主人公の名前書くの忘れてましたw
2話から主人公の紹介とか⑨かよ
あれ?
カエルが凍ってる(。・ω・)σ゛ツンツン
博麗神社を出てから、しばらく歩いていた。
先を行く霊夢の背中を追いながら、悠は未だに自分の置かれている状況を整理しきれずにいた。
幻想郷。
妖怪や妖精が存在し、弾幕ごっこなるものが日常的に行われている世界。
そして何より、目の前を歩いているのが博麗霊夢本人である。
ゲームの中で何度も見た姿が、今は数メートル先を普通に歩いている。
何とも不思議な光景だった。
「……ねえ」
「何?」
「幻想郷って、本当にあの幻想郷なんだよな?」
あまりにも馬鹿らしい質問だった。
それでも聞かずにはいられない。
霊夢は少しだけ振り返ると、怪訝そうに眉を寄せた。
「あの幻想郷って何よ」
「いや……何でもない」
「変な外来人ね」
そう言って、霊夢はまた前を向いた。
どうやら余計なことを言わない方がいいらしい。
悠は口を閉じ、周囲へ視線を向ける。
森の中を抜けるにつれて、少しずつ景色が変わってきていた。
木々の隙間から見える空は広くなり、遠くには山々が連なっている。
現代の日本では見たことのないような景色。
それなのに、不思議と嫌な感じはしなかった。
「人里までは、まだかかるのか?」
「そうね。歩いてればそのうち着くわ」
「そのうちって……」
「何よ」
「いや、結構歩いてる気がするんだけど」
「歩くのが嫌なら置いていくわよ」
「そういう意味じゃない」
霊夢は小さく鼻を鳴らした。
どうにも、この巫女は人の扱いが雑らしい。
もっとも、先ほど見た限りでは、自分を見捨てるような人間でもなさそうだった。
だからこそ、少しだけ気になった。
「霊夢」
「何?」
「俺みたいな人間って、結構いるのか?」
「外来人?」
「ああ」
「たまにいるわよ」
思ったよりもあっさりとした返答だった。
「幻想郷には、外の世界から迷い込んでくる人間がいるの。あんたもその一人ってことでしょうね」
「……帰れるのか?」
「さあ?」
「さあって……」
「私に聞かれても困るわよ」
霊夢は肩をすくめる。
「外の世界と幻想郷を自由に行き来できるわけじゃないもの。戻れる人もいれば、戻れない人もいる」
「そうか……」
思った以上に重い話だった。
帰れる。
帰れない。
その二つの可能性が、今の自分には同じくらい現実味を持っている。
家族。
友人。
今まで暮らしていた場所。
もう二度と戻れないかもしれない。
そう考えると、胸の奥が妙に重くなった。
「……落ち込んでる?」
「え?」
「顔に出てる」
「そんなに?」
「分かりやすいわよ」
霊夢は前を向いたまま続ける。
「まあ、今すぐ答えを出す必要はないんじゃない?」
「……」
「帰れるかどうかも分からないのに、今から悩んだって仕方ないでしょ」
「それは……まあ」
正論だった。
何も分からない以上、考え続けても答えなんて出ない。
まずは生きる。
そして、情報を集める。
それくらいしかできない。
「そういえば」
霊夢が突然足を止めた。
「ん?」
「まだ名前聞いてなかったわね」
「ああ……」
そういえば、まだ名乗っていなかった。
神社で会ったときは、それどころではなかったのだ。
「神谷悠」
「神谷……悠?」
「そう。神谷が名字で、悠が名前」
「ふーん」
霊夢は特に興味がなさそうだった。
しかし、少ししてから振り返る。
「じゃあ、悠」
「何?」
「幻想郷では、あんまり一人で出歩かない方がいいわよ」
「……やっぱり危ないのか?」
「妖怪がいるんだから当然でしょ」
そう言った直後だった。
森の奥から、何かが動く音がした。
「……」
霊夢が黙る。
悠も足を止めた。
ガサッ。
木の葉が揺れる。
続いて、別の場所からも音がした。
ガサッ、ガサッ。
「……霊夢」
「静かに」
霊夢の声から、先ほどまでの気楽さが消えていた。
悠は周囲を見渡す。
右。
左。
そして、正面。
いつの間にか、自分たちは囲まれていた。
「……何体いるんだ?」
「分からない。でも、少なくとも一体じゃないわね」
木々の隙間から、何かが姿を現す。
人間のようにも見える。
だが、人間ではない。
鋭い爪。
歪んだ顔。
獣のような姿をした妖怪が一体、また一体と姿を現していく。
「……これが妖怪」
悠の喉が鳴った。
画面の中で見るのとは違う。
実際に目の前にいる。
生きている。
そして、こちらを獲物として見ている。
「悠」
「……何?」
「これ持って」
霊夢が懐から何かを取り出した。
小さな札だった。
「札?」
「護身用。大したものじゃないけど、持ってないよりはマシよ」
「俺に?」
「そう」
悠が札を受け取る。
「どう使うんだ?」
「危なくなったら握って念じなさい。あとは札が何とかしてくれるわ」
「随分と雑な説明だな」
「細かいことを説明してる暇がないのよ」
霊夢が前を見る。
妖怪たちが、少しずつ距離を詰めていた。
「それと」
霊夢が一度だけ悠を見る。
「絶対に無理しないこと」
「……分かった」
「弾幕も撃てないんだから、格好つけて戦おうなんて思わないで」
「……そこまで言う?」
「事実でしょ」
そう言って、霊夢は袖を払う。
その瞬間、空気が変わった。
「来るわよ」
妖怪の一体が飛び出した。
霊夢の手から札が舞う。
次の瞬間、赤と白の光が森の中を駆け抜けた。
轟音。
木々の間を無数の光弾が飛び交う。
「……これが、弾幕」
悠は思わず息を呑んだ。
美しい。
けれど、それ以上に恐ろしい。
霊夢が腕を振るたびに光が生まれ、妖怪たちを次々と撃ち抜いていく。
これが幻想郷の戦い。
これが、自分にはできないもの。
「悠! 下がって!」
「分かってる!」
言われるままに後ろへ下がる。
だが、その瞬間だった。
別の妖怪が横から飛び込んできた。
「っ!」
反射的に身体を捻る。
爪が目の前を掠めた。
「危なっ……!」
逃げる。
とにかく距離を取る。
しかし、別の妖怪が進路を塞いだ。
「くそっ!」
後ろへ下がる。
右から一体。
左からも一体。
「……囲まれた?」
霊夢の姿が見えない。
さっきまで近くにいたはずなのに、妖怪たちの動きに巻き込まれて離れてしまったらしい。
「霊夢!」
「悠!」
遠くから声が聞こえる。
だが、姿は見えない。
「これ、持って!」
霊夢の声と共に、何かが飛んできた。
先ほどの札だった。
「さっき渡したでしょ!」
「持ってる!」
「念じれば使えるから!」
「分かった!」
「私はこいつらを引き受ける! あんたはそのまま逃げて!」
「でも――」
「いいから!」
霊夢の声が響いた。
悠は歯を食いしばる。
助けに行きたい。
けれど、自分には弾幕を撃てない。
何の武器もない。
ここで足を止めれば、ただ足手まといになるだけだ。
「……分かった!」
悠は走った。
走って、走って、ひたすら走る。
後ろから妖怪の気配が追ってくる。
だが、不思議なことに身体は全く疲れない。
むしろ、速度はどんどん上がっていく。
「……まだ、いける!」
木々の間を抜ける。
坂道を駆け下りる。
それでも足は止まらない。
けれど、追ってくる妖怪も止まらない。
「しつこいな!」
振り返る。
距離が近い。
札を握る。
「これ……使うしかないか」
そう思った瞬間。
「――あれ?」
突然、目の前の地面が凍りついた。
白い冷気が一気に広がっていく。
追ってきていた妖怪の足元まで凍りつき、その動きが止まった。
「……何だ?」
冷気の向こう。
木の枝に、一人の少女が立っていた。
青い髪。
白い服。
背中に浮かぶ、氷のような六枚の羽。
少女は胸を張り、こちらを見下ろしている。
「へへっ!」
そして、楽しそうに笑った。
「逃げてきたの?」
悠は目を見開く。
この姿には、見覚えがあった。
忘れるはずがない。
東方Project。
その中でも、あまりにも有名な妖精。
氷を操る妖精――。
「……チルノ?」
「え?」
少女の顔から笑みが消える。
「なんであたいの名前知ってるの?」
しまった。
悠は、自分が口にしてしまった名前を思い出して固まる。
目の前の少女は、不思議そうに首を傾げていた。
そして、その視線はすぐに悠の後ろへ向けられる。
「まあいいや!」
チルノが氷の羽を広げる。
「そいつ、あたいがやっつけてあげる!」
悠は思わず息を呑んだ。
読んで頂きありがとうございます。
チルノは早めに登場させたかったんですよね!
今回の作品のチルノは少し賢いかも……