今日の帝都ゼブルディアは普段より大勢の人で賑わっていた。
それは今日、一年に一度、国主導で一週間に渡って開催される『ゼブルディアオークション』の開催日であるからだ。
主たる通りには賑わう客足を見込んで幾多もの露店が立ち並んでいるし、本命のオークションにかこつけ小規模なオークションがそこかしこで開かれている。
探索者協会は依頼で溢れ、商人にとってもハンターにとっても稼ぎ時になるのだ。
そんな『ゼブルディアオークション』にクライ達も参加する。そのために金を稼いできたし、オークションの出品物も用意した。
しかして実は別にクライは金を稼がなくとも問題なくらいの個人資産はある。
十二桁に届こうとしているほどである。とはいえ、クライはそれを自分だけでなく、皆の為に使いたいからこそ稼げるときに稼ぐのだ。
「十分、オークションで戦えるくらいの軍資金は集まったね。後は出品した物がなるべく高く売れるともっと良いけど」
「えへへ、そうだねクライちゃん」
「きっと、上手くいきますよ」
「ますたぁのやる事ですしね」
「そうそう、クライさんは本当に凄いですから」
クライの言葉に一緒にオークション会場に行くリィズとシトリー、ティノとクロエらが意見を言う。
「(後はあの仮面が安く売れる事を願うしかない)」
クライが今回、オークションで目当てにしているのはノト・コクレアとシトリーが共同で作り出した『アカシャ・ゴーレム』である。
当然、ノト・コクレアが作ったものを逃す訳にはいかないと『アカシャの塔』も介入してくる事は簡単に予想できたので大金を用立てたのだ。
更に『アカシャの塔』の目を欺くべく、クライは目的の物とは違う物を買おうとしているという噂をばら撒いた。それは効果を奏し、色んな貴族やトレジャーハンターがオークションが始まる前に出品物である宝具の仮面を求めだした。
そこまでは良かったのだが、この仮面のオークションにグラディス伯爵の娘であるエクレールまで参加を表明してしまった。
どうにもならないのでともかく、願うは仮面の金額が安く済む事を願うばかりである。
因みに未来予知をする事で顔面の皮を剥ぎ取ったような外見の仮面は相当に価値のある物だと確認はしている。まあ、仮面の価値を知るには深く仮面と関わらなければならないので今は不気味な仮面でしかない。
ともかく、クライはオークションに参加し……。
『十億六千万ギールでの落札です』
代理人をティノに任せつつ、クライはアカシャ・ゴーレムを競り落としてみせた。
目的を果たしたのでクライは自分が出品した宝具が中々の金額で競り落とされたのを見つつ、仮面のオークションがどうなるかを見物する事にすると……。
『二億ギールで落札です』
「(二億で済んだか……)」
肉の仮面をエクレールは二億ギールで競り落としたのに安堵する。無論、仮面の価値はそれよりも遥か高いものであると確認しているからだ。
こうして、すぐにクライはグラディス家に対して必要な事をするための準備を始めていくのであった……。