十五話
『アカシャの塔』帝国支部を担当していたノト・コクレアの暗躍はクライとシトリーの手により、終わりを迎えた。
その身柄に実験の成果など騎士団に委ねたクライとシトリーもそうだが、ノト一派が主な活動拠点として使っていた宝物殿の【白狼の巣】の調査に協力したトレジャーハンター達にも報奨金は贈られた。
とはいえ、今回は押収した資材も多くあるし、国が依頼した一件なので関係者を集めての報酬の見直しを行うための合議を【始まりの足跡】のクランマスターであるクライとノト一派を捜査していたシトリー、探索者協会帝都支部長のガークに副支部長のカイナと帝都支部職員の数人、国営組織であり、宝物殿関連の研究や事件を取り扱う遺物調査員のメンバー、都内の治安維持を担当する第三騎士団のメンバーで行う事になった。
場所は探索者協会帝都ゼブルディア支部だ。ノト・コクレアの違法実験の報酬と後始末について話し合っており……。
「最後に後回しにしていた資料以外の押収物についてだ」
そうして合議の場となっている部屋にいる者達の机にリストが回され……。
「……ねぇ、この『マリスイーター』と『アカシャゴーレム』を買い取らせてくれない?」
リストの品物を見ながら、その中にあった『マリスイーター』と『アカシャゴーレム』の買取を申し出た。
「なんのつもりだ? ゴーレムはまだ分かる。動かし方は不明だが、あの強大な力を持った代物には興味も湧くだろう。だが、どうしてマリスイーターを欲しがる?」
「このマリスイーターは幼体なんだろう? なら、今のうちに躾ければ良い番犬になるし、クランメンバー達への良い鍛錬相手にもできるからね。それに成体は中々強かったと聞く。引き取れるのは僕達くらいだと思うよ」
司会である調査員の質問にクライは答えた。
「クライの言う通り、見つかったのは幼体だが危険なキメラだ。クライに引き取ってもらった方が良いだろう」
「……そうだな、マリスイーターはうちでも持て余しているし、好事家に買い取られて面倒な事になるくらいなら引き取ってもらう方が良いか」
クライの意見にガークが賛同し、司会役も頷いた。マリスイーターの引き取りは認められたが、ゴーレムの方は他の機関からも引き渡し要求があるのでこの場では決められないと言われた。
そうして合議も終わり……。
「クライ、お前『
「ええ、知ってますよ。レベル7のトレジャーハンターであるアーノルド・ヘイル。霧の国の宝物殿を攻略し、更には雷竜を殺した『竜殺し』達成者。パーティの者達と共に最近、この帝都に来たようですね」
「はは、流石の情報網だな……それに余裕だ」
「こっちはレベル8だし、竜より大物を倒した事もありますからね」
「がっはっは、それもそうだな。なら、アーノルドたちが面倒を起こしたときはよろしく頼むぞ」
「僕達もそうだったのであまり言えませんが、ここに入ったばかりのトレジャーハンターは大抵、存在感や力を示すために暴れたりしますからね。まあ、臨機応変に対応しますよ」
「それで良い」
そんな話をガークと交わした後、シトリーがマリスイーターの幼体がいるケージを抱えてクライに近づいて来た。
「仕方ありませんが、ゴーレムは引き取れませんでしたね」
「まあ、価値はかなりあるからね。でも手に入れるチャンスは巡ってくると思うよ。あれは『アカシャの塔』にとっても重要なものだ。なら、絶対に裏から手を回すだろう。そして、ひとまずは公的に手に入れられる場に出すようにする」
「……なるほど、『ゼブルディアオークション』ですね」
ゼブルディアでは一年に一度、国主導で一週間に渡って開催される大規模な競売がある。国内外から大勢の商人にトレジャーハンター、観光客が訪れて連日連夜、お祭りのような賑わいを見せるのである。
競売対象の多くは『宝具』であるが、他の錬金術による代物やら魔導書やら色々と持ち込まれるのだ。
クライは『アカシャの塔』はノト達(シトリーも関わっているが)が作ったゴーレムを手に入れられるため、繋がりのある権力者などに要求してまずはオークションに出品させるだろうと推理しており、シトリーも納得する。
「そういう事……だから、オークションに向けて金を集めるとしよう」
「はい」
ゴーレムを買い取るべく、クライは金を集めるために動く事とするのであった……。