瑠璃の水面に煌めく銀閃   作:三℃パン

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強襲

鬼と思わしき存在と接触してから数日が経った。

戦力拡充の申請は受理されて戦艦を三隻こちらに回すとの連絡を受けてはいるが、いつ来るかまでは明記されていなかった。

敵に大きな動きがないが手をこまねいて待っているわけでもあるまい。

そんなことを考えていると、けたたましく電話がなる。

緊急回線?!

「私です」

『俺だ。今しがた哨戒任務にあたっていたこちらの水雷戦隊から緊急入電があった。アンタの報告にあった敵主力と思われる部隊が鎮守府に向かって高速で接近している!』

「なんだって?!」

こちらの声にただ事でないことを察したのか木曾の顔つきが変わる。

なんて間の悪い、せめて戦艦戦力が到着していれば・・・・・・腰の重い上層部の決断力のなさの尻拭いを何故現場や艦娘がせねばならんのだ。無能どもが

『こちらの主力艦隊は遠洋哨戒に出ている。すぐに迎撃態勢を取れそうな部隊はアンタのとこしかない。大至急迎撃にあたってくれ!』

「了解した」

その言葉と共に目配せをすると木曾は頷いて、執務室を出ていく。

電話を切るとすぐさま無線を手に取って、艦娘の寮に連絡をとばす。

「鎮守府近海に敵主力艦隊が迫っている。総員速やかに迎撃準備を整え大至急出撃する。駆逐艦は敵艦載機迎撃のため高角砲と高射装置を装備し対空警戒。他の艦は敵強襲に備えろ!」

そう言って手短に指示を出すと上着と無線を手に執務室を出ようとしたその時、再び今度は司令部からの入電。

 

 

あまりに突然の入電で皆の表情に緊張の色が現れている。

「こんなに近海で防衛するの?」

暁は不安そうにそういってこちらを見る。

それも仕方ない。後ろを振り返ればすぐそこには鎮守府が見えている。

まさにここで敵を撃たなければそのまま被害が出る最終防衛ライン。

「不安なのか?」

駆逐艦たちに訊ねると暁は首を振る。

「一人前のレディだから大丈夫よ!」

言葉ではそういっているが皆一様に不安と戸惑いが顔に表れている。

「そうだったな。上手くやれるさ」

「対空は私たちに任せて大丈夫だよ」

「そうです!長十センチ砲ちゃんたちも頑張ってくれますから任せてください」

そういってなんとか自分を奮い立たせる駆逐艦たちに頷き返して、那智や飛鷹の方を振り返る。

険しい顔をして水平線をにらんでいる那智と、その横で目を閉じて海風に髪を靡かせる飛鷹。おそらく偵察に出した艦載機に意識を澄ましているのだろう。

そんな中で那智と目が合う。

何が言いたいのかはだいたいわかる。

「わかってるさ。もうあんな手間はかけさせないぞ」

「ふっ、まだ何も言ってないんだがな」

少し笑ってそう返す那智を見て再び心に誓う。おれはもう死を望まない。

「来るわよ!」

飛鷹の一言で場の空気が変わる。

ここでの撃ち漏らしは許されない。撃ち漏らせば引く場所もなくなる文字通り背水の陣。

「攻撃隊、発艦開始!」

巻物を靡かせて飛鷹が艦載機を発艦させる。出し惜しみはない。流れるように次々と艦載機が飛び立っていき敵の艦載機と空中戦を行う。

「暁ちゃん、響ちゃん!さぁ、始めましょう。撃ち方、始め!」

「い、言われなくてもわかってるもん!」

「やりますか」

こちらに迫る艦載機を秋月の掛け声とともに駆逐達が迎撃する。

その駆逐達に迫るイ級に主砲を打ち込み那智と共に迎撃する。

「弱すぎる!」

「砲雷撃戦開始させてもらう!」

たかが4隻のイ級。向こうでは飛鷹の艦載機によってヌ級が沈んでいる。

この程度なら大したことはない。だがこれはまだ前哨戦程度。

「次が来るぞ!」

那智の言葉と共に敵部隊が水平線に浮上してくるリ級とホ級を織り交ぜた水上打撃部隊。

三隻、本隊はどこだ?

ホ級とイ級に砲撃を撃ち込み、魚雷を放ちもう一隻を足止めする。

「撃たせてもらう!」

足止めしたホ級二隻に那智の鋭い一撃が放たれ二隻とも沈黙する。

「右舷に敵本隊出現!来るわよ!うああっ!」

「くっ!」

敵艦隊を迎撃していると索敵に当たっている飛鷹の声が響くと同時に小さな悲鳴が聞こえる。

その声に振り替えると飛鷹と響が敵艦載機の爆撃で被弾している。

飛鷹はもう手元の艦載機も使いつくしたのだろう、巻物はボロボロで艦載機は先ほどよりも多く航空戦を抜け爆撃や雷撃をしている。

「長十センチ砲ちゃん頑張って!」

「絶対にやらせないんだから!」

残された秋月と暁が頑張って対空防衛を行うが敵の数が多く追いついていない。

敵艦は前回の未知の深海棲艦。

重厚な深海棲艦から上半身を露わにし、長い髪を後ろでまとめた空母と思わしき深海棲艦。

鬼と呼ばれるその敵は不敵な笑みを浮かべ、こちらの砲撃をはじき艦載機を放つ。

その横を抜ける様にチ級とリ級が迫る。

「やらせるか!」

チ級に魚雷を放ち、向かい合ったリ級の向こうで鈍く重い金属音がする。

「避けろ!木曾っ!」

その言葉と共に飛び込んできた那智に押され横に逸れたところを鬼の砲撃が放たれる。

あのままだったら直撃は避けられなかっただろう。

これが好機とばかりに迫るリ級に砲撃を叩き込み退け那智の方を見ると艤装からけむりが上がっている。

「大丈夫か那智!」

「少しかすめた程度だ。心配はいらない」

那智の言う通り傷を負った様子はないが艤装が大きく損害を受けている。

「木曾さん!艦載機が!」

秋月の言葉に振り返ると数機の艦載機が鎮守府を向けて抜けていく。

このままでは!

だが、鬼と二隻の随伴艦に背を向けて戻れるわけがない。

ダンッ!ダンッ!

突然鎮守府の方から鈍い砲撃の音が響き艦載機を撃ち落す。

その方向には見覚えのある上着を着て、大型の旧式対空砲を操る人影が見える。

「秋月!暁!響と飛鷹をかばって撤退しろ!」

聞き覚えのある声。そして、その声と共に三人の人影がこちらに向かってくる。

「hey!お待たせしたデース!選手交代ネ!」

「なんとか間に合いましたね。不幸な結果になっていなくてよかったです」

「扶桑姉さま、私が姉さまの分まで敵を撃ちますから撤退する部隊と一緒にいてください」

あれは戦艦。いつの間に来たのかはわからないがこれで戦況は覆る!

「全砲門! Fire!」

戦艦の一人がはなった砲撃がリ級とチ級を撃ち沈める。

「カンムス・・・・・・ナンニンコヨウガオナジコト!」

鬼が放った砲撃を受け流して二隻が砲撃の構えをとる。

「山城。大丈夫?砲戦よ!」

「はい姉さま! 主砲、よく狙って、てぇーっ!」

その声と共に大口径主砲から重い砲撃が鬼を捉え放たれる。

「グッ・・・・・・」

今まで砲撃を受け流していた障壁を打ち砕き、鬼の艤装を砕く。

効いている。先ほどまで圧倒的に不利だった戦況が圧倒的ともいえる三人の力で。

「これでFinish!? な訳無いデショ! Fire!」

追い打ちをかけるような一斉斉射。

圧倒的なまでの力を見せつけていた鬼が崩れる。

「ウガァァァ・・・・・・」

終わった。あまりに呆気なく。これが戦艦の力。

「皆ご苦労だったな。全艦帰投せよ!」

遠くからアイツの声が聞こえる。

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