死者転生〜死に戻りの少女〜   作:きむちーず

11 / 11
スタート

 

「で、ここどこ?」

「は? え?」

「いや、だから。ここどこだ?」

 

 男は辺りを見回す。私ももう一度見渡した。見渡す限りの砂、砂、砂。砂漠だ。近くに建物は見えない。

 違う、それよりもさっきのループは。

「……知らない」

「なんで?お前が連れてきたんじゃないの?」

「いや、私も今初めて来たんだけど」

「そうなんだ」

 

 男は顎に手を当てて考え込む。なんだ、さっきのはコイツのせいなのか?コイツの見せた幻覚……いや、あの痛みはなんだ、自分の感覚がなくなっていく感じ。確実に死んだ。

 

「じゃあさっきの技教えて」

「いや、いきなり何!?」

 

 話が飛びすぎている。この状況に対して恐怖を抱かないのか?どこかもわからない場所に二人で取り残され、さらには魔物まで襲ってきたというのに。

 というか、こっちはあのループのことで大変だっつの。

 とりあえず助かったってことでいいのか?

 

「お前、さっき魔物の突進を受け流しただろ」

「……水神流のこと?」

「多分それ」

 

 男の目が輝く。見た目は20代くらいだろうか。お父さんよりは若い。

 

「どうやった?」

「どうって……普通に受け流しただけだけど」

「普通に?」

 

 男は首を傾げる。

 

「俺にはできない」

「えぇ……」

 

 あんな化け物みたいな斬撃を放っておいて、水神流を知らないのか。

 

「じゃあ、なんであの技を…」

「技?」

 

 男は少し考えた。

 

「……さっきの俺の剣のことか?」

「うん。あれって光の—」

「あれ、俺が昔見た剣士の真似だ」

「真似?師匠は?」

「シショー?よくわかんないが俺は一人で剣を振っていた」

 

 男は自分の剣を眺める。よく見るとかなりボロい。刃こぼれしているし、かなり持ち手も汚れている。いや、それほど振り込んだということか?

 

「昔、奴隷だった頃に一度だけ見たんだ。信じられないくらい美しい剣だった」

「……それを真似したの?」

「そう。格好良かったからな」

 

 男は笑った。

 

「何度も何度も真似してたら、いつの間にか使えるようになった」

「……」

 

 私は思わず男を見る。誰にも教わらずに?見ただけで?あの技を?そんなことが可能なのか?

 

「やっぱりあの技って…」

「ふふん、俺はこう呼んでいる――」

 

 男は剣を肩に担いだ。

 

「旋空弧月と」

「それ、違う作品だからやめときな」

「は?」

 

 おそらく光の太刀。剣神流の奥義と言っていい技だ。極めれば剣先は光の速さまでに達すると聞く。お父さんですら出来ない技だ。

 

 それを、この男は――。独学で身につけた?

 

「……」

 

 私はもう一度、男を見る。砂まみれの髪。ボロボロの服。刃こぼれした剣。

 

 とてもじゃないが、凄腕の剣士には見えない。

 

 なのに。

 

 さっきの一撃だけは、今まで見たどんな剣技よりも速かった。

 

 くそっ、色々と情報量が多い。今何をすべきか考えるのが得策なはずなのに、この男への興味が消えない。

 

「とりあえずさっきの教えろよ。見た感じ、グッってやってスッ、ズザン!って感じか?」

「は?いや、ちょ」

 

 なんなんだコイツ。擬音だけで分かるわけないだろう。……いや、お父さんもこんな感じだったか。

 

「いや、もうちょっとクンッ スサッって感じだな」

 

 何を言っているのかはよく分からないが、動きとしてはかなり近いものがある。実際はもっと繊細な動作や力加減が求められるが、この流暢な動きは一朝一夕で身につけられるものじゃない。

 

「そんなことよりさ、まずこの状況を整理しようよ」

「そんなこと?剣より大事なものはないだろ」

「……っ、後で教えるから!!」

「ならいい」

 

 あっさり引き下がった。

 

 ……本当に剣のことしか頭にないのか、こいつ。

 でもギリ話は通じる。

 

「まず、私たちはどこか分からない砂漠にいる」

「そうだな」

「気がついたらここにいた」

「ああ」

 

 コイツも似たような状況。犯人には見えない。私の家族も近くにいるのだろうか?光に包まれたのはみんな一緒だ。私だけ飛ばされたとは考えにくい。

 

「ねえ」

「なんだ?」

「あなたは、ここに来る前はどこにいたの?」

「寝てた」

「……どこにいたか聞いてんだけど」

「ロアの町だっけな」

 

 ……ルディが家庭教師に出向いた場所だ。もしやルディも飛ばされている?かなり範囲が広いな。

 とはいえコイツにルディのことを聞いたとしても分からないだろうし、聞いてくれるかもわからない。

 まあ、ルディなら大丈夫だろう。あいつ天才だし。

 

「じゃあ名前」

「名前?」

「あなたの名前」

「ああ」

 

 男は少し考えてから、自分の胸を指差した。

 

「俺の名前は――」

 

 そこで一度、言葉を切った。

 

「……なんだっけ?」

 

「は?」

「いや、なんだっけな」

 

 男は真剣な顔で首を捻っている。

 

「いやいやいや、そこ忘れる!?」

「名前なんて呼ばれないからな」

「……」

 

 冗談を言っているようには見えない。

 

「奴隷だった頃の名前は?」

「それが名前だったのか?」

「え?」

「呼ばれてたのは番号だった」

 

 さらりと言う。私は思わず黙った。

 男は気にした様子もなく、砂の上に座り込む。

 

「まあ、別に俺の名前なんてどうでもいいさ…お前は?」

「わたし?……レテシア・グレイラット」

「よろしくな、レテシア」

 

 少しだけ心が軽くなった。

 

 ……変な奴だけど。敵ではなさそうだ。

 

「それで、レテシア。水神流っていうのは、あの受け流す技のことか?」

「……」

「教えてくれるんだろ?」

「今!?」

「後でって言っただろ」

 

 頭を抱えたくなる。だけど――。

 

 こうして話していると、さっきまで感じていた恐怖が少しだけ薄れていく。

 

 ここがどこなのかも分からない。

 

 家族がどこにいるのかも分からない。

 

 さっきのループのことも。

 

 そもそも、なぜ私がこの世界に生まれたのかも。

 

 それでも。

 

「……まずは人のいる場所を探そう」

 

 私は歩み続ける。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

無職転生 ~異世界行ったらニート目指す~(作者:めーぷるん)(原作:無職転生)

ブラック企業で過労死した私の目標は、異世界で「ニート」になること!▼誰にも期待されず、静かで平和なスローライフ。▼……のはずが、うっかり死にかけの母を治したら「天才だ!」と大騒ぎされ、面倒なフラグが乱立!▼おまけにトラブルメーカーで有名な原作主人公の近くに送り込まれるって、ちょっと待って!▼私はただのニートになりたいだけなのに、周りが全然ほっとかないんですけ…


総合評価:228/評価:7.5/連載:5話/更新日時:2026年07月24日(金) 07:01 小説情報

ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら(作者:りんごりら)(原作:無職転生)

ルーデウスに2歳年下の妹ができました。▼妹の名前はトマ・グレイラット。お兄ちゃんっ子で倫理観は薄め。でも家族は大好きです。▼無職転生はなろう、漫画、アニメを見てます。▼呪術廻戦は漫画、アニメ▼Web版を参考に執筆しています。▼無職転生、呪術廻戦、呪術廻戦モジュロの最終話までのネタバレを含みます。▼呪力は無いです魔力で動く無為転変っぽいやつです。▼原作ストーリ…


総合評価:2709/評価:8.59/連載:23話/更新日時:2026年09月02日(水) 12:06 小説情報

私は1人で生きていける(作者:ふぁ!?)(原作:超かぐや姫!)

どっからともなく生えてきた彩葉の双子の妹が主役です。▼5月16日 7話に修正を入れました。


総合評価:1490/評価:8.38/連載:8話/更新日時:2026年05月23日(土) 07:00 小説情報

〜無職転生〜TSしたルーディアには兄がいた(作者:肉と米と愛)(原作:無職転生)

 34歳職歴なし住所不定童貞ニートの男は、ある日、高校生を庇い死んでしまった。▼ 運命の悪戯か、男は六面世界へと転生し、第二の人生を授かる事となる。▼ しかし、今世は男ではなく、女として……▼ 無職転生の二次創作です。▼ 気長に書いていこうと思います。▼ ▼ 生々しい描写などがある為、苦手な人は注意です。▼ 誤字報告や、感想してくれると嬉しいです。▼ 


総合評価:425/評価:7.94/連載:14話/更新日時:2026年08月30日(日) 17:20 小説情報

天剣へと至る愚者(作者:一般通過害悪)(原作:無職転生)

ルーデウス・グレイラットの双子の弟は転生者である。▼後世には『天剣』として伝えられることになる。▼これは、彼が生前に書いた日記を辿っていく物語。▼※アンチ・ヘイトとクロスオーバーは念の為。


総合評価:3358/評価:8.18/連載:10話/更新日時:2026年08月22日(土) 15:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>