現時点では三代流派それぞれ中級。
死に戻り
熱い。熱い。
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい
たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけ
何も見えない。
何が起きているのか分からない。
逃げなきゃ。
そう思っているのに、身体が動かない。
声を出そうとしても、喉から出てくるのは意味のない音だけ。
「か、ひゅ……」
誰か。
誰でもいい。
お父さん。
お母さん。
リーリャさん。
ロキシー師匠。
シルフィ。
誰でもいいから――るでぃ。
助けて。
たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて
視界は真っ暗だった。
意識だけが、ゆっくりと沈んでいく。
怖い。
死にたくない。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
私は――。
そこで、意識が途切れた。
――――。
気がつくと、私は見知らぬ砂漠にいた。
「……え?」
見覚えがある。
……いや。
見覚えがあるどころじゃない。
どうして?
私は確かに――。
「……死んだ、よね?」
その瞬間だった。
背後から、地面を踏みしめる音が聞こえた。
ズシン。ズシン。
「……嘘」
振り返る。巨大な魔物が、こちらを見ていた。
「待っ――」
逃げなきゃ。
そう思った。
けれど、身体が動かない。
魔物が迫ってくる。
一歩。また一歩。
「来ないで……」
声が震える。
「お願いだから……」
魔物が、私を見下ろした。
そして――。
視界が暗転した。
いたい。いたい。
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい
いたぃ゛い゛ぃ゛い゛い゛
あつい。こわい。さむい。しにたくない。たすけて。
――――。
「…………」
私は砂漠に立っていた。
息が荒い。
心臓が、嫌なほど大きく鳴っている。
「…………」
何も起きていない。
さっきと同じ砂漠。
さっきと同じ景色。
だけど。
「……なんで?」
私は震える手を見つめた。
「私……」
ズシン。ズシン。
「どういうこ……ぐふっ……あ..ぇ」
腹の方を見ると、一本のツノが私の腹部を貫通していた。
「や、め」
————
気がつくと、いやもういい。
逃げなきゃ。逃げなきゃ。にげなきゃ。にげろにげろにげろ。
死にたくないしにたくないしにたくないしにたくない。
背後から追いかけてくる音が聞こえる。
速い。追いつかれる。
戦わなきゃ。死ぬ。死にたくない。こわい。
でも、剣がない。戦えない。どうすれば。
「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の皇子よ。勇壮なる氷の剣を彼の者に叩き落せ!
巨大な氷塊が発射され……
「がっ」
またも私の腹部を一本のツノが貫通していた。
あぁ、無詠唱…できたらな…
———
わかった。わかっている。
ループしている。今はそれだけでいい。
冷静な判断を。武器はない。魔力はある。でもそれだけでは……
「……近くにあるものほど見えなくなる時ってあるよね」
私は気づいた。近くの砂漠に一本の剣が埋まっていたことに。
「さあこい」
大きな鼻息を漏らす、大きなツノをもつ魔物。突進のスピードが速かった。
だが、剣を持った私なら!
「だっり゛ゃゃぁああ゛」
受け流す。水神流の技。個人的には一番苦手だったけど、それでも通用はする。日々の訓練は無駄じゃなかった。
魔物はこちらの様子を伺い、少し離れた。そんなとき、
「おい、それは俺のものだ」
「……え?」
声がした。どこから?私は周囲を見渡す。
砂漠には何もない。
「お前に言ってんだよ」
「うわっ!?」
突然、足元の砂が盛り上がった。ズズズ、と砂が崩れていく。
「ちょ、ちょっと待って!?」
砂の中から、人間の腕が伸びてきた。
「返せよ、お前」
「え、ちょ――」
次の瞬間。
砂の中から、一人の男が這い出てきた。全身砂まみれ。髪も服もボロボロ。
とてもじゃないが、強そうには見えない。むしろ遭難者にしか見えない。
「……」
「……」
私たちは無言で見つめ合った。
「……何してるんですか?」
「見れば分かるだろ」
「分からないから聞いてるんですけど」
「埋まっていた」
「それは見れば分かります」
なんだこの人。
私が困惑している間にも、魔物がこちらへ向き直った。大きな身体を震わせる。
「……来るぞ」
男が呟いた。
「逃げた方がいいんじゃ?」
「いや」
男は立ち上がる。
そして、私の持っている剣を見た。
「それを返してもらう」
「これ?」
「ああ」
どうやら砂に埋まっていたのは、この人の剣だったらしい。
「じゃあ、これ」
私は剣を差し出す。すると男は――。
「気がついたらこんな砂漠にいるなんてな。この魔物のせいなのか?」
「いや、わかりません。それよりも速く逃げないと」
魔物がこちらを向く。男は笑った。
「お前さっきの受け流しどうやるんだ?」
「……は?」
男は一歩前へ出る。
「まあいい、この後教えてもらう」
キンッと、耳鳴りに近い音が聞こえ、次の瞬間には、魔物が真っ二つにされた状態になっていた。