幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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今回はチルノ修行です!


第18話 氷の剣

「チルノは、どんな修行をしてたんだ?」

 悠にそう聞かれた時、チルノは少しだけ考えた。

「どんなって……」

 チルノは後ろを振り返る。

 今まで過ごしてきた紅魔館。

 そして、その中で自分を鍛えてくれたレミリアの姿を思い出す。

 ――あの日。

 悠と一緒に紅魔館へ修行をお願いした。

 悠は咲夜と美鈴。

 そして自分は、レミリアに教えてもらうことになった。

 最初は、それだけで十分だと思っていた。

 自分には氷の力がある。

 弾幕だって使える。

 紅霧異変でも戦った。

 だから、もっと力を出せるようになればいい。

 そんな風に考えていた。

 けれど――。

「じゃあ、まず攻撃してみなさい」

 レミリアに言われ、チルノは構えた。

 目の前にいるのは、紅魔館の主。

 紅霧異変で自分たちと戦った相手でもある。

 チルノは冷気を集める。

「いくよ!」

 足元から氷が伸びる。

 氷の弾幕が一気に生まれ、レミリアへ向かって飛んでいく。

 レミリアは動かない。

 迫ってくる氷の弾幕を、身体を僅かに動かすだけで次々とかわしていく。

 チルノはさらに弾を増やした。

 左右から挟み込むように氷を放つ。

 上からも降らせる。

 逃げ道を塞ぐように弾幕を広げる。

 それでも――。

 レミリアは簡単に抜けてきた。

「……まだ!」

 チルノが腕を振る。

 冷気がさらに強くなる。

 氷の弾幕がレミリアの周囲を埋め尽くす。

 だが、レミリアはその隙間を縫うように進んでくる。

 そして――。

 気がつけば、目の前にいた。

「え……?」

 レミリアの指が、チルノの額に軽く触れる。

「はい、終わり」

「……」

 チルノは固まった。

「今のが本気?」

「……本気」

「そう」

 レミリアはチルノの周囲を歩く。

「弾幕の威力は悪くないわ」

 チルノは少しだけ胸を張る。

 しかし、次の言葉で表情が変わった。

「でも、攻撃を始めるまでが遅すぎる」

「……遅い?」

「ええ」

 レミリアがチルノを見る。

「あなたは攻撃する前に、どう攻撃するかを考えすぎている」

 チルノは黙った。

「それに――」

 レミリアが目を細める。

「あなたは優しすぎる」

「……あたいが?」

「そうよ」

 意外な言葉だった。

「相手を傷つけたくない。できるだけ綺麗に勝ちたい。そんな気持ちが、無意識に動きを鈍らせている」

 チルノは自分の手を見る。

 紅霧異変の時もそうだった。

 自分は必死に戦っていた。

 それでも、最後には悠に助けてもらった。

 自分の力だけでは、レミリアたちに届かなかった。

「この先も異変に関わっていくつもりなら、その考えは捨てなさい」

 レミリアの言葉は静かだった。

「戦うことを楽しめと言っているわけではないわ」

 チルノは顔を上げる。

「ただ、戦うと決めた瞬間くらいは迷わないこと」

「……分かった」

 チルノは拳を握った。

「もう一回やる」

「いいでしょう」

 そこから、チルノの修行が始まった。

 まずは自分の力を知ること。

 どれだけの氷を作れるのか。

 どれだけの速度で動かせるのか。

 どれだけ細かく形を変えられるのか。

 レミリアは何度もチルノに攻撃させた。

 そして、そのたびに弱点を指摘した。

 弾幕を広げすぎれば、力が分散する。

 一度に大量の氷を動かせば、動きが鈍る。

 威力だけを上げても、当たらなければ意味がない。

 チルノは何度も失敗した。

 放った氷が狙いから外れる。

 勢いをつけすぎて制御できなくなる。

 逆に慎重になりすぎて、攻撃のタイミングを逃す。

「……難しい」

 床に座り込み、チルノが息を吐く。

「当然でしょう」

 レミリアは紅茶を飲みながら答える。

「今まで感覚だけで使っていた力を、意識して扱おうとしているんだから」

「感覚だけ……」

「あなたは氷を作ること自体は得意。でも、作った後のことをあまり考えていない」

 チルノは少し考える。

 確かにそうだった。

 氷を作る。

 飛ばす。

 当たれば勝ち。

 今までは、それだけだった。

「じゃあ、どうすればいいの?」

「もっと細かく考えなさい」

 レミリアが立ち上がる。

「氷を作るだけじゃない。形、大きさ、硬さ、速度。全部あなた次第よ」

 チルノは立ち上がった。

「やってみる」

 手を前へ伸ばす。

 小さな氷が生まれる。

 丸い形。

 それを細くする。

 さらに伸ばす。

 冷気を集める。

 氷の形が変わっていく。

 しかし――。

 パキッ。

 途中で崩れた。

「……失敗」

「もう一度」

「うん」

 何度も繰り返す。

 崩れる。

 作り直す。

 また崩れる。

 それでも続ける。

 やがて――。

 チルノの手の中に、一本の氷が形を持ち始めた。

 細長い刃。

 剣のような形。

「……剣?」

 チルノ自身が驚く。

 レミリアが目を向ける。

「面白いじゃない」

「これ……使えるかな?」

「試してみればいいでしょう」

 チルノは両手で氷の剣を握った。

 少し重い。

 それでも、今まで作った氷とは違う。

 冷気を一点に集めているからか、かなりの硬さがある。

 チルノはその剣を振った。

 空気が切れる。

「……これなら!」

 チルノの顔が明るくなる。

「近くでも戦える!」

「名前は?」

 レミリアが尋ねる。

「名前?」

「あなたが作った武器でしょう?」

 チルノは少し考えた。

 そして――。

「【アイシクルソード】!」

 それが、チルノの新しい戦い方の始まりだった。

 氷で作った剣。

 硬さは十分にある。

 弾幕だけではなく、接近戦でも戦える。

 チルノは何度もレミリアへ挑んだ。

 走る。

 踏み込む。

 剣を振る。

 レミリアが避ける。

 追いかける。

 また振る。

 少しずつ、動きが変わっていった。

 以前のチルノなら、相手が近づけば距離を取ろうとしていた。

 今は違う。

 自分から距離を詰める。

 弾幕で相手の動きを制限し、アイシクルソードで懐へ入る。

「いいわね」

 レミリアが攻撃をかわす。

「その戦い方なら、あなたの弾幕も生かせる」

「でしょ!」

 チルノが笑う。

 さらに踏み込む。

 剣を振り下ろす。

 レミリアが腕で受ける。

 ――パキンッ!

 鈍い音が響いた。

「……え?」

 チルノの手元を見る。

 アイシクルソードに大きな亀裂が入っていた。

 そして――。

 パキィンッ!

 氷の剣が折れた。

「……」

 チルノの動きが止まる。

 折れた剣を見る。

 新しい剣を作ろうと冷気を集める。

 その瞬間。

 レミリアが目の前に現れた。

 チルノの肩へ、レミリアの手が触れる。

「終わり」

「……また」

 チルノが悔しそうに呟く。

「そうね」

 レミリアは折れた剣を見る。

「剣を作ることはできる。でも、剣を折られた瞬間に動きが止まっている」

「……」

「そこが今のあなたの弱点よ」

 チルノは何も言えなかった。

 新しい剣を作ることはできる。

 けれど、その一瞬を相手に狙われれば終わる。

「じゃあ、どうすればいいの?」

 レミリアは答えず、床に落ちたアイシクルソードの破片を見た。

「考えなさい」

「……自分で?」

「ええ」

「分かった」

 チルノは折れた剣を拾い上げる。

 冷たい氷が手の中で砕ける。

「絶対に、できるようになる」

 レミリアはその言葉を聞いて、小さく笑った。

「その意気よ」

 チルノは再び冷気を集める。

 新しいアイシクルソードを作り出す。

 そして――。

 またレミリアへ向かって走り出した。

 修行は、まだ終わらない。

 自分の弱点を乗り越えるために。

 そして、もう一度悠と並んで戦うために。

 チルノは何度でも、氷の剣を握り直した。




読んで頂きありがとうございます!
感想とかいただけるとモチベーションになります!
チルノも自分なりの戦闘スタイルを徐々に見つけてきましたね!
でもまだまだ課題がありそう……
このをどう乗り越えるか?
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