ある日、庭で素振りをしていたらルディが外から帰ってきて、お父さんが何やら説教をしている場面に出くわした。隠れながら聞き耳を立ててみる。
「只今帰りました」
「……ルディ。俺が怒っている理由がわかるか?」
「わかりません」
なんだろう。ルディが何かやらかすようには思えない。普段から怒られるのは私の方だ。
「さっき、エトの所の奥さんがきてな。お前、エトの所のソマル坊を殴ったそうじゃないか」
なんか聞いたことがある名前だ。ご近所さんなのかな?お父さんはこのブエナ村を守るお仕事もしているため、交流が多いのかもしれない。
というか、ルディが殴った?子供同士のケンカだろう。気にする必要はないか。いや、ルディには魔術もあるため、一方的な暴力にでもなったのだろうか?
「殴ってはいません。泥を投げつけただけです。父様がどういう話を聞いたのかはわかりませんが……」
「違う!悪いことをしたら、まずは謝るんだ!」
うおw おとっつぁん怖いっすw
なんて冷笑してみたが、大の男が大声を出すと言うのは否応なしに背筋がヒリつく。
「実は道を歩いていたら……」
「言い訳をするな!」
いやいやお父さん。子供の話をしっかり聞くのは親の役目ですよ。上から押さえつけるように叱っちゃあいけませんね。
仕方ない、ここは私がお姉さんとしてちょっくら……
「………」
「どうした、何故なにも言わない?」
「口を開けば言い訳をするなと怒鳴られるからです」
「なに!?」
「子供が何か言う前に怒鳴りつけて謝らせる。大人のやることは手っ取り早くて簡単で、羨ましいですね」
「ルディ!」
助けに出ようとした瞬間、ルディは頬を殴られていた。
いくらなんでも小さな子供に対して暴力を振るうのは教育によろしくない。
よし、やはりここはお姉さんが……
「父様。僕は今まで、出来る限り良い子でいるように努力してきました。父様や母様の言いつけに背いたことは一度もありませんし、やれと言われた事も全力で取り組んできたつもりです」
「そ、それは関係ないだろう」
お父さんも殴るつもりはなかったらしい。
目に見えて狼狽していた。
いや、それよりも割り込む隙がない。ルディは至って冷静だ。
お姉ちゃんの出る幕がない。
「いいえ、あります。僕は父様を安心させるように、信頼してもらえるようにと頑張ってきたんです。父様はそんな僕の言い分は一切聞かず、僕が知らない相手からの言葉を鵜呑みにして怒鳴りつけ、あまつさえ手まで上げたんです」
「しかし、ソマル坊は確かに怪我をして……」
「仮にその怪我が僕のせいだったとしても、僕が謝ることはありません。僕は父様の言いつけには背いていません。胸を張って僕がやったと言いましょう」
「………ちょっとまて、何があったんだ?」
「言い訳は聞きたくないのでは?」
そう言うと、お父さんはグッと苦い顔をした。なんだかルディの方が恐ろしく見える。言葉選びが秀逸だ。とても子供から発せられた言葉とは思えない。さすがはルディ。お姉ちゃんは鼻が高いぞ。
「安心してください父様。次回からは三人掛かりで無抵抗の相手一人を攻撃しているのを見ても無視しします。そして大きくなったら家を出て、二度とグレイラットとは名乗らないことにします。そんな家の人間だと名乗るのは恥ずかしいので」
パウロは絶句していた。
顔を赤くし、青くし、葛藤がかいま見える。
気持ちはわかる。なんかもうすごい。ルディが怖い。逆にお父さんが説教されてるみたいだ。
「……………すまなかった。父さんが悪かった。話してくれ」
パウロが頭を下げた。なんか気まずい雰囲気になる前に、私は二人に合流。その場の雰囲気をなだめ、ルディが詳しく経緯を話した。
ルディの話によると、
丘の上に登ろうとしていると声が聞こえた。
三人の子供が休畑の中から、道を歩く一人の子供に泥を投げつけていた。
泥を1~2発投げつけてから説き伏せると、彼らは悪態をついてどこかへ行ってしまった。
泥を投げつけられていた子を魔術で洗ってやり、一緒に遊んだ。
といった感じだそうだ。確かにルディが悪いところはないなぁ。むしろ助けてやったヒーローって感じだ。
「ですので、謝るのでしたら、そのソマル君とやらがシルフに謝るのが先です。体の傷はすぐ消えますが、心の傷はすぐには消えませんので」
「………そうだな、父さんの勘違いだった。すまん」
お父さんはしょんぼりと肩を落としていた。
小さな息子に完全に言いくるめられてしまったというのは赤っ恥だし。ルディは悪くないのに責めてしまったと言う事実がお父さんを辱めたのだ。
ドンマイケル。
「謝る必要はありません。今後も僕が間違っていると思ったら、容赦なく叱って下さい。ただ、言い分も聞いてくれると助かります。言葉足らずだったり、言い訳にしか聞こえなかったりする時もありますが、言いたいことはありますので、意を汲んでいただければとおもいます」
「ああ、気をつけるよ。もっとも、お前は間違ったりしなさそうだが……」
「そんなことないよお父さん。ルディは師匠のぱん…ムゴッ」
「ねえさま!!」
この間知ったのだが、ルディはロキシー師匠のぱんつを隠し持っていたのであった。しかも使用済みのを。
そういえば小さい頃からお母さんのおっぱいにがっついていたような気もする。とんだ変態野郎だぜ。
私は今後これをダシにしていくと決めた。
「それはそうと、父さま。今度シルフを家に連れてきてもよろしいですか?」
「ああ……もちろんだ」
どうやら助けた子供と仲良くなったようだ。ついにルディにも友達が出来たのか。
お姉ちゃん感慨深いぞ……
ん?そーいや私友達いなくね?コミュ力でもルディに負けた?