幻想郷に転生した俺は、弾幕を撃てない   作:みみみのおじさん

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第21話 拡散する弾幕

 ニトリの工房。

 悠は作業台の前に置かれた、新しい武器を見つめていた。

「これが……新しい武器?」

「そうだよ」

 ニトリが胸を張る。

「前に使ってた銃とは、かなり違うからね」

 悠が手に取る。

 見た目は銃に似ている。

 しかし、今まで使っていたハンドガンよりも大きく、銃身も太い。

「名前は?」

「拡散弾発射装置」

「……長いな」

「じゃあ、ショットガンでいいよ」

「最初からそう言ってくれ」

 悠は苦笑する。

 ニトリが武器を指差す。

「これは一発で複数の弾幕をまとめて発射できるようにしてあるんだ」

「複数?」

「そう。今までの銃は一発ずつ狙って撃つタイプだったけど、これは一度に広い範囲を攻撃できる」

 悠は頷く。

「つまり、近距離で使えばかなり強い」

「その代わり、遠距離では威力が落ちるし、何より装弾数が少ない」

 ニトリがマガジンを見せる。

「一つのマガジンに入るのは五発」

「五発か……」

「だから無駄撃ちは厳禁だよ」

 悠はショットガンを構える。

「じゃあ、試してみる」

 工房の奥に用意された的へ向ける。

「まずは一発」

 引き金を引く。

 バシュッ!

 一発の弾幕が、複数に分かれて飛んでいく。

 的の周囲までまとめて撃ち抜いた。

「……すごいな」

「でしょ?」

 ニトリが嬉しそうに笑う。

「でも、慣れるまでは難しいよ」

「確かに」

 悠は次の弾を装填する。

「普通の銃とは狙い方が違う」

「弾幕が広がるからね。距離によって狙う場所も変えないといけない」

 悠は何度も射撃を繰り返す。

 一発。

 また一発。

 撃つたびに弾幕の広がり方を確認する。

「……近距離ならかなり使えそうだ」

「そうだね」

 ニトリが頷く。

「接近された時の切り札にはなると思うよ」

「切り札……か」

 悠はショットガンを見る。

 紅霧異変。

 そして、その後の修行。

 銃だけでは足りない。

 ナイフも覚えた。

 体術も鍛えた。

 そして今度は、この武器。

「次の異変があったとしても、今度は何もできないまま終わるつもりはない」

 悠はショットガンを握り直した。

 一方その頃――。

 魔理沙は幻想郷の各地を飛び回っていた。

「……やっぱり変だぜ」

 空から地上を見下ろす。

 どこへ行っても、雪が降っている。

 春を迎えるはずの季節なのに、冬が終わる気配がない。

「雪が降ってるだけなら、まだいいんだけどな」

 魔理沙は周囲を見渡す。

「問題は、春そのものが来てないことだ」

 魔理沙はこれまでに集めた情報を整理する。

 桜が咲かない。

 草木が芽吹かない。

 暖かくならない。

 そして、雪だけが降り続いている。

「どこかで春が止められてる……?」

 魔理沙は箒を走らせる。

 さらに遠くへ。

 幻想郷の外れへ。

 すると――。

「ん?」

 魔理沙が空中で止まった。

 遠くに見える山。

 その向こう側から、何かを感じる。

「……春の気配?」

 魔理沙は目を凝らす。

 幻想郷の中ではほとんど感じられなかった春の気配が、僅かに存在していた。

「こっちか」

 魔理沙はその方向へ飛んでいく。

 しばらく進むと、雪の中に不自然なものを見つけた。

 淡い光を放つ、花びらのようなもの。

「桜……?」

 魔理沙が近づく。

 それは確かに、春の気配を持っていた。

 しかし、この場所に桜が咲くはずはない。

「誰かが春を集めてるのか?」

 魔理沙は花びらを手に取る。

 その瞬間――。

 遠くから、冷たい風が吹き抜けた。

「……この先に何かあるな」

 魔理沙は箒に跨り直す。

 さらに調査を進める。

 そして、ようやく一つの答えへ辿り着いた。

「冥界……」

 魔理沙は呟く。

 春の気配が、冥界へ向かっている。

「なるほどな」

 魔理沙は帽子を押さえる。

「春が来ないんじゃない」

 雪の降る空を見上げる。

「春が、どこかへ持っていかれてるんだ」

 魔理沙はすぐに踵を返す。

 向かう場所は決まった。

 冥界。

 そこに、今回の異変の原因がある。

「霊夢に知らせるか……」

 魔理沙は少し考える。

「いや……」

 先ほどの霊夢の顔を思い出す。

「どうせ、こたつから出てこないだろうな」

 魔理沙は苦笑する。

「だったら、先に準備をしておくか」

 そう言って、魔理沙は再び箒を走らせた。

 その頃、ニトリの工房では――。

「もう一発!」

 悠がショットガンを構える。

 バシュッ!

 広がった弾幕が的を捉える。

「……だいぶ慣れてきたね」

 ニトリが感心したように言う。

「まだまだだ」

 悠は銃を下ろす。

「この武器を使いこなせるようにしておきたい」

 その時だった。

 工房の外から、雪が屋根を叩く音が聞こえてきた。

 春になるはずの季節は、まだ終わらない。

 そして――。

 異変の舞台は、少しずつ冥界へ近づいていた。




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異変は春雪異変でございます!
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