幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

19 / 23
アイシクルソード!
いい戦闘スタイルだけど、折れた時に立ちなおす時間がかかってしまう、
どう克服するのかな?



第19話 氷雪の嵐

 パキンッ!

 氷の剣が折れた。

「……っ!」

 チルノは反射的に足を止める。

 目の前には、折れたアイシクルソード。

 手元に残っているのは、半分になった氷の刃だけだった。

 レミリアは何も言わない。

 ただ、チルノの動きを見ている。

 チルノはすぐに冷気を集めた。

 新しい剣を作る。

 そのために意識を集中する。

 だが――。

「遅いわ」

 気づいた時には、レミリアが目の前にいた。

 チルノの肩に手が触れる。

「……負けた」

「ええ」

 レミリアは頷く。

「剣を折られた瞬間、また止まったわね」

「……分かってる」

 チルノは悔しそうに拳を握った。

「剣を作ることはできる。でも、作ってる間に攻撃されたら何もできない」

「そうね」

「だから、剣がなくても戦えるようにならないといけない」

 レミリアは少しだけ笑った。

「ようやく分かってきたじゃない」

 チルノは周囲を見る。

 床には、これまでの修行で折れたアイシクルソードの破片がいくつも落ちている。

「……剣が折れても、氷は消えない」

「その通り」

「だったら……」

 チルノは考え始めた。

 剣が一本しかなければ、折れた時に作り直す必要がある。

 なら、最初から複数の剣を用意しておけばいい。

 でも、それだけでは足りない。

 戦いながら次の剣を取り出せるようにする。

 さらに――。

 相手の動きを邪魔するためにも使えれば。

「レミリア」

「何?」

「いっぱい剣を作ってもいい?」

「あなたの力が続くならね」

「じゃあ、やってみる!」

 チルノが両手を広げる。

 冷気が一気に広がった。

 空気が白く染まっていく。

 一本。

 二本。

 三本。

 氷の剣が次々と生まれる。

 最初は数本だった。

 それが十本になり、さらに増えていく。

 空中に浮かぶ。

 床に突き刺さる。

 壁際にも並ぶ。

「……まだ増やせる」

 チルノはさらに力を込める。

 大量のアイシクルソードが周囲に浮かび上がった。

「これなら……!」

 チルノが一本を手に取る。

 レミリアへ向かって走る。

 振り下ろす。

 レミリアが避ける。

 横薙ぎ。

 避けられる。

 さらに踏み込む。

 レミリアが剣を受けた。

 パキンッ!

 アイシクルソードが折れる。

 ――以前なら、ここで止まっていた。

 しかし。

「まだ!」

 チルノはその場から離れる。

 すぐ横に浮かんでいた別の剣を掴む。

 振り向きざまに斬りつける。

 レミリアが後ろへ下がる。

「……いいわ」

 チルノは止まらない。

 一本が折れれば、次の一本。

 次も折れれば、その次。

 剣を失うことを恐れなくなっていた。

 それでも――。

 レミリアの動きは速い。

 チルノが剣を持ち替える隙を狙って、距離を詰めてくる。

「そこ!」

 レミリアの攻撃。

 チルノは身体を捻って避ける。

 そして、足元に突き刺さっていたアイシクルソードを蹴り上げた。

 空中で柄を掴む。

 そのまま振り下ろす。

「やるじゃない」

 レミリアが笑う。

「でも、まだ足りないわ」

「何が?」

「あなたは今、剣を持って戦っているだけ」

 チルノが動きを止める。

「剣が折れたら、次の剣を使う。それだけでは、最初の問題と大して変わらないでしょう?」

「……」

「武器を失った瞬間に攻撃へ繋げられるようになりなさい」

 チルノはもう一度周囲を見る。

 大量のアイシクルソード。

 それをただ置いておくのではなく――。

「剣そのものを攻撃に使えばいい」

 チルノが呟いた。

「そういうこと」

 レミリアが頷く。

 チルノは目を輝かせた。

「じゃあ、全部まとめて飛ばす!」

 冷気が一気に膨れ上がる。

 周囲に浮かんでいたアイシクルソードが一斉に空へ上がった。

「いけぇっ!」

 無数の氷の剣が降り注ぐ。

 床へ。

 壁へ。

 レミリアへ。

 レミリアは次々と飛んでくる剣を避ける。

 一本。

 二本。

 十本。

 さらにその数が増えていく。

 半径十メートルほどの範囲が、氷の剣で埋め尽くされていく。

 チルノの足元にも、無数のアイシクルソードが突き刺さっていた。

 冷気が周囲を包む。

「……これなら」

 チルノが一本の剣を握る。

 レミリアへ向かって走る。

 剣を振る。

 レミリアが受ける。

 パキンッ!

 折れた。

 しかし、チルノは止まらない。

 足元に落ちている別の剣を掴む。

 そのまま斬りかかる。

 レミリアが避ける。

 今度は後ろから氷の剣が飛んでくる。

 レミリアが横へ跳ぶ。

 そこへチルノが追いつく。

「まだまだ!」

 剣を振る。

 折れる。

 また別の剣を掴む。

 その動きに迷いはない。

 剣が折れることが、弱点ではなくなっていた。

 むしろ――。

 折れた場所から次の剣へ繋げられる。

「……完成ね」

 レミリアが呟く。

「え?」

「その技」

 レミリアは周囲を見渡す。

 大量の氷の剣。

 冷気に包まれた空間。

「名前をつけるなら?」

 チルノは少し考える。

 そして、胸を張った。

「【ソードブリザード】!」

 レミリアが微笑む。

「いい名前じゃない」

「でしょ!」

 チルノは嬉しそうに笑った。

 それからも、修行は続いた。

 ソードブリザードを使った状態での戦闘。

 弾幕で相手を牽制しながらアイシクルソードへ繋げる。

 剣が折れれば、落ちている別の剣を使う。

 それすら間に合わなければ、氷の弾幕で距離を取る。

 以前のチルノにはなかった戦い方が、少しずつ形になっていった。

 そして――。

 数ヶ月後。

 紅魔館の一室。

 チルノはレミリアの前に立っていた。

 手にはアイシクルソード。

 周囲には、いつでも使えるように数本の氷の剣が浮かんでいる。

「最後に一度だけ」

 レミリアが言う。

「本気で来なさい」

「うん!」

 チルノが駆け出す。

 弾幕を放つ。

 レミリアがかわす。

 チルノはそのまま距離を詰める。

 アイシクルソードを振る。

 レミリアが受ける。

 パキンッ!

 剣が折れた。

 しかし、チルノは止まらない。

 すぐに別の剣を掴む。

 さらにレミリアの背後へ、別のアイシクルソードを飛ばす。

 レミリアが避ける。

 その隙にチルノが踏み込む。

 レミリアが攻撃する。

 チルノは弾幕を使って距離を取る。

 そして――。

 周囲にアイシクルソードが浮かび上がる。

「【ソードブリザード】!」

 氷の剣が一斉に降り注ぐ。

 レミリアはその中を駆け抜ける。

 チルノも走る。

 剣が一本折れる。

 すぐに次を掴む。

 また折れる。

 それでも止まらない。

 最後の一撃。

 チルノが振り下ろしたアイシクルソードを、レミリアが受け止める。

 そこで、レミリアが手を離した。

「そこまで」

 チルノは息を切らしながら立っていた。

「……どう?」

「合格よ」

 その一言を聞いた瞬間、チルノの顔が明るくなる。

「やった!」

 レミリアは微笑む。

「最初に比べれば、ずいぶん変わったわね」

「うん!」

「もう、剣を折られることを怖がる必要はないでしょう」

 チルノは自分の手を見る。

 そこには、何度も作っては折れてきた氷の剣がある。

「これで……悠と一緒に戦える」

「ええ」

 レミリアが頷く。

「きっと驚くわよ」

「ほんと?」

「あなたがここまで頑張ったんですもの」

 チルノは嬉しそうに笑う。

「早く会いたいな」

「ふふっ」

 レミリアが小さく笑う。

「大好きな人に見せるために、頑張った甲斐があったわね」

「だから、悠とはそういうんじゃないってば!」

 チルノが顔を赤くする。

「はいはい」

 レミリアは楽しそうに笑った。

「それじゃあ、帰る準備をしなさい」

「うん!」

 チルノは大きく頷いた。

 そして、紅魔館の扉へ向かって走り出す。

 その先には――。

 数ヶ月ぶりに会う、親友の姿が待っている。

 チルノは知らない。

 この修行を終えた二人を待っているのが――。

 新たな異変だということを。




読んで頂きありがとうございます!
感想とかいただけるとモチベーションになります

異変の予感……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。