≪霧の雷竜≫のリーダーである認定レベル7の≪豪雷破閃≫ことアーノルド・ヘイルと自分のクランハウス内で決闘し、勝利した事で酒場での因縁にケリを付けたクライはオークションに備えて金稼ぎと自身もオークションに出す用の宝具を収穫するため、動き出した。
探索協会での依頼において、クライが溜まりに溜まった『罰ゲーム』に属する依頼を何度も解決していたり、探索協会に積極的に協力していたり、ガークの姪であるクロエの面倒を見ている等、多くの要因があってクライの元に優先的に探索協会は大口の依頼を回してくれるのである。
「良し、いけマリ。スライム」
『ナァァァッ!!』
とある地にて蔓延っていた魔物の群れをクライはマリとスライムと共に討伐していき……。
『ガアアアアッ!!』
魔物の主がクライへと襲い掛かり……。
「残念」
クライが向かってきた魔物の主へと剣を一閃すればそれは距離すら殺す、斬の絶技であり、間合いに踏み込む必要なく、魔物の主を斬断した。
「良し、じゃあ次は宝物殿だ」
『空間の腕輪』を使用する事でクライは数日をかけて、幾つかの認定レベル6の宝物殿を攻略し、複数の『宝具』を収穫して帝都ゼブルディアへと帰還する。
「さてと……」
本来、宝具は起動しない限り、効果は分からないものでだからこそ、専門の鑑定士に鑑定してもらう必要がある。
だが、クライは鑑定料も馬鹿にならないと自力で鑑定のための知識と技術を身に着けた。
クランハウス内にある宝具鑑定の施設で収穫した宝具を鑑定していく。
「お、今回はどれも当たりだな」
今回はどれもが当たりであったため、その中でも一番使える物は自分で使うようにして、残りはオークション品、あるいは馴染の宝具店『マギズテイル』に売る事にする。
クライはそうして、オークションでどんな宝具が出品されているのかを知るために『マギズテイル』に向かう。
どうしてもついて行きたい、ご一緒したいと言ったリィズとティノと一緒にだ。
「マーチスさん、この宝具は――の宝具だよ」
「お前くらいだ、トレジャーハンターでありながら優秀な鑑定士なのは……本当にこの時期、忙しいから手伝ってくれんか?」
「僕も金を稼ぐので忙しいから、手伝うのは少しになるよ」
「構わんよ」
クライが鑑定士としても優秀であるのを知っている白く染まった髪に皺の刻まれた顔つきの老人、マーチスはクライにヘルプを頼み、クライは少しなら手伝う事を約束した。
そうして、クライはオークションで出品される宝具を見る許可を得て、手袋をして宝具を見ていく。
「(これだ、これなら良い感じにゴーレム狙いを隠すための品に出来る)」
人の顔面を剥ぎ取って肉を晒したような顔の仮面を手に取り、クライはこれをオークションの時、ゴーレムを買うのが本命だが、それを隠すための囮に使えそうだと思考した。
そうして、クライ達が『マギズテイル』から戻るとクランハウスの前に大型の馬車が止まっていた。黒く磨かれた馬車で黒い毛色の立派な体格の馬が引くようである。
車体には交わる三本の剣の紋章が刻まれていた。
「おや、グラディス家とは珍しいな」
「え、あのハンター嫌いのですよね?」
グラディス伯爵――ゼブルディアの力ある貴族の一人でゼブルディアの『剣』と称されるほど、長きに渡って帝国を守って来た武家だ。
所有する領地はそこまで広くないが、領内に多くの宝物殿を擁し、配下の騎士団を定期的に送り込む事でハンター顔負けの強力な兵を多く持っていた。
クライはルークとリィズの性格上、どう考えても面倒をかけてしまうのでパーティとしては関わってないが、グラディス家と懇意であるアークを通じて当主と何度か会っていたりする。
「お見送り、ありがとうございました。エクレール様、グラディス卿によろしくお伝えください」
「うむ、気にする事は無い」
クランハウス内のエントランスの扉が開き、アークと白いドレスで金髪、腰に装飾過多な短剣を佩いた少女が現れる。
「やあ、アーク。帰ってきていたんだね」
「ああ、クライ……ってもしかして、宝物殿に行ってたのかい?」
「レベル6の宝物殿を幾つかね」
「なるほど……」
「……」
クライに言葉をかけられたアークは高密度のマナ・マテリアルを吸収した事で本人は全く意識すらしていないが、魔性の美に拍車がかかっており、初めてそれを目にし、完全に見惚れてしまっているグラディス伯爵の娘、エクレールの様子を頭を抱えて溜息を吐く。
「グラディス家の方ですね、お初にお目にかかり、光栄です。僕はこの≪始まりの足跡≫のクランマスターをしているクライ・アンドリヒ、以後お見知りおきを」
「……は、はい……えっと、わ、私はエクレールです……よ、よろしくお願いします」
エクレールはクライの美と礼儀としての仕草にやられてしまっており、普段意識して使っている口調を使わず、素の口調で名乗りながら、頭を下げる。
「こちらこそ」
そうして、クライはアークと共にクランハウスを馬車で去るエクレールを見送ったのであった……。