ロキシー師匠との卒業試験は終わった。
丸々カットで申し訳ないが、私の威厳を保つためにも許してほしい。
ルディが聖級魔術の『
ともあれ、ロキシー師匠とのお別れの時間が近づいていた。
師匠は旅装を整え、二年前に来た時と寸分変わらない格好で玄関にいた。
お父さんも、お母さんも師匠が来た時と、あまり変わらない。
私たちの背だけが伸びていた。
「ロキシーちゃん、まだウチにいてもいいのよ?教えてないお料理も一杯あるし……」
「そうだぞ。家庭教師が終わったとはいえ、君には去年の干ばつの時にも世話になったしな。村の奴らだって歓迎するだろう」
両親はそう言ってロキシーを引きとめようとする。
私たち知らない所で、ロキシーは両親と仲良くなっていたらしい。
まぁ、彼女は午後から夜まで丸々暇だったわけだし、
毎日何かしらしてれば、顔も広くなるか。
「いいえ。ありがたい申し出ですが、今回の事で自分の無力さを思い知りました。しばらくは世界を旅しながら、魔術の腕を磨くつもりです」
どうやら、ルディにランクで追いつかれてしまったのがショックらしい。前に、弟子に追いつかれるのは嫌だと言ってたしな。つまりルディのせい?よし、ぶっちのめすか。
「そうか。まぁ、なんだ。悪かったな。うちの息子が自信を失わせてしまったようで」
おいクソ親父、しゃべんな。
「いえ、思い上がりを正して頂いたことを感謝すべきはこちらです」
「水聖級の魔術が使えて思い上がりってことはないだろう」
「そんなものが使えなくとも、工夫しだいでそれ以上の魔術が使える事を知りました」
師匠は苦笑しながらそう言うと、私たちの頭に手を置いた。
「ルディ。精一杯頑張ったつもりですが、わたしではあなたを教えるのに力不足でした」
「そんな事はありません。先生は色んなことを教えてくれました」
「そう言ってもらえると助かります…」
「レティも。あなたにはあなたの才能があります。研鑽を続けてください」
「師匠も元気でね。今度会った時には私も聖級魔術使えてるかも!」
「ええ。期待しています」
なにやらルディが下を向いていた。無理もないか。まだルディは子供なんだし、私より師匠に懐いていた。
そんなルディを見て師匠は、ローブの内側に手を入れると、ゴソゴソと中を探り、革紐についたペンダントを取り出した。緑の光沢を持つ金属でできていて、三つの槍が組み合わさったような形をしている。
「怖がりのルディにはこれを差し上げます」
「これは……?」
「ミグルド族のお守りです。
気難しい魔族と出会った時にこれを見せてわたしの名前を出せば、少しぐらいは融通してくれる……かもしれません」
「大切にします」
「かもですからね。あんまり過信してはいけませんよ。すみませんレティには何も用意できなくて。でも、レティは強いからこのお守りは必要ありませんよね」
師匠は最後の最後に小さく微笑んで、旅立って行った。
ルディはいつしか泣いていた。
「泣かないの、ルディ。きっとまた会えるよ」
私はのちに気づくのだった。ルディが師匠のぱんつを盗み隠していたことに。