憧れ、ね。尚更嫌いな剣だわ」

 

(だから上げて落とすのやめて)

 

「それ、前も言ってたね。何か理由が?」

 

ため息を吐き、語り始めた。

 

「私は、ずっとアイリス姉様に追いつきたいと思っていた。でも最初から、何もかも持っているものが違った」

 

アイリス・ミドガル。アレクシアの姉にして、第一王女。

この国の騎士団に所属しており、ミドガル最強の魔剣士と言われているが、俺から言わせれば……。

 

(えっ、マジで言ってる?あれで最強だったら、表世界狭すぎない?)

 

弱い。そう、『七陰』、いや『ナンバーズ』でも対処できるほど弱い。

魔力量自体は多いが、それを雑に流し込み、剣を振るってるだけのお嬢さん。これが俺の評価だ。

 

「だから私なりに考えて強くなろうとした。その結果、私の剣がなんて呼ばれてるか知ってるでしょ?」

 

「確かーーーーーーーー『凡人の剣』、だっけ?」

 

「そうよ。でも貴方も私と同じ『凡人の剣』。残念だったわね」

 

「残念とは思わない。さっきも言ったでしょ。憧れに近づけてる証拠だと。

だから自信を持って言おう。俺は君の剣、好きだ」

 

誰もいない車内に、ポツンと響いた。

 

「同じことを前に言われたことがあるわ。ブシン祭の試合で、私が無様に負けた時、姉様が言っていた言葉よ。

あの人に、私の気持ちなんて分からないでしょうね」

 

嘲るように言う。

 

「どれだけ惨めだったか。あの日から、自分の剣が嫌いよ」

 

(うわぁ〜、ドッッロ。井上◯樹さんが書きそうなシナリオじゃん。仕方ない。助言してあげよう)

 

「俺自身からは何も言えない。けど、俺の知ってるヒーローはこう言ってた。

負け犬がなんだ、根性見せろ!ってね」

 

「とんでも根性論ね」

 

「でも俺は、この言葉を胸に常に鍛錬している。才能や素質がなかろうとね。

だから言う。君の剣が好きだと」

 

剣を突きつけられる。

 

「その言葉に、何の意味があるの?」

 

「ただの純粋な気持ちだ。君と一緒にいて、嫌じゃないと言うのも含めてね」

 

列車が止まる。ドアが開き、駅員が驚愕した。

 

「そう。…………さようなら」

 

剣を下ろし、去ってった。

 

「はぁ、怒らせちまったな」

 

 

翌日。久々に、シド達と登校していた。ずっと誰かさんのせいで一緒だったし。

 

「久々のメンツだな」

 

「そうですね。デュール君、ずっとアレクシア王女と登下校してましたしね」

 

「やっぱデュールいないと寂しいね〜」

 

「本当、久々に解放された気分だ」

 

「それで?」

 

「どこまでイッたんだよ?」

 

鼻息荒く聞いてくる。

 

「はぁ、お前らが思うようなものは何もない」

 

「ハァー!?どうしようもないヘタレだぜ!俺だったらもう、最後までやってやるぜ」

 

「ですね。チューまでは確実に……」

 

「行こうデュール」

 

「だな。構ってるとキリがない」

 

そうして、校門に向かおうとした時……。

 

「おん?」

 

ゼノン先生と、魔剣士二人に囲まれた。

 

「少しいいかな?」

 

「「ど、どうぞどうぞ」」

 

クズ二人が、俺を差し出す。

 

「俺に何か用で?ゼノン先生」

 

「実はアレクシア王女が昨日から寮に戻っていない」

 

「っ……」

 

「騎士団が誘拐事件として捜査したところ、最後に接触した君が、容疑者として浮かび上がった。

話を聞かせてもらいたい。協力してくれるね?」

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーはい」

 

素直に従う。しかし、心の中では……。

 

(何でこうなんだよぉぉぉ!ふざけるなよぉぉぉ!)

 

そろそろ胃痛がしてきそうだ。




シドよりは金欠の理由まともですよね?
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