嘆きの亡霊の主は最強ハンター   作:自堕落無力

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十一話

 

 多くのトレジャーハンターで賑わっている帝都ゼブルディア。

 

 大手クランの一つである【始まりの足跡】のクランハウスは今朝から慌ただしい動きを見せていた。

 

 クランハウスの前には多くのメンバーを移送するための戦車を連想させるような大型で鉄製の馬車が数台あり、その馬車に繋がれているのは魔物や幻影が現れる土地を走破するよう特別に配合された屈強な馬である。

 

 そして、クランハウス内一階、ロビーにはこのクランに所属するパーティーとソロのメンバーが数十人、つまり現在、このゼブルディアにいる全クランメンバーが集まっていた。

 

 今日、【始まりの足跡】のトレジャーハンター達は国からの依頼で探教との共同作戦により、【白狼の巣】へと突撃する事になったからだ。

 

 

 

「さて、皆……前にも言ったように皆にはこれから、探協や騎士団、調査員と共に【白狼の巣】に乗り込んでもらう。指揮官はひとまず、スヴェンにやってもらうけど頃合いを見て僕もいくからよろしくね」

 

 クランマスターであるクライは自分の言葉を待つメンバーたちにそう言った。

 

「え、スヴェン?……マスターが来てくれるんじゃないんですか?」

 

 メンバーの一人がクライが全体的な指揮をしないと言ったので驚きつつ、質問をした。

 

 

 

「どうも【白狼の巣】のそれと合わせてこの帝都で動いている者がいるから、下手に動かないように牽制する必要があるんだ。そう、【白狼の巣】の異変は人為的なものだ」

 

『っ!?』

 

 クライの言葉に全員が驚く。

 

 

 

「えっと、じゃあそれをやっている首謀者は何者なんですか?」

 

「何者というよりかは組織だね。多分、『アカシャの塔』その物かそれと関わりのある組織だ」

 

「なら、猶更クライさんが来た方が良いんじゃ」

 

「はい、ますたぁがいるべき案件だと思います「ティー、クライちゃんに文句を言うの?」ひっ、す、すみませんおねぇさま」

 

 クライが情報提供をするとクロエとティノが意見を出したが、クライの傍にいるリィズがティノを睨んで怯えさせた。

 

「リィズ、ティノを睨まないで……まあ、現地には他のトレジャーハンターやクランの者達もいるしガークさんも出るようだから戦力的には十分だ。タリアに魔導生物用の薬も渡しているしね」

 

「はい、一応預かっています」

 

 クライが視線を送った事でタリアが手を上げつつ、頷いた。

 

 

 

「まあ、先にも言ったように頃合いを見てちゃんと僕もいくし、必要な手は打つよ。まあ、願わくは僕が行く前に終わらせてほしいところだけど。皆、ちゃんと今回の依頼では全員に報酬出るし、活躍次第では認定レベルも上がるんだ。張り切りどころだよ」

 

『(……あ、千の試練だこれ……)』

 

 クランメンバーは全員、たまにクライが差し向ける命懸けにさえなる『試練』を課してきた事を察した。この試練の事を【始まりの足跡】内では『千の試練』と呼んでいるのだ。

 

「ねぇ、なんならクライちゃんと私とティーだけで良いんじゃない?」

 

「リィズはまだ【万魔の城】から帰って来たばかりでしょ。それにやっぱりこれは皆が実力を発揮できる良い機会なんだ。それを奪っちゃ駄目だよ」

 

「あぁっ、普段面倒な事をクライちゃんに丸投げしてぬくぬくしてるんだから、こういう時にはしっかり働けって事だね」

 

「そんな事は思ってないよリィズ……ともかく、皆よろしく頼んだよ」

 

 リィズを窘めつつ、クライはメンバーたちに声をかけると皆は頷き、そうしてクライとリィズを残して馬車で【白狼の巣】へと向かったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 【白狼の巣】にクランメンバーを送り出した事でクライはリィズとクランハウスに残っていた。

 

「ねぇ、クライちゃん。まだ行かなくて良いの?」

 

「まだ送り出したばかりだよ。リィズ」

 

 トレジャーハンターとしての恰好をしているリィズが今にも動き出したくて堪らないといった様子でクライに言い、クライは苦笑した。

 

「で、向こうにいる『アカシャの塔』はどれだけ強いの?」

 

「リィズでもてこずる戦力はあると思う」

 

「そんなところに送るなんてやっぱり、クライちゃんの要求って絶望的に高いよね。私達は喜んで応じるけどさ」

 

「そんな無理な要求はしてないつもりだけどね」

 

 クライはリィズの言葉にまた苦笑をした。

 

 そうして……。

 

「クライさん、ただいま帰りました」

 

 クランマスター室内に身体の線が出ない大きめのサイズの地味の外套に大きな背負鞄、ピンクブロンドの髪を肩の上で綺麗に切りそろえ、優し気な顔つきである女性の錬金術師でリィズの妹であるシトリー・スマートが入って来た。

 

「おかえり、シトリー」

 

「シト、あんたが帰って来たって事はルークちゃんたちも戻って来たの?」

 

「ううん、まだルークさんは幻影を一人で倒せてないからまだ戦っているよ。お兄ちゃんにルシアさんはまだ付き合うって」

 

 クライに続き、リィズが尋ねるとシトリーは首を振って答えた。

 

「リィズ、悪いけど少し席を外してくれるかい? シトリーと大事な話があるんだ」

 

「えー、やだぁ。私も聞きたーい」

 

「リィズ、僕のお願いを聞いてくれないの?」

 

「っ、ううん聞くよ。クライちゃんのお願いなら聞く」

 

「ありがとう。良い子な可愛い僕のリィズ」

 

 クライが立ち上がり、リィズへ近づいて声をかければ彼女は立ち上がって頷いた。そんな彼女の頭をクライは撫でた。

 

 そしてリィズが部屋を退出すると……。

 

 

 

「クライさん、また迷惑をかけてすみません。まだ彼らは動き出す予定じゃ無かったので油断してました。まさか、【万魔の城】に行っている時に」

 

 シトリーはクライへと謝った。彼女は現在、【白狼の巣】で魔術の研究と実験をしている『アカシャの塔』にソフィア・ブラックとして潜入しているのだ。

 

「予想外な事はいつだって起こるから仕方ないよ。ここに来たって事はもう仕込みは済んでいるんだろう?」

 

「はい、抜かりなく……ノトさん達には研究の成果を発揮する機会を与えました」

 

 クライはこういう事態になった時、『アカシャの塔』とクランメンバーを戦わせるのを計画の一つに設けたりしていた。他にもいろんな計画はあったが、今回はそうした計画に移る事にしたのだ。

 

 

 

「これで皆も死闘を経験して成長する事が出来るだろう。とはいえ、死人が出ないように皆の事は頼むよ」

 

「はい、もう二度とあの時のようにクライさんの手を煩わせたりはしません」

 

「そんな事は思って無いよ。僕は大好きなシトリーの為なら幾らでもサポートする」

 

 実はクライはシトリーが起こしたとある出来事で大事件にも繋がった事において彼女のフォローをして問題が無いようにしていた。

 

「ん……」

 

 クライは自分の言葉に頷いたシトリー近づき、そうして抱き締めながら深い口づけを交わし、【白狼の巣】で指揮官となり、皆を助けるように言って送り出したのであった……。

 

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