幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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武器を使いこなすには、技も大事だが基礎の肉体も大事!


第16話 武器を使うために

翌日。

悠は紅魔館の門前に立っていた。

昨日、美鈴から言われた言葉を思い出す。

まずは身体を作る。

銃もナイフも、それを扱う身体がなければ意味がない。

紅霧異変では、レミリアに距離を詰められた瞬間に何もできなかった。

昨日の咲夜との模擬戦でも同じだった。

武器を使う技術だけでは、近距離で戦うことはできない。

「おはようございます、神代さん」

門の前に立っていた美鈴が声をかける。

「おはようございます、美鈴さん。今日からお願いします」

悠が頭を下げる。

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

美鈴は笑いながら門の横にある広場へ悠を案内した。

「昨日、身体の状態は確認しましたよね」

「はい」

「今日はそこから始めましょう」

美鈴が悠の前に立つ。

「まずは身体を温めます。いきなり動くと怪我をしますから」

「分かりました」

軽く身体を伸ばし、肩を回す。

その後、足を動かしながら身体を温めていく。

「では、始めましょう」

最初に始まったのは腕立て伏せだった。

「昨日より少し増やします」

「……昨日より?」

「はい」

美鈴は笑った。

悠は黙って地面に手をつく。

一回。

二回。

三回。

最初は問題なかった。

しかし、回数が増えるにつれて腕が重くなっていく。

「背中を真っ直ぐに」

美鈴の声が飛ぶ。

悠は姿勢を直す。

「そのままです」

さらに続ける。

腕が震える。

それでも止めない。

「最後までやり切りましょう」

「……はい!」

何とか終えると、今度は腹筋。

その次はスクワット。

さらに走り込み。

短い距離を何度も往復し、途中で急停止して方向を変える。

ただ走るだけではない。

身体を止める。

向きを変える。

再び動き出す。

それだけで、悠の足はどんどん重くなっていった。

「……はぁ……はぁ……」

「まだまだですよ」

美鈴は平然としている。

「これが体術の修行なんですか?」

「これも修行ですよ」

美鈴が笑う。

「身体を自由に動かすためには、まず身体を鍛えなければいけません」

悠は息を整えながら立ち上がる。

「次は何を?」

「次は、身体の使い方です」

美鈴が構える。

「今度は私の動きを真似してください」

美鈴が一歩前へ出る。

悠も同じように動く。

右へ。

左へ。

前へ。

後ろへ。

身体を捻り、再び前へ出る。

動きそのものは難しくない。

しかし、悠が美鈴と同じ動きをしようとすると、すぐに足が絡まる。

「力を入れすぎです」

「……」

「身体を固めると動きが遅くなります」

美鈴が悠の肩を軽く押す。

「もっと力を抜いて」

「こうですか?」

「そうです」

もう一度。

今度は少しだけ身体が動く。

「今の感覚を忘れないでください」

「はい」

何度も繰り返す。

少しずつ、悠の動きが変わっていく。

これまでの悠は、攻撃するときも避けるときも、身体全体に力を入れていた。

銃を構える。

狙う。

撃つ。

それだけに集中していた。

だが、戦いでは銃を構えながら動かなければならない。

撃ったあとに移動する。

避けながら次の攻撃へ繋げる。

そのためには、身体を固めてはいけない。

「神代さん」

「はい」

「今度は、私の攻撃を避けてみましょう」

「もう実戦ですか?」

「まだ実戦ではありません」

美鈴は笑った。

「これは身体を動かす練習です」

美鈴がゆっくりと拳を出す。

悠は横へ避ける。

次の拳。

今度は反対側へ。

さらに一歩。

また一歩。

最初は何とか避けられる。

しかし、美鈴が少しずつ速度を上げると、悠の足が追いつかなくなる。

「っ……!」

拳が肩に触れた。

「今のは避けられましたね」

「最後は当たりましたけど」

「でも、最初よりずっと良いです」

美鈴は笑う。

「昨日までなら、後ろへ下がることしかできなかったでしょう」

悠は驚いた。

確かにそうだった。

紅霧異変の時も、咲夜との模擬戦でも、攻撃が来れば距離を取ろうとしていた。

横へ逃げる。

斜めへ動く。

攻撃を受ける前に位置を変える。

そんな当たり前の動きすら、今までの自分にはできていなかった。

「避けるって、こんなに難しいんですね」

「そうですよ」

美鈴が頷く。

「でも、避けられるようになれば、銃を撃つ時間も作れます」

「……!」

悠が顔を上げる。

「銃を撃つために、避ける」

「その通りです」

「ただ逃げるんじゃなくて、次の攻撃に繋げる」

「それが神代さんの戦い方になるでしょう」

悠は銃を持っていない自分の手を見る。

今まで銃を強くすることばかり考えていた。

弾幕の種類を増やす。

特殊弾幕弾を作る。

マガジンを改良する。

もちろん、それも必要だ。

しかし、それだけでは足りない。

銃を撃つための位置を自分で作る。

そのために身体を動かす。

「……少し分かってきました」

「それなら、今日はここまでにしましょう」

「え?」

悠は驚いた。

「もう終わりですか?」

「はい。初日から無理をしすぎると、明日動けなくなりますから」

美鈴は笑う。

「明日もありますよ」

「……明日も」

「もちろんです」

悠は疲れ切った身体を伸ばす。

腕も足も重い。

それでも、不思議と嫌な疲れではなかった。

昨日まで知らなかったことを、少しずつ身体が覚えている。

「明日もよろしくお願いします」

「はい」

美鈴が頷く。

「明日からは、もう少し実戦に近づけていきましょう」

「実戦……」

悠の表情が変わる。

「銃も使いますか?」

「もちろんです」

美鈴は笑った。

「せっかく鍛えるんですから、神代さんの武器も一緒に使えるようにしていきましょう」

悠は頷いた。

「お願いします」

紅魔館の門を後にしながら、悠は自分の手を握りしめる。

銃。

ナイフ。

そして体術。

これまで別々だったものが、少しずつ一つに繋がろうとしていた。

本当の意味で自分の戦い方を作るための修行は、まだ始まったばかりだった。

 




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月日は流れていく〜
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