死者転生〜死に戻りの少女〜   作:きむちーず

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第一章 〜幼少期
異世界転生


 

夜中に響く、ギシギシギシアンアンアン。

 そーやって生まれたのがあたし———否!私たちってわけ!!

 

「ねーえ、ルディー何読んでるのー?」

「そうですね、言葉の勉強ですかね」

「それ楽しいの?」

「分からないことが分かるようになるというのとても面白いですよ」

 

 

 私の名前は、レテシア・グレイラット。

 見た目は三歳。

 中身は二十代半ば。

 

 そして――超絶ぷりてぃーガールである。

 

 ……まあ、ぶっちゃけた話をしよう。

 

 私は異世界転生をした。

 色々あって、向こうの世界で死んじゃって。

 目が覚めたら、赤ん坊になっていた。

 そして今、第二の人生を歩んでいるってわけ。

 

 ちなみに、隣にいるのが双子の弟。

 ルーデウス・グレイラット。

 これがまあなんとも可愛らしいわけよ。

 ちょーーっと、わてくしより優秀なのは気に食わないけど。

 「姉様、姉様」って慕ってくるもんだから、母性をくすぐられてしまう。

 

 ……うん。

 可愛いは正義。

 

 正直言って、前世、私は勉強が得意ではなかった。

 運動はわりかし得意だったけど。それでも思う。

 

 異世界転生って、もっとこう……チートとかあるもんじゃないの!?

 

 圧倒的な身体能力とか、無限の魔力量とか。

 最強の固有スキルとか。

 

 そういうの、一個くらいあってもよくない!?

 

 しかも、この世界の言語は日本語に近い気もするのに、なんだか妙な言語壁?みたいなものを感じる。

 

 意味は分かる。

 話すこともできる。

 

 でも、どうにも頭に入ってくるのが遅い。

 

 つまり――

 

 今のところ、ザ・普通!!

 

 ……いや、異世界転生者としてどうなんだ、これ。

 子供の頃は右脳だかなんだかが良いから物覚えがいいとかじゃなかったっけ。それとも、異世界転生者というものが邪魔してる?

 

 まあ、夜泣きとかはしない。

 そういうところでは、手のかからない子供として評価されている……はず。

 

 ちなみに、ルディも全然泣かない。

 そしてルディの方が大人びている気がする。

 言葉も流暢に話している。

 なんなら親よりも知性を感じる気がする。

 

 …………。

 

 ん?

 

 もしかして私って――

 

 ルディに惨敗してない?

 

 

 姉より優れた弟など存在した。

 いや、私はお姉ちゃん。生まれた日は同じだが、私の方が早く生まれた。

 つまり、私のほうが偉い。

 これは揺るぎない事実である。

 

 

「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、えー…」

「清涼なるせせらぎの流れを今ここに、です」

「清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール」

 

 私の右手から水玉が発射された。

 数メートルほど前方に飛び、弾け、水が飛び散った。

 

「できた!できたよロキシー先生!」

「はい、おめでとうございます」

 

 私たちには魔術の先生がいる。

 それは、ロキシー先生だ。

 ある日、ルディが中級魔術を使ったところを目撃した母——ゼニスが、家庭教師として雇った。

 水聖級魔術師という、かなりの凄腕魔術師であるらしい。

 そんな肩書きに似合わないような小さい、可愛らしい見た目をしている。

 

「レティ、もう一度やってみましょう。次は一人で言えるように」

「はーい」

 

 あ、そうそう。

 

 私は愛称でレティと呼ばれている。

 ちなみにルーデウスはルディ。

 

 ロキシー先生の教えは、とても丁寧だ。

 おかげで、私も少しずつ魔法が使えるようになってきた。

 

 ……まあ、隣にいる奴がおかしいだけで、これでも頑張っている方だと思う。

 

 ルディの方はというと――

 

 上級魔術まで使いこなせるようになっていた。

 

 しかも、無詠唱で。

 

 ……なんで?

 

 どうやら、この世界では魔法の使い方が大きく二種類あるらしい。

 詠唱をするか、魔法陣を使うか。

 

 昔は魔法陣が主流だったらしいが、魔術が発展するにつれて詠唱による魔法の発動が研究され、かなり詠唱時間を短縮できるようになった。

 その甲斐あってか、今では詠唱が主流なんだとか。

 召喚術みたいな複雑な魔術は、今でも魔法陣を使うらしい。

 いつか私も使ってみたいな、魔法陣。

 

 ……まあ、それは置いておこう。

 

 問題はルディだ。

 

 無詠唱。

 

 魔術を使う前の詠唱を一切必要とせず、いきなり魔法を発動させる。

 まさに神業。

 ロキシー先生ですらできないらしい。

 

 ……。

 

 まーじで天才かもしれん、コイツ。

 

 このまま成長して、有名な魔法使いにでもなってくれないかな。

 そしたらガッポガッポ稼いでもらって――

 

 私はヒモになりたい。

 

 完璧な人生設計である。

 

 にしても、羨ましいなーと何度も思う。双子なのにここまで差が出るもんかねー?

 ルディみたいに、見ただけで覚えて、無詠唱でポンポン使うなんて芸当やってみたい。

 

 悲しい。

 

 転生者なのに。

 

 チート能力とか、そういうのはないらしい。

 

 ……いや、まだ分からない。

 もしかしたらいつか、隠された力が目覚めるかもしれない。

 

 そう、例えば――今!

 

「ステータスオープン!」

「姉様?」

「…………なんでもない」

 

 どうやらこの世界には、そういう便利なものはないらしい。

 まあ、いい。

 

 私は私なりに頑張ればいいのだ。

 そう思っていた、ある日のことだった。

 庭から、何度も何度も乾いた音が聞こえてきた。

 

 カンッ。

 カンッ。

 カンッ。

 

 そこには、木剣を握ったルディと、その前に立つお父さん——パウロがいた。

 

「もっと腰を落とせ!」

「はい!」

 

 パウロ・グレイラット。

 

 私たちの父親だ。

 元冒険者で、剣の腕はかなりのものらしい。

 ルディは一生懸命に木剣を振っている。

 

 でも――。

 

 なんだか、あまり上手くいっているようには見えない。

 魔術を使っている時とは大違いだ。

 

 「……」

 

 私はしばらく二人を眺めていた。

 

 カンッ。

 

 ルディの木剣が弾かれる。

 

 「もう一度だ」

 「はい!」

 

 また振る。

 また弾かれる。

 

 ……なんだろう。

 

 ちょっとだけ、楽しそうだ。

 

 魔術とは違う。

 

 自分の身体を動かして、相手の動きを見て、どうすれば勝てるのか考える。

 

 そういうものに、私は少し興味を持った。

 気づけば、私は庭へ出ていた。

 

 「お父さん!」

 「ん? どうした、レティ?」

 「私もやりたい!」

 

 父さんは目を丸くした。

 

 「剣をか?」

 「うん!」

 「……危ないぞ?女の子なんだし無理しなくても……」

 「ルディもやってるじゃん」

 「まあ、そうだが……」

 

 父さんは少し考えたあと、苦笑した。

 

 「分かった。じゃあレティにも教えてやるか」

 「やった!」

 

 父さんから木剣を受け取る。

 

 思っていたより、ずっと重い。

 

 でも――。

 

 なんだか、嫌じゃなかった。

 

 むしろ。

 

 「……これなら」

 

 この日から。

 

 私の人生は、少しだけ変わった気がした。

 

 

 

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