嘆きの亡霊の主は最強ハンター   作:自堕落無力

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十三話

 

 【白狼の巣】周辺を活動拠点として暗躍していた『アカシャの塔』の帝国支部。

 

 その支部を担当しているのはかつて、『大賢者(マスター・メイガス)』とうたわれた大魔導士であり、長い白髪の老人であるノト・コクレアである。

 

 彼は禁忌とされるマナ・マテリアルを弄り、宝物殿を操るといったような研究をしようとしたために帝国より追放されたが、『アカシャの塔』にて研究を続けたのである。

 

 元が大魔導士なので彼に敬意を抱き、教えを受ける弟子たちも多くいたのである。帝国のトレジャーハンター達には負けないと息巻いてすらいたし、勝算もあったが、彼らは負けた。

 

「『千変万化』……それにシトリー・スマート……恐ろしい敵だ。ともかく、帝国より逃げるぞ。我らの手には負えん」

 

「逃されたのは屈辱ですが……そうですね」

 

「いずれ、この屈辱を晴らしてみせます」

 

 特にクライ・アンドリヒとシトリー・スマートの実力に恐れおののきながら、撤退の準備を帝国内に用意した隠れ家にて始めていた。

 

 そして……。

 

「師匠、今戻りました」

 

 隠れ家にノト一派においては新参者であるが、ノトの一番弟子に僅かの間に上り詰めた優秀な女性であるソフィアが入った。

 

 

「おお、帰ったかソフィア」

 

 ノトが笑みを浮かべながら迎え入れようとして更にもう一人、入って来たのを見る。

 

「お初にお目にかかります。『大賢者』ノト・コクレア殿、そしてその弟子の皆さん。知っているとは思いますが、僕はクライ・アンドリヒ。『千変万化』と人からは呼ばれています」

 

 

 クライがソフィアに続いてノト達の隠れ家に入り、自己紹介をしながら礼をした。

 

「せ、『千変万化』……ソフィア、貴様、裏切ったかぁぁっ!!」

 

 フリックが怒りを露にクライ達に向けて炎の魔法を放つ。しかし……。

 

「礼儀を尽くしているのに随分な挨拶だね」

 

「っ、魔力障壁だとぉ!?」

 

 クライは自身が有する莫大な魔力を噴出し、それを障壁とする事でフリックの魔法を防いだ。

 

「さて、さっき彼女の事を裏切ったと言ったけどそれは誤りだよ。そもそもソフィアですらない」

 

「師匠、今までお世話になりました、貴方の技術は本当に素晴らしかった。その弟子であるフリックさん達もです」

 

 クライの言葉に合わせてソフィアは髪の毛を掴み、下に引っ張る。そうして露になったのは短いピンクブロンドの髪、そして……。

 

 

 

「シトリー・スマート……」

 

 ソフィアの正体が実はシトリーであった事でノト達は愕然とし、違和感を抱いていたものが全て解消された。

 

「ノト・コクレア殿。貴方が帝国に身を潜ませていたのは僕達にとっては幸運でした。おかげでシトリーが弟子入りする事が出来、貴方達の技術を学び、研究にも関われたのですから……本当はもっと、シトリーには学ばせたかったのですけどね。まあ、何事も全部上手くいくわけはないということですね」

 

「レベル8のハンターが、大手のクランマスターが自分の仲間に禁忌を犯す事を許可したというのか。馬鹿な……」

 

「魔法も錬金術も追求すればするほど禁忌に触れるものですし、シトリーは僕のために尽くしてくれている。程度にもよるけど、一般人に被害を及ぼすような一線を越えないのなら見逃しますよ。僕は彼女を愛していますし、受け入れていますからね」

 

「ありがとうございますクライさん。私の全ては貴方の為に」

 

 クライにシトリーは至福の笑みを浮かべながら、寄り添った。

 

「……そして、僕はシトリーから貴方の元に弟子入りする事は聞いていましたが、それ以降の事は聞いていません。他の誰かに聞かれたり、嘘を暴く宝具である『真実の涙(トゥルー・ティアーズ)』を使われた時にしらばっくれるのが難しいですからね」

 

「……ならばなぜ【白狼の巣】に」

 

「それは僕達にとっても予想外でしたよ。ロドルフの遭難救助をしなくちゃいけないし、レベル5の彼が遭難する事態なら異変があると思うのは当然の事でしょう。だから、関わらざるを得なかった。そして、切っ掛けがあったから貴方達が暗躍していると分かったんです」

 

「やはり、早計であったか……」

 

 ノト達が【白狼の巣】に入ったロドルフを襲ったのは別の支部より、圧力をかけられてしまったからである。

 

 

 

「知ってしまったのなら、クランマスターとしては対処をしなければならない。帝国の騎士とも探協とも良い関係を続けていますしね。本当ならそっちが対応できないように行動するべきでしたが、それはもったいないと思った」

 

「そう……師匠、クライさんは優しい方です。研究者にとって研究成果を見られないのは無念な事ですから成果を確かめられるようにしてくれました」

 

「……マッチポンプだと……く、狂ってる」

 

 クライの言葉を継いだシトリーの言葉を聞き、ノトはクライとシトリーの二人に思った事をそのまま言った。彼の弟子も異常者を見るような目で見ているし、絶句していた。

 

「結果は本当に素晴らしかったな。僕のクランメンバーと他のクランのトレジャーハンター達にガークさんを十分に追い詰める事が出来ていた。僕やシトリーが手を出さない未来、援護のタイミングをずらした未来では貴方達が勝っていたものもあったほどだ」

 

「死者を出さないように私も色々調整しましたしね」

 

『……』

 

 二人の更なる言葉を聞いて只々、呆然とするノト達。

 

 

 

「そう、貴方達は実に僕達に多くの物を与えてくれた。貴方達の研究は僕達が継ぎ、有効利用しますよ。そして、ハンターの皆に死闘を経験させてくれた事で成長への切っ掛けをくれました。もしかすれば、潰れる者もいるかもしれませんがそれはそれで仕方ない。時には篩にかける必要もある……そして貴方達を捕らえる事で帝国に貢献する事でクランとしての名声も上がる。ああ、貴方達は本当に良い糧になってくれた。感謝しますよ、心から」

 

 クライは自分の気持ちを告げながら、シトリーと共に【嘆きの亡霊】のシンボルである笑う骸骨の仮面を被った。

 

「お、おのれぇぇっ!!」

 

 ノト達はクライに魔法を使おうと身構え、詠唱を開始するが……。

 

 

「■」

 

 クライは右手を向けながら、多重の言葉が重なり人の声とは思えないそれを口から紡ぐ。

 

 そして……。

 

「なっ、ぐ、こ、これは重力魔法!? しかも、何ださっきの詠唱は」

 

 ノト達は重力魔法によって床に沈んでしまい、動けなくなった。

 

 

 

「詠唱なんて頭の中ですれば良いし、長い詠唱なら束に纏めてしまえば省略できるでしょう?」

 

 そう、クライの異常な詠唱は重力魔法の長い詠唱を束に纏めてかなりの省略をしたからである。

 

「……そ、そんな事が出来……」

 

「ふふ、師匠。クライさんは血は繋がっていませんが『万象自在』のルシアちゃんの兄ですよ。魔導士としての実力は彼女よりも上です」

 

『ぁぁぁ……』

 

 魔導士の中でも名高い者の名が出た事でノト達は重力魔法の影響を受けている中で絶望する。

 

「さて、最後にもう一つ……数年前に重罪を犯したハンターに魔導士を収容する難攻不落のサウスイステリア大監獄で起きた集団脱獄事件がありましたよね。当時の看守や捜査官などが記憶を弄られている形跡があって、それは『アカシャの塔』の仕業という事になりましたが」

 

「……ま、まさか……」

 

「ええ、それも俺達です。もっともそれはシトリーが独断でやった事ですよ。僕は記憶を弄ってフォローしただけです。愛する者の為なら僕は喜んで手を汚しますよ」

 

 只々、異常者染みた告白にノト達は何も言えなくなる。化け物を見たような反応で恐れすら抱いた。クライは懐から特殊な紋様が刻まれた手袋を取り出し、右手に装着した。

 

 「これは『記憶の手袋(メモリー・ハンド)』……記憶の制御が色々難しいし、下手をすれば相手を廃人にしかねないませんが上手く使えば高度な記憶操作が出来るし、勿論、記憶を見る事も出来る。安心してください、痛みは一瞬ですよ」

 

「こ、この悪魔めぇぇぇぇっ!!」

 

「酷い言い草だ」

 

 笑う骸骨の面と自分の頭へと伸びる手袋を見ながら自分達はとんでもない存在に目を付けられてしまったのだと恐怖しながらの叫びにクライは苦笑染みた声を出すのであった……。

 

 

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