いい戦闘スタイルだけど、折れた時に立ちなおす時間がかかってしまう、
どう克服するのかな?
パキンッ!
氷の剣が折れた。
「……っ!」
チルノは反射的に足を止める。
目の前には、折れたアイシクルソード。
手元に残っているのは、半分になった氷の刃だけだった。
レミリアは何も言わない。
ただ、チルノの動きを見ている。
チルノはすぐに冷気を集めた。
新しい剣を作る。
そのために意識を集中する。
だが――。
「遅いわ」
気づいた時には、レミリアが目の前にいた。
チルノの肩に手が触れる。
「……負けた」
「ええ」
レミリアは頷く。
「剣を折られた瞬間、また止まったわね」
「……分かってる」
チルノは悔しそうに拳を握った。
「剣を作ることはできる。でも、作ってる間に攻撃されたら何もできない」
「そうね」
「だから、剣がなくても戦えるようにならないといけない」
レミリアは少しだけ笑った。
「ようやく分かってきたじゃない」
チルノは周囲を見る。
床には、これまでの修行で折れたアイシクルソードの破片がいくつも落ちている。
「……剣が折れても、氷は消えない」
「その通り」
「だったら……」
チルノは考え始めた。
剣が一本しかなければ、折れた時に作り直す必要がある。
なら、最初から複数の剣を用意しておけばいい。
でも、それだけでは足りない。
戦いながら次の剣を取り出せるようにする。
さらに――。
相手の動きを邪魔するためにも使えれば。
「レミリア」
「何?」
「いっぱい剣を作ってもいい?」
「あなたの力が続くならね」
「じゃあ、やってみる!」
チルノが両手を広げる。
冷気が一気に広がった。
空気が白く染まっていく。
一本。
二本。
三本。
氷の剣が次々と生まれる。
最初は数本だった。
それが十本になり、さらに増えていく。
空中に浮かぶ。
床に突き刺さる。
壁際にも並ぶ。
「……まだ増やせる」
チルノはさらに力を込める。
大量のアイシクルソードが周囲に浮かび上がった。
「これなら……!」
チルノが一本を手に取る。
レミリアへ向かって走る。
振り下ろす。
レミリアが避ける。
横薙ぎ。
避けられる。
さらに踏み込む。
レミリアが剣を受けた。
パキンッ!
アイシクルソードが折れる。
――以前なら、ここで止まっていた。
しかし。
「まだ!」
チルノはその場から離れる。
すぐ横に浮かんでいた別の剣を掴む。
振り向きざまに斬りつける。
レミリアが後ろへ下がる。
「……いいわ」
チルノは止まらない。
一本が折れれば、次の一本。
次も折れれば、その次。
剣を失うことを恐れなくなっていた。
それでも――。
レミリアの動きは速い。
チルノが剣を持ち替える隙を狙って、距離を詰めてくる。
「そこ!」
レミリアの攻撃。
チルノは身体を捻って避ける。
そして、足元に突き刺さっていたアイシクルソードを蹴り上げた。
空中で柄を掴む。
そのまま振り下ろす。
「やるじゃない」
レミリアが笑う。
「でも、まだ足りないわ」
「何が?」
「あなたは今、剣を持って戦っているだけ」
チルノが動きを止める。
「剣が折れたら、次の剣を使う。それだけでは、最初の問題と大して変わらないでしょう?」
「……」
「武器を失った瞬間に攻撃へ繋げられるようになりなさい」
チルノはもう一度周囲を見る。
大量のアイシクルソード。
それをただ置いておくのではなく――。
「剣そのものを攻撃に使えばいい」
チルノが呟いた。
「そういうこと」
レミリアが頷く。
チルノは目を輝かせた。
「じゃあ、全部まとめて飛ばす!」
冷気が一気に膨れ上がる。
周囲に浮かんでいたアイシクルソードが一斉に空へ上がった。
「いけぇっ!」
無数の氷の剣が降り注ぐ。
床へ。
壁へ。
レミリアへ。
レミリアは次々と飛んでくる剣を避ける。
一本。
二本。
十本。
さらにその数が増えていく。
半径十メートルほどの範囲が、氷の剣で埋め尽くされていく。
チルノの足元にも、無数のアイシクルソードが突き刺さっていた。
冷気が周囲を包む。
「……これなら」
チルノが一本の剣を握る。
レミリアへ向かって走る。
剣を振る。
レミリアが受ける。
パキンッ!
折れた。
しかし、チルノは止まらない。
足元に落ちている別の剣を掴む。
そのまま斬りかかる。
レミリアが避ける。
今度は後ろから氷の剣が飛んでくる。
レミリアが横へ跳ぶ。
そこへチルノが追いつく。
「まだまだ!」
剣を振る。
折れる。
また別の剣を掴む。
その動きに迷いはない。
剣が折れることが、弱点ではなくなっていた。
むしろ――。
折れた場所から次の剣へ繋げられる。
「……完成ね」
レミリアが呟く。
「え?」
「その技」
レミリアは周囲を見渡す。
大量の氷の剣。
冷気に包まれた空間。
「名前をつけるなら?」
チルノは少し考える。
そして、胸を張った。
「【ソードブリザード】!」
レミリアが微笑む。
「いい名前じゃない」
「でしょ!」
チルノは嬉しそうに笑った。
それからも、修行は続いた。
ソードブリザードを使った状態での戦闘。
弾幕で相手を牽制しながらアイシクルソードへ繋げる。
剣が折れれば、落ちている別の剣を使う。
それすら間に合わなければ、氷の弾幕で距離を取る。
以前のチルノにはなかった戦い方が、少しずつ形になっていった。
そして――。
数ヶ月後。
紅魔館の一室。
チルノはレミリアの前に立っていた。
手にはアイシクルソード。
周囲には、いつでも使えるように数本の氷の剣が浮かんでいる。
「最後に一度だけ」
レミリアが言う。
「本気で来なさい」
「うん!」
チルノが駆け出す。
弾幕を放つ。
レミリアがかわす。
チルノはそのまま距離を詰める。
アイシクルソードを振る。
レミリアが受ける。
パキンッ!
剣が折れた。
しかし、チルノは止まらない。
すぐに別の剣を掴む。
さらにレミリアの背後へ、別のアイシクルソードを飛ばす。
レミリアが避ける。
その隙にチルノが踏み込む。
レミリアが攻撃する。
チルノは弾幕を使って距離を取る。
そして――。
周囲にアイシクルソードが浮かび上がる。
「【ソードブリザード】!」
氷の剣が一斉に降り注ぐ。
レミリアはその中を駆け抜ける。
チルノも走る。
剣が一本折れる。
すぐに次を掴む。
また折れる。
それでも止まらない。
最後の一撃。
チルノが振り下ろしたアイシクルソードを、レミリアが受け止める。
そこで、レミリアが手を離した。
「そこまで」
チルノは息を切らしながら立っていた。
「……どう?」
「合格よ」
その一言を聞いた瞬間、チルノの顔が明るくなる。
「やった!」
レミリアは微笑む。
「最初に比べれば、ずいぶん変わったわね」
「うん!」
「もう、剣を折られることを怖がる必要はないでしょう」
チルノは自分の手を見る。
そこには、何度も作っては折れてきた氷の剣がある。
「これで……悠と一緒に戦える」
「ええ」
レミリアが頷く。
「きっと驚くわよ」
「ほんと?」
「あなたがここまで頑張ったんですもの」
チルノは嬉しそうに笑う。
「早く会いたいな」
「ふふっ」
レミリアが小さく笑う。
「大好きな人に見せるために、頑張った甲斐があったわね」
「だから、悠とはそういうんじゃないってば!」
チルノが顔を赤くする。
「はいはい」
レミリアは楽しそうに笑った。
「それじゃあ、帰る準備をしなさい」
「うん!」
チルノは大きく頷いた。
そして、紅魔館の扉へ向かって走り出す。
その先には――。
数ヶ月ぶりに会う、親友の姿が待っている。
チルノは知らない。
この修行を終えた二人を待っているのが――。
新たな異変だということを。
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異変の予感……