瑠璃の水面に煌めく銀閃   作:三℃パン

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金剛な日

帰投してくる艦隊をハンガーで待つ。

駆逐艦と飛鷹は既に入渠に向かわせてある。だいぶ無理をさせたが何とか無事のようだ。

しばらくして木曾達が返ってくる。

「おかえり」

「ああ、ただい・・・・・」

木曾の言葉を遮るように金剛が胸に飛び込んでくる。

「提督~あいたかったデース!」

「いきなり飛びつくな金剛。扶桑も山城も配属したその足で行くことになったけどよくやってくれたね」

金剛を必死に引きはがそうと試みつつ新しく配属された二人の方を向く。

「いいえ。間に合ってよかったです」

「姉さまと一緒でしたから大丈夫です。でも、こんな無茶はもうごめんです」

微笑んで言う扶桑の後ろで山城が憎まれ口を叩く。

「まぁ、荷を解く暇もなかったからね。すまなかったと思ってるよ。部屋は用意してあるからゆっくり休んでくれ。君たちのおかげでしばらくは安泰だろう。それで金剛?そろそろ離してほしいんだが?」

「no! 私は食らいついたら離さないワ!」

何やらややこしい奴だ。

とりあえずしがみつく金剛の腕の中で身を翻して上着だけを残し、すり抜ける。これぞ変わり身の術?

「あぁ、提督~」

金剛が手放した服をそのまま拾い上げ、上着を巻き付けてベルトを締め簀巻きにする。

「oh~提督ひどいデース。んん~」

両手を動かせずに身じろぎする金剛にハンカチを咥えさせると那智と木曾の方を向く。

「よし。というわけで、木曾も那智もご苦労だった。艤装は早めに治る様に手配しておく。入渠してくるといい」

「お前なかなか容赦ないな。知り合いか?」

「あったことあるようなないような。深い関係ではないな」

少し考えてみるがどこでどうあったのかを思い出せないでいると那智が苦笑いをする。

「そ、そうか。とりあえず私も休ませてもらう」

「おれもそうさせてもらう。またいつ敵が来るとも限らんからな」

そういって那智と木曾がハンガーを出て行く。

「ん~!んん~!!」

「なんだ?おとなしくするならほどいてやるぞ?」

その言葉に頷くので仕方なく口からハンカチを取って上着を外してやる。

「提督ひどいデスヨ。私はずっと逢いたかったネ!」

金剛はそういってエヘヘと笑う。先ほどは気づかなかったがその手足にはかすり傷や擦り傷がある。

「怪我してるじゃないか。悪い気づかなかった」

「このくらい平気デース!それより提督」

「ダメだ。とりあえず休んで来い。話はまた後で聞いてやる」

「うぅ、わかったネ」

なにやら話したそうに疼いている金剛の頭を軽く撫でて報告書をまとめるために執務室に戻る。

 

 

入渠ドックの湯に浸かって傷を癒す。

どんな効能なのかはわからないがこの湯に浸かっていると傷が治るのだから不思議だ。

大きな風呂場で暁たちとおそらく緊急電信をしてきただろう水雷戦隊の駆逐達がはしゃいでいて騒がしいドックの中で、隣では飛鷹がうたた寝をしており、反対側では那智が湯に浸かって濡れないように加工された本を読んでいる。

「さっきは助かった。ありがとう」

その言葉にこっちを向いた那智がフッと微笑んで本を閉じる。

「構わないさ。貴様とは気が合いそうだと思っている。だから死なれるには惜しいと思っただけだよ。あと数年もすればいい酒をかわせただろう」

「なぁ、那智」

「どうした?」

「おれは強くなりたい・・・・・・おれを鍛えてくれないか?」

その言葉に那智は少し驚いた表情をするが今度は声を出して笑う。

「ははは、いいだろう任せろ」

 

 

突然の強襲の翌日、なにやら不穏な気配を感じて目が覚める。

カチャカチャ

乾いた金属の音が扉からするので素早く起き上がりベッドの反対側に隠れる。

「そ~」

鏡を使ってベッドの影からドアの方を見ると金剛が忍び足で入ってきていた。

「提督~!おはようデース!」

その声と共にベッドに飛び込んだ金剛の頭を後ろからこつんと叩く。

「不意打ちですカ?!」

「おはよう。朝から騒がしい奴だ」

本当にやれやれだよと思っていると金剛が立ち上がり抱きついてくる。

「提督のにおいがするデース」

「とりあえず離れて出て行け。着替えられんだろ」

「私は気にせずに着替えるといいネ」

「そんなわけに行くか」

金剛の背をおして部屋から押し出す。

しばらくして着替えて部屋を出ると扉の前で金剛が待っていた。

「提督~、一緒にBreakfastにいきましょう!」

「ああ、構わないよ」

何故ここまでこだわるのかはわからないがそれぐらいはいいだろう。

「じゃあ let's goデース!」

そういって手を取ると金剛は食堂に向かって歩き出した。

朝食の間、終始楽しそうな金剛を見て食事をするが如何せんわからない。なぜこんなに楽しそうなのだろう?

「金剛、聞いていいか?」

「なんデスカ?何でもいいデスヨ!」

「俺とどこであった?」

「ん?おかしなことを聞くデスネ?会ったことはないデスヨ?」

「え?」

思ってもいない返答にさすがに戸惑う。

「私、提督のことを遠くから見ていたデス。それでずっと提督の元で戦いたいと思っていたネ!」

「いつ?どこで?」

「それは秘密デス。でも、私は提督がここに移されるずっと前から知っていたネ。ずっと会いたかったデス」

金剛はそういってにっこり笑う。なんだか妙な気分だ。

そんなこちらの様子に気づいたのか金剛は紅茶のカップを置いて手を握る。

「深く考えなくていいネ。私は提督のことが好き、それだけデス」

少しうるんだ目でこちらを見つめて金剛はそういって手を柔らかく握ると席を立つ。

「さぁ!そろそろ業務が始まるデス!」

金剛の言葉に時間を見ると確かにいい時間だ。

「そうだな。行かないと。じゃあな金剛」

「えー。私を秘書艦にはしてくれないデスカ?」

「今のところその予定はないな」

「じゃあ、lunchも一緒できないじゃないデスカ!」

「そうなるかな?」

こちらの反応に金剛はがっくりと肩を落とす。

「まぁ最初から何もかもうまくいくわけじゃないデスネ。今日は朝食だけで我慢デス」

金剛と共に食器を片付けて食堂を出る。

「でも、私は諦めないネ!」

その言葉に一抹の不安を感じながら執務室に向かう。

「遅かったな?」

執務室の前までくると既に木曾が執務室の前で待っていた。

何故かいつもと違い髪が濡れているが詮索するようなことでもないだろう。

「ああ、金剛に朝食に誘われてな」

「そうか。まぁ何もなかったのならそれでいいさ」

昨日の戦果報告書の作成で午前の業務時間が終了する。

「Hey!提督!lunchにサンドイッチを作ってきたヨ~!」

昼は何にしようかと考えているとバスケットを手にした金剛が勢いよく執務室の扉を開く。

「あ、ああ、ちょうど昼にしようと思っていたところだ」

「ちょうど良かったネ!私が心を込めて作ったネ!もちろん木曾の分もあるヨ!」

「ああ、すまない」

そのまま流される形で金剛が作ってきたサンドイッチでお昼を済ます。

形も味もなかなか良く食費も浮いたので助かるのだが・・・・・・

「Tea Time ネー! 紅茶とスコーン用意して、Waiting for you!」

昼下がりに再び金剛がやってくる。

確かに息抜きを考えていたのでその流れで午後のひと時を優雅に過ごすが、木曾は少し慣れないといった様子で紅茶ではなく番茶を湯呑で飲みながら付き合う。

その後も何かと用事を付けて金剛がやってくるのでなかなか妙な一日だった。

業務を終えて部屋に戻ると鍵をかけたはずの部屋のカギが開いている。

「提督ぅ~、おかえりなさいデス!」

警戒して扉を開くと金剛が飛びついてきたのでつい勢いでチョップしてしまう。

「あぅぅ、またやられたデス」

「すまん。というかお前また人の部屋に勝手に」

「だって、こうでもしないと提督と二人でいられないデス!」

「あのなぁ」

金剛を引きはがして肩をつかみこちらを向かせる。

「何か用事があるときは来ればいい。話だっていつでもとは言わないが聞いてやる。だからこんなことはするな」

「でもぉ」

金剛は不満げに口をとがらせる。

「こういうのはダメだ。いいな?」

「わかったデス」

「ありがとう。じゃあお休み」

「Good night」

そう言って金剛は部屋を出て行く。

わかってくれただろうが・・・・・・鍵を増やすか・・・・・・

そんなことを推考しつつ眠りにつくのだった。

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