瑠璃の水面に煌めく銀閃   作:三℃パン

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木曾のいない日

二日ほど通常業務を自室で行うことになったがその間は木曾や扶桑が書類などをさばいてくれたおかげで業務に支障も出さず、金剛が甲斐甲斐しく世話を焼きに来たのもあって療養は二日で済んだ。

そして二日ぶりに執務室に向かうと既に木曾が待っていた。

「おはよう。世話をかけたね」

「まったくだ。もう御免だぞ?」

そういって笑う木曾と共に執務室に入る。

「遠征任務か・・・・・・」

本日付で新たに届いた指令書に目を通して呟く。

「ああ、送ったと思うが昨日その旨を知らせる電信が来ていた」

鎮守府近海に敵棲地が存在する可能性の連絡とそれに伴う警戒態勢についてだったか?

前回の鬼との交戦もあり早めに手を打とうというのだろう。

「木曾。那智と金剛と共に遠征に向かってくれるか?」

木曾に指示を出していると天井が外れて金剛が飛び降りてきた。

「提督~!呼んだデスカ?呼んだデスネ!」

「お前いったいどこから出てきた?」

「フッフッフ。私は提督がいるところにはどこでも神出鬼没デス!」

金剛は笑ってそう答えるが、いつの間にそんな通路を作ったのか・・・・・・今度塞いでおこう。

「では聞いていたな。そういうことだ」

「そんなの嫌デース。提督と離れたくないデース」

そういってしがみつく金剛の頭を撫でてこちらを向かせる。

「万が一交戦になった時にお前の力が必要だ。だからこそお前に任せたい。金剛、頼めるな?」

その言葉に金剛の目が輝く。

「提督のために頑張るネ!私に任せるデース!」

金剛はそう言って任せろと言った様子で胸を叩く。

「では、木曾、金剛。那智と共に遠征に向かってくれ。無理をする必要はない。危機を感じたら戻ってこい」

「了解デース!」

「ああ、任せろ」

スキップして出て行った金剛に続いて木曾が出て行く。

心配ではあるが、この前の様子を見る限りもう無茶はしないだろう。

特に雑務がたまっているわけでもないので秘書艦の代わりは呼ばずに執務室で作業をしているとノックする音が響く。

「どうぞ」

その言葉に執務室の扉が開く。

「失礼するわ。しれいかん。哨戒任務の報告書よ」

そう言って暁はとことこと歩いてきて机に報告書を置く。

「ああ、ありがとう暁」

書類を受け取り頭を撫でると暁は複雑そうな顔をする。

「子供じゃないのよ?その・・・・・・別にかまわないけど。今日は木曾さんはいないの?」

「木曾には遠征に出てもらったよ」

「そう、なら暁がひしょかんをしてあげるわ!」

そう言って暁は横に立って書類をのぞき込む。

邪魔なわけではないから構わないのだが、頼む仕事があるかといわれても特にない。

「ならそこに座って誰か来た時に書類を受け取ったりしてほしい。構わないか?」

「そんなの簡単よ。暁に任せて」

暁はそういってソファーに座る。

しばらくして執務室に響いたノックに退屈そうに足をぶらぶらしていた暁が嬉しそうに立ち上がる。

「はーい」

扉を開くと響と秋月が立っていた。

「あ、暁ちゃんいた」

「こんなところで何してるんだい姉さん?」

「今日は私がひしょかんなのよ」

入ってきた二人に暁が胸を張る。

「ほんとうなのかい司令官?」

「ああ、そうだよ」

「わぁ、暁ちゃんいいですね!提督、私も秘書艦したいです」

「私もいいかい?」

そういって目を光らせる秋月と響。まぁ暁も一人で退屈そうにしていたので相手がいた方がいいだろう。

「二人ともいいよ。」

「ありがとうございます」

「暁は?暁がひしょかんじゃないの?」

そういって袖を掴む暁の頭を撫でてなだめる。

「みんなでやってくれればいいよ。そのための仕事もある」

そういって暁たちがいるソファーのところに書類の山を持っていく。

既に目を通してある程度整理した後の書類だがまぁいいだろう。

「これを日付通りに並べて整理してほしい」

「わかったわ」

暁達が手分けして書類を分けて机に広げていく。

しばらく仲良く話して作業する声が聞こえていたのだが、一時間ほど経って静かになったなと思い顔を上げると三人がお互いにもたれ掛ってすやすやと寝息を立てていた。

哨戒任務に出たあと入渠して眠気が来ていたのだろう。

残暑のためクーラーをかけているので三人が寝冷えしないように毛布を掛けると寝ぼけた秋月に袖を掴まれる。

「てい、とくさん・・・・・・」

まだ起きてはいないのだろうかそのまま倒れこんでしまう。

ったく、しょうがない奴だ。

秋月の頭を撫でて隣に座ると気持ちよさげに身じろぎしこちらにもたれてくる。

しばらくはこのままでいるか・・・・・・

手を伸ばして本を取り起こさないように静かに読書をする。

どのくらい時間がたっただろう。数十ページほど読み進めたところで扉をノックする音が聞こえる。

「提督?って、あら。なかなか微笑ましいわね」

こちらの返事を待たずに入ってきた矢矧はそう言って笑う。

「矢矧か。どうした?」

「いえ、特に用事はないけれど提督と話でもしようかと思っただけよ。でも、せっかくだから・・・・・・えい!」

矢矧は隣に腰かけるとそのままもたれてきた。

「なんだ?」

「私もこうして休ませてもらおうかしら。ふふふ」

そんなことを言いながら矢矧は頬ずりをする。

この前は配属そうそう無理をさせて、それからもあまり話せなかったからな。そのぐらいはいいだろう。

「ちょっと暑いんだが?」

「夏ですもの」

ほとんど膝枕に近い状態でもたれ掛る矢矧の頭をそって撫でると少し驚いたようにビクッと震えてこちらを見る。

「どうした?」

「え?ぅん・・・・・・もっとして」

再び頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を閉じて、本に集中し撫でるのをやめると潤んだ目で非難がましくこちらを見る。

「矢矧、お前って結構寂しがりか?」

「今頃気づいたの?こういうのダメかしら?」

「いや、ゆっくりできるときはこんな風に構ってやる」

しばらくそうしていると矢矧は寝息を立て始めた。

かなり暑いが、まぁこれぐらいは我慢できる。

それから読書をしていると響が起きたようで伸びをするのが見える。

「司令官?すまない寝てしまって」

「いいよ。疲れていたんだろう」

「姉さん達も寝てるね。私たちは邪魔をしてしまったかな?」

「気にしなくて大丈夫だよ。ただそろそろ起きないと夜寝れないぞ?」

「そうだね。暁姉さん。秋月ちゃん。起きて」

響がそう言って揺さぶると暁が眠たそうに眼をこすって伸びをし、秋月も数回瞬きをする。

「んん・・・・・・あっ!しれいかんごめんなさい!」

「私も寝てました。ごめんなさい提督」

「構わないよ。それより部屋に戻ってゆっくり休むといい」

「暁は別に疲れてないわ!」

「うん。よく頑張ってくれたから後は俺がやっとくよ。それに今日の業務時間もあと少しだ」

そう言って見る外は、もう黄昏色に染まっている。

「でも・・・・・・」

「また、頑張ってもらうから今日はおかえり」

「はい、しれいかん。でも、また今度お手伝いするんだから!」

「期待してるよ」

三人を見送って、まだ寝息を立てている矢矧を少しゆする。

「矢矧、起きろ」

「ん・・・・・・」

矢矧は寝ぼけて潤んだ瞳でこちらを見る。

「提督・・・・・・おはよう」

「もう夕方も過ぎて夜の方が近いぞ。起きて部屋で休んだ方がいいんじゃないか」

「このまま提督の部屋でもいいんだけど」

「そんなやつは金剛だけで十分だ。起きて帰れ」

「まぁ、今日はそうしておくわ」

そう言って立ち上がった矢矧は扉に手をかけて立ち止まる。

「提督・・・・・・さ、さっきの言葉忘れないから・・・・・・また、ね」

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